秋田駒ヶ岳-乳頭山 紅葉と高層湿原が広がるみちのく名峰

乳頭山から見た秋田駒ヶ岳
秋田県仙北市と岩手県雫石町にまたがる秋田駒ヶ岳(あきたこまがたけ)と乳頭山(にゅうとうさん)に登りました。
東北地方の背骨、奥羽山脈上に連なる一連の火山群の中の一つです。いかにも東北地方の山らしいなだらかな稜線の山で、山上には高層湿原帯が広がり、多種多様な高山植物が花を咲かせる花の名峰として名高い山です。秋になると笹に覆われた稜線上が紅葉で鮮やかに彩られます。
紅葉が見頃を迎えた中、秋田駒ヶ岳から乳頭温泉まで繋げるロングルートを歩いて来ました。

2024年10月12日に旅す。

前日の栗駒山に続いて、秋の東北遠征2日目の記録です。秋田駒ヶ岳から乳頭山までを繋げて歩いて来ました。

秋田駒ヶ岳は岩手県と秋田県の県境に連なる火山です。多種多様な高山植物が咲き誇る花の名峰として名高い山ですが、紅葉もまた見事であるとの話を聞き及んでおり、秋にも登ってみたいと思っていた山でした。
横岳付近から見たムーミン谷

前回の訪問時は8合目を起点にして秋田駒ヶ岳とムーミン谷の周辺を周回しただけでしたが、今回はお隣の乳頭山まで縦走するルートを歩いて来ました。
笊森山から見た乳頭山
標高差はそれほど大きくはありませんが、なかなかのロングトレイルとなる行程です。縦走コースを進んでいった先には、秋田駒ヶ岳周辺の喧騒が嘘であるかのような静寂に包まれていました。

快晴秋晴れの空の下、まる一日を費やしてみちのく名峰を巡り歩いて来た一日の記録です。
焼森から見た湯森山と笊森山

コース
秋田駒ヶ岳~乳頭山縦走のコースマップ
駒ヶ岳8合目バス停よりスタートして、秋田駒ヶ岳最高峰の男女山に登頂します。その後はムーミン谷方面には下らずに、湯森山と笊森山を経て乳頭山へ縦走します。

下山は田代平を経て乳頭温泉へと下ります。およそ18km程となるロングコースです。

1.秋田駒ヶ岳登山 アプローチ編 始発電車と路線バスを乗り継ぎ一気に8合目へ

夜明け前の盛岡駅よりおはようございます。昨日は栗駒山に登っており、盛岡駅近くのビジネスホテルで1泊しました。前泊せずに東京発で直接アプローチしたい場合は、夜行バスの利用が現実的な選択肢になろうかと思います。
早朝の盛岡駅

5時18分発の田沢湖線の始発電車に乗車します。奥羽山脈を越えて、東北本線と奥羽本線とを連絡している路線です。秋田新幹線は、盛岡から先はこの田沢湖線の線路を走行します。
早朝の盛岡駅在来線ホーム

6時10分 およそ50分程の乗車時間で、田沢湖駅に到着しました。田沢湖線は単線ですが、早朝時間帯にはまだ秋田新幹線との列車交換も行われないため、スムーズに移動できます。
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全国区の知名度を持つ観光地の最寄り駅だけに、一面がガラス張りの瀟洒なデザインの駅舎です。早朝の時間帯には、ごく少数の酔狂な登山者以外には人影もなく、駅前は静まり返っていました。
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そしてとても寒い。東北地方の秋の朝の冷え込みは具合は、東京のそれとは明らかに異なっています。

6時33分発の駒ヶ岳8合目行きバスに乗車します。僅か20分程の時間でしたが、寒さに震えながらバスを待つ時間が試練でした。
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10月3連休の秋田駒ヶ岳の混雑具合がどの程度のものなのか読めずにいたのですが、早朝であればバスがそこまで極端に混むことも無いようなので、早々と列に並んでおく必要はないと思います。駅舎の中で待ちましょう。

