長野県佐久市と群馬県下仁田町にまたがる荒船山(あらふねやま)に登りました。
上信国境に立つ極めて独特な外観をした山です。切り立った断崖と平坦なテーブル状の山頂部を持ち、奇岩奇山が数多くひしめく西上州にあっても一際目を引く存在となっています。標高1,066メートル地点の内山峠か登れるため、手軽なハイキングコースとして人気があります。
輪行して自転車を持ち込み、コスモス街道のサイクリングと合わせて廻って来ました。
2022年9月11日に旅す。
荒船山は上信国境地帯に立つ特徴的な外観をしたテーブルマウンテンです。切り立った崖から伸びる平坦な山頂部は、遠目からも非常に目を引く存在です。
まるで石油タンカーか何かと思わせるようなシルエットですが、実際に荒船山という名称は。荒波をかき分けて進む船のへさきのように見えるという事からつけられています。
登山口となる内山峠周辺は公共交通の不毛地帯で、峠へ乗り入れているバスなどの公共交通機関は存在しません。そのため、車でのアプローチが一般的です。基本的に車の無い奴はお断りな山であると言えます
そこで今回は輪行して自転車を持ち込み、標高が高い長野県側から自転車によるアプローチを試みました。通称コスモス街道と呼ばれている国道254号線のサイクリングを楽しみつつ、上信国境の内山峠を目指します。
沿道のコスモスはちょうど見頃の最盛期を迎えており、華やかなる光景を作り出していました。
下山後の帰路は、元来た道を戻らずに内山峠を越えて群馬県の下仁田へと下ります。山に登っている時間よりも自転車に跨っていた時間の方が長かった、上信国境を巡る一日の記録です。
コース
荒船山の麓にある内山大橋まで自転車でアプローチし、そこから荒船山を周回します。
内山大橋から峠越えの旧道を歩き内山峠へ。そこから艫岩(ともいわ)を経て荒船山最高地点の経塚山へ登頂します。下山は荒船不動を経由して内山大橋へ戻ります。
1.荒船山登山 アプローチ編 自転車を抱えてい行く、さわやか信州へ旅路
6時15分 JR東京駅
朝っぱらから折りたたみ自転車を抱き抱えて、多くの乗客で混雑する東京駅へとやって来ました。
これまでにも何度か自転車を抱えて輪行登山を行ってきましたが、早朝の三鷹駅からガラガラの中央本線に乗るのが主で、東京駅に自転車を抱えて来たのは今回が始めてです。
大荷物を抱えた状態で混雑している都心部の電車に乗るのは、とても肩身が狭くて神経を使います。
早々と列に並んでいたおかげで、座席の後に荷物を置けるスペースのある最後部座席を無事に確保出来ました。
東海道新幹線では、この荷物置きスペースのある座席は予約制となっているらしいですね。JR東日本では特にそのような対応はされていませんが、いずれは同じような扱いになるかもしれません。
7時43分 佐久平に到着しました。降り立つなり、高原地帯特有のカラッとした涼しい空気が出迎えてくれました。まさにさわやか信州です。
佐久平駅からお次は小海線に乗り換えます。小海線の改札は新幹線改札から少し離れた場所にあります。普段ならなんてことはない距離ですが、自転車と言う大荷物を抱えていると地味に疲れます。
出先での行動に大きな機動力を与えてくれる折りたたみ式自転車ですが、運搬中は本当にただのお荷物ですからね。
今日も佐久市を見守る浅間山です。しかしよくよく考えてみると、今なお思い出したかのように定期的に噴火を繰り返す現役の活火山のこんなすぐ近くに町があると言うのも、なかなか大胆と言うか凄いことですよね。
