蕎麦粒山-有間山稜 廃道化の進む棒杭尾根と、奥多摩と奥武蔵の境界の山々を巡る

有間峠から見たタタラの頭
東京都奥多摩町にある蕎麦粒山(そばつぶやま)から埼玉県飯能市と秩父市にまたがる有間山稜(ありまさんりょう)を繋げて歩いて来ました。
天目背稜と呼ばれる、東京都と埼玉県の境界を形成している尾根の周辺を巡る行程です。人里からは遠く離れた山深い場所に位置しており、登山口のある有間峠へと通じている林道が長らく通行止め状態であることから、訪れる者の極めて少ない静かなる山域となっています。
咲き始めたシロヤシオを求めて、奥多摩と奥武蔵の境を渡り歩いて来ました。

2022年5月15日に旅す。

warning!
本記事では、現在廃道となっている倉沢林道を歩いています。
・倉沢林道は数か所で崩落が進んでおり、今現在も安全に歩ける保証は一切ありません。危険を感じたらすぐに引き返しましょう。
・安全に行きたければ、ヨコスズ尾根か鳥屋戸尾根をご利用ください。

今回は東京都と埼玉県の境界である天目背稜と、奥武蔵の有間山稜とを巡り歩いて来ました。お目当ては稜線上に点在するシロヤシオの群生地です。
蕎麦粒山のシロヤシオ
生憎とこちらはまだ咲き始めで、ポツポツと疎らにしか咲いてはいませんでした。

天目背稜は大変奥まった場所にある山域なため、どこから取りつくにしてもかなりの長丁場となります。かつては有間峠を越える広河原逆川林道の存在により、マイカー登山をする人であれば比較的容易に取り付くことが可能でした。
広河原逆川林道の通行止め
しかしこの広河原逆川林道は、令和元年台風19による路面崩落の影響で、長らく通行止めの状態が続いています。

そのため現状、天目背稜に取り付くには川苔橋バス停から鳥屋戸尾根を登るか、もしくは東日原バス停からヨコスズ尾根を登るのが一般的です。

現在、川苔林道の工事に伴い入口のゲートが閉鎖されており、鳥屋戸尾根を歩くことは出来ません。
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それならばと深い考えも無しに隣の棒杭尾根から登ったのですが、尾根に取り付く前の倉沢林道が一番の核心部であると言う思ってもいない事態でありました。

有間山稜の伐採地からは、天目背稜と長沢背稜と合わせた都県境尾根を一望できます。奥多摩と奥武蔵の境目の領域を延々と歩いてきた一日の記録です。
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コース
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倉沢バス停からスタートし、棒杭尾根を登って蕎麦粒山へ。そこから天目背稜を歩いてオハヤシの頭から有間山稜へと入ります。下山は有間山稜を鳥首峠まで歩いて名郷バス停へ下ります。

標準コースタイムが10時間を超える骨太な行程です。

1.蕎麦粒山登山 アプローチ編 ほとんど顧みられない廃道の入り口、倉沢バス停を目指す

6時34分 JR青梅駅
本日の行程は結構なロングトレイルとなる計画です。ホリデー快速の時間に合わせて始動したのでは遅すぎるので、始発電車を乗り継いで行きます。
青梅駅のホーム

7時24分 奥多摩駅に到着しました。どんよりとした曇り空であるにもかかわらず、けっこうな数の登山者が一斉に下車しました。奥多摩のベストシーズンと言えるのは、ちょうど今くらいな時期ですからね。
奥多摩駅のホーム

7時27分発の東日原行きのバスに乗車します。乗り換え時間はわずかなので、トイレは事前に済ませておきましょう。
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川苔林道の工事に伴い、現在人気の川苔山へは登れないとあってか、バスは至って空いていました。

7時48分 倉沢バス停に到着しました。他の乗客の「あいつは一体どこに行く気なんだろう?」と言う好奇の眼差しにさらされながら、一人バス停に降り立ちます。・・・最近このパターンが多いですね。
倉沢バス停

この倉沢バス停は、その名も倉沢谷と言う日原川支流の谷を渡った地点にポツンとあります。東京都の天然記念物である倉沢のヒノキの最寄りとなるバス停ですが、あまり訪れる人もなく静かなものです。
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倉沢谷に架かる倉沢橋です。谷底からの高さが61メートルあるワーレントラス橋で、東京都が管理する都道の橋の中では最大の高さです。
日原 倉沢橋