バスはまっすぐに駒ヶ岳には向かわずに、田沢湖を経由します。こちらもまだ朝早い時間と言う事もあってか、人影もなく静まり返っていました。
田沢湖の遊覧船乗り場
そう言えば周辺にある山から見下ろしたことはあっても、田沢湖そのものを観光したことが一度もありません。登山者好き人間であれば、ここまで来たからにはどうしたって観光ではなく山に登ってしまうではありませんか。

車窓に目指す秋田駒ヶ岳の姿が見えて来ました。山頂近くの標高1,300メートル地点にある8合目までは車道が通じており、そこまでバスで入ることが出来ます。
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6月の頭から10月下旬にかけての期間中の土休日には、駒ヶ岳8合目までの道でマイカー規制が行われています。車でお越しの人は、途中にあるこのアルパこまくさの駐車場に車を停めて、シャトルバスに乗り換える必要があります。
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秋の3連休の初日と言う事で相当混むだろうと身構えていましたが、朝の時点ではそこまでの混雑は無く、僅かに数人が乗車して来たただけでした。

秋田駒ヶ岳は8合目起点であれば比較的短時間で周回できる山なので、地元の人が行動を開始するのはもう少し遅い時間になってからなのかもしれません。

7時40分 駒ヶ岳八合目に到着しました。バスを降りるなり、秋らしくカラリと乾いた空気が出迎えてくれました。本日は絶好の登山日和となりそうです。
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肝心の紅葉の色付き具合はと言うと、良い感じに見ごろを迎えていました。栗駒山のような山腹全体が錦模様に染まる紅葉とは違い、緑の笹原の上にポツポツとパッチワークのようにして色付いています。
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駒ヶ岳8合目に立つ避難小屋です。朝の時点ではまだ営業を開始していませんでしたが、1階が売店になっており秋田駒ヶ岳の山バッジもここで買えます。
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2.手軽に登れる秋田駒ヶ岳最高峰の男女岳

7時50分 身支度を整えて行動を開始します。本日は乳頭山まで縦走する計画ですが、その前にまずは秋田駒ヶ岳の山頂を目指します。最高地点の土を踏むことは、ピークハンターたるもののお勤めでございます。
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確かに紅葉はしているのですが、笹の緑色の部分の割合が圧倒的に大きいです。この辺が、秋田駒ヶ岳が紅葉の名所としての知名度的にはそれほど高くない理由でしょうか。
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秋田駒ヶ岳は現在も活動が続いている現役の火山です。噴火警戒レベルが設定されているので、訪問する際は必ず事前に確認してください。
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登山口の8合目の時点ですでに森林限界高度を越えているため、まだ歩き始めてから早々の時点からこの絶景です。人気があるのにも納得が行きます。
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シャトルバスが、ギアをローに入れて唸り声をあげながら続々と登って来ています。本格的な混雑が始まる前に、山頂へと急ぎましょう。
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登山道は山頂に向かって直登はせずに、右側から大きく回り込むようにして続いています。全体的に緩やかで急登はありませんが、足元は泥で滑りやすいコンディションなので注意を要します。
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標高が上がってきたところで、背後に本日の目的地である乳頭山の姿が見えました。あれ、なんか思っていたよりも遠くない?と言うのが初見での率直な感想です。
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まあ実際問題として決して近くはないです。本日歩こうとしている行程は、なかなかのロングトレイルとなります。