佐久平駅の小海線ホームは、八ヶ岳連峰の格好の展望台です。長野側から見た八ヶ岳は、山梨側から見た時とは違ってさほど標高が高くない山のように見えますが、それは単に現在地の標高自体が高いからです。
8時4分発の小海行きに乗車します。現在小海線でのみ運用されているレアな車両の、ハイブリット気動車キハE200形がやって来ました。
8時18分 中込駅に到着しました。内山峠へ自転車でアプローチする場合、ここが最寄りの駅となります。最寄りと言っても、およそ18kmほど離れていますがね。
近くにこれと言った有名観光地があるわけでもない閑静な駅です。ひと気のない駅前で自転車を組み立てて、8時30分に出発進行です。
2.見頃を迎えたコスモス街道をひた走り、内山峠を目指す
駅前の通りを右折して、国道254号線方面へと進みます。駅前にはコンビニ等がありませんでしたが、この先の国道沿いにセブンイレブンが一軒あるので、買い出しはそこでできます。
ちなみに中込駅の標高は海抜673メートルで、登山開始予定地の内山大橋は892メートルの地点にあります。
つまりはこれから標高差およそ220メートル分を登る必要があるわけですが、峠まではずっと緩やかな登り坂が続くため、そこまできつくはないだろうと踏んでいます。
佐久平駅から見た時よりは少し遠くなった浅間山の姿がありました。佐久や小諸の市内からであればどこからでも良く見える、まさに地域を象徴する存在です。
国道254号線に乗ったら、この先はずっと道なりです。この道は上信国境の内山峠を越えて、長野県の佐久市と群馬県の下仁田町とを結んでいます。
佐久市内の国道254号沿線には多くのコスモスが栽培されており、通称コスモス街道と呼ばれています。今回はコスモスの見頃のタイミングを狙って訪問しました。
かくして狙い通りに、沿道のコスモスは今まさに見頃の最盛期を迎えていました。素晴らしい。
遠くに何やら異様なシルエットした山があるのが見えます。果たしてあれが目指す荒船山なのか、ここからだと良くはわかりません。
見込みの通り登り坂の傾斜自体は緩くてそれほど厳しい登りではないのですが、思ってもいない伏兵が潜んでいました。向かい風です。
群馬県側から結構な強さの風が常時吹きつけてきており、それが登る力の何割かを確実に削り取って行きます。ぐぬぬぬ、これは思ったよりもしんどい。
沿道には瑞牆山を思わせるような奇岩が並び立っていました。このコスモス街道の沿線には日本一大きな招き猫などのいくつかの観光名所(?)があり、真面目に巡り歩けばそれこそ丸一日を要すると思います。
この付近の字は大月と言うらしい。これは奇遇ですね、私もオオツキと申します。
峠が近づいて来るにつれて、徐々に傾斜が増して来ました。一向に吹き止まない向かい風も相成って、アプローチの段階で思った以上にスタミナを削がれる苦しい展開です。
しかしここは、車も買えない貧乏人環境意識高い系ハイカーとしての意地と誇りにかけ、荒船山に屈するわけにはいかないのです。
自転車を降りて押して上がりたくなる衝動に抗い、歯を食いしばって乗り越えます。
9時50分 内山大橋まで登ってきました。登山口がある内山峠はまだもう少し先ですが、本日はこの橋を起点にした周回ルートを取ります。
荒船山をグルっと一周したのち、この橋の袂の脇道へと戻ってくる予定です。と言う事で、自転車にはここで留守番を命じます。
3.登山者くらいしか訪れる者はいない、静かなる内山峠
時刻が10時を回ったところで、ようやくにして本題の登山を開始します。毎度の事ながらやけに長いアプローチでありました。環境意識を高く持ち続けるのも楽ではありませんな。
