朝日連峰縦走 ブナ林と神秘の大鳥池を懐に抱く以東岳【day1】

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山形県と新潟県の境界上に連なる朝日連峰(あさひれんぽう)を縦走してきました。
東北地方の山の中でも際立って広大な領域を持つ深山です。標高1,870mの大朝日岳を主峰として、そこから以東岳に至る主稜線上からは東西南北に数多くの枝尾根が裾野を引き、麓には原始性の高い森林が広がっています。
2泊3日の行程で、紅葉シーズン真っ盛りの秋の朝日連峰を縦走して来ました。

2024年10月17日に旅す。

飯豊連峰と並んで、自分の内部では長年の懸案事項であり続けていた朝日連峰に、ようやく訪問して来ました。

朝日連峰は越後山脈北端の、東北地方との境界上に連なっている広大な山塊です。人里からは遠く離れた奥地にあり、取り付くだけでも一苦労する深山です。
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主に公共交通機関を利用して山登りをしている者にとっては、行きたいと思っていてもそうおいそれとは登りに行けない存在です。

せっかく憧れの山へと赴くのだから、最高峰の大朝日岳だけを往復するのではなく縦走がしたい。と言う事で、泡滝ダムから入山して、朝日鉱泉までを通しで歩いて来ました。。
泡滝ダム
朝日連峰の主脈上にある主要なピークを全て踏んでいく行程で、全長はおよそ30km少々あります。頑張れば1泊2日でも歩けないこともありませんが、無理はせずに2泊3日の行程で歩きました。

今回は縦走初日の、泡滝ダムから以東岳までの記録です。朝日連峰の北端に位置しており、単体で登られることも多い一座です。日本二百名山にも選ばれています。
以東岳の山頂
途中からは若干雲が湧いてしまいましたが、それでも天気は上々で会心の1日となりました。

コース
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泡滝ダム駐車場からスタートして、大鳥池を経由して以東岳に登頂します。その語、山頂直下にある以東岳避難小屋に宿泊します。

泡滝ダムまで乗り入れているバスなどの公共交通機関は存在しません。山形県の鶴岡からタクシーでの移動となります。

1.序章 朝日連峰縦走 計画編

朝日連峰は遠い。この山域は1にも2にも、とにかく交通アクセスの悪さが訪問の障壁となります。そこで本編に入る前に、まずは計画編についてざっと解説します

まず公共交通機関の利用を前途とした場合ですが、選択肢は1つしか存在しません。JR左沢(あてらざわ)駅から朝日鉱泉までの区間を運行する、期間限定の登山バスを利用します。
朝日鉱泉ナチュラリストの家
バスと言うよりはバンタイプの乗合タクシーのような車両です。こちらは夏山シーズン中のみの期間運行となりますが、10月の3連休にも臨時で運行されます。

片道4,000円とそこそこ良いお値段がしますが、それでもタクシーで移動するよりは遥かに安上がりです。難点としては事前予約制で枠自体が少ないため、かなり早めに予約をしておかないと席はすぐになくなります。

最高峰の大朝日岳だけを目指すのであれば、この登山バスの利用で事は足ります。ただ縦走しようと思った場合、抜けた先に公共交通機関は存在しません。どっち向きに歩くせよ、スタートかゴールのどちらかで必ずタクシーを利用する必要が生じます。
朝日連峰の案内図

朝日連峰の主脈を縦走する場合、朝日鉱泉と対になるもう一方の登山口として一般的なのが泡滝ダム駐車場です。こちらは時期を問わずバスはありません。途中の道はダートですが、地元のタクシーは頼めばここまで入ってくれます。
泡滝ダム駐車場
一応は季節限定で、鶴岡エスモールから泡滝ダム間の事前予約制乗合タクシーが運行されています。これは単なる相乗りサービスであり、料金は利用人数で頭割りされます。

紅葉シーズンが最盛期を迎える10月3連休の朝日連峰は、それはもう大変混雑します。避難小屋が満員であぶれてしまうような事態も毎年発生しています。
以東岳避難小屋
そこで今回私は、あえて3連休を外した日程で計画を組みました。

