山梨県大月市にある滝子山(たきごやま)に登りました。
広大な領域にまたがる奥秩父山塊が、笹子川に向かって沈みこむ最南端に位置している山です。山梨県大月市が制定した富士展望に優れた山の称号である秀麗富嶽十二景に選定されており、山頂からの眺望に優れています。また、その名の通り数多の滝が連なる清流の源流部となっている、水が豊富な山でもあります。
申し分ない晴天の空のもと、新緑の森と清流を巡る山旅をしてきました。
2017年6月3日に旅す。
早いもので暦はもう6月。2017年もまもなく半分が過ぎようとしています。梅雨入り直前のこの季節というのは、春霞の影響で遠望にはあまり期待できないものの、晴天率は高く登山に向いているシーズンといえるます。
今回は、バスを一切使わずに電車だけで登ることの出来る駅チカの山、滝子山へと登ります。
滝子山は大菩薩嶺より南に向かって伸びる、小金沢連嶺と呼ばれる尾根の末端部に立つ鋭鋒です。この山の南を流れる笹子川が奥秩父山塊と御坂山地の境界となっており、言わば奥秩父の最南端に位置しています。
標高は1,620メートルとそこそこの高さがあり、コースタイムもやや長めです。秀麗富嶽十二景における初級の山が岩殿山や高川山だとすると、滝子山は中級の山と言ったところです。
山頂へ通じる道はいくつか存在しますが、その中でも一番人気と言えるのがすみ沢コースです。いかにも滝の文字を冠した山らしい、沢沿いに登り上げて行く気持ちの良い道が続きます。
山全体が新緑に包まれ沿道にはツツジが咲き誇る、ベストシーズンの滝子山へと繰り出しましょう。
コース
笹子駅よりすみ沢ルートを通って滝子山に登頂。下山は初狩駅へと下る周回ルートです。標準コースタイムは6時間45分と、長すぎず短すぎない程よいボリュームの行程です。
1.滝子山登山 アプローチ編 駅から徒歩で、登山口の道証地蔵へ
7時56分 JR中央本線 笹子駅
ハイカースタイルの人たちが多数ここで降車します。この駅は滝子山のほかに、本社ヶ丸や笹子雁ヶ腹摺山といった山の出発地でもあります。
なお、笹子駅は無人駅です。この駅の利用者の大半はハイカーであると思われます。
駅舎の庇の下にはツバメが巣を作っていました。声高に何事かを主張しております。
身支度と腹ごしらえを済ませて、8時15分に出発です。このまま真っ直ぐ甲州街道を道なり進みます。
吉久保入口と言う場所で左折して中央本線のガードを潜ります。分岐点には必ずこのような道標があるので迷うことはありません。まことに大月市は親切で助かります。
直射日光がジリジリと照りつけ、早くも暑くなってきました。約1名、帽子忘れて来た人が妙な被り物をしております。
道なりに坂を上って行きます。このルートは始めの車道歩きが結構長めです。おおよそ1時間くらいは舗装路を歩き続けることになります。
中央自動車道を越えます。正面に立ちはだかっているのは笹子嶺と呼ばれる一帯で、あの峰を越えた先に甲府盆地があります。
林道を延々と歩きます。何気にこの林道歩きで結構標高を稼いでいたりします。
9時20分 ようやく滝子山の登山口に到着しました。ここから沢沿いの登山道が始まります。
可愛らしい小さな地蔵がありました。これが道証地蔵でしょうか。
2.数多の滝が滝が連なる沢沿いの道
すみ沢ルートはその名の通り沢沿いの道を行くルートです。日陰の沢沿いの道は空気がヒンヤリしていて半袖では寒いくらいでした。
滝子山と呼ばれるだけあって、登山道脇には沢山の滝が連なっています。これは「三条の滝」と呼ばれる滝です。
これは名も無い滝です。一際眼を引くような大きな滝はありませんが、小ぶりな滝が次々と現れます。
山崩れの跡と思われる崩落地がありました。杉の木が沢に向かって無残に薙ぎ倒されています。
登山道はしばし現れる崩落地を高巻しながら奥へと続いて行きます。
沢登をしている登山者が居ました。沢登には大変興味あるのですが、かなりハードルの高い分野のように思えて尻込みしています。
このやわらかい緑は、新緑シーズンならではの色合いです。紅葉時期も悪くはありませんが、個人的には新緑シーズンが一番好みです。ただ森の中を歩いているだけで気分が良くなります。
