
神奈川県山北町にある畦ヶ丸(あぜがまる)と箒沢権現山(ほうきさわごんげんやま)に登りました。
どちらも西丹沢ビジターセンターのすぐ傍らに立っている立っている山です。畦ヶ丸は東海自然歩道のルートにも組みこまれている山で、シロヤシオシーズン中にはそこそこの賑わいを見せます。一方で畦ヶ丸から尾根続きの隣にある権現山は、殆ど訪れる者はいない静かな頂となっています。
シロヤシオが咲き誇るベストシーズンの西丹沢で、ひっそりとしたマイナールートを巡って来ました。
2025年5月13日に旅す。
warning!
本記事で取り上げるルートは、整備された一般登山道が無い、いわゆるバリエーションルートです。
・ルート上の踏み跡は薄く、道標などの案内はありません。必ず詳細な地形図を携行してください。またGPSの使用を強く推奨します。
・誰でも気軽に歩けるルートではありません。安易な気持ちでの入山は避けて下さい。
西丹沢の畦ヶ丸の隣に立つ権現山は、付近の山から見た時にそれなり目立つにもかかわらず、何故か存在自体を殆ど認識されていない極めてマイナーな山です。

ちなみに丹沢山地には権現山が2つあります。丹沢湖の傍らにあるもう一つの権現山と区別するために、それぞれ世附(よずく)権現山と箒沢(ほうきさわ)権現山と呼ばれています。
箒沢権現山が殆どその存在を知られていないのには理由があります。この山には管理されている一般登山道が存在しません。バリエーションルートのみの山です。

登山ルート上には崩落しかけている個所が複数あり、誰でも気軽に歩ける山ではありません。ごく少数の好事家だけが訪れる静かな山です。
新緑の若葉が芽吹きシロヤシオが花を咲かせる5月上旬は、西丹沢訪問のベストシーズンです。最高の季節を迎えた西丹沢のマイナールートを巡って来た1日の記録です。

コース

西丹沢ビジターセンターよりスタートして、途中で下棚の滝、本棚の滝および善六山に立ち寄りつつ畦ヶ丸に登頂します。
畦ヶ丸から先はバリエーションルートの尾根を歩いて、箒沢権現山まで縦走します。下山は西丹沢ビジターセンタへと直接下る周回ルートです。
1.畦ヶ丸&箒沢権現山登山 アプローチ編 電車とバスで行く西丹沢への旅路
5時55分 小田急線 喜多見駅
朝っぱらから自転車をこいで、言うほど近くはない第3の最寄り駅こと喜多見駅までやって来ました。箱根や丹沢に出かける際には、これがすっかり定番の行程になりました。

7時3分 西丹沢の玄関口である新松田駅に到着しました。私はいったい年に何回くらいこの駅を訪れているのだろうか。もはや見慣れた光景です。

7時15分発の西丹沢ビジターセンター行きのバスに乗車します。シロヤシオシーズンにはかなり混雑するので、到着したら早々と向かいましょう。

トイレに寄っていた私は当然のごとく出遅れて、終点まで1時間以上を立って行くハメになりました。実に幸先の悪いスタートです。
8時35分 西丹沢ビジターセンターに到着しました。西丹沢が年に最も混みあう時期だけに、大勢の登山者の姿がありました。

恐らく大多数の人は檜洞丸を目指すのでしょう。少なくとも、箒沢権現山に登ろうとしている人はほぼいないだろうと思います。
2.西沢沿いにある丹沢名瀑、下棚の滝と本棚の滝
8時40分 手早く身支度を整えて、本日の行動を開始します。最初は一般登山道を辿り、畦ヶ丸の山頂を目指します。

吊り橋を渡った対岸が取り付きです。この川はもともと中川川(誤記ではない)と言う名前だったはずなのですが、最近の地図を見ると河内川と表記されるようになりました。

河内川と言う名称は、もともとは丹沢湖よりも下流域の呼び名だったはずなのですが、いつの間に上流部までそう呼ばれるようになったのでしょう。
西丹沢ビジターセンターから畦ヶ丸に至るまでの道は、信頼と実績の東海自然歩道に組み込まれているルートです。登山道は大変よく整備されており、特にこれと言った危険箇所はありません。問題があるのは畦ヶ丸の山頂から先の領域です。

いくつかの砂防堰堤を乗り越えつつ、沢沿いの道が続きます。西丹沢ビジターセンタから畦ヶ丸山頂までの区間については、過去に何度か詳細にレポートしているので、今回はバッサリと省略いたします。



