空木岳 ハイマツと白亜の稜線が連なる中央アルプスの女王

駒石付近から見た空木岳山頂
長野県の駒ヶ根市、飯島町、大桑村にまたがる空木岳(うつぎだけ)に登りました。
木曽駒ヶ岳周辺の山に次ぐ、中央アルプスで第2の高峰です。山全体が花崗岩からなる白く輝く美しい山容を持ち、中央アルプスの女王の異名を持ちます。
駒ケ岳ロープウェイの千畳敷から歩く縦走コースが最も人気なコースですが、今回はあえて麓から直接空木岳へと登る、長く険しい池山尾根コースを歩いてきました。

2018年8月27日~28日に旅す。

今回の行き先は中央アルプスの名峰、空木岳です。以前に宝剣岳からこの空木岳へと続く中央アルプスの主稜線を眺めた時以来、これはいつか絶対に歩かなければならない道だと、心に期していました。
宝剣岳から見た空木岳
このルートを歩く際の最も一般的な行程としては、駒ヶ岳ロープウェイで千畳敷カールまで登り、そこから空木岳方面に向かって歩きます。

しかしながら、山に登るのは好きだけれど下山は嫌いという変わり種の私としては、できればロープウェイは登りではなく下りに使用したいところです。
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と言うことで、あえて初日に駒ヶ岳高原スキー場方面から空木岳へ登り、翌日にロープウェイ方面に向かって歩くことを計画しました。ところがまあ、この計画が裏目に出ました。
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山のお天気というのは気まぐれで無情なものです。まったくもって残念なことに、二日目は天候が悪化し、魅惑の中央アルプス主稜線は、ガスと強風に覆われてしまいました。

強風と視界不良の中での稜線歩きなど、楽しくないばかりか危険ですらあります。結局縦走は断念し、空木岳のみのピストンと相成りました。
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若干の不完全燃焼感が漂う山行きではありましたが、空木岳そのものは大変すばらしい山でした。そんな訳で今回は、空木岳池山尾根ピストンの模様をお送りします。

コース
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駒ヶ岳高原スキー場からスタートし、空木岳へ登頂。山頂直下の駒峰ヒュッテで一泊し、翌日は登ってきた道をそのまま引き返しました。

1.空木岳登山 アプローチ編 駒ヶ根市内に前泊し、駒ヶ岳高原スキー場へ

8月26日 18時10分
もはやすっかり恒例のバスタ新宿へとやってまいりました。翌日の朝一から行動を開始するために、本日は駒ヶ根市内に前泊します。
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長野県駒ヶ根市は都内からおよそ4時間ほどと、近くも遠くもない微妙な距離の場所にあります。ゆえに夜行バスが存在しません。

私のような都内在住の公共交通機関頼み人間にとって、南アルプスや中央アルプス、あるいは八ヶ岳などの「夜行で行くほど遠くはないけれど当日の朝発で行くには遠い」距離にある山へのアプローチが、実は一番厄介だったりするのです。

朝一番に登山を開始したければ現地に前泊せざるおえないので、夜行バスで行ける北アルプスや東北の山へより費用が高くつくのです。

天井に装着されたミスト噴射機が湿気をまき散らしていました。涼しくなるという触れ込みですが、まったく効果が感じられません。
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駒ヶ根バスターミナルまでの運賃は3,700円です。中央高速バスは本数も多くとても便利です。
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夜行便があればもっと良いのですがね。談合坂で2時間くらい休憩して時間調整する夜行便とかを走らせてくれないものでしょうか。

ピッタリ予定通りの所要時間で、つつがなく駒ヶ根バスターミナルに到着しました。
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時刻はまだ22時半だというのに、路上にまったく人影がありません。駒ヶ根の夜は早い。
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そして困ったことに、駅前にコンビニが1件もありません。コンビニは駅前でなく国道沿いに集中していました。伊那地方は自動車社会であることが窺えます。
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本日のお宿はこちらです。駅チカで素泊まりで6,000円でした。
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開けて翌朝。宿の目の前から千畳敷カールの姿がよく見えました。お天気は上々です。
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駅前まで行くと、タイミングよく良くタクシーが一台待機していました。中央アルプス登山のメイン玄関とでもいう立地だけあって、早朝時間帯であってもタクシーは居てくれるようです。
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タクシーで標高1360メートル地点の池山林道終点まで入りたかったのですが、なんでもゲリラ豪雨の影響で未舗装の林道は路面が荒れており、最低地上高の高い車でないと侵入は難しいとのこと。

