山梨県甲府市にある御岳昇仙峡(みたけしょうせんきょう)を歩いて来ました。
甲府盆地の北に位置する、花崗岩の山が川に侵食されて出来た全長5kmほどの峡谷です。山梨県を代表する景勝地として知られ、文部科学省によって特別名勝に指定されています。一年を通じて多くの人が訪れる観光地であり、紅葉シーズンは特に賑わいます。
見頃を迎えたという紅葉に期待を寄せて訪問しましたが、時期的に少々フライング気味での訪問となりました。
2018年11月4日に旅す。
さて今回は、山梨県が世界に誇る景勝地、御岳昇仙峡へと繰り出して来ました。古く江戸時代より観光地として栄えてきた渓谷です。
紅葉シーズン最盛期になると、都心へ向かう満員電車を思わせるような殺人的混雑度に陥る場所です。今回の訪問は、紅葉のピークよりもやや早いタイミングであったためか、比較的空いていました。
昇仙峡には渓谷を巡る遊歩道のほかに、脇にそびえる羅漢寺山(らかんじやま)の山頂を結ぶロープウェイもあります。渓谷を散歩しつつ、同時に軽い登山要素を持たせることも可能です。
微妙なお天気予報の出ていた週末でしたが、誰でも行ける観光地を軽めの登山と合わせて楽しんできました。
コース
昇仙峡口バス停から昇仙峡ロープウェイまで、遊歩道を散策します。ロープウェイで羅漢寺山に登ったのち、登山道を歩いて昇仙峡口まで戻ります。
峡谷を巡る散策に軽い登山要素を加味した行程です。
1.御岳昇仙峡 アプローチ編 電車とバスで昇仙峡口へ
7時23分 JR高尾駅
小淵沢行きの鈍行列車に乗り込み甲府へ向かいます。特急かいじ?なにそれ、おいしいの。
かいじと言えば、2019年春のダイヤ改正で、あずさ&かいじの自由席が廃止され、全席指定になるらしいですね。大手私鉄の特急は前からすでに全席指定でしたが、JR東でもいよいよ同様になるようです。
それが時代の流れなのでしょうけれど、自由席をこよなく愛するケチ倹約家の私としては、なんだか山梨と長野が遠くなってしまったように感じてとても残念です。
9時25分 甲府駅に到着しました。
特急の通過待ちに邪魔されない早朝の始発列車と違って、この時間の鈍行は甲府まで2時間以上かかります。そのおかげで良く寝れるとも言えます。
9時45分発のバスに乗るつもりでいましたが、時刻表無視で増発便が次々と送り出されていました。昇仙峡の人気のほどが伺えます。おかげさまで、予定よりも早くに出発です。
9時57分 昇仙峡口バス停に到着しました。
ここまでの運賃は590円です。スイカ・パスモが使えます。甲府からの乗車時間はおよそ30分と言った所です。
バス停の目の前で、干し柿が大量生産中でした。こんな道の近くで干したら、排ガスまみれになるんでないかい?
バス停を降りるなり、前方に花崗岩が剥き出しなった谷が続いているのが視界に入ります。
駐車場にデフォルメされた昇仙峡マップが掲げられていました。こんな風に、奇岩が点在する渓谷沿いに遊歩道が整備されています。
深い渓谷を穿ったこの川は荒川と言う名です。東京湾に注いでいるあの荒川ではなく、甲府盆地を流れる富士川の支流です。
さて肝心な紅葉の方はと言うと、、うーん、まだ少し早かったようですね。色づき始めと言った所です。見ごろだと言うから来たのですが、ウ〇ーカープラスは意外と当てになりませんな。
昇仙峡は下流と上部とでは標高がだいぶ違うので、上の方まで行けばまた状況は変わって来ることでしょう。
こちらはデフォルメていないマップです。遊歩道の全長は5kmほどあります。
2.多くの奇岩が連なる渓谷の遊歩道を散策する
歩道に沿って進みます。歩道と称していますが、実際はただの舗装道路です。この道は行楽シーズンの土日祝日に限り歩行者専用となります。
川に面している側から紅葉が始まっている様子が良くわかります。川側と道側とでは、それだけ気温に差があるのでしょう。
緑とオレンジのミックスです。見ごろになるのは1週間後くらいでしょうか。
荒川の水は余り綺麗ではありません。これは上流に荒川ダムがあるためです。一度ダム湖に滞留した水と言うのは、どうしても濁ってしまうものです。
入口に掲げられていたマップに描かれていたように、遊歩道の脇には名前を付けられた奇岩がずっと連なります。
西沢渓谷にあったものと言い、この手の名前入り岩と言うのは大概はあまり似ておらず微妙な感じなことが多いですが、まあせっかくなので一つづつ見ていきましょうか。
まずは一つ目、亀岩です。左の方が頭という事でしょうか。まあ、亀に見えなくはないかな?
