磐梯山 表と裏でまったく異なる顔を見せる山を縦断する

噴気孔分岐から見た磐梯山の山頂
福島県猪苗代町、磐梯町、北塩原村にまたがる磐梯山に登りました。
猪苗代湖の湖畔に立ち、会津地方を象徴するシンボリックな山です。猪苗代湖側から見た時には、均整の取れた美しい山容を持つ山ですが、裏磐梯と呼ばれる北側の斜面には、明治21年におきた大規模な水蒸気爆発と山体崩壊の生々しい痕跡が残されています。
猪苗代登山口から裏磐梯スキー場へ、全く異質な姿を見せる表と裏を縦断してきました。

2020年8月2日に旅す。

磐梯山は別名で会津富士とも呼ばれ、会津地方を代表する象徴的な山です。しかし、この均整の取れた姿は、この山がもつ表の顔に過ぎません。
猪苗代駅から見た磐梯山

裏磐梯と呼ばれる北側に回りこむと、この山の表情は表とは全くの異質なものとなります。
裏磐梯の火口壁
明治21年、この山の北側斜面で大規模な水蒸気爆発が発生しました。この爆発によって山体崩壊が発生し、大量の土砂が麓の集落を押し流しました。この空前の大災害による犠牲者の数は、477人にも及びます。

現在では裏磐梯と呼ばれて観光地となっているこの地域に数多く存在する湖沼群は、この時に流入した土砂により河川が堰き止められて形成されたものです。

今回は磐梯山の表側である苗代登山口よりスタートし、裏磐梯方面へと抜ける縦断コースを歩いて来ました。
猪苗代スキー場の駐車場

コース
磐梯山のコースマップ
猪苗代登山口よりスタートし、赤埴山(あかはにやま)を経由して磐梯山に登頂します。下山は山崩れの跡地である火口原を通って、裏磐梯高原駅バス停まで歩きます。

磐梯山を南北に縦断する行程です。

1.磐梯山登山 アプローチ編 新幹線と在来線を乗り継ぎ猪苗代町へ

6時32分 JR東京駅
磐梯山は、都内発であっても公共交通機関による日帰り登山がギリギリ可能な圏内にある山です。まずは東北新幹線で、郡山(こおりやま)駅を目指します。
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遠い場所なので、運賃はそれなりにかかります。

8時20分 郡山駅に到着しました。郡山とは何気に難読な地名だと思うのは私だけでしょうか。どう見ても「ぐんやま」です。
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郡山駅で磐越西線の会津若松行きに乗り換えます。乗り換え時間にあまり余裕がないので、トイレは事前に済ませていた方が良いでしょ言う。猪苗代駅まで所要時間はおよそ40分程です。
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9時9分 猪苗代駅に到着しました。地方の鉄道に乗るときには、のんびりと車掌風景を眺めて旅情に浸りたいものですが、気が付いたら寝落ちしていて危うく乗り過ごすところでした。
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もっとも、間にある森に視界を阻まれてしまうため、車窓からは猪苗代湖の姿は一切見えませんがね。

猪苗代町の名物はと言えば、磐梯山と猪苗代湖。そして野口英世です。生家が猪苗代町にあります。
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野口英世先生の事は、私も常日頃から大変尊敬しております。しかし、福沢諭吉先生の事をより尊敬しています。具体的に言うと10倍くらいには。

さて、これから目指す磐梯山はこの通り駅前からも良く見え・・・ませんな。山頂部が雲に包まれています。これは前回訪問時とまったく同じパターンです。
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猪苗代湖の上空にある湿った空気がちょうど山肌にぶつかる位置関係にあるため、磐梯山の天気と言うのは、だいたいいつもこんな感じであることが多いそうです。

登山口がある猪苗代スキー場へ乗り入れている、路線バスなどの公共交通機関は存在しません。駅からはタクシーを利用することになります。
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特に事前予約などしていなくとも、電車の到着に合わせて駅前には流しのタクシーが何台か待機していました。まあ、観光地ですからね。