と言うことで場面は飛んで、下棚の滝への分岐地点まで登って来ました。本日は特段先を急ぐ旅路でもないので、ちょっと寄り道していきます。

一応は薄っすらと踏み跡がありますが、滝までは道なき沢沿いを遡って行きます。雨上がり直後の水量が多い時などは、それなりに難儀することもあるかもしれません。

9時30分 下棚の滝まで登って来ました。落差はおよそ40メートルほどあります。川苔山の百尋の滝とほぼ同じ高さです

この棚と言うのはもともと滝の事を指しており、単に下棚と呼ぶのが正式な名称ですが、案内図などでは下棚の滝と書かれていることが多いです。それだと滝滝になってしまうのですけれどね。
水量がそれほど多くはない滝のため、滝壺は浅く小ぶりで目の前まで近づけます。もっとも、あまり近づき過ぎると飛沫でずぶ濡れになりますが。

来るたびに毎回ずぶ濡れになり、毎回同じコメントをしているような気がします。いつまでたっても学ばないおっさんです。
分岐まで引き返して先へ進みましょう。沢沿いの道がづっと続いていますが、上流に進むにつれて川幅は狭まり、水量もだいぶ少なくなってきました。

今度は本棚の滝への分岐地点まで登って来ました。ここでも当然寄り道をしていきます。

本棚への道程は下棚よりもさらにワイルドと言うか、道とは言えないような際を歩くことになります。沢へ転げ落ちないように十分ご注意ください。

9時50分 本棚の滝に到着しました。行きどまりの谷底に向かって、左右から2つの滝が流れ落ちてきており、なかなか壮観な光景です。

左手にあるのが本棚の滝です。落差は60メートルほどあり、丹沢山地にある滝の中でも最大級の高さです。

右手にあるのが涸棚の滝です。こちらは大雨が降った直後にだけ出現する幻の滝となっています。今は出現していませんが、普段から岩肌を濡らす程度の僅かな水流はあります。

過去にそれこそ何度も見に来ている滝なのですが、それでも毎回寄り道がしたくなるだけの迫力があります。畦ヶ丸にお越しの際には、是非とも立ち寄って見てください。
3.善六のタワの傍らにひっそりと立つ善六山
分岐まで引き返して先へ進みます。本棚の滝までは比較的緩やかな道が続いていましたが、ここからようやく登りが本格化します。

沢沿いの道がもうしばらく続きます。水流は無くなり、涸れ沢の底を直接歩く状態になりました。

沢沿いから離れてたところで、一気に標高を上げ始めました。前半戦が緩やかだった分、後半になってから一気に取り返すかのように急登が続きます。いっちょう気合を入れていきましょう。

途中で小さな沢を横断します。ここは毎回来るたびに木階段の配置が変っています。登山道が崩れては修繕するいたちごっこを繰り返しているのでしょう。整備してくれている方にはまことに頭が下がります。

何度か登っておりてを繰り返したところで、明瞭な尾根に乗りました。ここから先は山頂までずっと尾根沿いです。

ここでようやく、本日第一号となるシロヤシオがお目見えとなりました。

まずまずの咲きぶりです。大規模な群生地があるのはもう少し先の一帯なので、喜んでいないで先へ進みましょう。

善六のタワと呼ばれている地点の少し手前まで登って来ました。まっすぐ畦ヶ丸に向かうのであれば、このまま道なりに左へ進みます。

正規ルートとは反対側の右側に登ると、善六山と言う小ピークがあります。今回はそこへ寄り道をして行こうかと思います。そこからなら、目指す箒沢権現山の姿が良く見えるのではななかろうかと期待しての寄り道です。
登山道から外れて反対側の尾根を登って行くと、一応は薄っすらと踏み跡らしきものが続いていました。昭文社の山と高原地図には案内されていないルートですが、踏み跡が出来る程度には歩く人がいるようです。

とは言っても管理されている登山道ではないため、東海自然歩道のような明瞭さはありません。登れそうな場所を見繕いつつ、少々強引によじ登る必要があります。

稜線の上まで登ると、頭上が開けた明るい広尾根になっていました。畦ヶ丸へのメジャールートのすぐ傍らに、こんなほとんど知られていない空間が広がっていたことに驚きです。