トラバース気味に続いていた最初の登りが終わると、開けた場所に出ました。まったくピークっぽくはありませんが、片倉岳と呼ばれている地点です。
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山頂部がお目見えしました。秋田駒ヶ岳と言う名称は山体全体の事を指しており、この最高地点は男女岳(おなめだけ)と言う名前です。この先もやはり直登はせずに、右側から回り込んでいきます。
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眼下に田沢湖の全容が良く見えます。田沢湖は日本一水深が深い湖で、水深は423メートルあります。噴火口に水が溜まって出来たカルデラ湖であると考えられています。
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彼方に薄っすらと鳥海山(2,236m)が見えています。あちらも夏にしか登ったことがないので、一度紅葉の時期にも歩いてみたいんだよな。
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男女岳の脇をぐるりと回り込んだ所で、浄土平と呼ばれる平坦地に出ました。夏には一面お花畑になる場所ですが、今の時期には枯草に覆われています。
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この浄土平には、阿弥陀池と呼ばれる池があります。流石に秋にもなると水量は少なく、半分以上は干上がっていました。
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池のまわりを周回できるように木道が整備されています。水面に映った見事な逆さ男女岳の姿を見ることが出来ました。素晴らしい!
阿弥陀池に映った男女岳

池の辺にも避難小屋建っており、トイレまであります。大人気の山だけに、至れり尽くせりです。トイレについては、登山者の便宜を図るためと言うよりは、環境保全のためと言う側面の方が大きのだろうとは思います。
秋田駒ヶ岳 浄土平の避難小屋

ここから男女岳の山頂をサクッと往復します。避難小屋の前からだと、10分から15分くらいの距離です。
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大部分が階段になっていますが、ここまでの道程に比べるとそこそこな急登です。秋田駒ヶ岳登山における唯一の頑張りどころと言ったとろでしょうか。
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息を切らせつつ一気に登り詰めると、あっけなく山頂に飛び出しました。人気の山だけに山頂はそこそこ混雑していました。
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9時5分 秋田駒ヶ岳に登頂しました。8合目スタートなら、だいたい1時間半もあれば登ってこれる、圧倒的にお手軽な行程でした。難所と呼べるような場所もないので、初心者向きの山であると思います。
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手軽に登れる山ながらも、山頂からの眺めに関しては1級品です。360度の全方位に展望が開けています。
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南には、東北地方の山の中でも特に歩く人の数が少ない山域と言われる、和賀山塊が横たわっています。なかなかアクセス困難な場所にありますが、深山幽境の地と呼ぶにふさわしい原始性の高い森が広がっている山です。
秋田駒ヶ岳から見た和賀山塊

北側には男岳(おだけ)(1,623m)の先に田沢湖が見えています。男岳については前回訪問時にも一度登っているので、今回はパスするつもりでいます。
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北側には本日この後に歩くことになる、乳頭山へと続く稜線が連なっています。いかにも東北地方の山らしい、雄大なスケール感の山並みです。それにしても、乳頭山遠くない?(2度目)
秋田駒ヶ岳から見た乳頭山方面尾展望
秋田駒ヶ岳は名前からしてもう秋田県の山であると言う印象しかありませんが、実は岩手県との境界上にあります。今正面に見えているこの尾根が県境になっています。

周囲の山の中でも、岩手山(2,038m)の存在感が際だっています。あちらは境界上ではなく、名前の通りしっかりと岩手県内にある山です。
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3.焼け森分岐から未踏の領域へ詩を踏み入れる

ピークハンターとしてのノルマ(?)は無事に果たされました。本日はまだまだ先が長いので、ボチボチ前進を再開しましょう。
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サクサクと下って阿弥陀池まで戻って来ました。
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池の脇を突っ切って、向かいの稜線に登り返します。現在地の浄土平があるのはかつての噴火口の底であり、正面に見えている尾根はそのフチに当たる場所です。
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崩落が進んでいでいるらしく、木道が整備されています。大人気の山だけに、オーバーユースの問題も相当深刻そうではあります。
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稜線の上まで登って来ました。突き当りの分岐を右へ進むと、先ほど山頂からも見えていた男岳に至りますが、今回はスルーして横岳方面へ進みます。
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眼下に通称ムーミン谷と呼ばれている谷が一望できます。初夏の雪融けシーズンになると、一面にチングルマが咲き誇り楽園のような光景が広がる場所です。
横岳分岐から見たムーミン谷
今回はこちらへは下りません。ムーミン谷までを含めた周回ルートを取ると、コースタイム的に日没までにゴール出来るか若干怪しくなってしまうので。

