長野県大町市と富山県立山町にまたがる針ノ木岳(はりのきだけ)に登りました。
後立山連峰に属しており、黒部湖を挟んで立山の向かいに立っている山です。山腹に日本三大雪渓の一つに数えられる針ノ木大雪渓を擁し、扇沢駅を起点として周回する通称針ノ木サーキットと呼ばれる縦走コースが特に人気です。
快晴秋晴れの空の下、北アルプスの大パノラマが広がるサーキットコースを駆け抜けて来ました。
2024年10月2日に旅す。
今回歩くのは、黒部立山アルペンルートの大観峰駅から見た時に、黒部湖を挟んで向かいに見えている山並みです。針ノ木岳がある一帯は、北アルプスの中では比較的歩く人の少ない穴場的な領域となっています。
サーキットを称していますが、決して容易なコースではありません。小刻みにアップダウンを繰り返すなかなかの険路です。後立山連峰の稜線の例に漏れず、信州側は鋭く切れ落ちていて危険な箇所もあります。
このルートを日帰りで踏破する登山者も少なからず存在しますが、1泊して歩くの妥当なボリューム感であると思います。
想像していた以上のアップダウンにだいぶヘロヘロになりつつ、針ノ木サーキットを周回してきた記録です。
コース
宿泊地の針ノ木峠からスタートして、針ノ木岳を始めとしたピークを越えつつ種池山荘を目指します。下山は柏原新道を下り扇沢駅へ戻ります。
前日の蓮華岳往復も含めた累計標高差はおよそ2,500メートル程となり、なかなか過酷と言える行程です。
1.全方位の大パノラマが広がる不遇の名峰、針ノ木岳
5時20分 針ノ木峠よりおはようございます。昨夜は風が非常に強く、テントがゆすられる音であまり良く眠れませんでした。稜線上にあるテント場は、雨風があるとどうしたって快適にはすごせません。
正面に昨日は全く見えていなかった富士山と八ヶ岳の姿がありました。これだけ遠くからでも、意外とも見えるものですね。
槍ヶ岳もこの通り良く見えています。幸いにも、本日の天気は上々となりそうです。
北側には本日歩くことになる後立山連峰の主稜線が連なっています。何とも素敵な稜線ではありますが、なかなかアップダウンは激しそうです。
針ノ木サーキットに蓮華岳をプラスした場合の歩行距離と累計標高差は、西丹沢ビジターセンターから大倉まで抜ける丹沢主稜縦走とだいたい同じくらいになります。
それを聞くと確かに日帰りでも何とか行けないことは無いのかなと言う気はしますが(そうか?)、たぶん辛いだけで楽しくはないと思います。
5時50分 テントの撤収が済んだところで、本日の行動を開始します。峠からは最初からいきなりの急登で、ウォーミングアップも何もあったものではありません。出発前にアキレス腱伸ばしくらいはしておきましょう。
最初の急登を登り切ったところで、視界が開けました。登っている途中でどこからかご来光を拝めるだろうと呑気に構えていたのですが、針ノ木峠の周辺はちょうど蓮華岳の影に入ってしまうため、日の出の方角が全く見えませんでした。
なんてこった。もっと早起きして、日の出前に針ノ木岳山頂に到達しておくべきでした。
後立山連峰の稜線が、眩い朝日に照らされて行きます。早朝の山特有の、凛とした空気感がとても心地よい。
反対側の裏銀座方面の山並みも朝日に照らされて行きます。裏銀座エリアの山小屋は10月中頃で営業を終了するところが多いようですが、今くらいの時期だと夏よりは空いているのだろうか。
比較的フラットな地面が多くあり、針ノ木峠の周辺よりもよほどキャンプ指定地に向いていそうな空間です。とは言っても、ここは中部山岳国立公園の敷地内であるため、勝手にテント場にするわけにはいかないのでしょうけれど。
尾根を外して、北側をトラバースしながら登って行きます。この辺りの登山道は至って歩きやすく、一般登山道レベルです。何故それをことさらに強調するのかと言うと、針ノ木岳から先の道は一般向けとは言い難くなるからです。
高度が上がるにつれて、周囲がより広く見えるようになっていきます。横から差し込む朝日が神々しい。あまりの絶景に撮影が捗り過ぎて、なかなか歩みが進みません。
