
神奈川県南足柄市、箱根町および静岡県小山町にまたがる金時山(きんときやま)に登りました。
箱根の外輪山の中で一際高く突き出た鋭鋒です。箱根を遠目から見た際にも非常に目立つ存在であり、山頂からの眺望にも優れていることから、天下の秀峰と称されています。また、金太郎伝説で名高い足柄山地の最高峰でもあります。
年の瀬大晦日に、天下の秀峰と温泉を巡る小旅行をしてきました。
2016年12月31日に旅す。
時は平成28年の大晦日。
人間らしいお正月を迎えるために、大晦日の内に行っておべきこととはいったい何でしょうか。大掃除?そんなものは30日の内に済ませておきなさい。
大晦日には、前年の垢を綺麗さっぱり洗い流して、真新しい心と体でもって新年を迎えるべきなのです。つまり、大晦日にやるべきこととは温泉です。

東京の「近くて良い温泉」と言えば、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは箱根ではないでしょうか。小田急線一本で気軽に行ける箱根は、お財布にもやさしい庶民の味方の温泉地です。
さて、重篤な好山病患者である私は、温泉に出掛けておきながら、ただ風呂に浸かるだけで帰ってくるなど言うことは、基本的にありえません。
温泉へ行くと言うことは、温泉の近くにある山に登ることとセットになっているのです。世間一般ではどうなのかは存じませんが、少なくとも私の内部では、温泉と登山は常に一つのパッケージとして取り扱われます。
そんな訳で今日は箱根の名峰、金時山に登ります。金太郎伝説に登場する足柄山の別名であり、天下の秀峰と称されています。富士山を詣でつつ、1年の垢を洗い落としに箱根へと繰り出しましょう。

コース

乙女峠バス停よりスタートし、乙女峠を経由して金時山へ登頂します。下山は仙石バス停へと下る標準コースタイム3時間10分程のとてもお手軽な行程です。
1.金時山登山 アプローチ編 御殿場線とバスを乗り継ぎ箱根の裏口、乙女峠へ
7時10分 小田急線 新松田駅
箱根の表の玄関口が湯元ならば、裏口と言えるのが御殿場側の乙女峠です。本日は裏口の方からお邪魔してみようかと思います。

JR御殿場線に乗り換えます。御殿場線はスイカ・パスモが使えません。この路線がJR東日本ではなくJR東海に属しているからです。

※この記事の執筆当時は対応していませんでしたが、現在は使えます。
松田駅のホームから、早速世界遺産のアイツが姿を見せました。今日は良い天気になりそうです。

7時23分発の列車で御殿場駅に向かいます。無人駅が多いからでしょうか。車掌さんが切符を集めたり清算したりと非常に忙しそうにしていました。

電車に揺られること30分とちょっとで、御殿場駅に到着しました。御殿場市は圧倒的に自動車社会であるらしく、栄えているのはロードサイドで駅前はかなり閑散としています。

ここから仙石行きの箱根登山バスに乗りこみます。湯本方面とは違い、あまり本数は多くありません。乗り継ぎ時間は事前によく確認しておいて下さい。

8時35分 乙女峠バス停に到着しました。降り立つなりいきなりの大絶景が広がります。登る前から満足して「今日はもうここまででいいかな」と言う気分にさせてくれます。

ただいまの気温0度とな。どおりでクッソ寒いわけです。まあ、大晦日ですからね。

バス停の少し先に登山口があります。出発前に軽く腹ごしらえを済ませてから登山を開始します。

歩き始めはしばしの林道歩きです。まだ陽が差しかまないため辺りは寒々しく、土の道はガチガチに凍り付いていました。

林道歩きはさほど長くは続かず、すぐに登山道が始まりました。土が凍り付いていますが、とりあえずチェーンスパイクなどの滑り止めは必要なさそうです。

乙女峠までの道は過剰なまでに九十九折れがついていて非常になだらです。この道はかつての街道跡を踏襲しているため、登山道規格ではなく一般旅行者向けに作られた傾斜度です。

道の脇に、薄っすらと僅かな雪が残っていました。どうやら昨晩に少しだけ降雪があったようです。これは、気温が上がってきたら泥濘になってしまいそうな予感がします。

9時10分 いい感じに体が温まってきたところで、乙女峠に到着しました。ここまでであれば、普通の靴でも散歩気分で登ってこれると思います。

背後にある建物はかつては茶屋だったのですかね。今では完全に廃屋と化しています。

展望台がありました。ここ乙女峠は、富士見三峠の一つに数えられる景勝地として知られています。

どれどれ・・・わざわざ展望台まで用意しておきながらバス停からの景色に負けてるじゃないですか。昔は眺めがよかったのかもしれませんが、木々の成長により展望は失われしまったようです。