橋の上から右手に異様なシルエットをした山の姿が見えました。地図によると兜岩山と言う名のピークであるようです。今回私は訪問しませんでしたが、荒船山から縦走することも出来ます。
なお現国道は、内山峠を越えずにそのすぐ下をトンネルで貫いています。トンネルが見えてきたら、その手前で右折して旧道に入ります。
内山峠まで道なりに登って行きます。この道はトンネルが出来る以前の旧道にあたる道で、現在も車で通り抜けが可能です。と言っても通行量はほゼロに等しく、実質荒船山に登る登山者専用のような状態です。
峠らしき場所が見えてきました。駐車スペースはほぼ埋まっており、荒船山の人気の程が伺えます。
10時35分 内山峠に到着しました。路肩のスペースにまで車が溢れていました。荒船山がこんなにも人気の山だとは知りませんでした。
荒船山は何気に「日本二百名山」「関東百名山」「群馬百名山」「信州百名山」という4っつのタイトルを保持しています。だからだと言う訳ではないでしょうけれど、かなり人気の高い山です。
峠から目指す荒船山の姿が見えました。断崖絶壁が立ちはだかっており、実に押し出しの強い外観をしています。見た目のインパクトと言う点においては、群馬県側から見た姿の方が圧勝だと思います。
4.小刻みにアップダウンを繰り返しつつ進む、一杯水までの道程
軽く腹ごしらえを済ませて、10時45分に登山を開始します。登山口は駐車スペースの奥にあります。入り口の脇にはご丁寧に仮設トイレまでありました。
入口にクマに対する警告がやたらとたくさん並んでいて、開始早々から脅しをかけてきます。一応クマ鈴は用意してありますが、人の往来が多そうな山域なのに、そんなにたくさん出没するのでしょうか。
峠からしばしの間、ギコギコと小刻みに登ったり下りたりを繰り返す尾根道が続きます。内山峠スタートだと、登山口から山頂までの標高差は400メートルにも満たない程度しかありませんが、アップダウンが多いので累計の標高差はもう少しあります。
尾根が痩せて切れ落ちている場所もありますが、しっかりとクサリやロープが張られており、特に危険は感じません。
道中は樹林が濃く展望は全くありませんが、こうして時々隙間から岩の絶壁がチラチラと見えます。艫岩と呼ばれる、荒船山を象徴する存在です。
急峻な箇所にはこうした木の桟橋などもあり、人気の山のメジャーだと言うだけの事はあって、登山道はかなり丁寧に整備されています。
見上げる高さの岩の壁が現れました。荒船山の本体に取り付いたのかと思いましたが、現在地はまだその手前の尾根上です。
ここは鋏岩修験道場跡と呼ばれている地点です。かつてはこの岩壁の下の岩屋で、修験者が山篭りをしていたのだとか。
木々の隙間から、ピョコっとオデキのように突き出したピークの姿が見えています。あそこが荒船山の最高地点である経塚山です。この後に当然登りますよ。
鋏岩修験道場跡を過ぎて以降も、あまり標高差の無い尾根道がダラダラと続きます。すぐ近くのように見えて、内山峠からは結構な距離がありました。
ようやく艫岩のすぐ下までやって来ました。ここを登れとは言われないのでご安心ください。登山道は右側から回り込みます。
11時45分 一杯水に到着しました。名前からして、か細い僅かな水流しかないような水場を想像していましたが、実際にはジャブジャブと大量の水が流れていました。
しかし水場だと言うわりには、水流のある地点には木橋が架かっており、汲める位置にまで接近できません。この状態から、一体どうやって一杯飲むの??
