群馬県みなかみ町と新潟県湯沢町にまたがる平標山(たいらっぴょうやま)と仙ノ倉山(せんのくらやま)に登りました。
どちらも上越国境を形成する谷川連峰に属す山です。仙ノ倉山は標高2,026メートルを誇る谷川連峰の最高峰でもあります。平標山から仙ノ倉山へ至る稜線は、急峻な地形が多い谷川連連峰の中にあっては例外的な比較的平坦な場所となっており、一面に高山植物が咲き誇る天上の花園として知られています。
前評判に違わぬお花畑と、ガスにまかれた稜線を巡る山行きをしてきました。
2017年6月24日に旅す。
本日は世界有数の豪雪地帯、上越国境にある仙ノ倉山に登ります。
どの山にも大抵は旬な時期というものがあります。ハイシーズンと呼ばれる時期です。仙ノ倉山のハイシーズンはいつかと言えば、それは間違いなく上越国境の山々が遅い雪解けを迎える6月下旬から7月上旬にかけてです。
この時期の平標山から仙ノ倉山にかけての稜線上では、高山植物達がいっせいに花を咲かせ、天上の楽園さながらの光景が作り出されます。
天上の楽園を目指し遠路はるばる繰り出した先に待っていたものは、稜線上を覆わんばかりの花々と、ガスと暴風でした。
コース
平標登山口より松手山を経て平標山へ登頂。平標山から上越国境の稜線を歩き仙ノ倉山へ。下山は平標山まで来た道を戻り、そこから平標山の家を経由してバス停に戻ります。
標準コースタイム7時間15分ほどのの周回コースです。
1.仙ノ倉山登山 アプローチ編 新幹線で行く新潟への日帰りの旅路
8時5分 JR越後湯沢駅
仙ノ倉山への日帰り登山を実現してくれる魔法の乗り物新幹線で、はるばる新潟県までやって参りました。新幹線はやっぱり快適ですね。高いけれど。
越後湯沢駅から8時20分発の西武クリスタル行きのバスに乗ります。
バス待ちしているのはハイカー風の格好をした人だけでした。仙ノ倉山はさほどメジャーとは言えない山ですが、ハイシーズンとあってか、結構な人出です。
ちなみに、バスの終点である西武クリスタルと言うのは、バブルの頃に作られたリゾートマンションの名前です。今ではすっかり寂れているようで、平成29年現在で2LDK部屋が10万円で買えます。
まあ、こんな捨値がついている位ですから、買ってしまったが最後2度と売れないと思いますけれどね。そして管理費と税金を引かれ続けると。恐ろしや。
越後湯沢を発車しておよそ30分ほどで平標登山口に到着しました。
ここで軽く腹ごしらえしつつ身支度を整えて、9時5分に登山開始します。
頭上はるかに、最初のチェックポイントとでも言うべき送電鉄塔が見えます。まずはあそこを目指して登って行きます。
舗装道路沿い歩いていくと、直ぐに登山道の入り口に到着しました。
2.谷川連峰の西の外れ平標山
登り始めからいきなり結構な急登です。私はどちらかと言うとスロースターター型なので、始めはゆっくりとしたペースで登ります。
湿った場所を好むシダの一族が大いに繁栄していました。豪雪地帯ゆえに、雪解け水が豊富なのでしょうか。
上り始めて直ぐに背の高い木が無くなりました。まだ標高は1,200メートルくらいの地点ですが、早くも森林限界が近いようです。
雪に押しつぶされて横向きに伸びた木の姿が目立ちます。豪雪地帯ならではの光景です。
東京近郊の山ではもう今年のツツジシーズンは終了して久しいですが、上越の山ではまだまだ満開でした。
こちらはタニウツギです。ちなみに、私に花の知識は全くといっていいほどありません。こうやって名前を記せるのは、帰宅後にせっせと調べたからです。
手を使わないと登れないような急斜面がしばらく続きます。名前に平と付いている割には、登り始めからなかな容赦のない山です。今日は湿度も高く、汗だくになりました。
9時55分 麓から見えていた送電鉄塔の袂まで登ってきました。松手山コースの最初のチェックポイントです。
山の中では送電鉄塔を割りと良く見かけますが、これは滅多にお目にかかれないような特大サイズです。上空では強風が吹いているらしく、大きな風切音が聞こえてきます。
鉄塔の下は格好の休憩スポットになっており、多くの人が休憩していました。私はまだ大して疲れてはいないので、水の詰め替えだけして直ぐに出立です。
谷を挟んだ向かいに見えているのは苗場山ですかね。まだ大分雪が残っています。
眼下に見えるこの白いビルは、スキーリゾートとして有名な苗場プリンスホテルです。夏場は閑散としていそうですね。
鉄塔の先にはブナ林が広がっていました。雪解けが遅い場所だけに、ようやく新緑の季節を迎えたばかりのようです。
