神奈川県の丹沢山地にある塔ノ岳(とうのだけ)と丹沢山(たんざわさん)に登りました。
表丹沢の主峰である塔ノ岳には4方からいくつもの登山道が開けていますが、今回はその中でも一番人気があると言われる表尾根ルートを歩きました。塔ノ岳へ登るルートの中では最も一般的であろう大倉尾根が、ひたすら登り一辺倒であるのに対して、表尾根は小刻みにアップダウンを繰り返す起伏のあるコースです。
初冬の澄み切った空の下に広がる展望を満喫し、大満足の山行きとなりました。
2016年12月10日に旅す。
首都圏にお住まいの人にとっての、近くて良い山の代表格と言えばどこでしょうか?
高尾山、筑波山もしくは奥多摩の山々等、候補はいくつも上がるかと思いますが、個人的には丹沢を1番にオススメします。
丹沢エリアの魅力といえば、都心からのアクセスの良さと、低山らしからぬ大展望が挙げられます。
杉と檜の人工林が延々と続き、昼間でも薄暗い印象の奥多摩エリアと比べ、丹沢エリアには頭上が大きく開けた明るい道が多いのが特色です。
今回歩いた表尾根コースは、そんな丹沢エリアの中でも随一の展望が望めるルートです。
アップダウンが多めであるため体力勝負となるルートですが、相模湾を見下ろしながら歩くことが出来る好展望の尾根道となっています。
前口上はこれ位にして、近くて良い山丹沢の、魅惑の尾根歩きへと繰り出しましょう。
コース
ヤビツ峠より表尾根ルートを通って塔ノ岳へ。塔ノ岳から丹沢山までを往復し、下山は大倉バス停へ下ります。表丹沢の見所を巡る鉄板ルートです。
なお、塔ノ岳からさらに丹沢山まで足を延ばす場合、コースタイムはそこそこ長めで、健脚者向きと言える行程となります。
1.丹沢表尾根 アプローチ編 電車とバスを乗り継ぎヤビツ峠へ
早朝の小田急線 新百合ヶ丘駅
京王線沿線に住まう者にとって、小田急線と言うのは乗り換えが微妙に面倒な路線である。
京王線の南をほぼ平行に走るこの路線への接続は、縦方向の移動手段が以外に乏しいと言う東京都多摩地区の交通事情により若干の遠回りを余儀なくされてしまうからです。
今日は永山を経由してここまでやってきました。個人的には多摩都市モノレールの町田への延伸に期待したいところです。
秦野駅(はだの)に到着。ここからヤビツ峠行きのバスに乗ります。
バス停には既に行列が出来ていました。
とはいっても、コレはまだましな方です。
一年を通じて万遍なく人の訪れる丹沢エリアにとって、ハイシーズンと言える時期はツツジやシロヤシオが見ごろを迎えるGW前後ですが、そのころに訪れると歩道から人が溢れ出るくらい並んでたりします。
8時50分 ヤビツ峠に到着しました。
蓑毛からここまで、バスは細い曲がりくねった山道を延々と登ってきます。乗り物酔いする体質の人は酔い止め用意したほうが無難かもしれません。
いつでもどこでも寝れるという特技の持ち主である私は、駅を出発した直後から記憶がありません。
「野生動物の飛び出しに注意」の交通標識が掲げられていました。東京に住んでいると、普段目にする機会が無い標識ですな。
舗装道路を勿体ないくらいに延々と下ったところで、富士見橋に到着しました。登山道口は左ですが、右側に少し行ったところに日本の名水100選の一つ護摩屋敷の水 (ごまやしきのみず)があるので寄り道します。
こちらがその、護摩屋敷の水です。わざわざ遠くから汲みに来る人もいると言う名水です。
私はすでに自宅の水場で汲んだ東京都水道局の美味しい水を必要量携えているので、一口だけ頂きました。
味は・・・正直よく分かりません。水は水やろ。
2.好展望の稜線が続く表尾根コース
9時20分 ようやく舗装道路歩きはが終わり、登山へと入って行きます。登り始めからいきなり階段です。
人気のコースと言うだけあって、多くの登山者が登っています。と言うか渋滞しています。
登り始めてからそう時間も経たずに、背の高い木が無くなり視界が開けます。
背後にはヤビツ峠を挟んで、向かいの大山(おおやま)が見えます。
大山は丹沢の入門とでも言うべき山です。
とりあえず高尾山には登ったけれど次はどうしようかとお悩みの登山初心者の方には、2番目の山として大変オススメです。
