笠ヶ岳 怒涛の急登が連続する地獄の笠新道を行く

抜戸岩付近から見た笠ヶ岳の山頂
岐阜県高山市にある笠ヶ岳(かさがたけ)に登りました。
北アルプスこと飛騨山脈の南部に、穂高連峰と向かい合うように立つ山です。名前の通り山頂部が編笠のようなシルエットをしており、遠目からも非常に目立つ存在です。かくも目立つ山を古人たちがほっておくはずもなく、古くから山岳信仰の対象とされてきた霊山でもあります。
テントを担いで、キツイと評判の笠新道を登ってきました。

2025年8月18~20日に旅す。

笠ヶ岳は長野県と岐阜県の境界に沿って連なる北アルプスの主脈からは少し外れた位置に立つ山で、完全に岐阜県内にあります。付近の山を歩いていると非常に目を引き、前々から気になっている存在でした。
西穂高岳から見た笠ヶ岳

山頂へ到る登山ルートはいくつかの選択肢がありますが、中でも特に厳しいと評判なのが直登ルートの笠新道です。登りの標準コースタイムはおよそ8時間にも及び、最初から最後まで緩むことの無い急登が続きます。
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山小屋泊にして少しでも荷物を軽くすべきではないかとも考えましたが、結局はテントを担いて登ることを選択しました。案の定、激しく後悔することになりましたが。

苦難の登りを乗り越えた先には、北アルプス南部の山々を一望する大展望が広がります。・・・晴れていればね。
笠ヶ岳の山頂

夏山らしい雲が沸き立ち終始イマイチなお天気でしたが、キツイと評判の笠新道を存分に味わってきました。テントを担いで登る、地獄の笠新道編をお送りします。
笠新道の杓子平

コース
笠ヶ岳のコースマップ
初日は完全な移動日で、笠新道登山口近くにあるわさび平小屋で1泊します。2日目にメインディッシュである笠新道を登り笠ヶ岳に登頂したのち、笠ヶ岳山荘のテント場に宿泊します。

下山は笠新道を下らず大きく遠回りし、弓折乗越から鏡平を経由して新穂高温泉に戻ります。3日間かけて、ゆとりをもって笠ヶ岳を周回する行程です。

1.笠ヶ岳登山 アプローチ編 移動だけで半日がかりの新穂高温泉への道程

8月18日 6時12分 JR高尾駅
いつもの6時15分発の松本行きの鈍行列車で、終点の松本駅を目指します。途中乗り換えは無く、1度乗ってしまえばあとは寝ている間に運んでもらえるので、気楽なものです。あずさですか?いいえ普通です。
JR高尾駅のホーム

9時35分 3時間以上の時間をかけて、松本駅に到着しました。気楽とは言っても、さすがにこれだけ長い時間を座ったまま寝ていると、尻やら首やらいろいろな場所が痛くはなります。もう無理をする年齢ではないんだよな。
JR松本駅の中央本線ホーム

ここから先はバス移動です。ロータリーを挟んだ向かいにある松本バスターミナルへ移動します。
松本バスターミナル

高山行きのバスで平湯バスターミナルを目指します。なお、こちらのバスは事前予約制です。予約なしでも空席があれば乗れますが、満席なことが多いのでしっかりと予約しておきましょう。
松本バスターミナルに停車中の高山行き急行バス

11時38分 平湯バスターミナルに到着しました。バスを降りるなり、濃厚な硫化水素臭が出迎えてくれました。この匂いを嗅ぐと今すぐにでも温泉に飛び込みたいと言う思いがこみ上げてきますが、下山する2日後まではお預けです。
平湯バスターミナル

目指す笠ヶ岳の姿が見えています。編笠のような形状だと評される山頂部はなかなか急峻で、一筋縄ではいかなそうな様子がここからでも見てとれます。
平湯バスターミナルから見た笠ヶ岳

新穂高ロープウェイ行きのバスに乗り換えます。高速バス車両での運航ですが、こちらは路線バスの扱いで事前予約がなくても乗車できます。松本からの直通便が無いのが、なんとも面倒ではあります。
新穂高ロープウェイ行きのバス