9時22分 猪苗代スキー場に到着しました。たしか運賃は1500円にいくかいかないかくらいだったと記憶しています。駅からは4キロ少々なので、その気になれば歩けないことも無い距離です。
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もっとも、ただでさえ遅めの登山開始時間がさらに遅くなってしまうため、素直にタクシーを利用した方が良いとは思いますが。

スキー場からは、猪苗代湖の姿が良く見えました。今のところ曇っているいのは山頂だけで、下界は至って快晴です。
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2.磐梯山の山頂を目の間に望む、好展望地の赤埴山~しかし山頂は見えなかった

9時35分 身支度を整えて登山を開始します。登山道はゲレンデの左端にそって続いています。
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地元のサッカーチームが合宿中でした。こんな確実にボールが転がって行ってしまうであろう斜面で、一体何の練習をしているのでしょうか。体力トレーニング?
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左端のゲレンデの真ん中を上って行きます。前方に文字通り暗雲が垂れ込めているせいか、いまいちテンションが上がりません。
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この猪苗代コースは、表側の登山道の中では最も眺めが良いとコースであると言うことだったのですが、この調子ではそれを体験することができそうにはありませんな。

振り返ると背後は晴天です。その天気の良さを磐梯山にも分けてあげて。
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恐らくですが、曇っているのは猪苗代湖上空の湿った空気のぶつかる山頂付近だけで、裏磐梯側は晴れているだろうという予感めいたものがありました。前回の訪問時もそうでしたからね。

リフトの上部までの登って来ました。この先はゲレンデの中央には向かわず、ここからさらに左へ大きく回り込みます。
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もともとは林間コースだと思われる場所を、ぐるりと大きく迂回しながら登ります。
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ススキの穂が実りつつありました。まだ夏らしい夏をほとんど過ごしてもいないと言うのに、東北の山は既に秋へと向かいつつありました。
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回り込んできたところで、ふたたび左折してゲレンデの左端を登ります。登山道は、基本的に最初から最後までずっとゲレンデの左端を登り続けるイメージです。
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頭上を覆う雲との比高が、徐々に詰まって来ました。ガスの中へと飛び込む未来が、すでに約束されてしまっている状態です。
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背後に猪苗代湖の全容が見えました。本当は山頂からこの湖の姿を眺めたかったのですが、どうもその願いはかないそうにはありません。
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ゲレンデの最上部まで登って来ました。最後の方は結構な傾斜度でした。左端は上級コースなのかな。
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向かいにあるはずの安達太良山(1,718m)の姿も、雲に覆われて見えません。
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眼下にゲレンデの全容が見えました。湖に向かって滑走するこの光景は、まさしく猪苗代スキー場という名称通りの場所ですね。
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猪苗代スキー場のゲレンデ歩きはここまでで終了です。ここからようやく登山道が始まります。
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始めからいきなりの急坂です。足元は泥で滑りやすく、登りはともかく下る際には神経を使いそうな道です。
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急坂は長くは続かず、すぐいかにも東北の山らしい灌木帯の中に入りました。辺りを満たす冷たい空気が心地よい。
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アザミに器用に掴まるカラスアゲハ。彼らはチクチクしたりはしないのでしょうか。
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本日のベストオブきのこ。猪苗代湖から常に湿った空気が吹き付けるこの森の中は、コケや菌類にとって楽園です。
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ここで頭上に青空が顔を覗かせ始めました。一見濃厚なように見えて、実は厚みの無い薄雲なのかな。
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背後の方も、何となく晴れそうな気配です。これは、期待してしまって良いのでしょうか。
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これはミヤマシャジンかな。登山道脇のあちこちに咲いていました。
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赤埴山との分岐まで登って来ました。巻き道もありますが、所要時間に大した違いはないし、磐梯山の山頂を望む好展望地であるという事なので、立ち寄って行きます。
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赤埴山には、赤みを帯びた溶岩の散乱する、いかにも火山らしい光景が広がっていました。
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背後の猪苗代湖は、相変わらず雲の下に隠れたままです。
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取れそうで取れないしつこいガスに絡みつかれた磐梯山の山頂が、すぐ隣にありました。こちらからは直登できないので、この後右側から大きく回り込んで行きます。
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11時35分 赤埴山に登頂いしました。頭上に広がりかけていた青空は、再びガスの前に屈してしまいました。残念。
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磐梯山の山頂もこの通りすっぽりと覆わています。ガスが取れる瞬間が無いものかとしばらく粘りましたが、結局晴れることはありませんでした。
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3.沼ノ平の湿原を通り、火口壁の稜線へ

