
新潟県関川村にある朳差岳(えぶりさしだけ)に登りました。
福島県、山形県および新潟県の3県にまたがる飯豊連峰の北端に位置している山です。標高1,600メートル少々でしかない山ですが、豪雪地帯にあるため森林限界高度は低く、視界が大きく開けた稜線が連なっています。雪解け直後の初夏の季節になると、稜線上に多種多様な高山植物が一斉に花を咲かせます。
咲き誇る花々を求めて訪れた夏の飯豊で待っていたものは、恐るべき酷暑の世界でした。
2025年7月24~15日に旅す。
朳差岳は飯豊連峰の主要なピークの中で一番北の端に位置している山です。主峰の飯豊本山や最高峰の大日岳などがあるエリアからは少し外れているため、訪れる登山者の数はずっと少ない静かな頂です。

昨年私は3泊4日の日程で飯豊連峰のすべての主要なピークを縦走するという欲張りな計画を立てましたが、縦走の途中で天候の悪化に阻まれて、最後の朳差岳はスキップして途中で下山するという結果に終わりました。

この時に取りこぼしてしまった朳差岳については、いつか再訪せねばならぬと思い機会をうかがっていました。


再訪となる今回は、前回訪問時にゴール地点になる予定だった奥胎内ヒュッテからスタートして、反対向きに朳差岳を目指します。

本当は6月下旬頃の訪問を考えていたのですが、間の悪いことに奥胎内ヒュッテに至る県道で地中埋設送電ケーブルの更新工事が行われており、通行止めが解除されたのは7月に入ってからでした。
飯豊連峰の山々は基本的に、それほど標高が高くはないのに稜線上は森林限界を越えているため、夏場は酷暑の世界と化します。出来れば真夏の時期は避けたかったのですが、結果として夏本番になってからの訪問となってしまいました。
案の定、お日様ギラギラの酷暑に散々苦しめられることになりましたが、暑さを乗り越えてたどり着いた稜線上には、息をのむような絶景の世界が広がっていました。飯豊はいいでの取りこぼし回収回をお送りします。

コース

奥胎内ヒュッテからスタートして、足の松尾根を登り大石山を経由して朳差岳へ。朳差岳避難小屋で1泊し、翌日は丸森尾根から飯豊山荘に下ります。
朳差岳に登りつつ、前回訪問時の軌跡と繋ぐ行程です。
1.朳差岳登山 アプローチ編 ひたすら遠い飯豊はいいでへの旅路
7月24日 6時3分 JR東京駅
車も買えない貧乏人環境意識高い系ハイカーにとって、飯豊連峰登山における最大の核心部と言えるのは、登山口までのアプローチです。どこから登るにしても、飯豊はとにかく遠い。

今回は新潟県側からのアプローチとなるため、まずは上越新幹線で終点の新潟駅に向かいます。
新潟駅についたら、続いて在来線特急のいなほに乗り換えます。券売機で「新幹線から在来線特急に乗換」を選んで切符を購入しておくと、乗り換え専用改札を通ってスムーズに移動できます。

いかにも米所新潟らしい田園風景の先に、飯豊連峰前衛部の山が見えています。いまのところお天気は上々ですが、その分暑さに苦しめられることになりそうです。

8時54分 中条駅に到着しました。ここが一応は、奥胎内ヒュッテの最寄り駅と言うことになります。最寄と言っても、まったく近くはないのですけれどね。

奥胎内ヒュッテへと乗り入れている、路線バスなどの公共交通機関は存在しません。ここから先はタクシー利用となります。前日のうちに電話して予約しておいた中条タクシーが、すでに駅前に待機していました。

9時40分 奥胎内ヒュッテに到着しました。道は途中からはダートですが、地元の中条タクシーにとっては通い慣れている道らしく、特に嫌がられたりはしません。

ここまでのタクシー料金は大台越えの1万円少々でした。交通費だけでも相当高くつきましたが、これは車を持たない登山者が飯豊連峰を訪れるためには必要なコストなのだと、割り切るしかありません。
登山口に立つ奥胎内ヒュッテです。山小屋ではない普通の宿泊施設ですが、登山者向けの素泊まりプランも存在します。ここに前泊して、翌日早朝のまだ涼しいうちに登り始めるのというの一つの選択肢です。

選択肢の一つと言うか、日程的にそれが可能であるのならば、前泊した方が断然快適だろうと思います。夏の飯豊は、とにかく暑さとの戦いになりますから。
特定日のみの季節運航ですが、奥胎内ヒュッテから足の松尾根登山口まで無料の乗合自動車が運航しています。奥胎内ヒュッテの宿泊者以外でも利用は可能ですが、早朝時間帯の便しかないので実質宿泊者とマイカー組専用と言ったところです。

2.登山開始前から早くも汗だくになる灼熱のロード
軽く腹ごしらえしつつ身支度をっとのえて9時50分に行動を開始します。最初から強烈な日差しが降り注いで、早くも大粒の汗が噴き出してきました。もしかしなくてもこれは、日傘を用意してくるべきであったかもしれない。