12時35分 新穂高温泉バス停に到着しました。自宅を出発してから8時間近くかかって、ようやく目的地にたどり着けました。何度来てもやはり新穂高はひたすらに遠い。
新穂高温泉バス停

2.登山口近くのわさび平小屋に前泊する

腹ごしらえとトイレをゆっくりと済ませて、13時に行動を開始します。登山開始時刻としては遅すぎますが、初日はわさび平小屋まで行くだけなので、実質移動日のようなものです。
新穂高から見た北アルプスの稜線

ゲートの脇を通って左俣林道へと進みます。途中からはダートになりますが、わさび平小屋まではずっと車道歩きです。
左俣林道入口のゲート

林道を緩やかに登って行くだけなのでまったくキツくは無いのですが、途中から頭上が開けてお日様ギラギラの状態になりました。
左俣林道の道中
新穂高温泉バス停の時点ですでに標高は1,000メートル以上あるため、下界に比べれば気温自体はずっと涼しいのですが、それでもやはり暑いものは暑いです。

笠新道の登山口まで歩いて来ましたが、今日は一旦通り過ぎます。キツイと評判の笠新道で、明日はどのような死闘が繰り広げらることになるのか。楽しみなような、そうでないような、何とも言えない気分です。
笠新道登山口

14時15分 わさび平小屋まで歩いて来ました。本日はこの小屋の脇にあるキャンプ指定地で1泊します。
わさび平小屋
なお、新穂高温泉ゆきの毎日アルペン号の夜行バスを利用すれば、わさび平小屋での宿泊を省略して登山行程を1泊2日に圧縮することは可能です。

私はもういい歳をしたおっさんなので、夜行バスで移動した後の寝不足気味な状態で笠新道に立ち向かうようなガッツはもうありません。

テント場は空いており、入口近くの木陰という超一等地を確保出来ました。本日はもうすることも無いので、あとは何するでなしにボーとする贅沢な時間を過ごしました。
わさび平小屋のキャンプ指定地

3.最初から容赦のない急登が続く笠新道

明けて8月19日 5時
1夜を過ごした我が家を撤収して、本日の行動を開始します。
地面に置かれた登山用ザック

まずは笠新道登山口まで、昨日歩い来た道を少し戻ります。わさび平小屋からは10分程度の距離です。
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5時10分 笠新道登山口まで歩いて来ました。さあて見せてもらおうではありませんか。歩いた経験のある人間が口をそろえてキツかったという感想を口にする、笠新道の実力の程を。
笠新道登山口
笠新道登山口から山頂までの累計標高差は、およそ1,900メートルほどあります。確かに厳しいと言えば厳しいですが、でもまあ笊ヶ岳に比べればまだいくらかは楽でしょう。そもそも比較対象がおかしい。

登山口の脇に水場があるので、出発前に必要量を給水しておきましょう。すでに3Lを担いでいますが、念のため2Lを追加して合計5Lとしました。ズシリと重くなった荷物に、出発前からため息がこぼれます。
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本日の宿泊予定地である笠ヶ岳山荘のテント場には一応水場があるのですが、稜線上にあるため雪渓が無くなる8月以降には枯れてしまうことが多いです。

笠ヶ岳山荘でペットボトル入りの飲料水を買い求めることは可能ではありますが、当然高くつくのでなるべくここで確保しておいた方が無難です。

取りつき地点からしていきなりの急登です。地図の等高線密度を見れば一目瞭然ですが、この後は稜線に出るまで一切勾配は緩みません。最初から気合を入れていきましょう。
笠新道の取りつき

登り始めてしばしの間は、ブナなどの広葉樹の森の中を進みます。急登ではありますが、日差しがない分だけこの辺りはまだ優しいと言えます。
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現在地の標高を示した木製の標識が、わりと小刻みに設置されています。これを見て前途に希望を持つか、それとも絶望するかは人によって分かれるかと思いますが、地獄の笠新道はまだ始まったばかりです。
笠新道の標高1,450メートル地点

私が笠新道に対して抱いた印象は、一言で言うと淡々粛々です。これと言った危険個所は無いし、特に強く印象に残るような場所もありません。ただ真っすぐひた向きに、標高を上げるという作業に取り組むことが求められます。
笠新道の道中の様子