橋の脇から強引に水辺へ下りれば、一応は水を汲むことが出来ます。道でも何でもないので、降りる際にはくれぐれも足元にご注意ください。
5.切り立った崖の上に位置する艫岩の展望台
一杯水を過ぎると、いよいよテーブル状の山頂部に向かって登りが始まります。艫岩の高さ分の標高差を登るわけですから、当然ながらかなりの急勾配です。
岩肌の表面がしっとり濡れていてかなり嫌な感じです。登る分には何とでもなりますが、下る際にはかなり神経を使いそうな岩場です。
荒船不動尊方面に周回するつもりでいる私は、ここを下る事はないはずなので、気にせずにどんどん登ります。
急登を登りきると傾斜が緩んで来ました。これでテーブルの上に乗ったことになります。岩々しい外観からすると以外な感じもしますが、山頂部には深い森が広がっていました。
たまに山の中で見かける、マツダランプ提供の案内看板が立っていました。今ではほとんど見かけなくなった、ホーロー看板と呼ばれるレトロチックな品です。
とても山の頂上のものと思えないような、平坦な森が広がっていました。森が深いため視界があまり効きませんが、かなりの広大な空間であることはなんとなしにわかります。
テーブルの切れ目までやって来ました。現在地は艫岩の断崖絶壁のちょうど真上です。突然ぷっつりと足元が切れ落ちている異様な光景が広がっていました。
艫岩から人が転落して亡くなるケースは、過去に何度も発生しています。漫画クレヨンしんちゃんの作者の臼井儀人氏が艫岩から転落死したニュースが駆け巡ったのは、記憶に新しいところです。
しかし、覗くなと言われると覗いてみたくなるのが人の性と言うものです。ゴクリ、なるほど確かにこれは怖い。
大変危険です。絶対に真似をしないでください。
水が染み出して湿地のようになっている場所もあります。もしも荒船山にもう少し標高があって森林限界を超えていたら、苗場山のような高層湿原帯の広がる山になっていたのやもしれません。
やがて森の中に、一家の建物が現れました。休憩所を兼ねた避難小屋です。
避難小屋の正面が展望台となっています。見るからに眺めの良さそうな光景に期待が高まります。
12時20分 艫岩展望台に到着しました。読んで字のごとく艫岩の上にある展望スペースで、この先は断崖絶壁です。
繰り返しになりますが、ここは過去に何度も転落死事故が発生している場所です。間違ってもタイタニックごっこをしようとなどしないで下さい。
正面には上信国境地帯の山並みが広がります。信州の高原台地と関東平野の境となっている山並みであり、日本の中央分水嶺でもあります。
このアンテナが立っている山は、つい1ヵ月ほど前に訪問したばかりの物見山(1,375m)です。その背後には浅間山があるはずですが、すっかりと曇って見えなくなっていました。
足元には内山峠を越えた先の国道254号線が、グネグネと蛇行しつつ下仁田に向かって下って行くのが良く見えました。本日は下山後、この道を自転車で下る予定です。
スタート地点の内山峠と延々と歩いて来た尾根です。上から見下ろすと、小刻みにアップダウンを繰り返している様が良くわかります。
6.荒船山登山 登頂編 テーブル台地の端にポツンと佇む、地味極まりない最高地点の経塚山
荒船山登山における一番のハイライトは、間違いなく艫岩展望台です。正直なところピークハントすることそのものにこだわりが無ければ、最高地点の経塚山には別に登らなくても良いと思います。特に見所も何もありませんから。
しかしそれでも私はあえて、登っても特に良いことはない経塚山を目指します。何故ならばそこにピークがあるから。最高地点の土を踏むことは、ピークハンターたる者のお勤めでございます。
山頂の空間なはずなのに、普通に小川が流れていたりします。この岩だらけなハズの山頂部の一体どこにこれほどの保水力があるのか、実に不思議です。
殆ど傾斜のないフラットな空間が広がっていました。樹木を全部取っ払ったら、野球が出来そうなくらいに広大です。
こうした小さなお社が、山頂上のあちこちに複数点在していました。道中に修験道場跡の岩窟があることからも察せられる通り、荒船山は古くから山岳信仰の対象ともなってきた山です。
クリンソウの群生地もあるらしいのですが、今は既にシーズンオフであるため一輪も咲いてはいませんでした。そのかわりと言ってはなんですが、山頂の至る所にトリカブトが花を咲かせていました。