それはすなわち、往路と帰路の両方でタクシーを使ったという事です。たいへん高くは付きましたが、長年の憧れの山域を満喫するためには必要なコストなのだと、そこは割り切りました。

稜線上には多くの避難小屋が建っており、夏から秋にかけてのシーズン中は管理人が常駐しています。現地にたどり着くまでには一苦労しますが、一度稜線に乗ってしまえば縦走登山のハードルはそこまで高くはありません。
竜門山避難小屋
この辺りの事情については飯豊連峰と似たり寄ったりの環境です。イメージ的にはよりアクセスが困難になった飯豊連峰と言ったところでしょうか。連休を外したおかげで、避難小屋泊では混雑することもなく大変快適に宿泊できました。

話をまとめると、朝日連峰へのアクセスは極めて困難ではあるが、すべての問題はお金によって解決が可能です。これは何も、朝日連峰に限った話ではないのかもしれませんが・・・

1.朝日連峰縦走 アプローチ編 朝日連峰ははるか遠く

10月16日(水) 23時40分 バスタ新宿
朝日連峰の北側の玄関口となるのは山形県の鶴岡です。東京発の公共交通機関の利用を前提とした時に、鉄道によるアクセスが絶望的に悪い一帯であるため、高速バスによるアプローチが最も現実的な回答になろうかと思います。
夜のバスタ新宿

過去にも何度か利用したことがある、山形方面へ行く際に定番の夜行バスキラキラ号に乗車します。4シート仕様の車両による運行ですが、足元が広めであるため窮屈感はさほどありません。
夜行バスキラキラ号
この東京酒田間の夜行バスは利用者の多い路線で、出発ギリギリのタイミングだと既に満席になってしまっていることが多いです。座席はなるべく早めに確保しておきましょう。

例のごとく出発近くのギリギリまで天気を見極めようとしていた私は、最後の1席に辛うじて滑り込みました。

明けて10月17日 7時43分 
鶴岡ウェストモールパルに到着しました。鶴岡行きの夜行バスは通常、JR駅すぐ近くのエスモール着であることが多いのですが、今回乗車した便はウェストモールパル行きでした。駅からは少し離れた場所にあります。
鶴岡ウェストモーパルバス停

ここからはタクシー移動となります。前日のうちに電話で予約してあった落合ハイヤーの車両が、既に駐車場に待機していました。
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目指す朝日連峰の山並みが見えて来ました。今は雲が多めですが、この後は晴れてくる予報となっています。目指す泡滝ダム駐車場は鶴岡市内からはかなりの距離があり、所要時間は1時間以上かかります。
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道は途中からダートになりますが、地元の落合タクシーからすれば通い慣れた道であるらしく、嫌な顔はせずに突っこんでくれます。

9時3分 泡滝ダム駐車場に到着しました。車でお越しの人はここまで入ってこれます。ここまでのタクシー料金は17,220円でした。結構良いお値段となるので、可能であればお友達と誘い合わせてきた方が良いのではないかと思います。
泡滝ダム駐車場
ちなみに、下山予定地の朝日鉱泉から最寄りの左沢駅までのタクシー料金は、およそ15,000円くらいかかります。

タクシー代だけで、しめて32,000円となる計算です。眩暈を起こしそうになる金額ですが、これもすべては憧れの朝日連峰を縦走するためには必要なコストなのです。

3.川沿いの平坦な道が続く、大鳥居池への道程

9時15分 身支度を整えて行動を開始します。駐車場を過ぎて以降も、もう少しだけ車道が続きます。
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舗装された道があるためあまり山奥感がしませんが、現在地は既に人里からは遠く離れた山中です。携帯の電波は入らないので、逆向きにここへ下山してくる場合には、稜線上の電波が入る場所からタクシーを呼んでおく必要があります。

最初のカーブを曲がるとすぐに、泡滝ダムがありました。正式な名称は泡滝取水堰堤といい、下流にある蘇岡発電所で使用するための水の取水している小さなダムです。
泡滝ダムの堤体