登り始める前の時点からからすでにこんな暑いとあっては、森林限界を越えた稜線に出て以降は大丈夫なんだろうかと、前途に不安しかありません。
結論から言ってしまうと、まったく大丈夫ではなかったのですが、それはまだ先の話です。
前方に飯豊連峰の主稜線が見えいています。標高で言うと2,000メートルもないのですが、スタート地点の標高自体もあまり高くはないため、標高差はそれなりにあります。

森の中に入ってようやくほっと一息付けました。標高が低いため気温自体が高いと言えば高いのですが、それでも日差しがないだけだいぶマシです。

途中に給水可能な水場があります。沢水なので、気になる人は浄水器を使用してください。現時点で既に3Lの水を担いでいますが、ここでさらに2Lを追加して合計5Lにしました。ズシリと重くなった荷物にため息をつきつつ進みます。

谷に橋が架かっていますが、対岸へは渡らずに道なりに進みます。この橋の先には奥胎内ダムがありますが、ゲートがあり一般者の立ち入りは出来ないダムです。年に何回か新潟県主催の見学ツアーがあり、その時だけは入れるようです。

10時50分 足の松尾根登山口まで歩いて来ました。途中で水を汲んだりした若干のタイムロスがあったにしろ、奥胎内ヒュッテからは徒歩でしっかりと1時間以上かかりました。

登山口の脇に自転車がデポしてありました。なるほどここまではずっと緩やかな上り坂なので、自転車があれば帰りは相当楽ができそうです。登山口まで自転車は、基本的にピストンの時にしか使えない手ですけれどね。

3.急登が続く足の松尾根
時刻はまもなく11時になろうというタイミングで、ようやく登山を開始します。夏はとにかく暑さが厳しいと評判の飯豊に、真夏の気温がもっとも高くなる時間帯を目前にしたタイミングで登り始めようとは、もはや正気の沙汰ではない。

最初のほんのわずかな間だけ、緩やかな区間があります。来る嵐の前の静けさと言ったところです。

早速急登が始まりました。この先以降は、主稜線上に乗るまでずっと登りが続きます。覚悟を決めて参りましょう。

足の松尾根と言う名前の通り、足元は絡みついた松の根に覆われています。下るときには難儀しそうですが、登る分には特に気にはなりません。

岩の細尾根の上に、松が絡みつくようにして生えています。両脇に樹木があるおかげでだいぶ高度感が緩和されていますが、かなり細くなっている個所もあります。足元は要注意です。

視界前方の一番奥に見えているのは、たぶん朳差岳の手前にある鉾立峰だと思います。なかなか一筋縄では行かなそうな標高差があります。

1時間ほど黙々と登り続けたところで、広く視界の開けている場所が現れました。

12時 姫子ノ峰まで登ってきました。足の松尾根コースにおける最初のチェックポイントと言ったところの小ピークです。

飯豊連峰の主稜線がよく見えています。今見えているのは明日通ることになる頼母木山や地神山などで、朳差岳はもっと左の方にあるためここからでは見えません。

まだまだ先は長いので、休憩もそこそこに前進を再開します。時刻は正午を回り、気温自体がじわじわと上昇して、日影にいてもいよいよ暑くなってきました。

ずっと登り一辺倒ではなく、平坦な場所もあり適度にメリハリが効いています。暑いことを除けば、歩きやすい尾根であるとは思います。暑いことを除けばね。大事なことなので2度言いました。

現時点ではまだ森林限界を越えてはいませんが、徐々に頭上が開けて日差しが直接当たる箇所が増えてきました。

ちょっとしたスパン通過するだっけでも嫌になるような日差しなのに、これで完全に森林限界を越えてしまった日には、いったいどうなってしまうのでしょうか。
岩のナイフリッジ状態になっている個所があり、安全のためのロープが張られていました。一応はここが、足の松尾根における核心部かと思います。

手を使ってよじ登るような箇所もありますが、全般的に技術的難易度自体はさほど高くありません。暑さとの戦いこそがすべてのルートと言えそうです。

谷底をのぞきこんで見ると、なるほど足ノ松沢にある2段の滝が見えています。わざわざ滝見場と銘打たれた場所まであるのに、特に名前はないようです。

滝見場からほどなく、英三ノ峰と言う小ピークがありました。もう結構登ってきたつもりになっていましたが、まだ標高1,000メートルを越えていません。足の松尾根はなかなかしんどいですぞ。

徐々に周囲に背の高い樹木が少なくなってきました。そろそろ森林限界が近そうです。

水場への分岐がありました。水はまだ十分な量が残っているため見には行きませんでしたが、15分くらい下る必要があるとのこと。

日差しを遮ってくれる木があるだけで、安堵感に包まれます。しかし、この辺りが最後の日影がある区間でした。

14時10分 イチジ峰まで登ってきました。ここからいよいよ森林限界を越えます。しかしこの尋常ならざる日差しの強さを思うに、眺めがよくなったことを喜んではいられません。