最高地点らしき場所まで登って来ました。かなり広々とした空間です。手作り山頂標識の一つくらいはあるのかな。

10時55分 善六山に登頂しました。周りを見渡したら、しっかりと木にプレートが打ち付けられていました。

山頂のすぐ脇に崩落地があり、そこからの展望が僅かに開けています。真正面に畦ヶ丸の姿が良く見えました。

西丹沢の山はどこも全般的に森が濃く樹木に視界を遮られるため、畦ヶ丸の全容を近くから眺めることのできる場所は存在しないものだと思っていました。実はこんな格好なスポットが存在していたのですね。
そもそも、畦ヶ丸の全容を近くから眺めて見たいというニーズ自体が、どれほどあるのかはひとまずさておき。
そして期待していた通りに、箒沢権現山の姿も良く見えました。山頂まで山全体がすっぽりと森に覆われているその姿は、まあなんと言うかとても地味です。だがしかしそれが良い。

畦ヶ丸と箒沢権現山は、尾根沿いに繋がっています。今日はこの後、この尾根の上を歩きます。見たところはそれほど大きなアップダウンもなくフラットで、いたって歩き易そうな尾根に見えます。

実際に歩いてみるとどうなのかは、ここからのお楽しみです。
4.満開のシロヤシオ群生地を抜けて畦ヶ丸の山頂へ
元来た道を引き返します。善六山へ寄り道をしたのは単なる思い付きだったのですが、思いのほか良い光景が見られました。行動時間に余裕があるなら、是非とも立ち寄っていくこと推奨します。

サクサクと善六のタワまで下って来ました。ここは両側が切れ落ちていて、尾根が細くなっています。過去に滑落死亡事故も発生している場所なので、十分に注意して通過しましょう。

いつも何気なく通過していた場所でしたが、善六山との間にある鞍部だから善六のタワと言うそなままな名称です。

善六のタワを過ぎてすぐに、ハシゴ状の長い木階段があります。クサリの手すりがあるので特に難しい要素はありませんが、引き続き慎重に進みましょう。

ハシゴ地帯を過ぎると、いよいよ待望のシロヤシオ群生地の只中へと入って行きます。

訪問のタイミングとしては完璧で、満開の見頃を迎えていました。背景が薄曇り白い空なのが残念なところです。シロヤシオは、青空の下にこそ一番映えますから。

ミツバツツジも満開を迎えており、白と紫の競演が繰り広げられています。西丹沢は今まさに、最高の季節を迎えていました。

シロヤシオのトンネルの下を進みます。西丹沢のシロヤシオと言えば一番有名なのは檜洞丸の方ですが、畦ヶ丸のシロヤシオは檜洞丸よりも僅かに早く、だいたい1週間前くらいに見頃を迎えます。

トンネル状の木の隙間から、お隣の箒沢権現山の姿が見えています。なんと言うか、見事なまでに緑一色な山です。

もっとあっさり辿り着いたような印象が残っていたのですが、善六のタワから畦ヶ丸の山頂まではそこそこ距離があります。具体的に言うと、だいたい1時間近くはかかります。こんなに遠かったっけか。

思っていた以上に時間をかけて、ようやく山頂が見えて来ました。

12時20分 畦ヶ丸に登頂しました。普段は貸し切り状態になることも珍しくない静かな山なのですが、シロヤシオシーズンたけなわと言うこともあり、そこそこ賑わっていました。

山頂はすっぽりと樹木に覆われていて、展望は全くありません。西丹沢らしいと言ってしまえばそれまでの、地味な頂です。だがしかしそれが良い。

東海自然報道の一般登山道を辿るのはここまでです。ここから先はいよいよバリエーションルートの領域へと入って行きます。
5.バリエーションルートの領域に足を踏み入れる
権現山方面へ向かうには、ここまで登って来た進行方向から見て左側へ進みます。入り口には何の目印もありませんが、丹沢名物のテーブルみたいなベンチの脇から、アセビの藪の中へと入って行きます。

足元の土は柔らかく、踏み跡の気配はまったく感じられません。方角はあっているはずなので、ともかく下っていきます。

山頂直下の急坂を下りきると、はっきり明瞭な尾根になりました。ここから先は道標はおろか、目印のピンクテープすらもありません。GPSの使用を強く推奨します。

かく言う私自身はGPSを見ずに、通称守屋地図と呼ばれている西丹沢登山詳細図を見ながら歩いています。これは単に趣味でやっている事なので、安易に真似はしないでください。
山頂から一度大きく下った後に、すぐに登り返します。畦ヶ丸は見る角度によっては2つのピークを持つ双耳峰のようにも見えますが、そのもう一つのピークへの登り返しです。