既に大量の土砂が堆積しており、有効貯水量は相当小さそうです。発電用の水を取水しているだけの施設なので、特に問題とはならないのでしょう。
泡滝ダムのダム湖

ダムの脇から登山道が始まります。大鳥登山口と言うのが正式な名称のはずですが、もっぱら泡滝ダムとだけ呼ばれることが多いようです。
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大鳥池までの距離が1/10刻みで案内されています。1区間の所用時間はおおよそ15分とのことです。現在時刻は9時25分ですが、果たして案内通りの時間で歩けるのか。張り切って行ってみましょう。
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大鳥池までの道程は、基本的に最初から最後までずっと沢沿いです。始めのうちは沢との比高が大きく、崖沿いのトラバースが続きます。
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一部崩落気味の場所もあるにはありますが、取り立て危険と言えるほどの箇所はありません。全体を通じて登山道の整備状況は良好で、良く踏まれた明瞭な道が続きます。
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どうやら1号目は見落としていたらしく、いきなり2合目が現れました。
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沢との距離も近くなり、気持ち良く歩けるほぼフラットに近い道になりました。大鳥池まではそれほど大きな標高差もなく、ひたすら長い水平移動が続きます。
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3合目のジミヤチ清水まで歩いて来ました。この大鳥池ルートには、道中にこうした給水可能な箇所が複数存在します。そのため、水の携行量についてはそこまで神経質になる必要はありません。うん、冷たくておいしい。
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周囲は何時しかブナの美林に変わりました。朝日連峰の中腹には、日本国内で最大規模のブナ林が広がっています。
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これらの貴重な原生林を守るため、朝日連峰の中心部は磐梯朝日国立公園の特別保護地区に指定されています。一切の植物の伐採が禁止されており、焚火やキャンプなども不可となっています。

そのため稜線上にテント泊可能なキャンプ指定地はありません。複数日にかけて縦走登山する際は、原則避難小屋泊となります。

この現在の標高付近ではまだ紅葉が始まっておらず、カエデも葉もこの通り緑々としています。
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前方に見えている稜線上では、良い感じに紅葉が色付いている様子が見えます。早くあの中を歩きたい。
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10時25分 冷水沢橋まで歩いて来ました。きっと名前の通り、雪解けの時期にはそれはもう冷たい水が流れているのでしょう。この橋は雪対策として11月の頭に踏板が撤去され、再び設置される翌年の6月下旬頃まで通行不能となります。
冷水沢橋

橋を渡った地点が4合目です。登山口を発ってからちょうど1時間で到着したので、今のところ1号15分の目安通りのペースで進んでいます。
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小さな渡渉が何度かありますが、いずれも水量は少なくほぼ一跨ぎで渡れます。初夏の雪融けシーズンには、渡るのに難儀する場面があるのかもしれません。
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10時40分 折り返し地点となる5合目まで歩いて来ました。と言ってもこの表示はあくまでも大鳥池までの距離を示しているだけであり、そこから以東岳までがまたひと登りあるのですけれどね。
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チラホラと紅葉が色付いている木を見かけるようになって来ました。今年の夏は猛暑だった影響もあり、紅葉の色付きはやはり例年よりは相当遅れているようです。
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10時55分 七ツ滝沢橋まで歩いて来ました。こちらの橋は沢の支流ではなく本流を渡るため。水量もかなり多めです。冷水沢橋と同様に、11月の頭には踏板が撤去されます。
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見上げる高さの巨木が立ち並んでいます。長年にわたって手厚く保護されて来た、原始性の高い森の光景です。・・・ちなみに、ブナの実はクマの大好物なので、この周辺にも恐らく相当沢山住んでいると思います。
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6合目は、特に何かがある訳でもない道の途中にポツンとありました。横向きに突き出した木の枝が、いかにも豪雪地帯の山らしい光景です。
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淡々とした道がなおも続いています。序盤のウォーミングアップ程度に考えていましたが、大鳥池は意外と遠いですぞ。
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7合目を過ぎたところで、登山道はようやく真面目に標高を上げ始めました。ここからは小さく九十九折れを繰り返しつつ登って行きます。
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道中の水場で喉を潤します。この先の以東岳避難小屋のすぐ近くにも水場があるため、ここではまだ翌日分の水を確保する必要はありません。行動中に消費する分だけをボトルに補充していきます。
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7合目から9合目にかけてが急登区間となります。道幅は狭めで休憩に適した場所もないので、一気に登ってしまいましょう。
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雲が多めだった朝時点の天気が嘘のように、スカッと綺麗な秋晴れになりました。山の神様の機嫌が変わってしまう前に、展望の開けた稜線の上に出てしまいたいところです。
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道の傾斜度が増してきていることを考慮したからなのか、後半になるほど1号の間隔が短くなっていきます。距離ではなく登りの所要時間で均等割りしているのだろうか。
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森の木々の隙間から、水面らしきものが見えました。ようやく大鳥池がある高さまで登って来たようです。
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ここまで来て初めて、以東岳の姿を視界に捉えました。この先にもまだまだ結構な標高差が残っているのが一目瞭然です。
大鳥池付近から見た以東岳

