笠取山-唐松尾山 奥秩父に連なる多摩川源流の山並み

小さな分水嶺付近から見た笠取山
埼玉県と山梨県にまたがる笠取山(かさとりやま)と唐松尾山(からまつおやま)に登りました。
奥秩父主脈上に連なる多摩川源流域の山並みです。周囲に人の住まう集落はほとんど存在せず、どこまでも深い幽玄なる原生林に覆われています。公共交通からは完全に見放された一帯であり、車でのアプローチが一般的です。
今回は将監峠にテント張り、一泊二日の行程で多摩川源流の山並みを縦走して来ました。

2019年4月28~29日に旅す。

奥秩父山塊と言えば地味な通好みの渋い山が多いことで知られるエリアですが、その中でも特にアクセス難な奥地と言えるのが、笠取山を始めとする、多摩川源流域の山並みです。
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この奥秩父の懐深くにある山々には、前々から是非とも訪問したいと強い関心を寄せていました。

しかしながらこの一帯は、登山地図をみると登山口となる場所に描かれているのは駐車場をしめすPのマークばかり。私のような車も買えない貧乏人環境意識高い系ハイカーを嘲笑うがごとき、車の無いヤツお断りな場所となっております。ぐぎぎぎ。

よろしい、ならば縦走だ。
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「ではタクシーだ」とはならない辺りが、ドケチ倹約家ハイカーの真骨頂と言ったところです。という事で、大荷物を担いでドタドタと奥秩父主脈を縦走します。

人気のテント場である将監小屋にテントを張り、甲州市の新地平から丹波山村までまでの全長27kmほどを歩いて来ました。総重量110kgのおっさんが行く、重々しき縦走登山の幕開けです。
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コース
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新地平バス停よりスタートし、亀田林業林道を登り笠取山へ登頂する。その後は奥秩父主脈に沿って進み、唐松尾山をへて将監小屋のキャンプ指定地で一泊。

翌日は奥秩父主脈に沿って進み、丹波山温泉へと下ります。温泉に向かって歩く理想的な縦走プランです。

1.笠取山登山 アプローチ編 (車が無い前提での)笠取山最寄りの登山口、新地平を目指す

6時53分 JR高尾駅
甲府行きの鈍行列車に乗り込み、塩山駅を目指します。
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ゴールデンウィークの人出を予見し、一本早い電車で高尾駅に乗り入れてホームに並んでいましたが、結果は大正解でした。

東京から来た中央線快速が駅に到着するなり、大型ザックを抱えた大集団が一斉に下車し、6両編成の中央本線車内は朝の通勤電車並みの乗車率となりました。

8時15分 塩山駅に到着しました。
バス停にはすでに長蛇の列が出来上がっていました。ゴールデンウィーク恐るべし。
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テントが入っていると思しき大型ザックを抱えた人の割合が多めです。やはり泊りがけの縦走登山となると、まとまった休みが無いと難しいですからねえ。

8時30分発の西沢渓谷行きのバスに乗車します。臨時便が増発されて全部で3台出たことにより、なんとかギリギリ座席にありつくことが出来ました。
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この路線、登山者向けであるならば、もう1時間早くに走らせてくれたらうれしいのですがね。そうすれば、甲武信ヶ岳への日帰り登山の道も開けてきますし。

9時33分 新地平バス停に到着しました。
終点の一つ手前のバス停となります。ここまで運賃は970円です。スイカ・パスモに対応しています。
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ここで下車した人たちは、全員が大型ザックを抱えていました。比較的マイナーエリアと思われる場所でさえこの人出とは、ゴールデンウィーク恐るべし。。

2.沢沿いの林道をゆったりと歩く、雁峠への道

身支度を整えて9時40分に行動を開始します。入り口は、バス停から西沢渓谷側に少し進んだ場所にあります。
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ここから将監小屋までの標準コースタイムは7時間15分となります。普通にコースタイム通りに歩くと、到着時間は17時近くになってしまう計算です。

いくら日が長くなってきているとは言えども、17時の到着というのはいかんせん遅すぎです。どんなに優しい小屋番さんであっても、眉をひそめながら「山を舐めるな」とお小言を口にしたくなることでしょう。