急登ゆえに着実に標高は積み上がって行きます。・・・途中で立ち止まりさえしなければ。
笠新道の標高1,700メートル地点

背後の展望が少しだけ開けて、谷向にある穂高連峰の山並みが姿を見せました。見慣れないアングルなので、どれが奥穂なのかすらもよくわかりません。
笠ヶ新道から見た穂高連峰の山並み

右手には焼岳と乗鞍岳が並んで見えています。この2座はどちらもシルエットが特徴的なので、どの方向から見てもわかりやすい。
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淡々とした急登が続きます。登山口から杓子平に至るまでのおよそ4時間程は、ずっとこの調子が続きます。最初から覚悟していたこととはいえ、確かにこれはキツイかもしれない。
笠新道の道中の様子

オーバーハングしている岩の下に、何やら金属の箱が置かれています。
笠新道のレスキューボックス

救急キットやツェルトなどが収められているという、レスキューボックスとのことです。ダイヤル式のカギがかかっていますが、緊急時には警察に電話して番号を教えてもらえってことなのでしょうか。
笠新道のレスキューボックス

今のことろはまだ森林限界を越えてはいませんが、徐々に背の高い樹木が少なくなり、頭上が開けている場所が多くなってきました。この急登に加えて直射日光がギラギラの状態になれば、相当辛いことになりそうです。
笠新道の道中の様子

道が細くなっている個所にはしっかり金属製の足場が設置されており、登山道は全般的に非常によく整備されています。流石は日本百名山のメジャールートと言ったところで、キツくはありますが危なくはない道です。
笠新道の道中の様子

ここでついに森林限界を越えました。眺めは良くなりましたが、同時にこの先は常に直射日光に晒されながら登ることになります。
笠新道の道中の様子
止めどもなく大粒の汗がが吹き出し、5Lあった水はみるみる減ってゆきます。なかなか厳しい状況です。ここは地獄の笠新道…

周囲が開けたことにより、先ほどよりも穂高連峰の山並みが良く見えるようになりました。上高地から見た時とはちょうど反対側からの眺めです。
笠新道から見た穂高連峰

みんな大好きな槍ヶ岳も姿を見せました。飛騨側から見ると、小槍の存在感が凄い。
笠新道から見た槍ヶ岳

登っても登っても、首が痛くなるような見上げる角度の斜面が延々と続いていて、先が見えません。上を見ても気が滅入るだけなので、足元だけを見つめて、何か楽しいことでも考えながら登りましょう。
笠新道の道中の様子

槍・穂高の眺めが良いと書かれた、標高2,100メートル地点まで登ってきました。さて、どんな眺めなのでしょうか。
笠新道の標高2,100メートル地点

うーん、先ほど眺めとあまり変わらないかな。ここまで登ってきて、ようやく奥穂がどれなのかわかる状態になりました。この写真の中央に写っているのが奥穂高岳(3,190m)です。
笠新道の標高2,100メートル地点から見た穂高連峰

時刻はまだ午前中だというのに、夏雲が急速に沸き始めて空を覆い始めました。
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夏雲の発生と言うのは、いつもあっという間の出来事です。先ほどまでの快晴が嘘であるかのように、見ている目の前であれよあれよと言う間に雲に覆われていきます。
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穂高連峰もすっぽりとと雲に覆われてしまいました。本日の好展望タイムはもう終了であるようです。夏雲が沸き立つのが早すぎませんかね。
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これで展望は無くなりましたが、日差しもなくなったことにより多少は暑さが和らぎました。相変わらず急登は続いていますが、辛さは若干軽減されたかもしれません。
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足元に咲いている花に目を向けるだけの心の余裕も生まれようというものです。こちらは毎度おなじみのハクサンフウロです。高山植物の花としては定番中の定番と言える存在で、多くの山で見かけます。
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既に綿毛化してしまっているチングルマの姿が目につきます。笠新道でお花を楽しみたかったら、7月中のもっと早い時期に歩かないと駄目ですね。
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先の見えない急坂がずっと続いていましたが、ようやく尾根の上らしき場所まで登って来ました。
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9時35分 杓子平まで登ってきました。本来はここで笠ヶ岳の山頂が正面にドーンと姿を見せて、笠新道におけるハイライトとなるはずの場所なのですが、残念ながらすっかりと雲に覆われてしまっていました。
笠新道の杓子平
笠新道登山口からこの場所まで、しっかり山と高原地図のコースタイム通りの4時間20分を要しました。いやはや、前評判に違わぬ厳しい登りでした。と言ってもまあ、まだ全然終わりではないんですけれどね。