本日の宿泊予定地である、以東岳避難小屋の建物も小さく見えています。いかにも眺めの良さそうに稜線上に建っており、期待も高まります。
大鳥池付近から見た以東岳避難小屋

10合目の案内がありました。もっとこう池全体が見える場所なのかと思ったのに、森の中の忽然とありました。
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12時 大鳥池避難小屋に到着しました。その名の通り、大鳥池の辺に立っている小屋です。
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以東岳の山麓にひっそりとある山上湖の大鳥池です。標高およそ970メートル地点にあり、川の堰き止めによって生じた堰止湖であると考えられています。
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営業小屋なのかと思うくらいに立派な外観をした小屋ですが、扱いとしては避難小屋です。夏山シーズン中は管理人が常駐しているので、準営業小屋と言っても良いのかもしれません。東北地方にある山で多いは運用形態です。
大鳥池避難小屋
別名でタキタロウ山荘とも呼ばれています。なんでも大鳥池に住むとされる、幻の巨大魚の名前なのだとか。ネッシー伝説みたいなものでしょうか。

小屋のすぐ傍らに、朝日連峰では数少ないキャンプ指定地もあります。と言う事は、ここはまだ特別保護地区の範囲外なのかな。
大鳥池キャンプ場

4.急登を乗り越えて、大展望が広がる主稜線を目指す

まだまだ先は長いので、あまりのんびりしていないで行動を再開しましょう。出発してすぐに、これほどの山奥には似つかわしくない規模の、コンクリート製の水門がありました。
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これは大鳥居池の水を灌漑用水として利用するために作らた制水門です。現在の水門は2代目で、初代は昭和9年製とかなりの昔に作られました。大鳥池避難小屋はもともと、この水門工事のための作業小屋を前身としています。
大鳥池制水門

取水門の上の通路を渡ると、大鳥池のすぐ脇に道が続いていました。ここからしばしの間、池を横目にしながら歩む道となります。
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ここで最短距離で以東岳に至る直登コースと、尾根沿いに回り込むオツボコースとに分岐します。日没までに小屋に辿りつけなくなっても困るので、ここは直登コースへと進みます。
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湖面ギリギリの結構際どい所に道が付いています。バランスを崩すと、普通に池に転落するので注意を要します。
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周囲全てを山に囲まれたロケーションが、秘密の場所であるかのような雰囲気を醸しだしています。山上湖というのは、なぜこうも神秘感があるのか、不思議なものです。
大鳥池
周囲の木々が紅葉していればさらに良い感じの景観になったのでしょうけれど、まだほんのりと色付きが始まった程度の段階でした。