そうならないためにも、本日はコースタイムを少しばかり巻いて行く必要があります。

ここ最近私は、改元への対応に係るゴタゴタなどもあって、極めて不規則かつ不摂生な生活を余儀なくされていました。おかげですっかり肥えてしまい、下腹が突き出しただらしない体形になってしまいました。
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内訳は非公開ですが、パッキングが済んだザックを背負った状態で、総重量は110kgほどありました。(靴の重量は含まず)

この状態でコースタイムを巻いてやろうと息まいている訳ですから、その根拠の無い自信は一体どこから湧いて来ているんだと言う話です。

登り始めは舗装された林道を道なりに進みます。この時点ですでに息が上がり始め、おいおい今日は本当に大丈夫なのかと言う疑問が湧いてきます。
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程なく脇の甘くないゲートが現れました。この先は一般車両の侵入は禁止となります。通用口は無いので、右端の崖際を通ります。
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ゲートを越えると舗装が無くなりました。舗装路を歩くよりもずっと足にやさしく、大荷物を抱えた身としては有難い限りです。
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程なく広川に行き当たります。この先はずっと、この川沿いに登って行きます。
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水の音が響き渡る気持ちの良い道です。始め地図を見た時は、雁峠までずっと単調な林道歩きが続くものと覚悟しておりましたが、良い意味で思っていたのとは全然違う雰囲気の道です。
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透き通った清流が美しい。触ってみたら驚くほどの冷たさでした。雪解けの水なのでしょう。
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路盤は所々で荒れており、すでに車道としては機能していません。実質徒歩道のようなものです。
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進むにつれて、徐々に道が藪っぽくなってきました。あれれ、どこぞで道を間違えたか。
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ふと気づくと、道は対岸にありました。渡渉地点を見逃してしまったようです。仕方がないので、浅くなっている所を適当に渡りました。
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道標があるのを見てほっと一安心。林道沿いなんだから道迷いなんてありえないだろうと言う、無意識の油断があったのかもしれません。気を付けねば。
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日影には見事なツララが生えていました。これだけの大きさに育っているという事は、夜になると零度以下まで気温が下がる日が、今なお続いていると考えるべきでしょう。夜は冷えそうですな。
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何時しか薄曇りの雲が取れて、気持ちの良いまでの青空が広がっていました。格好の登山日和だぁ。
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道が再び対岸へと移ります。林道として使用されていた現役時代には、橋が架かっていたのでしょうか。
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この正面に見えているピークが笠取山なのかなあと漠然と思っておりましたが、後に地図で確認したところ、燕山と言う名のピークでした。
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名もなきナメ滝などもあり壮観です。沢沿いコースと言う言葉の印象とは裏腹に、急峻な谷は無くどこまでゆったりした歩きやす道です。
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峠に近づくにつれて、沢の流れもか細くなって来ました。
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源頭付近には、大菩薩嶺などと同様の、如何にも奥秩父らしい笹原が広がっていました。
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最後の最後に急坂があります。ノタノタと登る110kgのおっさんの脇を、地元の高校生のグループが颯爽と追い抜いて行きました。うーん、若いっていいねえ。
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前方にいかにも眺めのよさそうな峠が見えて来ました。たどり着いた瞬間にどんな光景が広がるのか、ワクワクがとまりません。
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12時5分 雁峠(がんとうげ)に到着しました。
亀田林業林道は実に歩きやすく気持ちの良い道でありました。距離は長めですが大いに推奨できます。
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ここからそう離れていない場所にある雁坂峠と言い、この界隈の山には雁に関わる地名が多いですね。

峠の様子
奥秩父主脈縦走路との合流地点となっています。右奥に見ているのが、目的地の笠取山です。
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振り返れば南アルプス南部の山並み。当然ながらまだ真っ白です。
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こちらは燕山へと続く道です。大菩薩嶺界隈の山とよく似た雰囲気の、笹の丘が続いています。
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3.急坂の先に待つ大展望の頂き