4.稜線に出て以降も長い、笠新道の後半戦

この杓子平はカール地形になっており、ここから先はしばしの間カールの底に沿って進みます。ここまでずっと登り一辺倒の道が続いていましたが、一時の平穏が訪れました。
笠新道の杓子平カール

今正面に見えいてるピークは笠ヶ岳ではなく、その手前にある抜戸岳です。今からあの山を乗り越えていきます。笠ヶ岳の山頂はもっと左の方にあるはずですが、今は完全に雲に没しています。
杓子平から見た抜戸岳

ここでも綿毛化したチングルマの姿が目につきます。杓子平カールの花の最盛期は7月の中旬から下旬頃の時期で、その頃に訪れると一面がチングルマとミヤマキンポウゲに覆いつくされるのだとか。
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稜線に向かって再び急登が始まりました。疲労により足が前に出なくなってきましたが、稜線上までもうあとひと踏ん張りです。頑張って登りましょう。
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登り切っただろうと思ったらさらにもっと高い場所が現れるという、なかなか手の込んだ心折設計です。まあそれでも、ガスが湧かずに日様がギラギラのままな状態であったら、さらに辛いことになっていたんでしょうね。
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だいぶ息も絶え絶えになりましたが、何とか稜線上まで登ってきました。抜戸岳の山頂はここから少し脇に逸れた場所にあるようですが、展望も何もあったものではなさそうな状態なのでスルーします。
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稜線の先にあるはずの笠ヶ岳は、相変わらず雲に覆われており全く見えません。こんなに頑張って登ってきたのだから、少しぐらいご褒美をくれたっていいじゃないですか。
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などとと嘆いてみたところで、お天気の気まぐれに対してはどうすることもできません。夕方には再び晴れてくれることに期待して、今はともかく先へ進みましょう。
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11時50分 笠新道分岐まで登ってきました。ここで双六岳方面からの道と合流します。
笠新道分岐
なお明日の下山時には、笠新道からでは無く鏡平を経由して下りるつもりでいます。その方が歩行距離的にはずっと遠回りになりますが、笠新道よりはずっとマイルドな行程となるはずです。

稜線上にはあまり大きな標高差は無く、ほぼフラットな歩きやすい道です。ただこの後の山頂直下にもう一度、急登区間が残っているはずです。今のうちに呼吸を整えておきましょう。
笠ヶ岳稜線上の登山道

雲は稜線上にだけかかっており、谷底の様子は良く見えています。眩暈を起こしそうになるような比高があり、ここを己の足で登ってきたのだと思うと感慨深い。
笠ヶ岳の稜線上からの眺め

昨日のスタート地点の新穂高温泉が見ています。笠新道がほぼ真っすぐ一直線な道であることがよくわかる光景です。
笠ヶ岳の稜線上から見た新穂高温泉

少し雲が取れてきて、先の様子が見えてきました。緩やかな勾配の尾根がずっと続いていますが、最後の最後に絶壁のような登りが控えているのがなんとなしに見えます。
笠ヶ岳稜線上の登山道

背後の雲も取れて、最程脇を通り抜けてきた抜戸岳が見えています。なんとも気持ちの良い稜線ではありませんか。・・・ここまで登てくるののにエライ苦労はしますけれどね。
笠ヶ岳の稜線上からみた抜戸岳

ここでようやく、雲の中から笠ヶ岳の山頂が姿を見せました。遠目からは編笠のように見える山頂部ですが、近くから見ると台形の巨大な岩でしかありません。
抜戸岩付近から見た笠ヶ岳の山頂

抜戸岩と呼ばれている、稜線上をふさいでいる岩の隙間を通り抜けます。
抜戸岩

右手には北アルプス最奥部の、黒部川源流域の山々が見えています。すっきり晴れていればさぞや絶景であろうことが容易に想像できるだけに、残念さもまたひとしおです。
笠ヶ岳の稜線上から見た黒部源流域