槍ヶ岳の下に高瀬ダム調整湖が見えます。黒部ダムの影に隠れて山登りしない人にはあまり知名度がありませんが、こちらもなかなか凄い立地にあります
この裏銀座縦走路上にピョコっと飛び出しているオデキみたいな突起は烏帽子岳(2,628m)かな。
裏銀座は何気に一度も歩いたことのが無いので、行ってみたいんだよな。とにかく人混みが嫌で、北アルプスのメジャールートとはあまり縁がない登山ばかりしているものですから。
赤牛岳(2,864m)の存在感が凄い。主要な縦走路からは少し外れているため、あまり登る人は多くない山です。・・・ええい、貴様も登りたい山リストに追加だ。
こちらは元祖北アルプスの女王こと薬師岳(2,926m)です。近年は女王の異名を燕岳に奪われてしまいつつあるようですが、いくつものカール地形が印象的な非常に大柄な山です。
よそ見ばかりしていないで、いい加減山頂を目指しましょう。山頂付近はいかにも北アルプスの稜線らしい、ガラ石が散乱するハイマツ帯になっています。
背後を振り返ると、昨日登った蓮華岳の上に高々と太陽が昇っていました。
6時45分 針ノ木岳に登頂しました。針ノ木サーキット縦走のまずは1座目です。山頂からは360度全方位に展望が開けています。早速一通りざっと眺めてみましょう。
2.針ノ木岳山頂からの展望
まずは南側です。裏銀座方面の山々がすべてドーンと見えております。もっともこちら側に関しては、山頂に着く前のまだ登っている最中からすでに良く見えてはいました。
視線を少し右にずらして南西方向の展望です。薬師岳から五色ヶ腹を経て立山室堂へと至る山並みが連なります。
北西方向に目を向けると、黒部湖を挟ん仇向かいに立山(3,015m)と剱岳(2,999m)が、圧倒的存在感でもって居並んでいました。ここは間違いなく、立山を眺めるための最高の展望台であると思います。
北側にはこの後歩くサーキットコースの尾根が連なり、そのさらに先には鹿島槍ヶ岳から白馬岳へ続く後立山連峰の名峰たちが並んで立っています。
この後立山連峰と言う名称は、明らかに富山県側から見た呼び名ですよね。それはさておき、目的地の種池山荘がなんだかすごく遠そうに見えます。これは思った以上にしんどそうですぞ。
北東方向には、昨日登って来た針ノ木谷が深く切れ込んでいます。遠くには薄っすらと北信五岳や上信国境地帯の山並みが見えています。
最後に昨日登った蓮華岳がある南東方向です。遠く彼方に薄っすらと八ヶ岳連峰や南アルプスが見えています。
思っていた以上の大展望が広がる山頂です。そして何よりも、殆ど人がいないところが素晴らしい。秋の針ノ木岳は、北アルプスの中では穴場だと思います。
3.針ノ木サーキットの核心部、スバリ岳
名残惜しくはありますが、本日はまだまだ先が長いので、いつまでも油を売っていないでボチボチ先へ進みましょう。針ノ木岳からは隣のスバリ岳との鞍部に向かって一度大きく下ります。
スバリ岳への登り返しが、見るからに危なげな岩尾根になっています。このサーキットは、どうやら安心安全な縦走路と言う訳には行かなそうです。
先の事を心配をしていた矢先ですが、このルート最大の核心部と言えるのは針ノ木岳からの下りでした。足元のがグズグズに崩れたトラバースを下ります。というか、ここ本当に怖いんですけれど。
眼下のはるか下に黒部湖が見えます。足を踏み外したが最後、どこまで転げ落ちるか分かったものではないので、特に下りでは注意を要します。
ザレた急斜面をおっかなびっくりと下り切り、ようやくほっと一息付けました。お次のピークであるスバリ岳は、二つの山頂を持つ双耳峰であるようです。
鞍部まで下って来ました。さあて、ここから登り返しはどんな感じでしょうか。引き続き十分に注意して行ってみましょう。
割と急登ではありますが、北アルプスの登山道としてはごく普通の道と言ったところでしょうか。特にキツくも危なくもない感じです。
向かいの針ノ木岳から、いかにも危なげに見えていた辺りを通過します。切れ落ちていてかなりの高度感がありますが、思いのほか足場はしっかりとしていて、ここは特に難しくありません。