通行止めになっているわけではなく、行こうと思えば行けないこともないのだろうけどねえと、何やら煮え切らない態度です。ようするに、行きたくないということなのでしょう。

仕方がないので、手前の駒ヶ根スキー場駐車場まで行ってもらうことにしました。

6時20分 駒ヶ根スキー場駐車場に到着です。ここまでのタクシー代は2,100円でした。
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スタート予定地点が変更となったことにより、標高差およそ450メートル、コースタイムにして2時間がプラスされたことになります。なんと幸先の悪いスタートなのでしょう。

ちなみに、現在地の駒ヶ根スキー場は標高920メートルです。空木岳の標高は2,864メートルあり、山頂までの標高差は実に1,900メートルオーバーです。これはなかなか厳しい登山になりそうです。

2.灼熱地獄の樹林帯が続く池山尾根

軽く腹ごしらえと身支度を済ませて、6時20分に登山開始です。まずはゲレンデと並走するように登ってゆきます。
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駒ヶ根スキー場登山口までやって来ました。登山届の投函ポストがありますが、用紙や筆記用具の備え付けはありません。ここから登る場合は、あらかじめ用意してきてください。
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登り始めてからしばらくは、まるで奥多摩のような杉の人工林が続きます。この辺りはまだ、標高で言っても奥多摩と同じくらいですからねえ。
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わざわざ長野の山奥まで出張ってまで、奥多摩みたいな道を歩かされるとは。アルプスならではな高山帯の光景が広がる稜線までは、まだまだ遠い道のりです。

単調な道を登る登山者の無聊を慰めるかのように、あしもとにホトトギスの花が咲いていました。
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途中で池山林道と何度か交差します。未舗装の道ではありますが、言うほど荒れてはいないような?まあ、場所にもよるんでしょうけれど。
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登山道は緩やかに蛇行しながら徐々に高度を上げる林道の中央を突っ切るように、一直線に高度を上げて行きます。まだ登山を開始して間もないというのに、はやくも全身が汗でズブ濡れ状態です。
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途中に三本木地蔵という、山と高原地図には記載の無い休憩ポイントがありました。
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これがそのお地蔵さんでしょうか。周囲には遭難者の慰霊碑が並んでいました。
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7時40分 池山林道終点まで登って来ました。これでようやく当初予定のスタート地点に降り立てたと言う訳です。駐車場はこの時間にはすでに満車でした。
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見晴らしのよさそうな東屋があったので、ひとまずはここで休憩です。
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伊那谷を挟んだ向かいに南アルプスの主稜線が連なります。
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南アルプス北部を名前入りで。
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こちらは南側。南アルプス深南部という言葉の響きには、ある種の畏敬の念を感じます。
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南アルプス南部へはずっと行ってみたいと思いつつも、なかなか時間を取れずにいます。車のない人間にとって、この辺り一帯はアプローチ自体が非常に困難なのですよ。

8時ちょうどに、池山林道登山口よりスタートを切ります。
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ここまでの急坂から一転、傾斜の緩い歩きやすい道になりました。時間の経過とともに急速に気温が上昇しつつあり、緩い登りであるにもかかわらず、先ほどから汗が止まりません。
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天気予報によると、本日の伊那市地方は気温36度超え猛暑日になるとのことです。干物になりたくなければ、一刻も早く気温が低く快適な稜線へと逃げ延びねばなりません。

20分ほどの登ったところで、鷹打場とよばれる分岐地点へ到達しました。昔ここで鷹狩でもしていたのでしょうか。
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鷹打場は4差路となっています。右へ進むと池山の山頂経由で、左へ進むと山頂を巻くようです。今日はまだまだ先が長いので、ここは巻きます。
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周囲の植生が変わってカラマツ林になりました。日差しが道まで差し込むようになり、明るくなって実に気持ち良い。と言いたい所ではありますが、とにかく暑い。暑すぎる。
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このカラマツの木に掛かったとろろ昆布のような物体は、サルオガセという名のコケの一種です。雨や霧などの水滴を糧にして生きているそうです。なんと言う不思議な生き物なのでしょう。
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しばらく進むと沢の音が聞こえ始め、やがて水場と書かれた分岐が出現します。
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実はここで川べりまで下らずとも、この先の池山分岐まで行けば水場があります。しかし、そのことを知らなかった私は、この先の水を確保しようと沢まで下ってしまいました。