標高1,500メートル付近で早くも森林限界を超えました。この森林限界高度の低さ加減は、豪雪の山ならではです。
目の前に平標山がその姿を現しました。谷川連峰の西端に位置する、連峰の前衛のとでも言うべき山です。
本日の最終目的地である仙ノ倉山は、平標山のちょうど裏にあるので、ここからではまだ見えません。
手前のこんもりとしたピークが、このルート第二のチックポイントである松手山です。
10時25分 松手山に登頂しました。
樹林帯を抜けたことで風が出て来ました。先ほどまでの汗ダラダラ状態から一転して、半袖では寒いくらいです。
さあ、ここからは稜線歩きです。見ているだけでテンションが上がってくる光景ではありませんか。
稜線に出てからは、足元の至るところにイワカガミの群落がありました。
イワカガミという名前を割と最近になってようやく覚えました。少し前まではピンクタンポポと呼んでいた・・・
こちらはイワナシ。パッと見では小さなアセビのように見えます。
そしてハイマツ。この植物を見ると、高山帯に来たのだという気分になります。とは言っても、ここはまだ標高1,600メートルくらいですが。
谷向かいでの出来事と言え、他人事ではありません。そうこうしているうちに、われらが平標山とて何時ガスの飲まれるかわかった物ではないのですから。
天気予報によれば、仙ノ倉山の天気は午前中は晴れで午後以降は曇りとなっています。そう、私にはノンビリとしている時間など無いのです。
遠くから見ている分には気持ちよさげな稜線ですが、直下から見上げると結構な急勾配です。
ザレ場には木道が整備されていました。大分横へ押し流されているようにみえますが・・・
真上から見ると輪のように見えます。なんとも不思議な形状の花です。
ザレ場を抜けると少し傾斜が緩くなり、ようやく平標山の山頂部が視界に収まりました。
斜面にはまだ所々に雪渓が残っていました。昨年の冬は本当に雪が多かったのですね。
周囲一面ハクサンイチゲが咲き誇っています。・・・現地ではチングルマなのだとばかり思っていたのですけれどね。
山頂までもう一息というところで、ついにガスに巻かれてしまいました。間に合わなかったか。
と思いきや直後に晴れる。新手のガスが生まれては強風で吹き飛ばされることを繰り返しています。
取れそうで取れないガスに一喜一憂しているうちに、頂上が見えてきました。
11時25分 平標山に登頂にしました。
登り始めてから2時間20分で到着しました。標準タイムよりかなり速いペースです。まあ、ガスに巻かれてしまった今となっては、急いだ意味なんて無かったんだけどね!
仙ノ倉山があるのはこっちです。始めから負けとわかっている戦に赴くのは、なんとも気が乗りませんなあ。まあ、それでも行くんですけれど。
横から湿った冷たい風が吹き付けてきて、寒くてかないません。ほとんど休憩らしい休憩もとらずに、行動を再開します。
3.仙ノ倉山登山 登頂編 ガスと強風にまかれた稜線に広がる一面のお花畑
仙ノ倉山へと続く稜線側の斜面には、一面のお花畑が広がっていました。
ピンクの花がハクサンコザクラ、黄色い花はミヤマキンバイかな。色とりどりの花が咲き乱れる光景は、まさに百花繚乱です。
道の両脇にずっとお花畑が広がっています。ガスってあまり視界が効きませんが、かなりの広範囲にわたってお花畑が広がっている様子が伺えます。
平標山から仙ノ倉山までの稜線は、高低差も余り無く非常に歩きやすい道です。ガスってさえ居なければ、さぞかし気持ちの良い道でしょう。
太平洋側と日本海側の大気がせめぎ合う上越国境は、もともと天候が安定しにくい場所です。快晴にありつけたらそれはとても幸運なことです。
謎多き東芝ランプ。道の至るところにありました。遭難防止の目印ですかね。
山頂直下の斜面にも、これまた見事なハクサンイチゲの群落が広がっていました。
12時25分 ガスノ倉山に登頂しました。
なんと言ったらよいのか、とても白い空間です。
山頂の様子
平標山程ではありませんが、ここも広々しています。休憩スペースには困りません。
谷川連峰の最高地点であるだけのことはあって、この山からは視界を遮るもののない360度のパノラマが広がります。ガスっていなければね。
こちらが谷川岳へと続く谷川連邦の主稜線です。・・・来て早々に再訪の必要性を痛感しました。
4.仙ノ倉山 下山編 平標山の家を経由しスタート地点へ