11時55分 諦めてボチボチ全身を再開します。赤埴山からは一旦下りです。
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赤埴山の足元には、沼ノ平と呼ばれる湿地帯が広がっています。特に散策用の木道などは整備されていないので、近くで見ることは出来ません。
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12時5分 巻き道との合流地点まで下って来ました。このあと暫しの間、高低差のほとんどない水平移動が続きます。
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頭上だけが晴れて、登山道上に陽が差し込み始めました。直射日光を浴びたことにより、一気に体感温度が上昇して大粒の汗が吹き出します。
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この巨石は、かつて噴火があった際の噴石なのでしょうか。こんなのが飛んできた日にはもう、逃げようもありませんな。
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山頂の直下に広がるこの一見草原のようにも見える空間は、すべて湿原です。なおロープでガードされているため、中へは入れません。
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湿原から流れ出すこの茶色く濁った水からは、ほのかな硫化水素臭がしました。火山性物質が溶け込んでいるのでしょう。
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渋谷登山口からのルートと合流します。平野の只中にある磐梯山には、実に数多く多様な登山コースの選択肢があります。
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前方に櫛ヶ峰が見えて来ました。このピークは、明治21年の噴火の際に形成された火口壁の片割れです。
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火口壁に向かって登りが始まりました。ここで森林限界を超えて、周囲の展望が開けます。
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背後に、たった今通り抜けてきた沼ノ平が一望できました。近くには行けないので気が付きませんでしたが、こんなに大きな池があったのですね。
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前方に稜線が見えて来ました。あそこが火口壁のフチです。
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ここまで来て、初めて裏磐梯方面の展望が開けました。正面に見えている大きな湖は檜原湖です。火山噴火による堰止湖としては、日本最大の面積を持つ湖です。
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足元は断崖絶壁です。かつての水蒸気爆発による山体崩壊の痕跡です。この空間を埋めていたはずの岩や土がすべて流れ出した訳ですから、尋常ならざる量の土砂であったことでしょう。
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ここで歩荷中の弘法清水小屋のご主人が通りかかり、少し雑談をしました。この乗っかっているような岩は、3年前からずっとこの状態で、落ちそうでなかなか落ちないのだとか。
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4.磐梯山登山 登頂編 異様な数のトンボが乱舞する頂へ

山頂へ向かいましょう。頂上部は相も変わらず雲に包まれていました。
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この火口壁上部の一帯にも小川が流れ、お花畑が広がっていました。こんな半分かけているような山体の一体どこに、これほどの保水力があるのでしょうか。実に不思議です。
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花の最盛期はもうとっくに過ぎてしまっている時期ですが、それでもまだ多くの花が残ってくれていました。これは定番のタカネナデシコです。
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この黄色い花はキオンかな。黄色の花は全般的に識別が難しい気がします。
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お花畑を進むうちに、やがて頂上直下の小屋が見えて来ました。
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13時15分 弘法清水小屋に到着しました。この小屋は売店兼休憩所で、宿泊は出来ません。
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またトイレはありませんが、携帯トイレの使用ブースがあります。
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小屋脇には、名前の由来ともなっている水場があります。山頂近くの場所にある事を考えると、驚くほどの水量です。この山のどこにこれだけの保水力があるのか、本当に不思議です。
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ちなみにこの弘法清水は磐梯山の4合目で、5合目が山頂になります。磐梯山の標高は富士山のおよそ半分の1,819メートルしかないため、それにちなんで、あえて10号目ではなく5合目までにしたのだそうです。