今回の朝日連峰訪問は、紅葉シーズン狙いとしては少し遅いくらいの時期だったのですが、夏の猛暑による影響は思っていた以上に大きかったようです。

ずっと水面ギリギリに道がある訳ではなく、けっこうアップダウンがあります。急な場所にはしっかりとお助けロープが垂らされていました。
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池の端まで歩いて来ました。この端付近は一部道が不明瞭と言うか、ほぼ消滅しかけていました。池ポチャしないように、慎重に際に沿って進みます。
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これは干上がった湖底なのか河原なのかは分かりませんが、とにかくゴロ石地帯を横断します。ここにはしっかりと、目印のマーキングがありました。
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池の辺を過ぎると、いよいよ稜線上に向かって急登が始まります。この先は山頂までノンストップの登り一辺倒となります。いっちょう気合を入れて参りましょう。
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雪の重みに負けて曲がった木々が目立ち始めました。そろそろ森林限界に近付きつつある証拠です。
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標高が上がって来た事により、ようやく周囲の木々が紅葉している一帯に入りました。やはり危惧していた通り、今年の紅葉は色付き加減がイマイチです。
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それでもこうして日当たりが良い場所では、良い感じに紅葉していました。やっと秋山らしい光景を拝めました。
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オツボコースがある、谷を挟んだ一つ隣の尾根の様子が良く見えています。こうして見た感じだと、紅葉はあちらの方が綺麗そうです。これはルートの選択を誤ってしまったか。
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背後を振り返ると、大鳥池の全容が良く見えました。こうして見降ろすと、外界からは完全に隔絶されている場所である事が良くわかります。大昔にこの池を最初に発見した人物は、さぞや驚いたことでしょう。
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湖畔に立つタキタロウ山荘も良く見えます。ホント良いところに建っていますねえ。ぜひとも泊まってみたいと思わせるロケーションではあるのですが、いかんせん縦走登山で使うには位置的に少々中途半端なの惜しまれます。
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ついに森林限界を超えて、稜線の上に出ました。少し雲が出て来てしまっていますが、頭上に依然として青空が広がっており、吹き抜ける風が気持ちいい。
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しかしこれだけ日差しを遮るものが何もないとなると、おそらく夏は灼熱地獄になるのしょうね。飯豊連峰もそうですが、稜線上に花が咲き誇る初夏のシーズンに歩こうと思うと、暑さに苦しめられることは避けようがありません。

この朝日連峰については、夏に歩くべきか秋に歩くべきかでずいぶんと悩みましたが、今年の夏のあまりの暑さに尻込みして、結果秋の訪問を選んだと言う経緯があります。

夏は夏で歩いて一度歩いてみたい気もしますが、そうそう気軽に何度でも来れるような場所ではないんだよな。たくしーだいがさんまんにせんえん…

稜線上は湿原に覆われていて、まさしく東北地方雄山以外の何物でもないかのような光景が広がっていました。きっと夏には一面のお花畑になるのでしょう。
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しかし紅葉に関しては期待ほどでは無いと言うか、やはり今年はハズレ年なのだろうか。単純にまだ時期的に早かったと言うだけのことかもしれませんが。例年だと10月3連休の頃が見頃だと言う話ですから、やはり相当遅れています。
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あれほど小さく見えていた避難小屋が、いつの間にかすぐ近くにありました。急登であるが故に、一気に標高が上がりました。
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下の方に水場らしき場所が見えていますが、直接寄って行ける横道はありません、一度避難小屋まで登る必要があります。
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15時10分 以東岳避難小屋に到着しました。本日はこちらにお世話になります。
以東岳避難小屋

5.全方位のパノラマが広がる以東岳の頂

ひと先ずは宿泊の受付を済ませましょう。避難小屋利用の協力金は2,000円です。この日は管理人の方がいたので直接手渡ししましたが、不在時には料金箱に入れます。。
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この小屋は10月の3連休中にはそれこそ立錐の余地もないくらいのすし詰め状態になる事も珍しくないらしいのですが、タイミングをずらしたおかげで、本日の利用者は私を含めて全部で7人でした。
以東岳避難小屋の内部