こちらの黒々とした斜面は大焼砂と呼ばれており、名前の通りかつての火山噴火の際に生じた火山砂が堆積しています。夏になると、それはもうたくさんのコマクサが咲きます。
横岳分岐から見た大焼砂

正面に見えているピークと言えない様な突端が横岳です。わざわざ名前が付いているという事は、麓から見るとちゃんと山らしい姿をしているのかな。
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横岳の山頂からは北上盆地を一部することが出来ます。秋田駒ヶ岳が岩手県の山でもある事が大変よくわかる光景です。
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ここからは進路を北に転じます。岩手山に向かってひたすら歩き続けるイメージです。
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秋田駒ヶ岳の稜線上には、こうして所々に笹すらも生えていない砂地が点在してるのですが、これは土壌の問題なのか。それともこの辺りが強風の通り道になっていることが事が関係しているのか。
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10時50分 焼森まで歩いて来ました。火山砂がうず高く堆積した砂山のようなピークです。ここもほぼ全方位に展望が開けています・
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振り返ってみた秋田駒ヶ岳の山頂部です。複数回にわたって小さな噴火を繰り返したことにより形成されたのであろう、多数のピークが入り組んだ複雑な地形をしています。
焼森から見た男岳と男女岳

先へ進みましょう。焼け森からは、湯森山との鞍部に向かって一度大きく下ります。東北地方の山の、あまりにも雄大すぎるスケール感に震えます。それにしても、乳頭山遠すぎない?(3度目)
焼森から見た湯森山と笊森山

下り坂の途中に分岐が現れました。湯森山方面へ向かうには、ここから右方向へと進みます。
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4.大きく洗堀された地面に苦しめられる湯森山への道程

ここから先は自身にとって初めて歩く領域となります。山頂付近の喧騒が嘘のように人の姿を見かけなくなったので、クマ鈴を装着しました。
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道が大きく洗堀されています。もともと火山砂が堆積しただけの脆弱な土壌であるため、一度表土が失われてしまえば後はもう止めどもなく崩れていきます。
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正面に見えているのっぺりとした丘のようなピークが湯森山で、その右後方にある同じくのっぺりしている山が笊森山です。これからこの2座を乗り越えていきます。
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紅葉も良い感じに色づいています。ただ遠目からも見えていた通り疎らで、視界一面の錦模様とはなりません。
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最低鞍部だと思われる場所に、地図には記載がない小さな沢が流れていました。ここからは登り返しです。
241012秋田駒ヶ岳-058

大分笹がうるさくなって来ました。やはりこの湯森山ルートは、あまり歩かれてはいないようです。
241012秋田駒ヶ岳-059

道の上にこうした洗堀による穴が多数開いています。落とし穴レベルの大穴もあったりするので、歩行の際には注意を要します。特に逆向きに下るときは結構危ないと思います。
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なかなか野性味が溢れる道になって来ましたぞ。藪漕ぎとまではいきませんが、放牧的な見た目と裏腹に、決して歩きやすくはありません。
241012秋田駒ヶ岳-061

振り返って見た秋田駒ヶ岳です。この複雑怪奇にデコボコしている外観は乗鞍岳などとよく似た雰囲気で、いかにも火山らしい姿です。
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思いのほか悪路で苦戦を強いられましたが、何とか山頂らしき場所まで登って来ました。
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11時25分 湯森山に登頂しました。見た目の通りに、あまりピーク感が無い平坦な空間が広がっていました。
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5.幾多の高層湿原を越えて笊森山へ

既に結構な距離を歩いたような気分になっていますが、現在地はまだ本日の行程における折り返し地点ですらありません。立ち止まっていないでどんどん先へ進みましょう。
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笊森山も湯森山とよく似た姿をしています。ピークというよりは、なだらかな丘の連なりのように見えます。良いですね、実に私好みの稜線です。
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サクサクと鞍部まで下って来ました。ここからは再び緩やかな登りです。洗堀落とし穴トラップが無いことを願うしだいですが、どんな感じでしょうか。
241012秋田駒ヶ岳-067