山頂が目の前まで近づいて来ました。山頂の脇に立っている、笠ヶ岳山荘の建物も見えます。
テント場の手前から見た笠ヶ岳の山頂

左手に播隆平と呼ばれている小さなカールがあります。播隆上人と言えば槍ヶ岳の初登頂者として有名ですが、ここ笠ヶ岳にも足跡を残しています。
笠ヶ岳山頂直下の播隆平

テント場が現れました。本日の宿泊予定地である笠ヶ岳テント場は、山荘よりもさらに1段下がった位置の尾根上にあります。
笠ヶ岳テント場

12時55分 笠ヶ岳キャンプ場に到着しました。なんだかんだ、笠新道登山口を出発してから7時間40分を要しました。いやはや、評判通りにしんどかった。
笠ヶ岳テント場

テント泊の受付は山荘で行うのですが、いい加減肩の重荷を下ろしたいので先に張らせてせてもらいます。テントの数はまだ少なく、穂高連峰を真向かいに望む一等地を確保できました。
笠ヶ岳テント場

5.ガスに覆われた残念な笠ヶ岳の頂

13時20分 テントを張り終えたところで、山荘に立ち寄りテント泊の受付を済ませつつ、その足で山頂を目指します。なにやら既に笠新道をやりきった感が醸し出されていますが、山頂まではまだもう一登りあります。
笠ヶ岳テント場から見た笠ヶ岳の山頂

山荘スグソコと書かれていますが、実際はすぐそこと言うほど近くは無いかな。空荷になって足取りが軽くなったとはいえ、ここまでの累積疲労もあり、なかなか足が前に出ません。
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山荘で受付を済ませます。幕営料は最近の北アルプスの標準相場になりつつある2,000円です。長らく雨が降っておらず水が不足しているということで、水の購入量は一人当たり500mlまでとの制限がかかっていました。
笠ヶ岳山荘
出発時点で5Lあった水はすでに2L以下にまで減っており、明日の分まで含めると足りるか不安があったので、購入可能な上限いっぱいまで補充しました。

笠ヶ岳山荘から山頂までは、10分から15分くらいの距離です。北アルプスの山では良くある、ガラ石状の岩が散乱する斜面です。最後にもうあとひと踏ん張り、頑張って登りましょう。
笠ヶ岳の山頂直下

登りきると笠ヶ岳神社がポツンと立っていました。一時廃れていた笠ヶ岳信仰を再興した播隆上人の像が収められています。それはそうと、山頂標識が見当たりません。
笠ヶ岳 佐野神社奥宮

周りを見渡すと、山頂はさらに少し先にありました。
笠ヶ岳の山頂

13時55分 笠ヶ岳に登頂しますた。さあ刮目して見よ、これが飛騨国最高峰からの大展望だ。・・・心の目で見ればきっと見えます。
笠ヶ岳の山頂
まあ正午過ぎの夏山と言うのは、基本的にこんなものでしょう。明日の朝のご来光タイムに晴れてくれることに期待しておきましょう。

山頂の北側にはクリヤ谷方面へと続く尾根が伸びています。本当は明日ここから降りたかったのですが、長らく通行止めの状態が続いています。
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虚無の山頂で30分ほど粘りましたが、一向に晴れる様子はありません。あきらめてテント場へと引き返します。
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14時40分 テント場まで戻って来ました。この後はもう、やるべきことは何もありません。テントの影にマットを敷いて、昼寝タイムと洒落こみましょう。
笠ヶ岳テント場

何気なく山頂を見ると、下りてきた直後に晴れ始めるという、登山あるあるの光景が目に飛び混んできました。もう少し粘るべきだったか。ぐぎぎぎ。
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HAHAHA!もう一回山頂まで登ってくるかい?というセリフが脳内を巡るも、思い直してやめました。いやもうね、今日は本当に疲れ果てているんです。地獄の笠新道を登ってきたばかりなのですから。