ここから倉沢谷に沿って奥地へと続いている倉沢林道を歩いてアプローチします。林道の入り口ゲートは、厳重に閉鎖されていました。
日原 倉沢林道の入り口ゲート

路面が崩落しており、通行止めであると言う告知がされていました。これは事前に調査済みで、徒歩であれば脇を通過は可能であると言う情報を得ております。
倉沢林道の入り口ゲート

2.着々と廃道化が進む倉沢林道を行く

8時5分 身支度を整えて行動を開始します。入口付近は特に荒れている様子もなく、いたって普通の林道です。
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と思っていた矢先に、落石で破壊されたガードレールが目に飛び込んできて冷や水を浴びせかけられました。やはり、あまり長居はせずに素早く通り抜けた方が良さそうですね。
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さて、この林道倉沢線ですが、現在はすでに廃道となっております。東京都はこの林道を管理しておらず、今後道が崩れても修復されることはありません。この道の行く末は、すべて倉沢谷の自然に委ねられています。
林道倉沢線

封鎖エリア内に現れた2度目の封鎖です。そろそろ崩落地点が近いのでしょうか。
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今のところは路盤も橋もしっかりと健在で、廃道であることを思わせる要素はありません。
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谷底の倉沢には、こうした名もなき多数の滝があり、見ていてなかなか壮観です。おそらくは釣り人が付けたのだと思われる、沢へと降りる獣道のような小径が多数ありました。
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道の脇の至る所から岩清水が湧き出し、しっとりとしたウェットな空間です。
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倉沢林道でハナネコノメが見られるらしいと言う情報を得ていたので、先ほどからずっと探しながら歩いているのですが、全く見当たりません。今はまだ季節ではないのでしょうか。

ちなみにハナネコノメと言うのはこんな花で、苔の中に咲きます。とても小さくて可愛らしく、圧倒的な癒しの存在です。
ハナネコノメ

林道入口のゲートに写真が掲げられていた、件の崩落地点へとやって来ました。なるほど確かに、路盤がごそっと削り取られております。
倉沢林道の崩落地

肝心な突破方法ですが、左側に人一人が通行出来るだけの幅が残っており、特に危険な要素もなく通り抜け可能です。いつまでこの状態が続くかはわかりませんが。
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崩落地を超えたところで、魚留橋が現れました。途中からはずっとダートでしたが、以前はここまで一般車も立ち入りが可能でした。
倉沢林道 魚留橋

現在は橋の手前が陥没してしまっており大穴が空いていますが、右端に僅かに通り抜けが可能なスペースが残っています。
倉沢林道 魚留橋の崩落地
こんなところで穴に転落でもして身動きが取れなくなったら、最悪数日は発見してもらえない可能性が濃厚です。くれぐれも落ちないようにご注意ください。

橋の先は、かなり大きな落差を持つ滝になっていました。滝の名称を記載した表札などはありませんが、おそらく魚留滝と言う名前なのでしょう。魚さえも遡上出来ないだけの落差のある滝です。
倉沢林道 魚留滝

この魚留滝の落差を乗り越えるために、林道はここから大きく右側へと回り込みます。魚留橋を過ぎると、いきなり崩落の度が増して、廃道らしい光景になってまいりました。
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どこで目にした知識なのかは思いだせないのですが、人間が管理することを止めた道路と言うのは、だいたい30~40年ほどで完全に痕跡が消えて、自然に還ってしまうものなのだそうです。

当然周囲の環境によって時間は違っては来るのでしょうが、倉沢谷の自然は全力をあげて道のあった痕跡を消し去ろうとつつありました。
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滝の上まで登ったところで、再び橋がありました。こちらは地蔵橋と言う橋です。ここでも、橋の手前の路盤が大きく崩落していました。
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この地蔵橋のある一帯を地図で見ると、両側を崖記号に囲われたれた非常に険しい地形となっています。
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現在はまだ何とか通行可能でしたが、地蔵橋を渡れなくなると、ここより奥地への立ち入りは事実上不可能になるものと思われます。訪問を考えている人は、なるべく早く訪れた方が良いと思います。

橋の上に残された路肩注意の標識だけが、かつてはここまで車が進入可能であった事実を物語っていました。
路肩注意の道路標識

地形図に描かれている通りの、両側が崖に囲まれたゴルジュ帯の中を進みます。現役の車道であった時代には、ガードロープか何かくらいはあったのでしょうかね。どちらにしろ、あまり運転したいとは思えないような道ですが。
倉沢林道のゴルジュ帯