水はけが余り良くないのか、足元は泥濘状態です。そのためフラットな道でありながらも、歩きやすくはありませんでした。
荒船不動尊方面への分岐地点まで歩いて来ました。ここから経塚山をサクッと往復します。
相変わらず足音がドロドロな上に、傾斜も割と急勾配で地味に登り難い道です。しかも登った先に特にご褒美はないと言うおまけつきです・・・
13時 経塚山に登頂しました。極めて押し出しの強い外観とは裏腹に、山頂は実に地味な場所です。
経塚山と言う名の山は、全国各地に複数存在します。由来はどこも一緒で、お経がかかれた書物を山頂に埋めたと言う伝承によります。
ここからテーブルの上全体を見渡せたりしたら、さぞや壮観なのでしょうけれどね。残念ながら山頂に展望は一切なく、小さなお社がポツンと一つだけある空間です。
7.荒船山登山 下山編 荒船不動尊を経由して内山橋へと戻る
展望の無い山頂に長居しても得るものはありません。短い山頂滞在時間で先ほどの分岐地点へと戻って来ました。ここから荒船不動尊に向かって降下を開始します。
相変わらず泥まみれな坂を下ると、道は山頂部の下を並走するトラバースに移りました。
暫しの水平移動を続けたところで、星尾峠へとやって来ました。この峠もまた上信国境であり、長野県佐久市と群馬県南牧村(なんもくむら)の境界となっています。
今回私は行きませんでしたが、峠からこのまま尾根沿いに進むと、内山大橋から見えていた兜岩山まで縦走することも出来ます。
荒船不動尊コースは全般的に良く踏まれた明瞭なトレイルですが、倒木が多めです。内山峠ルートに比べると、あまり整備の手は入っていなさそうです。
時々こうした溶岩石がコース上に散乱しています。荒船山は本宿カルデラと呼ばれる相当古い時代の火山の残骸とでもいうべき山で、長年の浸食により溶岩の最も固かった部分だけが残った結果、今のような姿になっています。
奇岩の山として名高い西上州の妙義山(1,104m)も、荒船山と同様の経緯により形成された山です。
最後に一ヵ所渡渉があります。この河原へ降る際に足を滑らせてしまったのですが、狙った訳ではなく偶然に鮮やかな着地が決まって事なきを得ました。
あぶないあぶない、水の中にひっくり返るところでした。最後まで油断大敵です。
13時45分 荒船不動尊に到着しました。その名の通り荒船山そのものを祀っている寺です。普段は無人のようですが、荒れてはおらずしっかりと手入れがされているように見えます。
この寺の駐車場まで車で入ることが可能であり、山頂の経塚山へ最短で至ることの出来る登山口は、実は内山峠ではなくこの荒船不動尊です。
ただし、荒船山のハイライトであるところの艫岩からは逆に遠くなってしまうため、こちら側から登る人はあまりいない様です。
荒船不動尊から先は、舗装された下道歩きとなります。そこそこの距離がありますが、緩やかな下り坂なのでサクサクとテンポよく下れます。
頭上高くに内山大橋が見える地点へと戻って来ました。この左の脇道を登って行くと、橋の上へ戻れます。
14時20分 自転車を止めていた地点へと戻って来ました。結構な距離を歩いたようでいて、僅か4時間20分程度の周回でありました。
8.荒船山登山 帰還編 内山トンネルを越えて群馬県の下仁田へと下る
自転車にまたがり、再び内山峠に向かって坂を登ります。帰るだけなら元来た中込方面へ引き返しても良いのですが、あえて前へ進むのは、下仁田側から見た荒船山の姿を写真に収めるためであることは言うまでもありません。
荒船山は群馬県側から見た姿が一番カッコ良いのですよ。山名の由来でもある船のへさきな姿は、群馬側からでないと見ることが出来ません。
今度は峠までは登らずに、内山トンネルを通ります。歩道のないトンネルである上に通行量自体も結構多めで、自転車だと少々怖い思いをするトンネルです。素早く通り抜けましょう。
トンネルを抜けると、艫岩のちょうど真下に出ました。インパクトが抜群すぎるこの姿よ。
かなりの急勾配な下り坂がずっと続きます。スピードが出過ぎて大変危険なので、しっかりとブレーキをかけて、万が一転倒してもすりおろし肉団子にはならずに済む程度に減速しながら下ります。
内山峠は峠の両側の標高が著しく異なる片峠であり、下仁田駅の標高は海抜254メートルでしかありません。そのため、峠からはかなり大きく下ることになります。