続いてオットセイ岩です。オットセイかどうかはさておき、海獣の後ろ姿のように見えなくはありません。
今度は大砲岩です。なんか強そうなのが出てきましたね。キャノンロックですよ。
・・・どの辺が大砲に見えるのかさっぱりわかりません。看板の矢印は明らかにこの岩を指してるように見えますが、これではない違う岩のことなのでしょうか。
これはトーフ岩です。ススキに隠れてしまっていますが、確かにきれいな直下の角を持つ四角い岩が見えます。
いつの間にか頭上に青空が見え始めました。本日は曇り時々雨と言う微妙なお天気予報で、傘を差して散策することも覚悟をしていたところだったので、これは嬉しい誤算です。
頭上高くにガードレールが横切っていのが見えます。昇仙峡グリーンラインと呼ばれている県道7号線です。凄いところを通っていますね。
続いて熊岩です。おお、これは凄い。確かに熊の顔に見えます。左耳がないのが残念なところです。
これは猫岩だそうです。・・・すまん、どこが猫に見えるのかさっぱりわからん。
再び頭上に移って、大佛岩(だいぶついわ)です。腕組みをしている坊さんのように見えないこともないですかね。
ちなみに、大佛と言うのは大仏の中でも特に大きいもののことを言うそうです。
こちらは松茸岩です。松茸に見えるかどうかはさておき、キノコ型はしております。
海産物がつづいて、今度はフグ岩です。西沢渓谷にも確か同じ名前の岩がありましたね。あまり似ていないという点においても同様です。
これは五月雨岩だそうです。木が手前にあって、良く形が分かりません。
寒山拾得(かんざんじっとく)岩です。寒山拾得とは唐代の僧の名前だそうです。見事な岸壁だとは思いますが、どの辺に僧が居るのか良くわかりませ。
こちらは登竜岩です。おそらくどこかに岩を登る竜がいるはずなので、頑張って探してみてください。私は諦めました。
さきほどから斜に構えたコメントばかりしておりますが、それは単に再び曇り空が頭上を覆いつつあったからです。私は根が極めて単純な人間であるため、天気の良さと機嫌がダイレクトに連動します。
なお、ここまで見てきた岩の正しい見方の答え合わせがしたいと言う方は、昇仙峡観光協会の公式サイトをご覧ください。
ゴウゴウと音を立てる滝の水音が辺りに反響して、実に小気味よい雰囲気です。水の流れる音と言うのは、なぜこんなにも人の耳に心地よく響くのでしょうか。
団扇のような巨大な葉が紅葉していました。樹木に造詣が深いわけはないので何の木かわかりませんが、まるで南国の植物みたいです。
吊り橋が掛かっていました。対岸には特に何もないようですが、川沿いの紅葉を眺めることが出来そうです。
その名も愛の架け橋です。二人で渡ると愛が成就するそうですよ。まあ私は一人で来ているんですけどね!