9時15分 林道終点まで歩いて来ました。路盤跡はもう少し先まで続いているようにも見えますが、この先は完全に行きどまりです。
倉沢林道終点

平場があってすぐそこで水も取れるので、ここは幕営の適地であるかもしれません。こんなところでキャンプがしたいもの好きが、果たしてどれほどいるかどうかはさておき。
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3.蕎麦粒山登山 登頂編 急登の続く棒杭尾根と、満開にはまだ少し早かったシロヤシオ

非常に分かり難いですが、林道終点の左の斜面から、棒杭尾根へ通り付きます。一応は目印のピンクテープがあります。見落とさないように、良く周囲を観察してください。
棒杭尾根の取り付き

谷底から頭上の棒杭尾根に向かって、急坂を一気に登り上げます。初っ端から容赦のない登りです。
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無事に尾根に取り付きました。この先は一部に不明瞭な場所はあるものの、特に危険な箇所はありません。
棒杭尾根の登山道

しばらく進むと、紛らわしい分岐が現れました。左へ進む方が道なりであるようにも見えますが、ここは尾根を忠実に辿って右へ進むのが正解です。わかりづらいですが目印のピンテープもしっかりとありました。
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かなり急勾配な尾根ですが、ジグザクと九十九折れが付いており、至って歩きやす尾根道です。足元の土の柔らかさ加減からして、歩く人は相当少なそうです。
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奥多摩の山らしく、大きく育ったりっぱな杉の植林が続いています。しかし肝心の林道があの様とあっては、これらの杉が伐採され商品として出荷されることは、きっともう無いのでしょうね。
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急登を登りきると、周囲の光景は自然林に変わり、幅広の緩やかな尾根道になりました。ここまで登ってくれば、天目背稜の稜線まではもうあと一息です。
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少しだけ開けている場所があり、お隣のヨコスズ尾根が良く見えました。蕎麦粒山へ安心安全に登りたければ、鳥屋戸尾根や棒杭尾根ではなくあちらを歩く方が無難です。
棒杭尾根から見たヨコスズ尾根

徐々に尾根が痩せて来ましたが、危険な崩落などは一切なく通行に支障ありません。
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前方を横切る尾根との合流地点が現れました。棒杭尾根を登り切ったようです。
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反対側にも、倉沢林道が通行止めである旨の張り紙がしっかりとありました。途中で一人だけ下山してくる登山者とすれ違いましたが、この警告を無視したと言う事ですね。
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私の感覚ですと、登りであれば進退窮まった時点で中止して引き返せば済む話ですが、下山時にあえて冒険をしようと言う気にはなれませんあ。

廃道の状況は刻一刻と変化しているので、ある日突然完全に通れなくなることは十分にありえます。なので下山時にここを下ることは推奨しません。

天目背稜の尾根に乗りました。この先はもう、破線扱いでない一般登山道の領域です。
天目背稜の縦走路
正確な定義は不明ですが、一般的に雲取山から天目山までの区間を長沢背稜と呼び、その先からを天目背稜と呼ぶらしいです。いずれにせよ、市街地からは遠く離れた深山幽境の地であることに変わりはありません。

天目背稜上には見事なブナ林が広がっていました。この先の道は過去にも一度歩いたことのあるので、サクサクと足早にまいりましょう。
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一部に危なっかしいトラバースがあったりはしますが、そうは言っても一般登山道です。不明瞭な場所もなく至って歩きやすい道が続きます。
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蕎麦粒山直下の分岐地点までやって来ました。まっすぐ進むと直登ルートで、右へ進むと巻き道です。巻き道の方は崩落が進んでおり、現在は通行止めとなっています。
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ここまで登って来て、ようやく本日のお目当てであったはずのシロヤシオ様がお目見えとなりました。まだ咲き始めて間もないらしくポツポツと疎らです。
蕎麦粒山のシロヤシオ

道を塞ぐ倒木などもあり、全般的に放置され気味な登山道です。なにしろまったくメジャーではない山域ですから、後回しにされるのもやむなしです。
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ゴツゴツとした大岩が見えてきたら、山頂はすぐ目の前です。ラストスパーをかけましょう。
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11時50分 蕎麦粒山に登頂しました。天目背稜上の主要ピークの一つです。かくもインパクト絶大な名前をした山であるにもかかわらず、いかんせん遠すぎて訪れる人は殆どいない静かなる頂です。
蕎麦粒山の山頂