チェックイン(?)を済ませたら、すぐにでも山頂に向かいたいところではありますが、その前にまずは今夜と明日の分の水を確保しておきましょう。
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と言うのも、水場まで小屋からは結構大きく下る必要があるからです。水汲みはまだ暗くなる前に済ませておいた方が無難だと思います。
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小屋からだいたい7~8分程下ったところに、冷たい水が滾々と湧き出していました。年間を通じて涸れることのない信頼のおける水場で、碧玉水(へいぎょくすい)なる格調高そうな名前が付いています。
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小屋はすっかりと見上げる高さです。往復でだいたい20分くらいはかかります。あまり気前よく水汲みは引き受けない方が良いかも。
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水汲みを済ませたら、今度こそ以東岳の山頂へ向かいましょう。小屋からは5分少々の、それこそ目と鼻の先の距離です。
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左手に見えているこの雲上に浮かんでいるのっぺりとした山は、出羽の名峰として名高い月山(1,984m)です。つっ、つきやま?
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16時 以東岳に登頂しました。山頂に立つなり、ここまでは以東岳の背後に隠れていて見えていなかった、朝日連峰主脈の全容が視界に飛び込んできました。
以東岳の山頂

この光景には思わずテンションが大上がりです。やれ雄大だとか、そんなありふれた陳腐な言葉では表現できないない程のスケール感を持った稜線が、視界の彼方にまで延々と連なっていました。
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実に素晴らしい。朝日連峰とはかくも広大なる山塊でありましたか。

この尖っている山が、朝日連峰の最高峰である大朝日岳(1,870m)なのかな。明日はあそこまで歩く予定な訳なのですが、それにしてもちょっといくらなんでも遠すぎない?
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大朝日岳の右後方の彼方に見えているのは、位置的に飯豊連峰のはずです。飯豊も相当広大な山塊でしたが、朝日連峰のスケール感もまた少しも引けは取ってはいません。
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反対側の新潟方面の展望です。なに分なじみが薄い山域であるため、見えている山がどの辺りなのかはよくわかりません。
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月山の左後方には、薄っすらと鳥海山(2,236m)らしき山のシルエットが見えています。だいぶ雲が湧いて来てしまいましたな。
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眼下には大鳥池。大鳥池に関しては、角度の問題で山頂よりも途中の道中からの方が良く見えます。
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以東岳は全方位に展望が開けていますが、なかでも一番目を引くのはやはりこの月山です。夏とも秋とも言えないような中途半端な時期にしか登ったことがないので、この山にも再訪したいんだよな。
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堪能しました。日が傾くと同時に急に寒くなて来たので、足早に小屋へと引き上げます。
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周囲がすっかりと暗くなったところで小屋の外に出ると、満月の月あかりが煌々と辺りを照らしていました。
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あわよくばアトラス彗星を見れるのでは無いかなと期待していたのですが、金星らしき星が見えただけで彗星はよくわからずでした。がっくし。
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この後は明日に備えて、早々とシュラフに潜り込みました。どうか明日以降も晴れてくれますように。おやすみなさい。

こうして縦走初日は上々の天気にも恵まれて、満足のうちに終了しました。まだ朝日連峰の入り口に足を踏み入れただけの段階でしかないのですが、どこまでも続く稜線の光景に目を奪われました。
交通手段の乏しさもあってか、朝日鉱泉から大朝日岳だけを往復で済ませてしまう人も多いのではないかと思いますが、以東岳は単体でも見ても十分に足を運ぶだけの価値があると思える一座です。日程の都合をつけるのはなかなか難しいかもしれませんが、是非とも足を伸ばしてみてほしいです。朝日連峰は大朝日岳だけではないと言う事をまざまざと見せつけてくれる、文句なしの秀峰であると思います。

<コースタイム>
泡滝ダム駐車場(9:15)-冷水沢橋(10:25)-七ツ滝沢橋(10:55)-大鳥小屋(12:00~12:10)-以東岳避難小屋(15:10)

以東岳山頂での記念撮影
2日目に続く

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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