分岐から下草を刈っただけの悪路を5分ほど歩くと、沢の辺にたどり着きました。早速汗まみれだった顔をザブザブ洗います。冷たくて気持ちが良い。
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翌日には途中で水を一切補充できない稜線を歩くつもりでいたので、ここで翌日の分を含めて合計4Lを調達しました。ズシリと重くなったザックに思わずため息がこぼれます。

苔生す沢の周囲には、ひんやりと冷たい空気が漂っていました。ここまでの道中で、どうしようかと思うくらい汗だくになっておりましたが、クールダウンして人心地つくことができました。
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9時15分 水場から登山道へ戻り少し登ったところで、ほどなく池山分岐にたどり着きました。
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そして何のことはない、ここにも水場があります。先ほどの沢から黒いゴム製のパイプがずっとつながっていたので、沢から組みあげているのでしょう。
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池山尾根コースで水をとれる場所は、ここが最後になります。この先にある駒峰ヒュッテや木曽殿山荘には水場がありませんので、必要な分はここで確保しましょう。

池山分岐を過ぎると、また少し道の斜度が増して来ました。
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またも植生が変わって、今度は深いコメツガ林の中を進みます。ようやく高山らしい雰囲気になって来ました。
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ほんのりと紅葉の色づきが始まりつつありました。
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9時55分に尻無と呼ばれる地点を通過します。まったく困りますな。私の大事なケツを無くされては。
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登山道は徐々に険しさを増して行きます。やはり標高差1,900メートルというのは、一筋縄では行きませんな。
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花崗岩の露出した地面が目につき始まました。空木岳を含む中央アルプスの主稜線は、そのほとんどが花崗岩でできています。
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これは個人的な見解ですが、花崗岩の山に外れはありません。有名どころで言えば甲斐駒ヶ岳鳳凰三山燕岳などが花崗岩でできた山です。何れも甲乙つけがたい、白亜に輝く美しい山々でした。

池山尾根もいよいよ中盤戦に差し掛かったという辺りから、迷い尾根と呼ばれるヤセ尾根の続く一帯にはいります。
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痩せているとは言っても、ナイフリッジというほど極端に痩せているわけではありません。安全に通行できるだけの道幅は常にキープされています。
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ワイヤーが張られているような場所もあります。ここは特段、掴まなくてまなくても通行可能です。
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掴みたいのであらば、グローブを装着した方が無難です。素手でワイヤーを握るのは色々危険です。

全般的に登山道はとても丁寧に整備されています。さすがは人気の百名山といった所でしょうか。
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鉄のハシゴや鎖場がしばらくの間続きますが、特に怖いと感じるような場所は存在しませんでした。
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ここで始めて宝剣岳(2,931m)が姿を現しました。明日はあそこまで歩くんだと、少なくともこの時はまだそう思っておりました。
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前方に立ちはだかるのはヨネ沢の頭という名の小ピークです。直登はせずに左から回り込みます。
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この辺り一帯はトリカブトの花が満開で、なんと言うかトリカブト畑状態でした。美しい花には毒があるものなのです。
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背後には南アルプスの主稜線。少し雲が出てきましたね。
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こちらは八ヶ岳です。こちらもまもなくガスに没しそうですな。
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危険地帯終わり!
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ヨネ沢の頭を過ぎると、しばしの間平穏な時が訪れます。ここまでずっと登りっぱなしで、さすがに少々バテて来ました。
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ここでも小さい秋を見つけた。
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樹木の隙間からしばし姿を見せる宝剣岳に励まされながら、樹林帯の中を登ってゆきます。森林限界はまだなのか。
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ようやく背後の視界が開けてきました。
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3.空木岳登山 登頂編 ハイマツの稜線を超えて白亜の頂へ