さあ、山頂まではもうあと一息です。気合を入れて行きましょう。
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弘法清水からサクッと往復してしまいたいところではありますが、残念ながらサクッと登れるほどには近くはありません。意外と高低差のある登りです。
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片側が切れ落ちら場所を登ります。この真下には、先ほど通り抜けてきた沼ノ平が広がっているはずですが、ガスに覆われてい全く見えません。
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小屋を出てから25分ほど登り続けたところで、ようやく頂上が見えました。
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山頂はかつて見たことのないような密度の、トンボの大群に占拠されていました。歩いているだけで、常時体に数匹が激突してくるような状態です。
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13時40分 磐梯山に登頂しました。結局この雲は、最後まで取れてはくれませんでしたか。
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なお山頂標識は、最高地点よりも少し下がった場所にあります。
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お隣の猫魔ヶ岳(1,403m)が薄っすらと見えました。お隣と言うか、この山は広義には磐梯山の一部です。
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この猫魔ヶ岳の裏手に、ニッコウキスゲの群生地として名高い雄国沼湿原があります。一度行ってみたいと思いつつ、未だ訪問が叶っていない場所です。

ニッコウキスゲのシーズンは梅雨と被っているため、なかなか次都合よく週末と晴天が重なってはくれないのですよ。

ほんの一瞬でしたが、ガスが取れて猪苗代湖の端の方だけが姿を見せてくれました。
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山頂から湖の全容を見下ろすと言う訳にはいきませんでしたが、まあ少しでも見えただけよかったという事にしておきましょう。

会津盆地もチラ見え。この山が会津地方のシンボルとされる所以が良くわかる光景なのではないでしょうか。
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5.山体崩壊の生々しき痕跡がのこる火口壁

14時5分 山頂を辞去して下山を開始します。下山は元来た道を途中まで引き返して、裏磐梯方面へと下ります。
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眼下に小屋のような人工物がみえます。かつて山中にあった中ノ湯と言う名の温泉施設の跡です。源泉は今でも生きているらしいのですが。
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彼ほど濃厚だった雲が取れて、眼下に沼ノ平の全容が見えました。
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これは往路に越えてきた赤埴山です。できればあそこに居た時に、今の状態になってくれれば良かったのですが。
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14時25分 弘法清水小屋まで戻って来ました。ここからさらに、櫛ヶ峰の手前まで引き返します。
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頭上には見事な青空が広がりつつありました。本日の天気は上り調子だったようで。
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午後には夕立になる事の多い夏山では、早出するのが基本ではありますが、たまにこうして午後から晴れだしたりするからやっかいです。

沼ノ平の上空も見事な晴れ間です。青空の色を映した湖面が、美しく輝いていました。
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往路に登って来た猪苗代登山口方面への分岐を見送り、火口原方面へと歩みを進めます。なお、これから私が下ろうとしているのは、破線扱いのルートとなります。
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火口壁と呼ばれる、山崩れ跡の崖地が連なっているのが良く見えます。月並みな感想ですが、「地球はすげえ」としかコメントのしようがない光景です。
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前方に櫛ヶ峰が迫って来ました。この山へと至る登山道は、崩壊が著しいため通行止めとなっています。登ること自体は可能らしいですが、頂上付近はかなり怖いことになっているようです。
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振り返って見た磐梯山の山頂は、いつの間にかすっかりと晴れていました。
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この時間まで粘れば、猪苗代湖を一望することが出来たのかもしれませんが、それだと今度は帰りの時間を心配しなくてはならなくなってしまいますからねえ。

眼下に広がるこのすり鉢の底のような一帯が、これから下る火口原と呼ばれる場所です。
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これは銅沼です。火山性物質が溶け込んでいる影響で強酸性の湖水となっており、金属が溶け込んで赤茶けた色をしているのがその名前の由来です。
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そして檜原湖。堰き止め湖であるため、大きさのわりに水深はさほど深くありません。渇水期になると、湖の底に沈んでしまったかつての集落の跡が見えることもあるそうです。
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青味を帯びた岩が露出しているあたりから、水の流れ落ちる音が轟いて来ます。ここからでは見えませんが、谷底に沢がるようです。
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ではそろそろ、降下を開始しましょう。ペンキマークの導きに従って、崖下へと足を踏み出します。
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こんな絶壁のいったいどこを通るのか疑問に思っていましたが、意外としっかりした足場の尾根が続いていました。最初にこのルートを開拓した人間は、一体どうやってこの道筋を見つけ出したのでしょうか。
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迫力満点の火口壁を横目に、急坂を下っていきます。
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すぐに森の中に入りました。かなりの急勾配で、金属製の手すりが多数、地面に打ち付けられていました。
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この手すりですが、すっかり浮き出てしまった取れかけのものが多かったので、あまり当てにはしない方が良いかと思います。