なお、間違えて「だいせん」と読んでしまうと、鳥取県に連行されてしまうので注意しましょう。
10時5分 二ノ塔に到着
表尾根の最初のピークです。ベンチがあって格好の休憩スペースですが、大展望の広がる三ノ塔へもう一息でたどり着けるので、ここは素通りします。
こちらがお隣の三ノ塔です。二ノ塔からはおよそ10分の道のりです。
目の前に現れたのは毎度おなじみ世界遺産のアイツ。
・・・なんのとか一つ覚えのように、毎回富士山の写真を載せてる気がします。
こちらが山頂の標識です。この山は多くの人にとってただの通過点であり、ここを目的に登る人と言うのはあまりいません。
三ノ塔からは、これから歩く表尾根が一望できます。この先は、結構激しくアップダウンを繰り返すのが見て取れます。
本日の目的地もバッチリ見えます。テンションが上がって来ました。
以前に同じルートを歩いた時に、身の危険を感じるほどの急坂を下った記憶があったのですが、いつの間にか階段が整備されていました。
登山道を整備している自治体関係者の方々には、まこと頭が下がります。
急坂を下り終え、最低鞍部まで下って来ました。三ノ塔からは200メートル近く高度を落としています。
一部に痩せた場所もあります。丹沢の登山道はどこもオーバーユース気味で、土足による道の侵食が問題となっています。
下った後は当然登り。表尾根コースは基本的に、このような細かいアップダウンの繰り返しです。
10時40分 鳥尾山に到着しました。
三角屋根の小屋が非常に印象的です。
山頂の様子
広々としています。ベンチも多数設置されており、休憩にはもってこいの場所です。
こうして見ると、三ノ塔からの下りは、かなりの急坂だったことが良くわかります。
この先にも無数のアップダウンが待ち受けています。まだまだ先は長い。
実に気持ちのいい稜線歩が続きます。この開放感こそが、丹沢の一番の魅力だと思います。
11時 行者ヶ岳を通過
このピークの前後には岩場が続きます。
下から見るとこんな感じです。
ステップがしっかりしているので、特に難しことは何もありません。
ガレ場に架けられた道を進みます。
いかにも応急処置っぽい見た目の道ですが、何年も前からずっとこの姿です。
目の前に新大日が立ちはだかります。表尾根コースで一番キツイのはこの登りかもしれません。
11時30分 新大日に登頂
流石に疲労が溜まってきたので、ここで小休止しました。
山頂には茶屋がありますが、営業してる所を見たことがありません。もしかして廃屋なのかな?
3.神奈川県屈指の好展望地、塔ノ岳の頂へ
ここまでくれば塔ノ岳まではあと一息です。ここまでの展望も十分すぎるほど素晴らしかったでしたが、塔ノ岳山頂からの眺望はもっとすごいので期待していいですよ。
12時 塔ノ岳登頂
ヤビツ峠を出て3時間10分で到着です。まあまあいいペースでした。
標準コースタイム通りに歩くと、だいたい4時間くらいかかります。
山頂の様子
丹沢一番人気の山とあって、多くの人で賑わっています。
麓からは直接窺うことの出来ない、丹沢最深部の山々が姿を見せます。
日没までまだ時間は十分にあるので、今日はお隣の丹沢山まで足を伸ばします。塔ノ岳山頂からの往復時間はおよそ2時間ほどです。(休憩時間含まず)
4.お隣の丹沢山まで足を延ばす
ここからは当然登り返しです。傾斜は比較的緩やかですが、この後も何度か上り下りを繰り返します。
どうですかこの稜線の光景は。歩いてみたくなったでしょう?丹沢は決してあなたを失望させません。
枯れたブナ
丹沢の稜線付近ではブナの枯死が深刻化しているそうです。酸性雨の影響とも害虫の被害とも言われていますが正確な原因は不明とのこと。
丹沢山直下、最後の登り
ディーゼル発電機の音が聞こえてきたらもうまもなくゴールです。
13時 丹沢山に登頂です。
塔ノ岳からは1時間程の、実に気持ちの良い稜線ハイクでした。
この山は日本百名山の一座・・・と言うことにされてしまっている山です。
深田久弥の「日本百名山」を読めばわりますが、百名山に選ばれているのは丹沢山塊そのものであって、この山のことではありません。
百名山「丹沢」の登頂を宣言したければ、最高峰の蛭ヶ岳まで足を伸ばしましょう。
山頂の様子
いつしか頭上に暗雲が垂れ込め非常に寒くなって来ました。