13時 避難小屋分岐にたどり着きました。右へ進むと尾根筋。左にりに進むと谷筋で、途中に避難小屋があります。ここは、展望の良い尾根筋を選びました。
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ようやく空木岳山頂がお目見えです。まだまだ遠いいですねえ。もうすっかりバテバテなのですが。。
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眼下に避難小屋の屋根が見えました。空木平と呼ばれる場所です。雪渓が残っている季節であれば、あの小屋の近くで水が取れる場所があるらしいです。8月下旬ともなると、さすがにもう枯れてしまっているでしょうけれど。
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ようやく森林限界を超え、気持ちの良いハイマツの稜線が広がります。
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テンション上がりまくりですが、足取りは重いままです。水を満載したの荷物の重みが、ボディーブローのようにじわじわと効いています。

ナナカマドが真っ赤に身をつけていました。紅葉シーズンに訪れれば、きっと素敵な光景が広がることでしょう。
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稜線の向こうに見えているのは、南駒ケ岳かな。大分ガスってきましたね。
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駒岩という名の巨大な花崗岩が稜線上に鎮座していました。この写真だと大きさが全然わからないですね。比較対象物を脇に置くべきだったか。
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ここから山頂までのコースタイムは35分ほどですが、疲労で完全に足が止まってしまいました。もう一息なのですが小休止します。
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駒岩と駒ヶ根の市街地。
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宝剣岳へと続く中央アルプスの主稜線が姿を見せます。明日歩くのが楽しみだ、とこの時は思っておりました。(しつこい)
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さあ、山頂に向かってラストスパートです。
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ようやく本日のお宿、駒峰ヒュッテが見えてきました。本当に山頂のすぐ下に立っておりますな。。
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小屋の周囲では、ホシガラスがやけにたくさん飛び回っていました。
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これが噂に聞く、駒峰ヒュッテ自慢のテラスか。確かに素晴らしいロケーションです。
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14時15分 駒峰ヒュッテに到着しました。
地元の山岳会が運営する小さな自炊小屋です。宿泊するのに、事前の予約は必要ありません。収容人数は20人程とのこと。
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こちらが駒峰ヒュッテのメニュー表です。シュラフ持参の素泊まりであれば3,500円で宿泊できます。
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ヘリの荷揚げは1シーズンに1回しか行わないため、夏が終わるころには飲み物が売り切れになっていることもあるそうです。また、8月いっぱいまでは平日であっても小屋番が入りますが、9月以降は土日のみになるとのこと。

一番乗りということで、窓際のスペースを確保しました。最終的に、この日の宿泊者数は10人位でした。
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荷物を小屋に下ろし、身軽になったところで山頂へ向かいます。なんだかすっかりガスってしまいましたね。
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ガスの向こうにうっすらと太陽が見えました。黒点の観測ができそう。
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14時45分 空木岳に登頂しました。
駒ケ根高原スキー場を出発してから、実に8時間15分もかけての登頂です。いやはや、標高差1,900メートルはさすがにキツかった。
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山頂の様子。
花崗岩の露出する、白い砂に覆われた山頂です。周囲には360度のパノラマが広がります。ガスっていなければね。
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4.空木岳山頂からの展望

眼下には、ここまで登ってきた池山尾根の全貌が見渡せます。こうして見ると結構な距離を歩いてきたものです。
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前方には伊那谷を挟んだ向かいに南アルプスの主稜線と八ヶ岳を一望できます。曇っていなければ。
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眼下には駒ヶ根の市街地が広がります。北アルプスや南アルプスの奥深い山々に比べると、中央アルプスの主稜線は比較的人里から近い場所にあるのが良くわかります。
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これは伊那市の市街かな。
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こちらは南駒ケ岳(2,841m)へと続く稜線です。木曽側からもくもくと雲が立ち上っており、1時間近く粘りましたが、最後まで晴れることはありませんでした。
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木曽駒ヶ岳方面へと続く中央アルプスの主稜線もすっかりガスの中です。残念過ぎてカメラを向けすらしなかったらしく、写真が一枚も残っておりませんでした。

伊那方面だけがかろうじて晴れている状態です。もう少し雲が上がって視界が晴れてくれるのではないかと期待しましたが、駄目でした。
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ガスがちっとも取れない上に、風が出てきて寒くなってきました。あきらめて小屋へと引き上げます。
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駒峰ヒュッテは昔ながらのアルコールランプの宿です。小屋内に電灯はなく、夕方以降にははもう真っ暗です。ということで自前の照明で夕食を取ります。
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とりあえず液体の入ったペットボトルとライトがあれば、LEDランタンは必要ないということを最近学びました。こうやって、徐々に山へ持ち込む装備品は最適化されて行くのです。

少しうたた寝をして、暗くなったところで星空撮影会をしようと待ち構えておりましたが、夜になっても小屋の周囲は濃厚なガスに巻かれたたままでした。
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町の光が僅かに見えるくらいで、空は全く見えずです。がっかりして2度寝します。

その後の真夜中にふと目を覚ますと、窓から眩い月明かりが小屋の中に差し込んでいるのが目に入りました。いつのまにか晴れている!