ブレーキのディスクが摩擦で熱くなり過ぎないように、時々水をかけて強制的に冷やしながら下ります。
背後から大型トラックに煽られ続けるのにもいい加減嫌気がさして来たので、途中から旧道に脱出します。
この旧道もまた恐ろしく急勾配な上に路面が荒れ気味の大概な道ですが、交通量がほぼゼロなため自転車で下る分には安心感があります。
15時10分 8月7日の物見山の訪問時以来1ヵ月ぶり2度目となる、荒船の湯まで下って来ました。ここでひと風呂浴びて行きます。
一風呂浴びてスッキリしたところで、下仁田駅を目指します。この先もずっと下りが続きますが、峠の直下のように急勾配ではなく、緩やかな傾斜で走りやすい道です。
駅前に入るための交差点に、駅はこっちだよと言う案内がなにもないと言う、一見さんにまったく優しくない仕様です。下仁田病院まで行ってしまったら行き過ぎです。その手前で右折します。
その点私は下仁田は2度目おじさんなので、もう既にベテランの域です。前回は乗合バスに運んでもらっただけだったのですが、意外と道を覚えていました。
16時5分 下仁田駅に到着しました。内山峠からは実に快適なサイクリングでした。逆向きに登ったら、それこそ血反吐を吐くような道程でしょうけれど。
タイミング悪く1本前の電車が行ってしまった直後だったので、1時間近い待ち時間が発生しました。ふむ、これはもっと温泉でのんびりして来るべきであったかもしれない。
上毛かるたの「ね」の札は「ねぎとこんにゃく下仁田名産」だそうです。いつか何かの役に立つかもしれないので、覚えておくと良いでしょう。
下仁田駅は上信電鉄上信線の終点駅な訳ですが、この「上信」と言う名前から察せられる通り、かつて長野県まで延伸する計画が存在しました。会社名と路線名に今もその名残が残っているわけですな。
結局この延伸計画が実現することはありませんしたが、もし仮にこの先へ路線を敷こうとしたら、信越本線の碓氷峠区間のように大変な苦労を強いられたことでしょう。
再びお荷物と化した自転車を抱えて鈍行列車に乗り込み、長い長い帰宅の途につきました。
車の無いヤツお断りな山への自転車によるアプローチは、こうして成功裏に幕を下ろしました。
荒船山は公共交通機関利用の登山者泣かせの山で、下仁田町内バス終点の市野萱バス停から往復しようにも時間がギリギリであるし、タクシーで行こうにもかなり高くつくしで、なかなか訪問のハードルが高い山です。輪行と言う行為が一般的なものでないことは重々承知していますが、車を持たない登山者が荒船山にアプローチする上で、自転車は有効な選択肢の一つであることは間違いありません。
荒船山はどちらかと言うと、登るよりも眺めた時の姿の方が強く印象に残る山かもしれません。群馬県側から眺めた時が最も迫力満点に見えるので、車による訪問であっても下仁田側から訪れることを推奨します。
<コースタイム>
内山大橋(10:00)-内山峠(10:35~10:45)-一杯水(11:45)-艫岩(12:20~12:40)-経塚山(13:00~13:10)-荒船不動(13:45)-内山大橋(14:20)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント
荒船山、車で通りかかるたびいつも、すっごい山だなぁ〜どうしたらこんな完璧な巨大タンカーみたいな形になるんだ?と思いながら見上げていました。
ハナから登れないと決めつけて、ちゃんと調べもしませんでしたが、記事を読んで私でも行けるかも!と。ありがとうございます。
絶対にマネをしないでくださいとありましたが、多分気をつけながらちょっとマネすると思います…笑
最近ずいぶんとよく働いている自転車くん、いち読者にすぎない私ですら、何か愛おしさを覚えます!ブレーキ整備よくしてあげてください!笑
いつも楽しい記事をありがとうございます。
AKさま
コメントをありがとうございます。
前々から気になりつつも交通アクセスの悪さに絶望していた山だったのですが、新たなる相棒の折り畳み自転車を得たことでようやく訪問できました。
内山峠からであれば、さほどの危険個所もなく軽いハイキングレベルの山です。本文中でも述べた通り、過去に何件も転落死亡事故が発生している場所なので、覗き込むのならくれぐれもご注意ください。