丹沢山の山頂に立つみやま山荘。ここへ来たら、とりあえずカレーを食べるのが私の流儀です。
蛭ヶ岳まではあと3.4kmの道のりです。
そこまで行ってしまうと日没までに帰れなくなってしまうので、今日はここで引き返します。
丹沢山より望む不動ノ峰(1,614m)(左)と蛭ヶ岳(1,673m)(右)。
13時30分 塔ノ岳へ引き返します。
都心方向には日が差していました。頭上の暗雲は丹沢の上にだけ掛かっている模様。それにしても寒いな。
塔ノ岳への登り返します。何気に急坂で結構ハードで、私はいつも泡を吹きそうになりながら登っています。
14時20分 塔ノ岳に戻ってきました。この時間ともなると、さすがに人の数が減っていました。
塔ノ岳名物(?)の猫がいつもの定位置に居ました。ずいぶんと太ったなお前。
ブルーの瞳がとても印象的です。今は満腹なのか、愛想のかけらも無い態度でそっぽを向かれました。
5.塔ノ岳下山編 麓まで延々と続くバカ尾根
下山はバスの本数の多い大倉に下ります。
下山に使う大倉尾根は全長は7.1km、標高差が1,200mにも達する長大な尾根です。単調な坂が延々と続くことから通称バカ尾根と呼ばれています。
これは三ノ塔より横から見た大倉尾根です。「ファインダーに収まりきらない」を地で行く長さが良くわかります。
14時30分 下山開始
初っ端からひたすら階段です。基本的に大倉尾根と言うのは最後までずっとこんな感じです。
金冷シに到着
鍋割山陵との分岐地点です。鍋焼きうどんが食べたい気分の人は右へ。大倉を目指すなら左です。
こんなガードロープ、以前来たときには無かったと思うんですが。大倉尾根は過保護に育てられているようです。
左手には今日登って来た表尾根が一望できます。奥にあるのが大山です。
14時55分 花立山荘を通過。夏はカキ氷、冬はお汁粉が名物です。
階段地獄の丹沢の中でも最凶を誇るのが花立山荘直下のこの階段です。先が見えません。
せっかくなので降りながら段数を数えてみました。全部で342段あります。
誰がつけたかバカ尾根の 何も恥じないこの長さ
即興の「荒鷲の歌」の替え歌などを口ずさみつつ下ります。
15時20分 堀山の家を通過
距離で言うとまだ1/3ですが、標高差でいうと大体半分くらい下りました。
15時55分 見晴茶屋を通過。
休憩したい衝動に駆られますが、一度立ち止まってしまうと再び歩き出す気力が失われそうなので、下山を継続します。
舗装道路に出てもバカ尾根はまだ終わりません。大倉バス停までもう一道あります。
16時30分 大倉バス停に到着しました。膝が笑い始めたころになって、ようやく下山が完了です。やはりこのルートは、何べん歩いてもバカです。
帰りは途中下車して鶴巻温泉に寄りました。市営の温泉施設です。休日はお値段お高めの1,000円でした。
ヤビツ峠からの表尾根ルートは変化に富んでいて、何度歩いても飽きることのない良ルートです。そして何よりも、展望が圧倒的に良いです。標高2,000メートルにも満たない山で、これだけの好展望が得られる場所というのは、なかなか無いのではないでしょうか。
今回は丹沢山までの往復を追加したためそこそこ長丁場になりましたが、塔ノ岳だけを目当てに登ってもきっと満足できると山行きになるかと思います。丹沢エリアの中では一番のオススメのコースです。
なお、表尾根コースの標準コースタイムは4時間オーバーであり、大倉尾根から登るよりは幾分か長めです。時間には十分な余裕をもってお出かけください。
<コースタイム>
ヤビツ峠(8:50)-富士見橋(9:10)-二ノ塔(10:05)-三ノ塔(10:15)-鳥尾山(10:40)-行者ヶ岳(11:00)-新大日(11:30)-塔ノ岳(12:00)-日高(12:35)-丹沢山(13:00~13:30)-塔ノ岳(14:20)-花立山荘(14:55)-堀山の家(15:20)-見晴茶屋(15:55)-大倉BS(16:30)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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