だれか僕にも愛をください。
愛は手に入りませんでしたが、思った通りの美しい光景を見ることが出来ました。
ここでもやはり、まだ少し早かった感じですね。両岸とも紅葉しているときならば、もっと素晴らしい光景に出会えたことでしょう。
やはり曇り空だと、紅葉の本来の美しさはイマイチ発揮されません。青空よ戻れ。
しばらく進んだところで、グリーンラインと遊歩道の合流地点が現れました。
真っ白いものもあるんですね。コスモスといえばピンクか黄色のイメージが強いですが。
ここからは、沿道に土産物屋の立ち並ぶ観光地の領域に入ります。ハイカー風のスタイルをしている人間は浮いてしましそうな場所です。
七福神が並べられていました。昇仙峡と言う名称からして、どことなく中国風な雰囲気の場所ではあります。
ここで、御岳昇仙峡を象徴するランドマークである覚円峰(かくえんぼう)が、頭上高くに姿を現しました。
そして何より嬉しいことに、青空が戻って来てくれました。先ほどまでのやる気の無さから一転して、上機嫌にその雄姿を眺めます。
この岩のてっぺんで覚円禅師と言う名の高僧が修行していたことに由来するそうです。修行云々以前に、いったいどうやって上まで登ったのでしょう。
遊歩道歩きはスキップして車で直接ここまで乗り付ける人が多いと見えて、周囲の混雑度が一挙に増しました。
ここまでの車で入れるなんちゃって遊歩道が終わり、ようやく本物の遊歩道となりました。
この付近では紅葉が最盛期を迎えていました。陽の光に照らされた紅葉はやはり美しい。
おどろどろしいまでに真っ赤です。やはり紅葉狩りは晴れている日に行ってナンボですね。
日当たりの良い場所は全く紅葉していません。日陰の場所とでは気温に差があって、それだけ紅葉の進み具合が違ってくるのでしょう。
真下から見上げる覚円峰。なんと言っていいか、一言でいうとでっかい岩です。
これは浮石です。本当に浮いているわけではなく、浮いているように見えるという事でしょうか。
続いて現れるのがこの石門です。人工物ではない天然のアーチです。
渓谷の幅が徐々に狭まって来ました。坂の傾斜度も増してきて、いよいよ昇仙峡の核心部に近づきつつあります。
岩の中腹をくり抜いただけの片洞門を潜ります。大柄な人は頭上注意です。
11時40分 仙娥滝(せんがたき)に到着しました。
覚円峰と並ぶ昇仙峡のシンボルです。落差は30メートルほどあります。
仙娥とは、中国神話に登場する月へ行った仙女のことだそうです。昇仙峡に中国由来の名称が多いのは、漢文の素養があった江戸時代の人間が名付けたからでしょうか。
滝の上部には駐車場があります。見物客の多くは、この滝を下から登ってきて見るのではなく、上から下ってきて眺めます。
という事でこの通り、渓谷を登り詰めた先にあったのは観光地でした。
山梨ワイン王国なんてものまであります。試飲コーナーがありましたが、酔っぱらって滝に落ちないようにくれぐれもご注意ください。
これはプレデターですかね。なぜ山梨の奥地にエイリアンとプレデターが置いてあるのか、理由はわかりません。答えはきっと「観光地だから」です。
山梨県は日本最大の水晶の産出地であり、おもに金峰山の麓で採掘されていました。その名残なのか、水晶のアクセサリーを商う店が多く並んでいました。
天気が悪かったら、本日の行程は昇仙峡の散策だけで終わりにするつもりでした。ですが、せっかくこの通り晴れてくれたので、このまま羅漢寺山に立ち寄って行くことにします。
という事で、昇仙峡ロープウエイの乗り場に向かって道なりに進みます。
野良猫の姿がやけに多く目につきました。観光地に住んでいるだけあって人慣れしており、近づいても逃げません。触ろうとしたら威嚇されましたが。。
ロープウェイ乗り場までやって来ました。さほど混雑はしておらず、スムーズに乗れそうです。
3.昇仙峡ロープウェイで羅漢寺山へ
ロープウェイ乗り場から羅漢寺山へ登れる登山道は整備されておらず、昇仙峡ロープウェイは往復券が基本となります。
受付で言えば普通に片道券を売ってもらえます。まあ、客の身なりを見て判断しているのかもしれませんが。片道料金は650円です。
通常は20分間隔の運行ですが、多客時には連続運転されます。という事で、ほとんど待ち時間もなく乗れました。
ロープウェイすれ違いざまに、なぜか皆一背に手を振りだすのが不思議です。不思議と言いつつ、私も無意識のうちにしっかりと振っていました。
5分ほどの乗車時間で山頂駅に到着です。ロープウェイ山頂駅に標高の記載がないのは珍しい。
眼下に荒川ダムを一望できます。洪水調節と上水道用の取水を目的とした多目的ダムです。湖の名は能泉湖(のうせんこ)と言います。
金峰山がすぐ近くに見えるはずなのですが、曇が多くて駄目でした。
山頂駅付近は、パノラマ台と呼ばれる好展望スポットとなっています。この通り、非常に多くの人で賑わっていました。