沢沿いをそのまま進むルート(難路)と、危険箇所を高巻する迂回路の分岐があります。ここは躊躇せずに難路と書かれた方へ進みます。
ここまでの道よりは多少険しさが増しますが、その分だけ滝の落差も大きくなり、このようなダイナミックな光景を見せてくれます。
難路とは言っても、進退窮まるような厳しい場面は特にありません。一般登山道レベルの道です。
ザレ場を通過します。非常に崩れやすい砂の斜面に人一人分の踏み跡があるだけです。足元を崩さないように小股でゆっくり通過しましょう。
ザレ場を突破すると、正面にナメ滝が現れます。傾斜のゆるい一枚岩の上を滑り落ちるように流れる滝の総称です。
滝子山を象徴するランドマーク的な滝です。これを見るためためにも、先ほどの分岐では難路側に進むことを強くオススメします。
まるでウォータスライダーみたいで、滑り降りたら楽しそうですね。当然ゴール地点にプールなんて気の利いたものは無いから、最後は岩にケツを殴打することになるとは思いますが。
10時20分 迂回路との合流地点に到着しました。少し空腹を覚えたので、ここで沢の辺に腰を下ろして一本立てました。
あれほどの急流だった沢も、この辺りまで登って来ると、小川のせせらぎと言った風情です。
木漏れ日に照らされた新緑の若葉が実に美しい。滝子山はちょうど今くらいの季節がベストシーズンだと思います。
3.滝子山登山 登頂編 防火帯を越えて好展望の頂へ
小屋の跡がありました。茶屋風でもないし、林業関係の作業小屋的なものでもあったのでしょうかね。
標高1,300メートル付近からカラマツ林が出現します。広葉樹林と針葉樹林の境界が大体これくらいの高度なのでしょう。
この付近一帯は、ちょっとした庭園風の光景を醸し出していました。数多の滝の連なる下流域とは大分雰囲気が異なります。
奥秩父クォリティの、素晴らしい透明度の沢水です。真夏だったら、躊躇なく頭からかぶってクールダウンを図るでしょうね。
あまり傾斜もなく、気持ちの良い道です。ここまでが割と急な登りだった分、一時の安らぎが訪れます。
安らぎの時間は永遠には続きません。沢筋をはなれて、いよいよ山頂への登りが始まります。
防火帯の中を直登します。沢沿いの涼しい道から一転、直射日光に晒されて汗が吹き出ました。
木の隙間から頭を覗かせているのは滝子山のお隣さんである大谷ヶ丸(おおやがまる)(1,643m)です。
始めに見えたときには、これが滝子山の山頂なのだと勘違いしました。沢沿いに向きコロコロを変えながら歩いていたせいで、方向感覚がおかしくなっていたようで・・・
振り返ると背後には八ヶ岳連邦の姿が見えました。あちらには、まだ大分雪が残っているようです。
11時30分 白縫神社に到着しました。源為朝と、その妻の白縫姫が隠れ棲んでいたとの伝説のある場所です。
こちらは白縫神社の脇にある鎮西ヶ池です。ただの汚い水たまりにしか見えませんが、源為朝が自刃して果て場所であるとの伝説が残っている場所だそうです。
「源為朝って、嫁さんの一族に落馬に見せかけて殺された人だよね?」
「それは為朝じゃなくて頼朝」
「政子怖い・・・」
鎌倉幕府トークで盛り上がっているうちに、稜線まで登って気ました。山頂まではもう一息です。
山頂に向かいます。山頂直下は何気にけっこうな急登です。ラストスパーとかけていきましょう。
頂上が見えました。見るからに展望がよさそうで、いやが上にも期待が高まります。
11時35分 滝子山に登頂しました。歩き始めて3時間20分で到着です。けっこう良いペースで登ってこれました。
秀麗富嶽十二景NO.4の実力はご覧の通り、なかなかのものです。
富士山をアップ。中腹に雲が掛かってしまっており、少々残念な姿です。富士山の手前にあるアンテナが立っている山は三つ峠山(1,785m)です。
こちらは反対の北側の展望。大菩薩嶺へと連なる小金沢連嶺の稜線が見渡せます。
北東の奥多摩方面の展望。
中央にある大岳山(1,266m)の特徴的なシルエットが、遠くからでも非常に良く目立ちます。特徴に乏しく山座同定が難しい奥多摩の山の中にあっては異彩を放つ存在です。