2.金時山登山 登頂編 外輪の稜線を歩き、天下の秀峰の頂を目指す
ここからは箱根外輪山の尾根に沿って金時山に向かいます。稜線上は背丈を越える笹に覆われていてあまり展望がありませんが、所々に視界の開ける場所があります。

富士山の展望はがっかりな感じでしたが、箱根中心方向の展望はこの通り素晴らしいです。噴煙が立ち上っているのが大涌谷で、麓に広がっているのが仙石原です。

乙女峠から金時山山頂までは50分ほどで、非常にお手軽なコースタイムです。

登山道はたいへん良く整備されています。むしろ整備されすぎていると言うべきか。

それなりに急な階段を登りきると、突然広い空間に飛び出しました。

長尾山の山頂です。外輪山上にある小ピークの一つです。特になにがあると言う訳でも無い場所なので、次へ参りましょう。

ここからはしばらく平坦な道が続きます。気温が上がってきたのか、危惧した通り凍結していた足元が少し緩み始めました。

前方に目指す金時山が見えてきました。金時山はしれっと箱根外輪山の一部のような顔をしていますが、実は外輪山上にあとから生えてきた別の火山です。

鞍部に向けて一度下ります。ドライな状態であればなんてことは無い場所ですが、僅かに雪が付いていて嫌な感じがします。

ハイカーの皆さんへ

えーと、言わんとしていることを要約すると、「金時山をナメるな」ですかね。
一目で溶岩だとわかる岩がむき出しなった、いかにも火山らしい道になってまいりました。

山頂が大分近づいて来ました。見るからに展望がよさそうな姿をしており、期待が高まります。

山頂直下は結構急な登りです。ロープが設置されている場所もありました。

山頂直下最後の登り。個人的には、この山頂部を見上げるアングルの写真が大好きです。

3.天下の秀峰からの大展望
10時10分 金時山に登頂しました。目の前に富士山がドーンと見えています。天下の秀峰を自称するだけのことはあって、確かに素晴らしい景観です。

御殿場方面から見た富士山は、西高東低の冬型の気圧配置化においては風下側となるため、山頂付近から風に飛ばされた雪が裾野へ薄く広がって積もり、独特の景観が作り出されます。

誰かがよだれかけみたいな雪の積りかただと評しているのを耳にして、妙に納得しました。
山頂の様子
茶屋が2軒あります。大晦日だと言うのに、どちらも普通に営業しておりました。


ここまで歩いてきた外輪山の稜線が一望できます。箱根が巨大なカルデラであることが良くわかる光景です。

正面に見えているのが箱根最高峰の神山(標高1,438メートル)です。その手前で白煙を上げているのが大涌谷です。風向きによっては、時折ここまで硫黄臭が漂ってきます。

こちらは愛鷹山(あしたかやま)です。箱根とほぼ同時期に形成された古い火山ですが、早々と活動を終えて現在は休眠しています。

富士山の脇には、遠慮がちに甲斐駒ケ岳と八ヶ岳が見えていました。

4.金時山登山 下山編 最短ルートを下り千石バス停へ
絶景を一通り堪能したところで、下山を開始します。すでに忘れそうになっておりますが、本日の主たる目的はあくまで温泉に浸かることにあります。

この山は時折、普段着姿でスニーカーを履いた観光客が紛れ込んできてしまうこともある山ですが、その割には結構険しい道です。

足元は結構滑りやすく、特に下山時は注意を要します。ついうっかり物見遊山気分でここまで登ってきてしまった観光客は、下山時に酷く後悔するのではないでしょうか。

日の当たる南側斜面は、凍結していた地面が完全にとけて泥濘と化していました。転んだら大惨事なので、ゆっくりと慎重に下りました。

明神ヶ岳へと続く外輪山の縦走路が見えます。行きたい。この先へすごく行きたい。

眼下に矢倉沢峠に立つうぐいす茶屋が見えてきました。あの場所が、仙石原方面へ下山するルートとの分岐点です。

周囲は人間の背丈を越える高さの笹竹に覆われていました。道は綺麗に刈り払われていますが、それが無ければ近づくことすら困難な藪山です。

峠まで下ってきました。うぐいす茶屋は営業しておらず、シャッターが下りていました。まあ、大晦日ですしね。

茶屋の左へ行けば明神ヶ岳への縦走路。右へ行けば仙石原への下山路です。本当はすごく左に進みたかったのですが、今日はやむ終えぬ事情がありこのまま下山方向進みます。
稜線から下ると、周囲は何時しかまるで奥多摩のような杉の人工林の道に変わりました。この先はもう特に見るべきところも無いので、黙々と足早に下ります。