実際のところ、テント場からでも周囲の眺めは十分すぎるほどに良いので、無理してまた山頂まで行く必要はないと思います。
笠ヶ岳テント場からの眺め

時刻が18時を回り陽が沈むと、山頂を覆っていた雲は完全になくなり、綺麗に晴れていました。
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谷向にある穂高連峰は、相変わらず雲にまとわりつかれています。結局最後まで、スッキリ快晴とはなりませんでした。
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いつものお湯すらも沸かさない食事を済ませた後は、早々とシュラフに潜り込みました。明日は晴れてくれますように。おやすみなさい。
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6.山頂からのご来光は不発

明けて8月20日 4時35分
テントから頭を出すと、辺りは一面のガスに覆われていました。それでも日の出までに晴れてくれるかもしれないことに一縷の望みをかけて、一応は山頂へ向かいます。
ガスに覆われたテント場

期待もむなしく、日の出時刻を迎えた山頂は虚無の世界に飲み込まれたままでした。ミーは何しに山頂へ?
ガスに覆われた笠ヶ岳の山頂

虚無が広がる山頂から、虚しくテント場まで引き上げて来ました。夏山は午後になると大抵は雲に覆われますが、朝のうちは晴れてくれることが多いから楽観していたのですけれどね。
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6時25分 1夜を過ごした我が家を撤収して、本日の行動を開始します。
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昨日、鏡平経由で登ってきたという方と少し雑談をしたのですが「笠新道よりは楽だと聞いていたのに、全然楽では無かった」とおっしゃっておりました。ふむ、今日も決して楽ではない1日になりそうです。

笠ヶ岳に別れを告げます。さらば笠ヶ岳。次回訪問があるとすれば、その時は笠ヶ岳山荘に宿泊します。テントを担いで笠新道を登るのは、1度経験すればもうお腹いっぱいです。
笠ヶ岳テント場のサヨナラと書かれた岩

7.飛騨の山中に忽然と現れる謎多き地名の秩父平

歩き始めてほどなく、一面真っ白だった世界から、少しづつ周りが見えるようになってきました。
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頭上には青空も見えています。できることならご来光の時間に晴れてほしかったのですけれどね。
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雲越しに降り注ぐ薄い日差しに照らされて、綿毛化したチングラマがキラキラと光り輝いていました。息をのむような美しい光景だったのですが、こうして後から写真で見返しても、あの感動は全然伝わりませんな。
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7時25分 笠新道分岐まで戻って来ました。笠新道の往復なんぞはまっぴら御免であるということで、このまま尾根沿い進んで弓折岳を目指します。
笠新道分岐

抜戸岳の山頂を巻いてゆく、トラバースの道が続いています。北アルプスの稜線らしく、周囲は一面のハイマツに覆われています。ライチョウいないかな。
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ガスに覆われて遠くは全く見えませんが、相変わらず谷底だけが良く見えています。この谷底までの圧倒的な比高感のスケールは、アルプスならではの光景です。
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私は普段から、ほとんど存在自体を知られていないような地味でマイナーな里山を徘徊することを好んでいますが、アルプスでしか摂取できないない成分は確かに存在します。

あまり自分の好みの範囲を限定してしまわずに、いろいろな山に登ってみるのが結局は一番楽しいのだと思います。

先が見えなくなっている個所があって少し緊張しましたが、小さなギャップを越えるだけでした。全体を通して、笠ヶ岳に特にこれと言った危険箇所は存在しません。求めらるのは体力だけです。
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眼下になだらかかな尾根が続いています、あちら向かって下ってゆくのかなと漠然と思っていたのですが、地図を見るとルート途中から右側に大きく曲がっています。
250819笠ヶ岳-095

右側に視線を向けると、谷底へ一度大きく下った後に登り返すかのように尾根が続いているの見えます。えぇ、ひょっとして今からここを下って登り返すのですか。気乗りがしないなあ。
250819笠ヶ岳-096

嫌な予感ほど的中してしまうものです。道標を見ると、まさしく一度谷底に向かって下るように示していました。
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なるほど、弓折岳経由でも全然楽ではなかっと言っていたのは、こういうことでしたか。気乗りはしませんが、道がそうなっている以上は致し方ありません。
秩父平