そしてまさかの山梨百名山でした。最も登頂が簡単な山梨百名山は間違いなくここです。
パノラマ台からは目の間に富士山を一望できます。本日はこの通り、雲を纏って頭だけが僅かに見えている状態でした。
もともとが雨の予報であったことを考えれば、僅かでも姿も見せてくれただけで感謝です。
羅漢寺山の最高地点である弥三郎岳(ひこざぶろうだけ)は、ロープウェイ山頂駅から少し離れた場所にあります。せっかく来たのだからピークハントして行くことにしましょう。
当然のことながら、周囲に居るのは観光客のみで、登山の格好をした人は一人も見当りません。
5分ほどで歩いたところに展望台があります。と言っても、ただの岩の上ですが。
こんな場所です。先は断崖絶壁なので、グリップのしっかりとした靴を履いていない人は、あまり崖際に寄らない方が良いでしょう。
雲が無ければ、正面に南アルプスの山並みを眺めることが出来ます。雲が無ければね。
弥三郎岳の山頂部が見えてきました。花崗岩からなる山なのが一目でわかる姿をしています。なかなか険しそうですね。
展望台を過ぎると人の数が少なくり、静寂なごく普通の山道となりました。
紅葉がいい感じに色づいています。山頂が見ごろという事は、やはり麓のほうはまだこれからという事ですね。
遠巻きに見えていた通り、弥三郎岳の山頂部は岩場となっています。靴のグリップに不安がある場合は、展望台までで引き返した方が無難です。
なかなかアスレチックな道です。観光気分でここまで来てしまった人は、冷水を浴びせかけられた気分になるのではないでしょうか。
この三角点がある場所が頂上です。山頂であることを示すプレート等は何もありませんでした。
4.羅漢寺山から昇仙峡口へ下山
13時20分 パノラマ台へと引き返し、昇仙峡口に向かって下山を開始します。道標も何もありませんが、下山路の入り口はここです。分かりにくくて少し迷いました。
入口こそ本当にあっているのか不安になる見た目でしたが、先へ進むと明瞭なしっかりとした踏跡が続いていました。
突然現れた大集団とすれ違う。羅漢寺山へ観光ではなく登山をしに来る人と言うのも、居ることには居るのですね。
途中に白砂山と書かれた分岐があります。白砂山は羅漢寺山の姿を一望できる好展望スポットなので、立ち寄って行くことを強く推奨します。
分岐からは5分少々で、花崗岩が露出した視界の開けた場所に出ます。
谷を挟んだ向かいに羅漢寺山の全貌が姿を見せました。右端の岩場が、先ほど登った弥三郎岳です。
弥三郎岳の山頂に居る人影も視認できました。手を振ってみましたが、リアクションはありませんでした。
分岐へ引き返し下山を続行します。ほとんど水平移動のような道が続き、なかなか高度を下げ始めません。
今度は白山展望台なる分岐があったので、またもや寄り道します。白砂山に続いて白山展望台ですか。白いアピールがすごいですね。
ということで、白山展望台はこんな場所です。真砂が積もり、ビーチのような空間が広がっていました。
正面にあるのこちらの山は、ニセ八ヶ岳の異名を持つ茅ヶ岳(1,704m)です。この山もいつか登ろうと思っていて、結局まだ訪問が叶っておりません。
寄り道はほどほどにして、今度こそ下山です。夏の終わりに立て続けに発生した台風の影響なのか、倒木の姿が多く目立ちました。
ほどなく荒れ放題の林道にぶつかりました。舗装面が埋もれて、すでに車道としては機能していないようです。
沿道に廃屋が何件か立ち並んでいます。放棄されて久しいようですが、かつてはこんな山奥の場所にも集落が存在したのでしょう。
15時30分 昇仙峡口まで戻って来ました。
バス待ちの人が大勢いるかと思いきや、誰もいません。いったいどういう事でしょうか。
その後にやってきたバスは、始めから満席でした。なんと言うことは無い、要するにみな帰りは仙娥滝の上のバス停から乗車しているという事です。
そりゃそうかと納得しつつ、満員のバスに揺られて帰宅の途につきました。
今回は紅葉のピークには少々早い訪問となってしまいましたが、おかげで混雑はそこまで惨くはなく、ゆっくりと時間をかけて散策することが出来ました。聞いた話では、紅葉最盛期のど真ん中になると、道路渋滞でそもそも現地に辿り着くこと自体が困難となるそうです。なんと恐ろしい。。
日本一の渓谷美を自称しているだけのことはあって、歩道からの眺めはどこを切り取っても絶景です。江戸時代から続く伝統の観光地という事もあってか、少々俗っぽい部分がありはするものの、長久なる自然の営みが時間をかけて大地に刻んだ渓谷の美しさは、いつの時代にあっても不動のものです。
電車とバスだけで気軽に行ける特別な名勝に出会いに、山梨まで繰り出してみてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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