先へ進みましょう。稜線上の日影には融けかけた雪が残っており、道はドロドロ状態でした。
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とても山の上とは思えないような、平原が広がっていました。
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12時30分 小さな分水嶺と呼ばれる地点へとやって来ました。
多摩川、荒川、富士川の三つの河川の分水嶺となっていると言う、大変珍しい場所です。
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真正面には富士山。思った以上に大きく見えました。奥秩父と富士山は、こんなにも近かかったのですね
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こちらは雁坂峠へと続く奥秩父主脈の山並みです。奥秩父主脈縦走もいつかやってみたい所です。そのためにも、少し体重を落とさなければ。
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さあ、笠取山へと向かいましょう。それにしても、山頂直下は清々しいまでに一直線の急坂になっておりますな。
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チョ、チョモランメェ~。何だこの急坂は。
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鞍部には錆びついた謎の滑車がポツンと置いてありました。昔は林業用の索道でもあったのでしょうか。
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それでは張り切って、山頂アタック行って見よう。110kgファイト。
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ぜーはーぜーは。く、口から、、泡ブク吹きそう。。
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なんとか泡を吹く前に山頂に辿り着きました。
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13時5分 笠取山に登頂しました。
いやはや、荷物が重いことを差し引いても、山頂直下の急坂は中々手ごわいものがありました。
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山頂からの眺めはこの通り。控えめに言って最高です。
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彼方に望むは南アルプスの山並み。
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この尖った山は大菩薩嶺(2,057m)です。放牧的な稜線の光景で知られた山ですが、北側から見ると割と急峻で印象がだいぶ違ってきます。
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雁坂峠へと続く奥秩父主脈の山並み。
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そしてこれから歩く、唐松尾山へと続く稜線です。
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これほどの素晴らしい眺望を持つ山がマイナーエリアの地位に甘んじているのは、やはり交通の便の悪さによるところが大きいのでしょうか。笠取山は、埋もれさせるには勿体の無いポテンシャルの持ち主です。

4.唐松尾山へと続く苦難の道

13時20分 残念ながら、私にはあまりゆっくりとしていられる時間はありません。腹ごしらえを済ませたところで行動を再開します。
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ここまでの安心安全な道とは違って、唐松尾山へと続くルートは割と急峻な岩の尾根を歩くとになります。慎重に進みましょう。

シャクナゲの藪を突っ切ります。残念ながらまだシーズンには早いため、一輪も咲いてはいません。
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ここで再び笠取山の山頂標識が現れました。先ほどの山梨百名山の標識があった場所はただの好展望地であって、真の山頂はここであるようです。
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山頂の様子
細い岩の尾根の上です。両側が切れ落ちており、あまり広くはありません。
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展望は南側だけが開けています。見える光景は、先ほどの山梨百名山標識があった地点と大差ありません。
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ここからは一度下りです。日陰側の斜面には雪がかなり残っていました。すでにグズグズで凍結はしていないので、とりあえずアイゼン無しでも歩けます。
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水干(みずひ)と呼ばれる小ピークを通過します。このピークを源頭とする水干沢が、多摩川の源流であるとされています。
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笠取山を下ると、一時の安息のような穏やかな尾根となります。
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この苔生した針葉樹林の森こそが、奥秩父の山の魅力です。地味って言うな。
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眼下の谷間に僅かな人工物の姿を視認できます。一ノ瀬高原のキャンプ場です。車でお越しの人は、あそこまで乗り入れられます。
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・・・別に、全然ちっとも羨ましくなんてないですよ?マイカー組はあの気持ちの良い亀田林業林道を歩く喜びを、一生知ることが出来ない訳ですから。