すぐ隣は断崖絶壁です。登山道の周囲だけが、唯一この崖をよじ登る事が可能な回廊となっています。
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少し道が藪っぽくなって来ました。破線扱いという事もあってか、あまり歩かれてはいないルートなようです。
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15時45分 無事に火口原まで下って来ました。
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広々とした空間であるため、この火口原は道迷いしやすいポイントです。目印のペンキのマーカーが付けられているので、見落とさないように辿ります。
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火口原から見上げた火口壁は、四方から迫って来るかのような迫力がありました。
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6.磐梯山登山 下山編 火口原を抜けて裏磐梯高原駅へ

ここからしばしの間火口原の中を歩きます。山崩れの土砂によってすべてが薙ぎ払われた火口の底には、至る所に噴石が散乱する凹凸だらけの空間が広がっていました。
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ここに在ったすべての生命が息絶えてからおよそ130年。一度は不毛の大地と化した火口原には、深い森が甦っていました。自然がもつ回復力の強さに、ただただ圧倒されます。
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目の前にある火口壁の圧迫感が凄い空間です。
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道すがらに、いくつかの小さな沼があります。火山性物質の影響で、何れも茶色く濁った水を湛えています。
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森の中に西日が差し込み始めました。どうして私の立てる登山計画はこう毎度毎度、陽のある時間のほぼすべてを使い果たすようなエクストリームなものになってしまうのでしょうか。
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裏磐梯スキー場のゲレンデまで下って来ました。
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後はゲレンデ沿いに下ってゆけば良いだけです。帰りのバス時間に若干余裕がなくなりつつあったので、少し足早に下って行きます。
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振り返って見た磐梯山の山頂は、表側から見た時とは全く異質な姿をしていました。
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16時55分 裏磐梯スキー場まで下って来ました。ここからバス停までは、まだもうひと道あります。
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未舗装の道を黙々と下ります。前回訪問時には、この道を逆に登ったはずなのですが、全く記憶にありません。こんなに長かったっけか。
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国道まで歩いて来ました。裏磐梯高原駅バス停がへ向かうには、ここを右です。
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17時30分 という事で、本日のゴールに到着です。有名所な観光地であるだけに、比較的遅い時間にまでバスがあるのが嬉しい所です。
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バスはきっかり時刻表通りに現れました。猪苗代駅までの運賃は910円です。交通系ICカードには非対応なので、あらかじめ小銭を用意しておきましょう。
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往路と逆の経路をたどり、長い長い帰宅の途に付きました。
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ピリッとしない天気の中をスタートした磐梯山縦断登山でしたが、下山する段階になって大逆転が待っていました。山頂から猪苗代湖を眺めることが出来なかったことだけが心残りですが、その他については大満足の山行きでありました。
一番楽に登れる八方台登山口から登る人が多いようですが、登頂そのものが目的でもない限りそれは推奨しません。この山の真の魅力は、裏磐梯の火口原を歩いてみないことには、十分には伝わらないと思います。
破線ルートを歩くことになるため、決して万人向きとは言えないかもしれませんが、火口原ルートは特に一番のおススメです。

<コースタイム>
猪苗代登山口(9:35)-ゲレンデトップ(10:50)-赤埴山(11:35~11:55)-弘法清水小屋(13:15)-磐梯山(13:40~14:05)-弘法清水小屋(14:25)-噴気孔分岐(15:45)-裏磐梯スキー場(16:55)-裏磐梯高原駅(17:30)

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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