尾根上が防火帯となっており、展望は一部だけが開けています。
蕎麦粒山から展望

正面に見えているのは川苔山(1,363m)です。見ての通り尾根で繋がっており、ここから縦走できます。川苔山を経由して下山するのが、蕎麦粒山を含めた登山としては最も一般的な行程になろうかと思います。
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最も一般的なんてことが言えるほどには、登りに来る人がいない山なんですけれどね。

北側の眼下に、小さくダム湖らしきものが見えています。これは秩父の浦山ダムと秩父さくら湖です。
蕎麦粒山から見た秩父さくら湖
間を尾根に阻まれていると言うだけで、こうして見ると秩父と奥多摩と言うのは、驚くほどに近いものなんですね。

山頂にもチラホラとシロヤシオ様が咲いていらっしゃいました。ありがたやー。
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4.オハヤシノ頭より、奥武蔵の有間山稜へと足を踏み入れる

12時5分 まだまだ先は長いので、休憩は程々にして行動を再開します。この先は防火帯に沿って進むのですが、何気に結構な急勾配です。
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丹沢の檜洞丸などの有名な群生地の規模にはまったく及びませんが、それでもチラホラと道の脇に咲いています。
天目背稜のシロヤシオ

ミツバツツジも咲き始めており、白と紫の競演を繰り広げていました。
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一見緩やかな尾根道のようにも見えますが、割とアップダウンが多めです。防火帯内の道と言うのは基本的に一直線の直登となるため、勾配がきつめです。
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ここにきて頭上に青空が広がり始めました。このまま晴れてくれのかと期待しましたが、結局はまたすぐにどよーんと曇ってしまいましたがね。
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12時40分 オハヤシの頭まで歩いて来ました。ここが有間山稜への分岐地点です。ここで東京都には別れを告げて、彩の国へと分け入って行きます。
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ここから先は、自身にとって初めて足を踏み入れる領域となります。当たり前な話ですが、有間山稜に入ったからと言って突然景色が変わるわけでもなく、天目背稜上と変わらない光景が続きます。
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この道は送電鉄塔の巡視路を兼ねているらしく、よく整備されています。まるで工事現場のようで若干無味乾燥ではありますがね。
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言っているそばから、送電鉄塔の下に出ました。低山歩きにおいては、鉄塔のあるところに好展望ありです。ここはどんな感じなのでしょうか。
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思った通りに素晴らしい展望が広がっていました。右端に見えているのが武甲山(1,304m)です。奥武蔵と呼ばれる領域の、南端の一帯を見下ろす光景です。
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反対の東側にあるこの山は棒ノ折山(969m)です。始めて見るアングルなので何だか新鮮です。どんよりと霞んでいますが、棒ノ折山の先には関東平野が広がっています。
有間山稜から見た棒ノ折山

そして、これから歩く有間山稜の山並みです。意外とアップダウンが多そうですねえ。
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鉄塔からは、有間峠に向かって大きく標高を落として行きます。鉄塔巡視路らしく、しっかりと階段が整備されていました。
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下りきったところで林道とぶつかりましたが、ここではまだ合流はせずに脇をかすめるだけです。この後、また緩やかに登り返します。
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登り返しの途中ですが、何やら前方に絶景スポットの予感です。
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ここは下を通っている林道の法面の上部にあたる場所です。伐採されているため、東側の展望が大きく開けています。
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眼下に見えているのは有間ダムと名栗湖です。確かに有間ダムの上からは、有間山稜が良く見えていたように記憶しています。
有間山稜から見た名栗湖

山頂らしき場所が現れました。
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13時20分 仁田山に登頂しました。有間峠の手前にある小ピークです。展望は一切なくひっそりとした空間です。
有間山稜 仁田山の山頂

仁田山を過ぎると、今度こそ峠に向かって大きく標高を落とし始めました。
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再び視界が開けて、眼下に有間峠が見えました。林道広河原逆川線が有間山稜を越えている地点です。
有間峠から見たタタラの頭

良く見ると、峠道のすぐ脇が大きく崩落しています。令和元年の台風19号による被害の爪痕です。
有間峠の路面崩壊箇所

13時35分 有間峠に到着しました。かつてはここが蕎麦粒山への最短の登山口であった訳なのですが、前述の通り現在は通行止めとなっており、車での立ち入りはできません。
有間峠

路肩がゴッソリと崩落してます。以前はこの辺りに有間峠と書かれた立派な標識が立っていたようなのですが、崩落に巻き込まれたらしく跡形もありません。
有間峠の路面崩壊箇所