ここでもシロヤシオがポツポツと咲いていますが、大規模な群生地ではなく散発的です。

少しだけ開けている場所があり、雲が多めで残念な状態の富士山が見えました。正直展望にはまったく期待していなかっただけに、見えたのは意外でした。

この登り返したピークからの下りが少々わかりにくいです。尾根が左右の二手に分かれますが、進むべき方向は左の尾根です。

ここで唯一の目印になりそうなのがこの倒木です。この倒木が目に入ったら、進路を左へ転じてください。迷いそうなのはこの一か所だけで、以降は明瞭明快な尾根になります。
左の尾根に進んで以降も、しばしの間幅が広い尾根が続いて、道筋がわかりにくいです。あらぬ方向に下ってしまわないように、意識して尾根の最高地点を忠実になぞります。

ある程度下ったところで、ようやく間違えようのない明瞭な尾根筋になりました。

右手に大野山(723m)が見えています。山頂部がカヤトになっていることから、遠目からでも非常に目立つ山です。

反対側には、先ほど寄り道した善六山の姿がありました。畦ヶ丸と権現山の姿を眺めた崩落地も良く見えています。もっと広く開けていたように感じていましたが、意外にもごく小さな崩落地でした。

いかにも西丹沢らしいブナの森が広がっています。眺めの良さに関しては、塔ノ岳を始めとした表丹沢にある山の方が断然良いですが、森の美しさに関しては断然西丹沢の方に軍配が上がります。

しかし残念ながら、そんな美しい森の光景も長くは続きません。すぐに無粋な杉の植林が現れました。

杉の植林があると言うことは、人の手が加わっていると言うことです。植林のエリアに入るなり、明瞭な道がありました。

バリエーションルートらしい道なき尾根を辿るエリアは、ごくわずかな区間でしかありませんでした。いくらマイナールートだとは言っても、そこは丹沢ですからね。
前方の視界が開けて、権現山の姿を正面に捉えました。見たところ多少のアップダウンはありますが、そこまで急峻な山には見えません。

このまま簡単に辿り着けるのではないかと、この時はそう思っておりました。
道が明瞭になって道迷いの心配こそ無くなりましたが、バリエーションルートらしさが発揮されるのはむしろここからが本番でした。両側が切れ落ちた細尾根になって来ました。

完全にナイフリッジ状態になっている場所もあります。メジャールートであれば木道でガチガチに補強されてしまうところでしょうが、ここには何の補助もありません。

土が流出して、木の根が浮き上がっているような状態になっています。この状態がいつまで持つのかはわかりませんが、そう遠くはない将来に通行不能状態に陥る可能性は十分にあります。

訪問を考えている人は、早めに訪れた方が良いかもしれません。山は逃げます。
分岐がありました。地図を見た限りでは、左へ下って行くと下棚の滝がある辺りに下れるようです。

箒沢権現山への登山ルートとしては、ここから登ってくるのが最も一般的で、畦ヶ丸からの縦走はあまり歩かれてはいないようです。もっとも、箒沢権現山に登ることそのものがあまり一般的ではありませんが。
6.箒沢権現山登山 登頂編 丹沢湖を見下ろす静かなる頂
ここから一気に急登が始まりました。手も使わないと登れないような急勾配で、グイグイと標高を上げていきます。

箒沢権現山へのメジャールート(?)に合流したことにより、目印らしいペンキマーカ―が点々と付けられています。
急登を登りきりましたが、まだ山頂ではなく先がありました。なかなか勿体付けてくれます。畦ヶ丸からここまでノンストップで歩いてきたため、流石に少々お疲れ気味で足が前に出なくなって来ました。

今度こそ山頂に向かって最後の登りです。最後にもうひとあと息、頑張って登りましょう。

山頂らしき場所まで登って来ました。横に広く平坦な空間が広がっています。

土管を利用したベンチらしきものが並んでいます。見たところ標識の類は見当たりませんが、この辺りが最高地点であると言うことで良いのでしょうか。

14時30分 箒沢GONGENYAMAに登頂しました。まさかの、木にペンキで直接書いてあるスタイルでした。なかなか珍しいというか、よそではお目にかかったことが無い気がします。

どうせ展望はないのだろうと思っていましたが、意外にも南側が大きく開けていました。少なくとも、畦ヶ丸よりはずっと眺めの良い山です。

眼下に丹沢湖が見えています。と言うことは逆に、丹沢湖からは箒沢権現山が良く見えていると言うことでしょうか。あまり意識したこともありませんでしたが、次回訪れた際には探してみることにしましょう。