焼け森付近の砂地とは違う、泥炭の地層が露出しています。トラップのような大穴こそ開いていませんが、よく滑るのでどの道歩き易くはありません。
241012秋田駒ヶ岳-068

泥炭層があると言う事はすなわち、高層湿原があると言う事です。枯草色に覆われた小規模な湿原が広がっていました。夏に訪れれば、きっとワタスゲが沢山咲いていたりするのでしょうね。
241012秋田駒ヶ岳-069

この木道がいつ頃に整備されたものなのかは分かりませんが、風化が進み土に還りつつありました。踏むと動くものもあるので注意を要します。
241012秋田駒ヶ岳-070

木道が水没してしまっている個所もあり、トレイルは全般的に荒れ気味です。冬は完全に雪の下に埋もれてしまう場所でしょうから、木材にとっては相当過酷な環境です。
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池塘がポツポツと点在しています。雪解け水がなくなって久しい秋になっても、まだこれだけの水が残っている辺り、泥炭層がもつ保水力の高さが良くわかります。
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前方に宿岩と呼ばれている、ひときわ目を引く大岩があるのが見えます。あの岩がある辺りが、湯森山と笊森山のほぼ中間地点です。
241012秋田駒ヶ岳-073

目の前まで行くと、見上げる高さの巨岩です。これは秋田駒ヶ岳から飛んできた火山岩か何かでしょうか。
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特に由来を記した案内板などは設置されていませんでしたが、名前からして恐らくは岩の軒下に行者が寝泊まりしていたのでしょう。
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まるで棚田のように点在している池塘を横断しつつ進みます。昨日登った栗駒山もそうでしたが、東北地方の山の稜線上にある平坦地は、基本的に湿原になるものなんですね。
241012秋田駒ヶ岳-076

視界を遮るものが何もないため距離感がおかしくなりそうですが、山頂はすぐそこにあるように見えて結構な距離があります。登っても登って景色が変化せず、少々ダレて来ましたぞ。
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いつの間にか秋田駒ヶ岳がすっかり小さくなっていました。人間が歩く速さと言うのは、思っているよりもずっと速いものですな。
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永遠に続くかのように思えた登りでしたが、ようやく終わりが現れました。乳頭温泉側から登って来たのか、ここに来て結構な数の登山者の姿がありました。
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12時45分 標柱の文字が擦れて見えなくなっていますが、笊森山に登頂しました。急登個所こそありませんでしたが、なかなか歩きでのある道程でした。
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あれほど遠くに見えたいた乳頭山を、ようやく目の前に捉えました。秋田県側から見るとおっぱいの様な形をしていると言うのが名前の由来ですが、岩手県側では烏帽子山とも呼ばれています。
笊森山から見た乳頭山
確かにここから見る分には、あまりおっぱい型には見えません。見る角度限定おっぱいです、さっきからおっぱいおっぱいうるさいよ。

岩手山がすぐ目の前にありました。南部富士の異名を持つ山ですが、富士山型に見えるのは盛岡市内から見た時限定で、横から見ると背びれのような稜線が連なっています
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岩手山の裏手の尾根沿いから繋がっているこちらの山は、三ツ石山(1,466m)です。紅葉の名所としてそれなりに名が知られている山なので、きっと今頃は多くの登山者で賑わっている事でしょう。
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6.縦走最後の最後ピーク乳頭山へ