この広河原逆川線は、有間ダムから浦山ダムへ有間山稜を越えてダムからダムを結んでいた道なのですが、現在は複数個所で崩れており、復旧のめどは全く立っていません。
林道広河原逆川線の略図

5.有間峠から有間山稜を縦走する

道の脇にまるで取って付けたような登山口から、再び登山道へと分け入ります。
有間峠の有間山登山口
有間山稜とは一般的に、有間峠から橋小屋ノ頭までの区間を指します。有間山と言う名のピークは存在せず、最高地点はタタラの頭と言う名のピークです。

その最高地点を目指して、峠からは緩やかに登り返して行きます。明瞭明快で、実に歩きやすい尾根道です。
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林相が美しい森です。有間山稜は登山の対象としてはマイナーな一帯であろうと思いますが、穴場かもしれません。広葉樹の森が広がっているので、紅葉の頃もきっと良い感じになると思います。
有間山稜の森

割とあっけなく、山頂が見えて来ました。
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14時15分 タタラの頭に登頂しました。最高地点であることを示すものはなにも無く、手作りの標識がかかっているだけの地味で静かな空間です。だが、それが良い。
有間山稜 タタラの頭

タタラの頭を過ぎるといよいよアップダウンも小さくなり、低山歩きの喜びが凝縮されているような、気持ちの良い尾根道が続きます。
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ほんの短時間でしたが、再び太陽が顔を覗かせてくれました。例え展望ない樹林帯であっても、やはり木漏れ日差し込んだ方が全然気分は良いものです。
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シロヤシオもこうして時々咲いていますが、群生地と呼べるほどの規模ではありません。オマケ程度と考えた方が良さそうです。
有間山稜のシロヤシオ

再び山頂らしき場所が見えて来ました。
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14時55分 橋小屋の頭に登頂しました。有間山稜と呼ばれる領域の北端に位置しているピークなのですが、何故かここに有間山とかかれた立派な標識が立っていました。
橋小屋ノ頭
普通に考えれば、この標識はタタラの頭に設置すべきものであるようにも思えますが、はて。

さて、この先へ進む道にははいくつかの選択肢があります。蕨山を経由して名郷に下りるか、あるいはさわらびの湯まで歩いて行くか。
橋小屋ノ頭

蕨山には過去に訪問したことがあるので、それならばまだ歩いたことがない区間を通る方が良かろうと思い、蕨山方面へは進まずに反対の鳥首峠方面を目指すことにしました。
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6.長沢背稜から天目背稜まで、都県境尾根を一望する好展望の道

と言う事で、鳥首峠方面に向かって下って行きます。いくら陽の長い季節と言えども、もうだいぶ時間も押してきているので、早足気味に進みます。
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このまま峠まで下って行くだけなのかと思いきや、大きく登り返しさせられます。この先にもまだまだアップダウンが残っているようですね。
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やがて前方の視界が大きく開けている場所にでました。どうやら伐採地であるようです。
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目の前に長沢背稜から天目背稜に至る都県境尾根を一望できました。実に素晴らしい。何の事前情報も無しに歩いていたので、この光景には少々驚きました。
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このぴょこんとしたピークが蕎麦粒山です。ここを越えて来たのもの、もうずっと前のことに思えるくらい遠くまで歩いて来ました。
有間山稜から見た蕎麦粒山

これは天目山(1,575m)ですね。天目背稜という名称の由来にもなっている山です。秩父側からは三ツドッケとも呼ばれています。
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進行方向の先には、一目でそれとわかる両神山(1,723m)の姿がありました。
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この伐採地はかなりの広範囲に及んでおり、その間ずっと左手に都県境尾根を眺めながら歩けます。深い考えも無しに選んだルートでしたが、結果的には大正解でありましたな。
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途中で合計3回の小ピークへの登り返しがあります。こちらが最後のピークである滝入ノ頭です。
滝入ノ頭の山頂

滝入ノ頭から振り返って見た在間山稜です。地味ながらも、とても良きトレイルでありました。ややアクセス難な場所ではありますが、もっと広く知られるべき山域だと思います。
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前方には子持山と大持山が並んでいました。このまま尾根沿いに武甲山へ繋がっています。
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滝入ノ頭を過ぎると、ようやく鳥首峠に向かって真面目に標高を落とし始めました。
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横目に石灰の採掘場があるのが見えました。名郷への下山路は、あの採掘場より手前の森の中にあります。
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16時15分 鳥首峠に到着しました。秩父と名栗と結ぶ、古くからの存在する峠道です。現在ここを越える旅人はおらず、少数の登山者だけが通行する静かな場所です。
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7.有間山稜登山 下山編 雨が降り出した中を駆け足で下山する