箱根の神山(1,438m)がちょうど真正面に見えています。カメラの最大望遠で覗くと、大涌谷から立ち上る噴気までもが微かに見えました。

丹沢湖の傍らに立っているこちらの山は、丹沢山地のもう一つの権現山である世附権現山(1,019m)です。あちらも一般登山道が存在しない山なのですが、隣のミツバ岳とあわせた周回ルートを歩く人は結構たくさんいます。

7.転げ落ちるような急坂が続く、西丹沢ビジターセンターへの下山行
さあ、帰りましょう。下山は元来た道へは戻らずに、西丹沢ビジターセンターへ直接下るルートから降ります。

相変わらず踏み跡の気配が全く感じられませんが、目印の赤ペンキが点々と続いています。マーカの導きに従って進みましょう。

地形図を見ると山頂からは明瞭な尾根が二手に分かれているのですが、ペンキマーカ―はそのどちらでもない間に向かって続いていました。えぇ、本当にここなんですか?

半信半疑のまま覗き込むと、谷底へ転げ落ちるかのような急勾配の道が続いていました。本当にここらしい。マジか。

この下りで相当肝を冷やしました。何かに掴まっていないと、まともに立っていられない様な傾斜度なのですが、トラロープなどの補助は一切ありません。

木の幹などに掴まりながら、おっかなびっくり慎重に下って行きます。結局この日一番の核心部だったのは、この最後の下りの区間でした。
谷に向かって思いっきり斜めになっているトラバースなどもあり、滑落注意な下りが結構長々と続きます。なるほどこれは確かに、一般登山道の扱いにはできないでしょうね。

傾斜が緩んできたところで、ようやく人心地つけました。実に緊張感あふれる下りでした。こうした急斜面は登るのよりも下る方が難しいので、反対向きに歩いた方が良かったのかもしれません。

核心部は突破しましたが、下山はまだもうしばらく続きます。傾斜が緩んでさえしまえば、柔らかくて足に優しい道です。

尾根はまっすぐに続いているのですが、ペンキマーカ―が途中から右へ逸れるように指示しています。気乗りはしませんが、尾根から外れて再び急降下が始まります。

先ほどの悪い冗談のような急降下がまた始まるのかと身構えていましたが、そこまで急ではない枝尾根に沿って下るだけでした。

眼下に中川川が見えて来ました。ゴールは川の対岸にあるはずですが、どうやって渡るのでしょうか。

川の直前まで下って来たところで、川沿いのトラバースに移りました。ここでも崖に向かって斜めになっている個所が複数あり、なかなか心臓に悪い道です。

スタート直後に渡った吊り橋の袂に下りて来ました。往路では全く気が付いてはいませんでしたが、こんなところに入口ありましたか。

16時40分 西丹沢ビジターセンターに戻って来ました。最後まで緊張感が溢れる、バリエーションルートらしいバリエーションルートでした。

最終便の1本前の、17時5分発のバスで撤収します。バス待ちの行列が出来上がっていましたが、何とかギリギリ席にはありつけました。

途中の山北駅で下車して、駅のすぐ隣にあるさくらの湯に立ち寄って一風呂浴びていきます。

本当はここではなく中川温泉ぶなの湯に立ち寄りたかったのですが、ぶなの湯は日帰り入浴の受付終了時間が早めで、もっとハイペースで下山しないと間に合わないのですよ。
箒沢権現山は前々からずっとその存在が気になっていた山でした。今回ようやくにして訪問がかないましたが、想像していた通りのいかにも西丹沢らしい美しいブナの森が広がっていました。西丹沢の雰囲気が好きな人には、間違いなく刺さるとは思います。
ただ実際に歩いてみれば良くわかりますが、結構危ない箇所も多く、一般登山道扱いではないのにも納得せざるおえない道のりでした。個人的にはとても気に入りましたが、さりとてあまり安易に人にオススメであるとは言い難い。箒沢権現山とはそんな山です。
だがしかしそれが良いと思うもの好きな方は、この西丹沢のあまり知られざる山を訪れてみてはいかがでしょうか。
<コースタイム>
西丹沢ビジターセンター(8:40)-下棚の滝(9:30)-本棚の滝(9:50)-善六山(10:55~11:15)-善六のタワ(11:30)-畦ヶ丸(12:20~12:40)-箒沢権現山(14:30~14:55)-西丹沢ビジターセンター(16:40)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。





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