長かった縦走路もいよいよ最後の1座を残すのみです。時間も押して来ているので仕上げに取り掛かりましょう。鞍部に向かってまた1度下ります。
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すぐに分岐が現れるので、ここを左に入っていきます。右側に進むと岩手県の雫石町に下ることが出来ますが、降りた先に公共交通機関は存在しません。
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笊森山と乳頭山の鞍部一帯にも広大な高層湿原帯が広がっています。登山道から外れたが最後、まともに歩くことさえも困難であろう、原始性の高い山の姿です。
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最低限の刈払いは行われていますが、道の状態は相変わらずあまり良いとは言えません。まあ、あまり歩く人は多くないであろうルートですから。
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鞍部に広がる湿原を横断します。ここでは木道はなく、周囲の湿原よりも一段高い尾根上に道がありました。
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乳頭山に向かって最後の登りです。山頂の乳首の部分は切り立った岩に覆われているように見えますが、登山道は果たしてどうやってあそこを乗り越えるのか。
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ここまでの緩やかなの登りとはことなり、乳頭山へ登りはそこそこの急峻です。一部崩落していて道筋がわかりづらいところもあるので、よく周囲を観察しながら登りましょう。
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正しいルートを歩んでいれば藪漕ぎはありません。藪に突っ込んでしまったら道を間違えています。

振り返ってみた笊森山です。南側から見た時の丘のようにのっぺりとしていた姿とは異なり、山の西側は大きく崩れて切り立った崖になっていました。
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山頂の直下まで登って来ると、何のことはない登山道は切り立った岩の裏側に回り込むようにして続いていました。
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背後の彼方に八幡平(1,614m)らしき山が見えています。横岳から乳頭山に至るまでの登山道はずっと、岩手県と秋田県の境界上をなぞるようにして続いていますが、見える景色的には完全に岩手県の山であるように思えます。
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山頂らしき場所まで登って来ました。
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13時55分 乳頭山に登頂しました。この山も秋田駒ヶ岳にまったく引けを取らない、360度全方位に展望が開けている山です。今こそおっぱいを称えよ!
乳頭山の山頂

今日ここまで歩いて来た道のりのすべて一望することが出来ます。こう言うフィナーレの迎え方は、縦走登山の醍醐味であろうかと思います。
乳頭山から見た秋田駒ヶ岳

スタート地点の秋田駒ヶ岳は、最早遥か彼方です。乳頭山があれだけ遠そうに見えていたわけですから、当然逆もまたしかりです。
乳頭山から見た秋田駒ヶ岳

岩手山も相変わらずよく見えてます。個人的に贔屓にしている山なので、ただ岩手山が見えていると言うだけでも、何となしに気分が高揚してきます。
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向かいの笊森山から見えていた通り、山の東側は切れ落ちています。足元は断崖絶壁なので、端の方ではしゃいだりしないように十分ご注意ください。
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7.田代平を抜けて乳頭温泉へ

これで本日の目的は達成されました。さあ帰りましょう。と言っても、ここからがまた結構長かったりするのですがね。
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振り返ってみた乳頭山の山頂部です。東側がごっそりと崩れ落ちてしまっている様子が良くわかります。かつては山頂に三角点が存在しましたが、崩壊に巻き込まれて今はもうありません。
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下り始めて程なく、最短で下山することの出来る黒湯コースと、田代平を経由するコースの分岐があります。黒湯コースの方は現在橋が崩落していて通行止めとなっているため、選択の余地はありません。田代平方面へ進みます。
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なるほど眼下に、湿原らしき多数の草原が点在しているのが見えます。あそこが田代平なのでしょう。
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ちなみにこの田代と言う地名は主に北陸や東北で多数目にしますが、田んぼになりそうな湿地の事を指しています。