真っ白な中に長居しても得るものは無いので、軽く腹ごしらえをした所で早々に下山を開始します。
一輪だけシャクナゲが残っていました。この山のシャクナゲのシーズンは、だいたい6月初旬頃です。
ハイマツが登山道を侵犯しつつありました。・・・イヤ、逆か。むしろ登山道がハイマツ帯を侵犯しているのでしょう。
行きしには全く気付きませんでしたが、平標山の斜面には大きな雪渓が残っていました。道理で寒い訳です。
平標山への登り返します。下るときにも感じていましたが、浮石だらけで非常に歩きにくい場所です。
雪渓が道の直ぐ脇にありました。6月初旬ごろまでは道の上にも雪渓が残るそうです。念のため軽アイゼンをザックに忍ばせておいた方が無難です
ガスが晴れてきてたところで、丹沢もビックリの階段地獄が視界に飛び込んできました。先に見えている道はすべて階段です。
雪の重みにも耐えるよう、かなりゴツイ造りの木階段です。乱暴に踏みつけても揺れるようなことは無く、非常に安定感があります。
眼下に平標山の家が見えました。
はっきりって、平元新道は行きに使った松手山経由のルートよりはつまらない道です。しかしながら、私には平標山の家で山バッジを買うと言うという非常に重要な使命があるので、この道を避けて通ることは出来ないのです。
13時50分 平標山の家に到着しました。ここまでずっと階段続きで、すっかり膝が笑ってしまいました。
平標山は小屋のすぐ裏手にあります。だてに平標山の家を名乗っていません。素晴らしいロケーションです。
こちらは仙ノ倉山でしょうか。今日の仙ノ倉山は意地でもガスから出てくる気は無いようです。
平標の家から先もずっと階段でした。およそ千メートルの標高差の大半が階段と言う脅威の道です。樹林帯に入った途端、風が止み一気に暑くなりました。
ジグザクと折り返しながら、延々と下ります。なかなか長い道のりです。
14時40分 林道脇の元橋登山口に到着しました。
実に1時間半にもおよぶ階段との死闘でした。こちらから登るのは、相当辛いでしょうな。
水場があったので頭から被ってクールダウンしました。これぞ坊主頭の特権です。
まるで上高地のような光景が広がります。砂防ダムに土砂が溜まりすぎて、池のような状態になってしまっているだけの事ですが。
嫌気がさし始めてからしばらく経ったところで、ようやくスタート地点に戻ってきました。
15時25分 平標登山口バス停に帰還しました。既にバス待ちの人が沢山居ました。
15時57分 時刻表より10分以上遅れてバスが現れました。周囲に何もない山の中のバス停で、時間通りにバスが来ないと結構焦りますよね。
駅まで戻ってきました。この後に行くべき場所は当然ながら温泉です。
駅から近い場所と言うことで、駅前の商店街にある江神温泉浴場へ。
観光客向けの施設ではなく、地元の人のための浴場といった風情の場所です。内装も普通の銭湯のようでした。入浴料は400円と大変リーズナブルです。貴重品ロッカーが100円が返ってこないタイプだったので、実質500円ですかね。
町の中にあると言うのに、男湯は窓がフルオープンで外から丸見えと言う、なんとも大らかな場所でした。
世間一般ではどうなのか知りませんが、私にとって新幹線に乗るという言うことは、駅弁を食べることとセットになっています。ここで越後湯沢駅で一番人気だという「いくらたらこめし」1,050円を購入。
旬の食べ物を頂くのが一番美味しいように、山登りもなるべく旬な時期を選んで登りたいものです。
仙ノ倉山の旬の時期は間違いなく今です。仙ノ倉山へと伸びる稜線上に広がるお花畑は聞きしに勝る規模のものでした。ともあれ、やはりガスってしまったことが悔やまれます。お花の季節は梅雨シーズンとモロに被ってしまうので、晴天とお花畑を同時に掴み取るには、運に左右される要素が強そうではあります。
ともあれ新幹線を利用すれば都内からのアクセスも良好で、文句なしにオススメすることの出来る山です。次回はぜひとも谷川連峰を縦走をし、その過程で再びここに立ち寄りたいと思います。
<コースタイム>
平標登山口(9:05)-松手山(10:25)-平標山(11:25~11:40)-仙ノ倉山(12:25~12:40)-平標山(13:15)-平標山の家(13:50~14:00)-平標登山口(15:25)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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