こちらは南東の方角。眼下に見えているのが初狩の市街地です。奥には道志山塊や丹沢の山々が見渡せます。
山頂のツツジはちょうど満開を迎えていました。
そして何故か山頂の様子を撮り忘れる。狭い山頂は人でいっぱいでした。山頂標識から少し外れた場所の木陰へと移動し、そこで弁当を広げました。
4.滝子山登山 下山編 ツツジ満開の道を下り、初狩駅へ
12時25分 下山を開始します。登ってきたすみ沢ルートは使わず、初狩駅方面に向かって下山します。
途中で岩場ルートと迂回ルートの分岐地点がありますが、ここは迂回ルートを行きます。
秀麗富嶽十二景エリアにある「危険」の立札の先は、本当に危険であることが多いです。あまり安易な気持ちで突っ込むのは止めておいた方が無難です。
こちらルートには、道の両脇に大量のヤマツツジが咲き誇っていました。
傍目から見ても尖った山であるだけあって、山頂直下はなかなか急峻です。スリップしないように小股でちまちまと降りて行きます。
ここも一応は富士展望スポットのようです。今日は雲に隠れてしまっていましたが。
しばらく進んだところで、道は尾根筋を外れて谷底に向かって降下を開始します。
杉林の急斜面を九十九折れに一気に下ります。ただ効率良く高度稼ぐだけの、面白味皆無な道です。
単調な急斜面をひたすら下る苦行を終えると沢が見えてきました。谷底まで下ってきたようです。
ゴルジュ帯を通過します。登りに通ったすみ沢ルートに比べると、沢の水量が少なくやや迫力に欠ける道です。
未舗装の林道出ました。ここまでくれば、集落まではあと少しです。
14時20分 藤沢の集落に到着しました。山頂から2時間をかけて、およそ1,000メートルの標高を一気に下りきりました。
ここから初狩駅まではまだ一道あります。富士山が真正面に望みながら舗装道路をテクテクと下っていきます。
しかし凄い絶好のロケーションにある集落ですね。ここに住んでいたら富士山なんてあっという間に見飽きてしまうのかもしれませんが。
笹子川を渡る橋の手前にお花畑がありました。コスモスシーズンにはまだ早いし、この黄色い花は一体何でしょう。
麓から振り返って望む滝子山。麓からの標高差は割と大きく、見上げる高さです。
15時 初狩駅に到着しました。電車の本数が一番少ない時間帯に下山してしまいました。ここで40分ほど待って、15時40分発の高尾行きに乗って帰還しました。
滝子山を始めとする秀麗富嶽十二景の山々は、いずれもマイナー扱いを受けていて、訪れる人があまり居ない静かな山域となっています。しかしながら、滝子山には数多の滝や庭園のような美しい水辺、そして山頂からの富士展望などなど、実に多くのポテンシャルが備わっています。これほどの魅力が詰まった山が、あまり知られずに埋もれているのは、とても勿体無いことだと思います。
都内から日帰りで行けて、かつそこそこ登り応えのある山をお探しの人に、自信を持ってオススメします。
<コースタイム>
笹子駅(8:15)-道証地蔵(9:20)-滝子山(11:35~12:25)-檜平(12:50)-藤沢(14:20~14:30)-初狩駅(15:00)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント
オオツキさん、こんばんは。nobuです。この週末は梅雨前の最後の晴天になりそうなので急に山へ行きたくなり、ブログを拝見したところ滝子山が目につきました。ちょうど1年前に行かれたので状況も一緒かと思い、熟読させていただきました。この夏富士山の初登頂を目指しておりますのでトレーニングがてら行ってまいります。それでは、月曜日にブログのアップを楽しみにしております。
nobu様。
コメントを頂きましてありがとうございます。
滝子山は本当に良い山ですよ。この記事がきっかけで一人でもファンが増えてくれれば嬉しい限りです。そこそこ標高差のある山なので、トレーニングにも向いていると思います。
富士山登頂の暁には、低山部改め高山部ですね。