下ってゆくと、背後に屹立した大岩が立っていました。秩父岩と言う名称らしいのですが、飛騨の山中になぜ秩父が?
秩父岩

8時25分 秩父平まで下ってきました。名前の由来がとても気になって調べてみたのですが、よくわかりません。埼玉県の秩父と関係があるのかないのか。
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小さなカール地形となっており、今はもう枯れていますが水が流れていたらしき形成が無数に残っています。雪解け直後の時期には、ここもきっと一面のお花畑になるのでしょう。
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8.弓折岳を越えて弓折乗越へ

一度下ってしまったからには、その後に待っているのは当然登り返しです。まったく、下山時における登り返しほど憂鬱なことはありません。登ったらまたその分だけ下らなきゃいけないんだよ。
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この先に大ノマ岳と言う名のピークがあるはずですが、上の方はガスに覆われていてどこが山頂なのかはよくわかりません。

片側は切れ落ちていて、結構きわどい場所に道が続いています。これもまた、北アルプスの稜線上ではありがちな光景です。
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うっすらとガスに覆われていますが、大ノマ岳の山頂らしき場所が見えてきました。
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いい感じに息絶え絶えになりつつ登ってきましたが、どうやらここはまだ山頂ではなく大ノマ岳の肩と呼ばれている地点のようです。
大ノマ岳の肩

大ノマ岳の本体はすぐ隣にありました。ここで休憩を取りたい衝動に駆られましたが、心を鬼にして行動を続行します。
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先を急いでいるのには理由がありまして、昨日危惧していた通り飲み水がもう底を付きかけています。完全に無くなってしまう前に、なんとか鏡平山荘まで辿り付きたいのです。

登山道は大ノマ岳の山頂は通らずに、脇を巻くようにして続いています。一応は山頂を踏んで行こうかと逡巡するも、結局は素通りしました。どのみちガスっていて何も見えなさそうだったものですから。
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双六小屋と鷲羽岳が見えています。見知った光景が現れたことにより、この尾根歩きも終わりが近づいてきていることを感じます。
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続いて双六岳の本体もガスの中から姿を見せてくれました。とても良い山なのですが、ただの通り道扱いされてしまうことが多い、ある意味不遇とも言える存在です。
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ここから本日最後の登り返しとなる弓折岳への登りが始まるのですが、その前に一度しっかりと下ります。何もそんなイチイチ下らなくてもいいじゃないですか。
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下りきった地点が大ノマ乗越と呼ばれています。「鏡平経由なら笠ヶ岳はさほどキツくは無い」と言う言説を割とよく目にしますが、それは大嘘であると声を大にして言わせていただきます。
大ノマ乗越

この大ノマ乗越からの登り返しが何気にキツイ。昨日の笠新道によって最初からヒットポイントが減っている状態だからだというのもあるかもしれませんが、いよいよ足が前に出なくなってきました。もう登り返しはええちゅうねん。
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いよいよ口から泡を吹きそうになりつつも、何とか登り切りました。ああ、しんどかった。
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どうやら弓折岳の最高地点はここではなく少し外れた場所にあるようですが、ここも素通りします。それよりも一刻も早く鏡平山荘まで下って、かき氷が食べたい。
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弓折岳の山頂部に広々とした平原状になっています。ずっとこんな感じの尾根が続くものだと勝手に勘違いしていたわけなのですが、実際は秩父平と大ノマ乗越という二つの伏兵が潜んでいました。
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10時30分 弓折乗越まで歩いて来ました。小池新道と双六岳方面との分岐地点であり、これで過去に歩いたことのある軌跡とつながりました。
弓折乗越

9.安心安全な小池新道を下る

ここからは先はもう、緩やかな勾配で歩きやすいと評判の小池新道を下って行くだけです。もうしんどい思いはしなくて良いはず。
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目指す鏡平山荘が見えています。ここでいよいよ飲み水が尽きてしまったので、この先は写真も撮らずに足早に下りました。
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と言うことで場面は一気に飛んで、鏡平山荘まで下ってきました。
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11時10分 鏡平山荘に到着しました。小屋の前にさも当然のように自動販売機が置いてある辺りが、さすがは北アルプスの山小屋です。おかげで無事に飲み水を補充出来ました。
鏡平山荘