この田代平への下りは、木道がガタガタでアスレチックコース状態になっていました。釘が突き出ていたりして大変危険な状態なので、バランスを崩さないように慎重に下っていきます。
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14時50分 シーソ―状態の木道に思わぬ苦戦をしつつ、何とか田代平山荘まで下って来ました。山荘を名乗っていますが、実態は無人の避難小屋です。
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2階部分にも出入り口があるのが、豪雪地帯の山にある避難小屋ならではです。慌ただしく日帰りで歩くよりも、ここに1泊して巡った方がきっと楽しいんだろうなとは思います。
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小屋のすぐ目の間に池塘がある、たいへん素晴らしいロケーションです。ここで水面に映る星空などを撮影できたら、きっととても素敵でしょうね。
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暫しの湿原散策を楽しみます。高層湿原が大好きな私からすれば、やはりこの山を日帰りで登ってしまうのはもったいないように思えて来ました。
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分岐まで歩いて来ました。田代平はこの先にまだまだ続いているのですが、ここで孫六湯方面へと進路を転じます。
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これから下ろうとしている孫六湯に至る下山ルートですが、登山地図上には悪路であるとの記載があります。まあ恐らく東北地方の山にはありがちな、泥濘が酷い道なのでしょうね。
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想像していた通りの、大きく洗堀された滑りやすい酷い道が始まりました。この先はあまり写真も撮らずに、黙々と大真面目に下山と言う作業に取り組みました。
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中腹のブナ林まで下って来ると、依然として滑りやすいとは言えども、足元の状態はいくらかマシにはなりました。
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16時25分 後半はだいぶ端折りましたが、何とか転ばず無事に孫六温泉まで下って来ました。
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こちらの温泉施設は現在改修工事が行われている最中らしく、工事車両が出入りしているだけで営業はしていませんでした。
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既にやり切った感が出てしまっていますが、残念ながら現在地はまだゴールではありません。バス停まではもうあとひと道あります。最後まで頑張って歩きましょう。
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日も傾いて周囲が薄暗くなり始めたところで、ようやくバス通りまでたどり着きました。
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16時40分 乳頭温泉バス停に到着しました。ここから田沢湖駅行きのバスは、概ね1時間に1本の頻度であります。せっかく温泉まで歩いて来たのですから、撤収する前にひと風呂浴びて行きたいところです。
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乳頭温泉には日帰り入浴専門の施設が存在せず、旅館の風呂に入れてもらう形となります。そのため日帰り入浴の受付時間は、宿泊客がチェックインを始める前の15時までとなっています。
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このままでは終われない。と言う事で、一縷の望みをかけて少し離れた位置にある休暇村まで歩きます。休暇村ならばきっと、遅い時間まで日帰り入浴をやっているはずだ。

しかし無情にも、休暇村の日帰り入浴受付時間も既に終了していました。入浴自体は17時までやっているのですが、受付はその1時間前で終了していました。がっくし。
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と言う事で、本日はこの休暇村バス亭がゴール地点となりました。下山後に温泉に立ち寄りたかったら、もっとハイペースで気張って歩く必要があると言う事ですな。

道があるとはいえど、現在地は街灯も何もない山の中です。陽が沈むと辺りはあっという間に真っ暗闇になりました。30分程の待ち時間でやって来たバスで撤収します。
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田沢湖駅まで戻ってきた時には、時刻は18時30分を回っていました。朝と同様に駅の周辺は一切の人影もなく、静まり返っていました。駅の近くに、ちょっと晩御飯を食べられるような商業施設は一切無いのでご注意ください。
夜の田沢湖駅

全席指定のブルジョワな乗り物秋田新幹線こまちに乗り込み、帰宅の途に付きました。
田沢湖駅に入線する秋田新幹線

わざわざ乳頭温泉まで歩いておきながら温泉に入れなかったのは残念無念でしたが、秋田駒ヶ岳から乳頭山に至る縦走路は、東北地方の山らしいスケール感のあふれる素敵な稜線でした。

恐らく秋田駒ヶ岳に訪問する登山者の大多数は、男女岳とムーミン谷だけを巡るのでしょうけれど、時間が許すのであれば是非とも乳頭山までの足を伸ばしてみてほしいです。特に高層湿原が好きの人には大いに推奨します。

東北の山の中では公共交通機関によるアクセスも容易な方に部類しており、あらゆる人に自信をもってお勧めのできる優等生的な名峰であると思います。

<コースタイム>
駒ヶ岳8合目(7:20)-秋田駒ヶ岳(9:05~9:20)-焼森(10:15)-湯森山(11:25)-笊森山(12:45~12:55)-乳頭山(13:55~14:10)-田代平山荘(14:50)-乳頭温泉バス停(16:40)-休暇村バス停(16:55)

乳頭山山頂での記念撮影

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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