さあ、ここから先はもう消化試合です。帰りに乗る予定のバス時間が近づいてきているので、半分駆け足で参ります。
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廃屋が立ち並ぶ一帯を通り抜けます。ここは白岩と呼ばれる集落の跡で、1990年代までは住民が居ましたが、現在は廃村となっています。
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ここでバタバタと音を立てて、大粒の雨が降り始めました。レインウェアを羽織るのも億劫だったので、片手に折り畳み傘をかざした山ナメスタイルで下山を続けます。まあ、風があるわけでもないしね。
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程なく舗装道路に出ました。ここか名郷バス停までは、大体30分程の道程です。
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下って行くと、見覚えのある道への分岐がありました。以前に大持山経由で武甲山へ登った際に通った林道です。まあ、現在通行止めなんですけれどね。
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17時40分 名郷バス停に到着しました。バス時間の数分前と言う綱渡りでのゴールでした。あぶないあぶない。
名郷バス停

そしてここから先も長い。飯能駅まではおよそ1時間ほどの乗車時間となります。奥多摩駅からからスタートした本日の山行きは、こうして西武線の駅へとゴールして無事に終了しました。
名郷バス停に停車する飯能駅行きのバス

奥多摩と奥武蔵を股に掛ける山行きは、こうして大満足の内に幕を下ろしました。
あまり歩く人のいない都県境地帯の山奥には、美しい広葉樹の森が広がっていました。原始から変わらぬであろう、関東地方の山の本来の姿です。僻地であるが故にロングトレイルとなる事は避けられませんが、静かなる山を歩くことに喜びを見出す人には、大いに推奨します。
二つの山域の境界を跨ぐ、この多分に冒険的な要素を含んだ山域へと、繰り出してみては如何でしょうか。
なお、廃道の倉沢林道を歩いたのは、完全に余計な蛇足です。少々遠回りにはなりますが、素直に一般登山道のヨコスズ尾根か、あるいは川苔林道の通行止め解除を待ってから鳥屋戸尾根を登る方が無難であると思います。

<コースタイム>
倉沢バス停(8:05)-林道終点(9:15)-蕎麦粒山(11:50~12:05)-オハヤシの頭(12:40)-仁田山(13:20)-有間峠(13:35)-タタラの頭(14:15)-橋小屋ノ頭(14:55)-鳥首峠(16:15)-名郷バス停(17:40)

有間山での記念撮影

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント

  1. もうもう より:

    オオツキ様

    台風19号の爪痕は今でも多くの登山道で見かけることがあり、復旧を断念しているところも多いようですね。

    自分は破線ルートは歩きませんが、ソロで人の少ないルートを歩いていると「もし滑落したら人に見つけてもらえないのでは?」と不安になることが有ります。

    今回のようなルートってアルプスや八ヶ岳の整備されている百名山なんかより実は危険だったりするんでしょうね!

    • オオツキ オオツキ より:

      もうもうさま
      コメントをありがとうございます。

      奥多摩や丹沢は何気に遭難者の多い山域で、北アのメジャーなルートよりも危険な場所はざらにあります。特に長沢背稜の一帯は歩く人も少ないので、道に迷ってしまい進退窮まる例は多いようです。

      一般登山のヨコスズ尾根であればそこまで危険はありませんが、決して万人向けの領域でないことは明らかです。

  2. take より:

    近々棒抗尾根を登山しようと考えており詳細なレポートありがとうございます。
    参考にさせていただきます。(しかし当方は仙元尾根を使用すると思いますが、、)
    話はそれますが貴殿が使用しているウエストポーチはどこのでしょうか?この程度のサイズの
    物を探しておりますので、、、

    • オオツキ オオツキ より:

      takeさま
      コメントを頂きましてありがとうございます。

      仙元尾根を下ることも考えたのですが、ちょっと距離が長すぎると思い無難に有間山稜の方を歩きました。

      お尋ねの件ですが、あれはウェストポーチではなくカメラバッグです。パーゴワークスのフォーカスLと言うモデルですが、現在はすでに絶版です。少し小型のスイングと言うモデルはまだ手に入ります。