ついでに名物だというかき氷を頂いて行きます。火照った体に染み渡ります。
鏡平山荘のかき氷

インスタ映えスポットとしてあまりにも有名な鏡池からの逆さ槍ヶ岳ですが、本日は雲に覆われていて全く見えません。
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笠ヶ岳も相変わらず雲に巻かれています。今日は全くもってパッとしないお天気でしたな。
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さあ帰りましょう。前述の通り小池新道は全般的に緩やかな勾配で大変歩きやす道ですが、日差しを遮るものは一切ないため暑さはそれなりに厳しいです。なるべく午前中の涼しいうちに通り過ぎてしまった方が無難です。
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13時 秩父沢出合を通過します。先ほど通ってきた秩父平から流れ下ってきている沢です。ぐるっと大きく回り込んできた格好です。
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下るにつれてジワジワと気温が上昇して、だいぶ暑さが厳しくなってきました。この辺りからもう、私の頭の中は完全に温泉モードへと切り替わりました。早く温泉に飛び込みたい。
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だいぶ暑さにやられつつも、谷底まで下ってきました。
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これでもう下山は終わりであるかのような空気が漂いますが、ここから新穂高温泉までは、まだまだかなりの距離が残っています。頑張って歩きましょう。
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13時55分 2日ぶりにわさび平山荘まで戻って来ました。ここまで歩き通しでいい加減休憩したい気もしますが、それよりも早く風呂に入りたいという思いの方が勝り、行動を続行します。
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続いて笠新道の入口を通り過ぎます。それで結局のところ、笠新道と小池新道のどちらがより楽に笠ヶ岳に登れるのかと問われると、大して変わらないというのが率直な感想です。
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つまりは、笠ヶ岳に楽に登れる方法は存在しないというのが結論です。あきらめて苦しんでください。

だいぶ足が棒のようになってきました。世の中には日帰りで笠新道を往復する豪脚の登山者も存在するらしいのですが、どういうフィジカルをしているのだろうか。
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15時 新穂高ロープウェイまで戻って来ました。
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ロープウェイ駅のすぐ近くにあるこちらの、中崎山荘奥飛騨の湯でひと風呂浴びて行きます。うろ覚えですが、入浴料はたしか900円だったかな。3日ぶりに浸かった湯舟は、それこそ気絶しそうな気持ちのよさでした。
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新穂高から見げた笠ヶ岳は、朝の時点から変わらずにすっぽりとガスに覆われたままでした。あまりお天気には恵まれない2日間でした。
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行きと同じ経路を反対向きに辿って、長い長い帰宅の途につきました。
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笠ヶ岳は前々からとても気になる存在でありながら、長らく訪問がかなわずにいた山でした。北アルプスの主要なエリアからは少し外れた位置にあり、笠新道のキツイと言う評判も相成って、なかなか行こうという決心が付きにくい山であろうかと思います。
どこから登ろうとたいへん厳しい山であることに間違いありませんが、一度稜線上まで出ればそれまでの苦労に見合うだけのご褒美が待っています。苦しみの先にある達成感を見出したい方は、地獄の笠新道に挑んでみてはいかがでしょうか。
テントを担いで登るのは正直推奨はしません。8時間の登りくらい余裕だぜというフィジカルに自信ありの人は是非どうぞ。

<コースタイム>

1日目
新穂高温泉バス停(13:00)-わさび平小屋(14:15)

2日目
わさび平小屋(5:00)-笠新道登山口(5:10~5:15)-杓子平(9:35~9:50)-笠新道分岐(11:50)-笠ヶ岳キャンプ場(12:55~13:20)-笠ヶ岳山荘(13:30~13:40)-笠ヶ岳(13:55~14:25)-笠ヶ岳キャンプ場(14:40)

3日目
笠ヶ岳キャンプ場(4:35)-笠ヶ岳(5:05~5:30)-笠ヶ岳キャンプ場(5:45~6:25)-笠新道分岐(7:25)-秩父平(8:25)-大ノマの肩(9:20)-大ノマ乗越(10:00)-弓折乗越(10:30)-鏡平山荘(11:10~11:30)-秩父沢出合(13:00)-小池新道入口(13:40)-わさび平小屋(13:55)-新穂高ロープウェイ(15:00)

笠ヶ岳山頂での記念撮影

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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