繰り返しになりますが、高度感はかなりあります。高所恐怖症の気がある人には、正直オススメはしません。
見上げる岩壁が凄い迫力です。後立山連峰の稜線は基本的に東の信州側が切れ落ちていて、西の富山側はなだらかであることが多いのですが、針ノ木岳とスバリ岳に関しては両方とも切れ落ちています。
2つある山頂の1つ目である小スバリまで登って来ました。最高地点はここではなく、もう1つの大スバリの方です。
振り返って見た針ノ木岳です。山頂直下の崩れ具合と急降下っぷりが良くわかるかと思います。扇沢から往復すると気がつきませんが、思った以上に急峻な山でした。
右手にこの先の稜線が見えましたが、スバリ岳からもまた大きく標高を落としています。なにもそんなに下らなくたっていいじゃないですか。
スバリ岳の山頂もだいぶ崩落が進行しており、足元はザレザレです。申し訳程度に丸太で補強されていましたが、あまり当てにはなりません。針ノ木岳からスバリ岳に至る区間は、かなり危険度が高めであると認識しておいた方が良いです。
8時 スバリ岳に登頂しました。訪問前はただの通り道程度に考えていたピークでしたが、なかなか侮れない防御力の持ち主でした。
スバリ岳とはなんとも不思議な響きのする山名ですが、名前の由来としては、針ノ木沢の深い谷がすぼまった先にあるピークであると事から、窄(すぼり)岳から転じたと言う説が有力です。
針ノ木岳から見た時よりもさらに近くに立山があります。確かに向かいの大観峰駅から見た時に、ちょうど真正面にスバリ岳が見えていたように記憶しています。
振り返ってみた針ノ木岳です。短い距離ながらも、かなり険しい道程であったことが良くわかるかと思います。とにかく針ノ木岳からの下りが危険なので、反対向きに歩いたほうが難易度は若干低くなると思います。
視界の一部を針ノ木岳に阻まれてしまうため、立山以外の眺めに以外に関しては、針ノ木岳よりは一段落ちます。それでも、展望の開けた山であることは間違いありません。
こうして少し引いた位置から見ると、蓮華岳はかなり大柄な山です。麓の大町からも良く見えてかなり目立つ山なのに、人気・知名度共にイマイチ振るわないのは一体何故なのだろうか。
どうせすぐに霞んで見えなくなるだろうと思っていた富士山が、この時間になってもまだ頑張っていました。
蓮華岳の背後に、ひょっこりと浅間山(2,568m)が姿を見せていました。この山は、どこから見ても目立つので見つけやすい。
浅間山から北に向かって上信国境の山並みが伸びており、あの向こう側は関東地方です。雪が多くて寒いからか、なんとなく漠然と長野県は北国であるかのような印象がありますが、実は経度で言うと関東地方と変わりません。
4.フォッサマグナの断層帯に沿って行く赤沢岳への尾根道
さあどんどん進みましょう。この先に乗り越えなければならない大きなピークは、赤沢岳、鳴沢岳および岩小屋沢岳の3つです。当然ながら、名も無き小ピークは他にも多数あります。
またもや見るからに危なそうな地点が一か所ありますが、ひとまずは気にしないことにします。
足元がザレザレだった針ノ木岳からスバリ岳の区間からは打って変わって、鼻歌混じりに歩けそうな幅広で歩きやすい稜線が続いています。そうそう、こういうので良いのですよ。サーキットにエキサイティンな岩稜歩きは求めていません。
振り返ってみたスバリ岳です。やたらとトゲトゲしていて、山頂付近だけを見るとまるで剱岳のような姿をしています。
後立山連峰の稜線では典型的な、長野県側だけが鋭く切れ落ちた非対称山稜になっています。これは稜線の東側がフォッサマグナの大断層となっているためです。
さきほど遠目からも見えていた、件の崩落地点までやって来ました。長野県側が大きく崩れており、完全に垂直の岸壁になっています。
道は今にも崩落に呑み込まれそうな際どい場所にありました。ハイマツの根によって、辛うじて崩れずに持ちこたえているかのような状況です。