安息の時は終わり、岩々しい道が始まります。そういうのを求めてはいないのですがねえ。
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明日歩くことになる、飛竜山へと続く稜線が一望できました。見るからに延々と長そうです。
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北側には浅間山(2,568m)の姿が見えました。もうだいぶ雪は少なくなっています。
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このいまだに真っ白なままの山々は、上越国境地帯の山かな。流石に雪の量が桁違いです。
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唐松尾山をようやく視界に捉えました。まだまだ距離があります。ここにきて疲労がたまってきたのか、段々と足が前に出なくなってきました。
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ここでまたもや大きく下ってから、その後再び登り返します。アップダウンはそろそろ勘弁して。。
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きーつーいー。踏ん張れ110kg、もうあと一息だ。
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息も絶え絶えになりつつ、何とか山頂までたどり着きました。
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15時45分 唐松尾山に登頂です。
崩れ落ちるようにして、しばしグッタリとしました。コースタイムを巻くどころか、遅延をきたしております。
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山頂には一切眺望はありません。西日が差し始めた青空に、ダケカンバの白い枝がよく映えていたのだけが印象に残っています。
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5.日没時間が迫る中、将監峠を目指す

登りはこれで終わりましたが、本日の幕営地である将監小屋は、まだ標準コースタイムで1時間10分ほどかかる距離にあります。なんとしても日没前にたどり着かねばなりません。

16時 まだ疲労感は取れていないものの、再び重荷を担ぎ行動を再開します。
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ガレ場の目立つ斜面を、トラバース気味に下って行きます。
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あれほどクリアだった富士山に、雲が掛かりつつありました。
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途中で好展望地の西御殿岩への分岐があります。往復30分ほどの場所だそうです。いつもならば見に行くところですが、今日はもう時間が無い上にバテバテなので見送ります。
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大規模な治山工事の施された、巨大な崩落地がありました。
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崩落地のある所に好展望あり、という事で眺望が開けます。右の山は大菩薩嶺で、真正面に見えているのは雁ヶ腹摺山(1,874m)かな。
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登山道は、崩落地の脇をかすめるようにして続いています。
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16時50分 山ノ神土と呼ばれる地点まで下って来ました。ここまで来れば、将監峠まではあと一息です。
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まるで丘のような、広々とした尾根が連なります。ずっとこんな感じだったら嬉しかったのですが。
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程なく鞍部が見えて来ました。
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17時5分 将監峠(しょうげんとうげ)に到着しました。
歩き始めて7時間25分をかけて、ようやく到着しました。思いのほか遠かったぁ。
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6.知る人ぞ知る人気のテント場、将監小屋

将監小屋は、峠から防火帯に沿って少し下ったところにあります。素晴らしいロケーションのテント場であると評判の場所なので、期待が高まります。
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という事で17時10分に将監小屋に到着しました。確かにこれは良い感じの場所ですねえ。
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小屋でテントの受付をします。幕営量は1,000円です。結局、到着は17時を過ぎてしまいましたが、とくにお小言はありませんでした。
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陽が沈んだことにより、シンシンと寒くなってきました。一刻も早く暖を取るべく、憩いの我が家を手早く設営します。
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将監小屋の人気を支える理由の一つが、この水量豊富な水場です。テント場の目の前にあり、冬であっても涸れることは無いそうです。
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綺麗なバイオトイレもあります。匂いもほとんどなく快適です。
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谷間にあるので、眺望だけは今一つです。
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いつもの、お湯を沸かすだけの簡単な食事を済ませます。総重量110kgだと嘆きつつも、重量級の高火力バーナーを使っているのはご愛敬です。
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よほど疲労が溜まっていたらしく、食後にちょっと横になっただけのつもりが、いつの間にか熟睡していました。

真夜中、テントをたたく雨ので目が覚めました。朝までに止んでくれないと面倒だなあと思いつつうつらうつらしていると、途中から明らかに雨ではない音に変わって来ました。

えぇ、まさかの雪ですか。ゴールデンウィークだっていうのにZzz。

明けて翌朝。テントから頭を出すと、案の定、雪が降った跡が残っておりました。大した量ではなかったのが幸いです。
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雪は止んでいますが、周囲はガッスガスです。寒くて仕方がないので、なかなかシュラフから出る決心が出来ず、のろのろの支度をします。
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6時40分 ようやく決心して我が家を撤収しました。
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本日はこのまま飛竜山方面へとすすみ、丹波山温泉を目指して下山します。
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本当は三条の湯でもう一泊して、翌日に雲取山を目指すと言う壮大な計画を思い描いておりましたが、翌日以降も天気が芳しくないようなので諦めました。