慌てて小屋の外に出ると、空には満月が煌々と輝いていました。と言うことで、これは月明かりに照らされた空木岳です。
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月の明さで星空に関しては少々残念な感じでしたが、これはこれで幻想的な光景です。

こちらはテラスから見た中央アルプスの主稜線です。実際はここまで明るくはありませんでしたが、少し露出を上げています。
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最後に伊那谷の夜景を。月明かりに起されたおかげで、素晴らしい光景を目にすることができました。ありがとう満月!
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5.空木岳登山 下山編 行きと同様の池山尾根コースを下る

開けて8月28日。5時20分。
おはようございます。今日はこの通りとっても良いお天気です。
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それではここで本日の絵に描いた餅、すなわち画餅プランをご紹介しましょう。

まずは5時に空木岳山頂にてご来光を拝み、「中央アルプスの夜明けぜよ」と呟く。続いて中央アルプスの主稜線を縦走し、正午12時になる前に駒ヶ岳ロープウェイに到着する。

その後はロープウェイで楽々下山し、こまくさの湯で汗を流し、駒ヶ根名物のソースカツ丼を食べてから帰る。うむ、完璧すぎるプランだ。

とまあ、この期に及んでまだ未練たらたらではありましたが、天候の悪化により縦走は中止します。正午前に雨が降り出すとの予報だったので、足早に下山を開始します。
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ガスの中に佇む駒岩。これはこれで幻想的と言えなくもないか。
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先ほどより左側から吹き付けるつける強風で、メガネが片側だけ曇って視界不良です。早く樹林帯に逃げ込みたい。

標高が下がってきた所で、すこしガスが晴れて薄っすらと太陽が顔を見せました。ようやく中央アルプスの夜明か。
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6時5分 避難小屋分岐まで下りて来ました。吹き曝しの稜線を抜けたことにより、ようやく人心地付けました。すごい強風だった・・・
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分厚い雲に覆われているのは山頂付近だけらしく、麓の方は晴れていました。雲間から差し込む日の光が神々しい雰囲気を醸し出しています。
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横から見ると、見事に標高の高いところだけがすっぽり雲に覆われておりますねえ。縦走を強行したら、それはそれは酷い目にあっていたことでしょう。・・そう思うことで僅かに悔しさを紛らせます。
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鎖場は当然ながら登りよりも下りの方が怖いです。と言ってもまあ、特段難しいと言うほどではありません。ただストックは邪魔なので、迷い尾根を抜けるまではしまっておいた方が良いかと思います。
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紛らわしいところには、このようにしっかりと通行止めがされています。これだけ丁寧整備されていれば、さすがに迷う人はいないでしょう。
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8時40分 快調に飛ばして池山分岐まで下って来ました。崩れるという天気予報が出ているにも関わらず、ここまで結構な数の登ってくる人に出くわしたのが少々意外でした。
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ここで残っていたシャリをすべて胃袋に収めて気合を入れます。

その後は写真も撮らずに黙々と下り続け、池山林道終点まで下って来ました。なにやらもうゴールした感でいっぱいになってしまいそうですが、残念ながらまだまだ終わりじゃないんです。
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ここからさらに、標準コースタイムで2時間の下りが残っております。もうお腹いっぱいな気分ですが、泣き言を言っても歩かないことには帰れません。甘ったれんなキリキリ歩け。
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この後も無我の境地で下り続けます。ロープウェイで楽々下山するはずだったのに、ぐぬぬぬぬ。
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脚の乳酸の蓄積量が限界近くに達したころになって、ようやくゴールが見えました。長かった。
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10時25分
昨日のスタート地点である駒ヶ根スキー場まで下って来ました。何とか雨が降り出す前に間に合ったようで、ほっとひと安心です。
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まあ、まだゴールではないのですけれどね。このまま菅ノ台方面へ下り、日帰り入浴施設のこまくさの湯を目指します。
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中央アルプスの主稜線が見事に雲に覆われてるのが見えました。これでもしピーカン照りだった日には、ショックで立ち直れなくなるところでした。
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舗装道路を道なりに進むと、ほどなく菅ノ台にたどり着きます。
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菅ノ台には駐車場があり、車で中央アルプス方面へお越しの人は、ここからバスに乗り換えてロープウェイ山麓駅へ向かうことになります。要するにここは、北のアルプスの沢渡や南アルプスの芦安に相当する場所です。