足を滑らせたら、途中で止まる望みは極めて薄そうです。一歩一歩足場を確かめながら慎重に通過します。
登山道は富山県側をトラバースしているので気が付きにくいですが、かなりギザギザしている稜線です。断層のフチの上を歩いている訳ですからね。
眼下に針ノ木谷が広がっています。この谷底から大きな比高のスケール感は、アルプスならではと言える光景です。
扇沢駅が見えています。直線距離で言えばそう遠く離れていませんが、北側にぐるっと大回りするので、まだまだ先は長いです。
赤沢岳に向かってゆるゆると登り返します。道自体はとてもゆるやかなのですが、とても10月のものとは思えないくらい強烈な直射日光に晒されて続けており、徐々にバテて来ましたぞ。夏が終わっても、まだ暑さに苦しめられるのか。
このまま最後まで緩く登って行けるのかと思いましたが、そうは行かず山頂直下は岩場になっていました。
ちょっとした岩場では無く、真面目に手も使って三点支持でよじ登る必要があります。メジャーなルートとは違い目印のペンキマーカ―などは無いので、よく周囲を観察しながらルートを探って登ります。
9時55分 赤沢岳に登頂しました。気温が上昇してきたこともあってか、緩やかそうに見えて意外にスタミナを消耗する道程でした。そして実のところ現在地はまだ、中間地点ですらありません。
日帰りで歩いている人が結構いるから騙されそうになりますが、針ノ木サーキットは決して楽なコースではありません。累計標高差が2,500メートルもある時点で、楽なはずがないだろうという話ではありますが。
本日の行程の中で、立山との直線距離が最も近いのは恐らくここです。ただ視界に俯角が効かないため、黒部湖が見えません。針ノ木岳やスバリ岳からの景観と比べて、その点がイマイチです。
山腹にある大観峰駅の建物が良く見えます。こうして谷向かいから見ると、あらためて狂気を感じます。「せや、ここにトンネルを掘って室堂と繋げたろ」と最初に思い付いた人間は、おそらく酒に酔っていたのではなかろうか。
眼下に黒部川が刻んだ大峡谷が鋭く切れ落ちています。この谷底の崖際を削って歩荷道を作ろうと言う発想も、やはり狂っているとしか思えません。黒部ダムの建設にまつわるエピソードは、すべてが狂気じみています。
この先にもまあまあアップダウンがありますが、見たところ危なそうな箇所はなさそうです。実に素敵な稜線ではありませんか。
赤沢岳からも全方位に展望が開けていますが、見える景色にあまり大きな違いはありません。北上してきたことにより、大町の端の方がちらっと見えるようになりました。
針ノ木峠を挟んだ蓮華岳と針ノ木岳です。もう結構な距離を歩いたつもりになっていましたが、まだそれほど進んではいませんでした。
昨夜泊まった針ノ木峠の様子が良く見えます。こうして離れた位置から眺めると、峠直下の急登ぶりと無理やりさ加減が良くわかります。
5.緩やかな尾根道が続く鳴沢岳と岩小屋沢岳
残る主要なピークはあと2つです。だいぶ時間も押してきてしまっているので、ここからは少し先を急ぎましょう。
今日中に東京へ帰り着くためには、扇沢駅を17時5分に立つバスに間に合う必要があります。標準コースタイムを積算していくと、すでにまったく時間に余裕がありません。ちょっとのんびりしすぎました。
お次のピークの鳴沢岳までの区間は、赤沢岳とほとんど標高差がなく水平移動に近い道が続きます。ちょうどこの辺りの真下を関電トンネル(針ノ木隧道)が貫いているはずです。
映画「黒部の太陽」を見たことがある人ならばよくご存知だと思いますが、現在進行形で崩落が続いている断層帯にトンネルを掘るのは、容易なことでありません。
大深度ゆえの異常地圧と、破砕帯からの大量出水にひたすら悩ませられる、世紀の難工事でした。
相変わらず信州側が切れ落ちていますが、それこそ崖際で悪ふざけでもしない限り特に危険ではありません。
11時 鳴沢岳に登頂しました。ここまで歩いて来ると、鹿島槍ヶ岳や五竜岳がだいぶ大きく見えるようになって来ました。それでも、現在地はまだまだ中盤戦なんですよね。やっぱりこのコースきつくない?