7.まさかの冬景色と化した奥秩父縦走路

雪が薄っすらと積もった道を進みます。凍結してはいない新雪なので、とりあえずアイゼンは必要なさそうです。
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まさかゴールデンウィーク期間中に、こんな冬景色を見ることになろうとは。
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奥秩父縦走路の将監峠から飛竜山へと続く区間は、尾根上は辿らず山腹をトラバースする道となっています。南側は切れ落ちており、気の抜けない道が続きます。
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切れ込んだ谷底には雪が溜まって、雪渓と化していました。
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最近出来たと思われる大きな崩落地が現れて、行く手を阻まれました。ここは左側の草付きの斜面を高巻いて何とかクリアーします。
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振り返るとこんな状態です。通り抜けておいてからこんなことを言うのもなんですが、これは通行禁止にしなきゃダメなやつなのでは・・・
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崩落個所のすぐ上を巻くような踏み跡がついていましたが、もっと大きく高巻かないと危険です。いつまた第二の崩落に巻き込まれるとも知れませんから。

崩落地を抜けてしばらく進むと、平坦な広場に出ました。地図上で大ダルと書かれている場所のようです。
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濃厚なガスの隙間から、僅かに太陽が顔を覗かせつつありました。これはひょっとして、ここからガスが晴れる大逆転があるのか。
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ほんの一瞬だけ視界が開けましたが、長くは続かず、再びシルキーなガスの中へと没してしまいました。
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大ダルから飛竜山に向かって、再び高度を上げ始めます。高度が上がるにつれて、再び雪の量が増えて来ました。
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見事な樹氷です。おかげで寒くてかないませんが。
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道中に禿岩と呼ばれる好展望地があります。とても親近感を覚える名前の場所ですが、このガスではどうせ何も見えはしないので立ち寄らずにスルーします。
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9時30分 飛竜権現に到着しました。
大ダル付近を除き、ずっと気の抜けない道が続くなかなかの悪路でありました。
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まあだからと言って、尾根筋を忠実にたどるようなルートにしようものなら、アップダウンの連続でとんでもないコースタイムになってしまうのでしょうけれど。

飛竜権現のお社があります。飛竜山の山頂は、ここから往復で40分ほどの場所にあります。過去に訪問したことのある場所なので、今回は立ち寄りません。
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何故か鹿共に睨まれる。
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誰かがここにテントを張った形跡が残っていました。予期せぬビバークだったのか、はたまた計画的ヤミテンだったのか。
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※ヤミテンとは、正規のキャンプ指定地以外の場所に幕営する行為の事を指します。

8.丹波へと続く長い長い下山路

飛竜山はスルーして、丹波へむかって下山を開始します。
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人の多い人気の山であれば当然鎖が垂らされているであろう岩場にも、何もありません。破線扱いではないものの、悪路と言ってしまって差し支えの無い道が続きます。
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眺望の良さそうな岩尾根に出ましたが、相変わらず周囲には何も見えません。
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10時30分 前飛龍に到着しました。その名が示す通りの、飛竜山の前衛峰です。晴れてさえいればここも好展望地です。
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この有様では、長居しても何も良いことは無いので通り過ぎます。
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前飛竜の山頂直下は、かなりの急勾配な痩せ尾根が続きます。雪は無くなりましたがここは慎重にゆっくりおります。
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雲の下に出たらしく、展望が開けました。前方に見えているこの長い尾根に沿って下って行きます。
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急坂を下りきると、遠くから見えていた通りの、幅の広い平坦な尾根道となります。ここぞとばかりにペースアップして行きます。
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緩やかなアップダウンを繰り返す道が続きます。見方を変えると、なかなか標高は落ちません。
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12時 サヲウラ峠に到着しました。
ここで、一度凍ってパサパサになってしまった握り飯を胃袋に流し込みました。
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いよいよ最後の下りです。サヲウラ峠から丹波まで、緩むことの無い急坂が最後までつづきます。気合を入れて行きましょう。
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この谷底まで一気に下ろうと言う訳ですから、急なのも当然と言えるでしょう。
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登山道は全般的に崩壊気味です。油断すると転げ落ちかねない、気の抜けない道が続きます。
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高度が下がるにつれて、周囲にツツジの姿が目に入るようになって来ました。油断すると即座に転落しかねないような道なので、くれぐれも花を眺めるときは立ち止まってからにして下さい。
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急坂ゆえに、短時間で見る見る高度が下がって行きます。
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杉林の中に入ったら、ゴールはもう間もなくです。
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電気柵を潜って、文明社会へと帰還します。
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残念ながら、まだゴールではありません。舗装路に出てからも、畑の中をクネクネとひと道歩く必要があります。
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14時10分 丹波バス停に到着しました。
まっすぐに帰るのであればここがゴールです。私はこのまま歩いて、道の駅たばやまに併設された温泉を目指します。
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電柱の上にタバスキーを発見。知らない人のために解説しておくと、この黄色い謎の物体は丹波山村のマスコットキャラクターです。丹の字をモチーフにしているとのこと。
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山の上に見えているこの城は、戦国時代に作られた丹波山城跡・・・ではなくローラーすべり台のスタート地点です。
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ちなみに凄く楽しいので、丹波山村へお越しの際には是非とも立ち寄ることをオススメします。「滑り台なんて子供のやるもの」とか言って格好つけてると損をしますよ。