11時30分 割とあっけなく文明社会へ帰還しました。最近はいつも日没ギリギリの登山ばかりしていたので、こんなライトな登山は久しぶりです。

別荘地の中を下ります。「箱根の別荘」だなんてバブリーな響きの言葉です。

国道まで戻ってきました。この道は万年渋滞しているイメージでしたが、大晦日ともなるとさすがに閑散としていました。

麓から仰ぎ見た金時山です。箱根の外側から見ると非常に急峻な山容を持つ山ですが、外輪山の内側から見た分にはあまり尖っては見えません。

11時50分 仙石バス停に到着しました。ここからバスに乗って強羅へと移動します。

5.強羅温泉で全身を硫黄臭まみれにする
やって参りました強羅駅。ここで本日の主要目的である温泉に向かいます。そう、今日のメイン行事はあくまで温泉であって、金時山はあくまでもオマケなのです。

温泉ホテル強羅館にやって来ました。坂を登るのはかったるいと言うしょうも無い理由により、強羅駅から一番近い場所を選びました。

強羅温泉には日帰り入浴専用の施設は存在しません。旅館やホテルの風呂に入れてもらう形式となります。そのため、宿泊客がチェックインする15時くらいまでしか日帰り入浴を受け付けてもらえません。
今日私が明神ヶ岳への縦走を諦めた理由がコレです。明神ヶ岳まで行って強羅へ降りるルートはコースタイムが6時間半位で、日帰り入浴可能時間までに下りてこれるかはかなり微妙だったので・・・
強羅に拘らず湯元まで戻れば、夜まで営業している日帰り温泉施設はいくらでもあります。ただし、湯元の温泉は基本どこも無色透明の湯です。白濁した硫黄泉が大好きな私としては、どうしても強羅の温泉に入りたかったのです。
そんなわけで待望の白濁湯を満喫しました。日帰り入浴は千円でした。

たとえどんなに寒かろうと、温泉の後はソフトクリームで閉めるのが私の流儀です。寒い、うまい、寒い。

帰りはせっかくなので箱根登山鉄道を利用しました。値段と所要時間で見るなら、バスに乗ったほうが断然得です。登山鉄道を使うのは完全に趣味の問題ですな。

窓際に陣取ってカメラ片手にはしゃぐオヤジ。

単に混んでいて座れなかっただけです。
スイッチバックにはしゃぐオヤジ。逆向きに進むってだけなのにね。


歩道橋の上が写真撮影におあつらえ向きのスポットだったので、撮鉄に挑戦。なお、私はどちらかというと撮鉄ではなく乗鉄です。

湯元のアーケードは大晦日でも大いに賑わっていました。ここで年越しソバ用の生そばと湯の花を購入しました。自宅の風呂場を硫黄臭くしてやるぜ!

橋の上からぼんやりと早川を眺めます。別に何の用もありませんが、箱根に来たんだという気分を味わうためになんとなく橋を渡ってみました。旅情ってやつです。

一通りプラプラと観光したところで、ロマンスのない普通列車に乗って帰宅の途につきました。

金時山は「天下の秀峰」というキャッチコピーに見劣りしない展望雄大な素晴らしい山でした。コースタイムも手ごろで、温泉のオマケで登るにももってこいの山だと言えます。
今回歩いた乙女峠から外輪山を辿るルートは、何より展望が圧倒的に良く、金時山の登山路の中では一番オススメです。もっとガッツリ歩きたい人は、御殿場線の足柄駅から登るクラシックルートを辿るのも良いのではないでしょうか。色々な選択肢があって、何度でも楽しめる山です。
次に訪れる機会があれば、今度こそ明神ヶ岳への縦走路を歩いてみたいと思います。
<コースタイム>
乙女峠バス停(8:35)-乙女峠(9:10)-長尾山(9:30)-金時山(10:10~10:35)-矢倉沢峠(11:05)-仙石バス停(11:50)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。







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