大町の市街地が良く見えます。ちなみに手前にある蓮華岳に阻まれるため、麓の町から針ノ木岳の姿は一切見えません。
本当にどうでもいいことですが、大町は市なんですよね。町なのか市なのかはっきりしてほしいのですが。
休憩は取らずにこのまま行動を続行します。最後の主要ピークである岩小屋沢岳が最初から正面に見えています。
楽に歩けたのは鳴沢岳までで、稜線はここから再び険しさを増します。小刻なにアップダウンを繰り返しながら、鞍部に向かって大きく標高を落とします。なにも、そんなに下らなくたっていいじゃないですかー(2度目)。
結構おっかない箇所もあったのですが、何故かこの区間では殆ど写真も撮らずに黙々と下りました。だいぶ疲れが溜まってきているかもしれない。
11時50分 鳴沢岳と岩小屋沢岳との鞍部に立つ、新越山荘まで下って来ました。こちらは種池山荘と冷池山荘と同じグループが運営している山小屋です。すでに今シーズンの営業は終了しており、厳重に小屋閉めされていました。
思いのほか気温が上昇していることもあり、水の残量が少々心許なくなって来ました。種池山荘に辿り着くまでもってくれるだろうか。
下ってしまったからには、当然その後に控えているのは登り返しです。大した登りではないのですが、ここまでの累積疲労もあって、徐々に足が前に出なくなってきました。
山頂のように見えていたのは偽ピークで、本当の山頂はさらに奥にありました。ここにきて、こちらの心をへし折りに来た感があります。
12時40分 岩小屋沢岳に登頂しました。流石に疲労の限界がきたので、ここで一本立てました。ここから先はもう、下り基調となるはずです。
6.種池からの登り返しを経て種池山荘へ
少しは疲れが取れた様な取れていない様な微妙な調子ですが、行動を再開します。
種池山荘の建物が小さく見えています。まだ意外と距離がある上に、手前で結構下っているように見えますが、ひとまずは気にしないことにします。
ここでも変わらずに信州側が切れ落ちており、白い砂地が露出しています。風化した花崗岩のように見えますが、これは蓮華岳にあったのと同様の流紋岩です。
砂地になっていて結構滑るので、横に滑り落ちないように要注意です。何ヵ所か際どい場所もあります。
このまま尾根沿いを忠実に辿るものだと思っていましたが、途中からは尾根筋を外したトラバースになりました。多少遠回りになろうとも、アップダウンが少なくなる分には大歓迎です。
綿毛化した状態のチングルマがポツポツと残っていました。この辺りはあまり陽当たりが良くない場所なので、夏の遅い時期にまで花が咲いていたのでしょう。
小屋に近づいてきたところで、約束されていた絶望が待ち受けていました。なにも、そんなに大きく下らなくたっていいじゃないですかー(3度目)
と泣き言を行ってみたところで、道がそうなっている以上はどうしょうもありません。オラッ、甘ったれな。キリキリ歩け。
下りきった鞍部に、種池山荘という名称の由来である種池があります。そういえば、以前訪問した時に池なんて無いじゃんと思っていたのですが、こんな離れた場所にありましたか。
種池山荘に向かって、今度こそ最後の登り返しです。ここを乗り切れば、後はもう下るだけだ。
登りきると、種池山荘のテント場の脇に飛び出しました。平日と言う事もあってか、利用者は一人もおらず静まり返っていました。
14時5分 だいぶ疲労困憊しましたが、なんとか種池山荘まで辿り着きました。