道の駅まで歩いて来ました。
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温泉は川を渡った対岸にあります。地味にバス停から距離があるので、帰りのバス時間をよく確認してから立ち寄ってください。
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橋の下を流れるのは多摩川の支流の一つである丹波川です。私がこの二日間かけて歩いて来た山に降った雨水は、やがてはすべてこの川へと注ぎます。
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14時20分 丹波山温泉のめこいの湯に到着しました。
これまで幾度となく、立ち寄ろうとしては諸事情があって入れないを繰り返してきた場所です。ようやく念願がかなって立ち寄ることが出来ました。
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温泉前のバス停から、満員御礼のバスに1時間近く揺すられて、奥多摩駅へと向かいます。中央本線の塩山駅からスタートした今回の旅は、青梅線の奥多摩駅へ戻って終わりました。
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多摩川の源流域を巡る山行きは無事に終了です。いかにも奥秩父らしい、懐の深い山域でありました。地味って言うな。前々から機会をうかがっていた場所への訪問がかなって、大変満足した山行きでありました。
特に笠取山からの眺望はすばらしく、アプローチに手間をかけてでも訪れるだけの価値が十分にある場所だと思います。
山行き自体には満足しましたが、同時に来る夏山シ―スンに向けて、少し真剣に体を絞らないといけないと痛感させられました。今の重量を支えて2日3日と山の中を歩き続けるのは辛いものがありそうなので、出来ることなら総重量は100kg以内に収めたい所です。

<コースタイム>

一日目
新地平バス停(9:40)-雁峠(12:05~12:15)-小さな分水嶺(12:30)-笠取山(13:05~13:20)-唐松尾山(15:45~16:00)-山ノ神土(16:50)-将監小屋(17:10)

二日目
将監小屋(6:40)-大ダル(8:35)-飛竜権現(9:30~9:50)-前飛竜(10:30)-サヲウラ峠(12:00~12:15)-丹波バス停(14:10)-丹波山温泉のめこいの湯(14:20)

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント

  1. nobu より:

    オオツキさん、こんにちは。nobuです。私は4月28日(日)に車で作場平まで行き、笠取山に登ってきました。ニアミスでしたね。当日はかなり風が強く雪も残っていましたが、富士山初め、360度の展望に恵まれました。そういえば、笠取山最後の急登脇にある網に鹿が引っかかってもがいていました。笠取小屋の方へ連絡された方がおられましたが、気づかれました?5日(日)には武甲山へ行きましたが、いつもオオツキさんのブログを参考にさせていただいております。以上

  2. オオツキ より:

    nobu様
    コメントをありがとうございます。
    なんと同じ日に登っていましたか。やはり普通は車で登りに来る山ですよね。
    割と息絶え絶えになりながら登ったので、鹿にはまったく気づきませんでした。