目指すこまくさの湯は菅ノ台から少しばかり離れた場所にあります。ロープウェイ方面に向かって坂を上って行きます。
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10時40分 今度こそ本日のゴール地点である、こまくさの湯に到着です。狙いすましたかのように、到着とほぼ同時に雨粒が落ち始めました。まさに滑り込みセーフです。
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入浴料は610円と、この手の施設にしては比較的リーズナブルです。アルカリ性のぬるめのお湯です。ゆっくりと浸かりたい人には良いのではないでしょうか。

こまくさの湯から駒ヶ根駅へは、30分に一本の頻度でバスが通っています。到着したバスは登山者を溢れんばかりに満載していましたが、8割以上の乗客は菅ノ台で下車しました。
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駒ヶ根駅前で電車を待つ間にソースカツ丼を頂きます。これで「中央アルプスの主稜線を縦走する」以外の絵に描いた餅は、すべて回収できました。
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縦走こそがメインディッシュであったと言う事実は変わりませんがね。ぐぎぎぎぎ。

その後は岡谷駅から、いつもの特急あずさに乗り込み帰宅の途につきました。
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ということで2泊3日の中央アルプス縦走計画は、蓋を開けてみればただの空木岳登山になってしまいました。
これは後知恵というか完全に結果論なのですが、「ロープウェイで楽に下山したい」などというしょうもない理由でルートを決定したことが仇となりました。初日にロープウェイで上がって空木岳を目指していれば、目標は完遂できていたでしょうから。
今ボヤいても始まりませんし、山は決して逃げないので、どうせなら越百山まで縦走したいという大いなる野望と共に、中央アルプス縦走は宿題として取っておこうかと思います。
色々と未練の残る山行きではありましたが、空木岳自体は大変すばらしい山でした。この山は単体であっても十分に訪れるだけの魅力がある山です。里から近く、南北アルプスとはまた違った中央アルプスならではの独特の雰囲気を存分に味わうことが出来ます。
池山尾根ピストンはそれなりに長丁場で厳しい行程です。日帰りで登る剛脚の人も居るようですが、一泊の行程で登るのが最も無難であろうかと思います。

<コースタイム>

一日目
駒ヶ根スキー場駐車場(6:30)-池山林道終点(7:40~8:00)-池山分岐(9:15)-避難小屋分岐(13:00)-駒峰ヒュッテ(14:15~14:45)-空木岳(14:55)

二日目
駒峰ヒュッテ(5:20)-避難小屋分岐(6:05)-池山分岐(8:40)-池山林道終点(9:25~9:45)-駒ヶ根スキー場駐車場(10:25)-こまくさの湯(10:40)

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント

  1. cozy303 より:

    こんにちは
    以前もコメントさせていただいた者です。 約2000mの登り降り、お疲れ様でした。
    当初計画の断念はさぞや悔しかったこととお察しします。
    (歯軋りの音が聞こえてくるようです)
    しかしまぁ、展望なく風が吹きすさぶ中を歩いても面白くもないですものね。
    ご英断だったと思います。
    中央アルプスは私には未踏の地ですが、俄然興味が湧いてきました。
    いずれ訪れてみたいと思います。
    今後とも楽しいレポートを楽しみにしています。

  2. オオツキ より:

    Cozy様
    コメントを頂きましてありがとうございます。
    おっしゃる通り、歯ぎしりしながら書きました。
    中央アルプスはその名の通りアルプスの”中央”に立地しているので、周囲の眺望で言えば最高のロケーションにあると言えます。(晴れていればですが。。)
    南北アルプスに比べて地味な存在とみなされがちですが、興味を持つきっかけになれたのであれば幸いです。
    またのご訪問をお持ちしております。