種池山荘は10月の半ばまで営業しています。売店で無事に不足していた飲料水を補充できました。
スタート地点の針ノ木峠がはるか彼方のように見えます。ここまでよく歩いて来たものだと、感無量の気分です。いやまて。下山が残っている段階で達成感に浸るのはまだ早い。
7.標高差およそ1,000メートルの柏原新道を足早に駆け下る
14時20分 扇沢に向かって下山を開始します。コースタイム的に相変わらずまったく余裕がなく、バスに間に合うには少しばかり足早に下る必要があります。
人気の百名山である鹿島槍ヶ岳へのメジャールートなだけあって、登山道は大変よく整備されています。特にこれと言いた危険個所もなく、およそ新道らしからぬ優等生的な登山道です。
ただそうは言っても、扇沢のある谷底はひたすらに遠い。パラグライダーか何かで一気に下りたいな。
ハイマツしかない稜線上ではほとんど紅葉が見られませんでしたが、ナナカマドが良い感じに紅葉していました。終わり際の段階になって、ようやく秋らしい光景を拝めました。
九十九折れを繰り返しつつ、ひたすらに下り続ける道です。歩きやすい道ではありますが、あまり面白味はありません。言ってみれば、丹沢の大倉尾根の下山の様なものです。
15時55分にケルンを通過します。柏原新道における唯一のチェックポイント的な場所です。いよいよ時間も押してきたので、この先は写真も取らずに下りました。
という事で場面は飛んで、16時45分に柏原新道登山口まで下って来ました。やり切った感に包まれそうになる瞬間ですが、まだゴールではありません。
そう、何故か路線バスはこの柏原新道登山口に停車してくれないのです。ということで、最後に扇沢駅まで歩いて戻る必要があります。さあはたして、17時5分のバスに間に合うのか。
16時55分 扇沢駅まで戻って来ました。バス発車時刻の10分前という、ギリギリの綱渡り状態でした。
インバウンドの外国人でほぼ満車状態のバスに揺られて、信濃大町駅までやってきたきました。バス時間の都合あって往路では新幹線を利用しましたが、帰路は中央線で帰ります。
2日間に渡った縦走登山は晴天に恵まれて大満足のうちに終了しました。針ノ木サーキットを歩いてみた感想は、一言でいうと「思っていたよりもキツかった」です。さも当たり前のように日帰りで周回している人も多くいますが、1日2日の行程で歩くのが妥当なボリューム感のコースあると思います。
眺望が抜群によく、道は変化に富んでいて純粋に歩いて楽しいと感じる良ルートです。難易度的に万人向けであるとは言い難い箇所もありましたが、普段からある程度のロングトレイルを楽しんでいる人には自信を持ってお勧めします。人気エリアの喧騒を避けて、穴場のサーキットコースを訪ねてみては如何でしょうか。
<コースタイム>
針ノ木峠(5:50)-針ノ木岳(6:45~7:05)-スバリ岳(8:00~8:10)-赤沢岳(9:55~10:10)-鳴沢岳(11:00)-新越山荘(11:50)-岩小屋沢岳(12:35~12:50)-種池山荘(14:05~14:20)-ケルン(15:55)-柏原新道登山口(16:45)-扇沢駅(16:55)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント
針ノ木サーキットのご紹介、ありがとうございます。特に富士山を背景にしたテントの写真が素晴らしいですね。来年ぜひ挑戦したいハイキングコースです。