危惧していた通り、直射日光ギラギラの尾根上は今や命の危険を感じるほどの暑さになっていました。体中の水分が、みるみる搾り取られてゆくのを感じます。この暑さはさすがにやべえ。

14時25分 これ以上の行動続行は命にかかわると判断して、低木のわずかな木陰に逃げ込みました。日が傾いて日差しが弱まる時間になるまで、ここで待機することにします。

最悪小屋に辿りつく前にヘッドライトが必要な時間になってしまうかもしれませんが、こればかりは致し方ありません。やはり日傘が必要ですね、これは。
4.朳差岳登山 登頂編 花咲く楽園のような山頂と夕暮れ
行動を中断してからおよそ1時間が経過した15時30分。頭上に湧いた夏雲が、稜線の周囲を覆い始めました

このチャンスを逃してはならぬ。と言うことで行動を再開します。頼むからこのまま日差しを遮っていておくれよ。

背後を振り返ると、ここまで登ってきた足の松尾根の全容が一望できました。奥に見ている山は、おそらく二王子岳(1,420m)だと思います。

今度は西ノ峰と言う小ピークがありました。ここまで登ってくれば、主稜線はもうすぐ目の前です。

何時しか樹木は完全になくなり、周囲は笹の稜線になりました。日影が全くないこの状況を見るに、行動中断という判断は間違っていなかったように思えます。

16時20分 大石山まで登ってきました。これで飯豊連峰の主脈上に乗ったことになります。

明日歩く予定の頼母木山方面は、完全に雲の中に没しています。こちらの展望については、明日に期待しておきましょう。

反対側の朳差岳方面も同じく雲に覆われており、手前にある鉾立峰だけがかろうじて見えている状態です。普段であれば展望が台無しなったことに落胆する場面なのですが、今はひたすらこのまま晴れないこと願うばかりです。

様々な種類の高山植物が花を咲かせており、まさしく百花繚乱状態です。もう少し早い時期だと、稜線上の一面がハクサンイチゲに覆いつくされるのですが、もうすでに1輪も残ってはいませんでした。

県道の通行止めと言うどうにもならない事情があったからなのですが、やはり訪問時期としては遅すぎたようです。
ただの通り道扱いされることが多い鉾立峰ですが、見上げる絶壁感がありなかなか防御力が高そうです。

日差しのある状態であれば相当苦しい登りになったでしょうが、今は気持ち良くスイスイ登っていけます。本日得られた人生の教訓としては、飯豊の稜線を歩くなら、午前中のまだ涼しいうちに歩かないと駄目ですね。

背後を振り返ると、先ほど乗り越えてきた大石山の姿が良く見えています。飯豊と言われて多くの人が思い浮かべるのは、こういうたおやかな感じがする稜線の光景だろうと思いますが、ここまで登ってくるのが簡単ではないんだよな。

17時25分 鉾立峰まで登ってきました。大石山と朳差岳のちょうど真ん中に立っており、言い方は悪いですが障害物のような存在のピークです。

私は避難小屋泊だからまだいいですが、奥胎内ヒュッテから日帰りで朳差岳を目指している人は、この山の存在に結構心を折られると思います。
正面に朳差岳がドーンと見えるはずですが、今は一面の虚無の世界です。まあ明日またここを通るので、展望に関してはその時に回収できるでしょう。

朳差岳に向かって登り返しを始めたところで、徐々に雲が取れ始めました。おや、これは何もかもがうまくいってしまうパターンでしょうか。

晴れた!まるで一番暑い時間帯だけを狙って頭上を覆ってくれたかのような、ナイスな夏雲でありました、ありがとう夏雲。いつも悪態ばかりついていてごめんよ。

前方に小屋が見えてきました。本日の宿泊予定地である朳差岳避難小屋です。

山頂のすぐ下の、お花畑の只中に建っています。これはまた、すばらしいロケーションにある小屋ではありませんか。

背後の主稜線上を覆っていた雲も、剥がれ落ちつつありました。これは山頂からの夕焼け時の展望にも大いに期待が持てそうです。

18時10分 朳差岳避難小屋に到着しました。東北地方の山にある避難小屋の例にもれず、かなりしっかりした造りの小屋です。収容人数はおよそ50人とのこと。

飯豊連峰の稜線上にある避難小屋の多くは、夏の間は管理人が常駐して準営業小屋のような運営がされることが多いのですが、この小屋は管理人が駐留しない完全な無人小屋です。
先客は3人しかおらず、そのうちの一人は登山道の整備をしているという地元の方でした。今夜は悠々とスペースを使えそうです。

寝床を確保したところで、山頂に向かいます。小屋からはそれこそ5分の距離です。

18時40分 朳差岳に登頂しました。あまりの暑さに一時はどうなることかと思いましたが、何とか陽が沈む前に山頂を踏むことができました。エブリバディ朳差。

飯豊連峰は福島県、山形県および新潟県の3県にまたがる巨大な山塊ですが、朳差岳に関しては完全に新潟県内にあります。朳差は越後の山だこて。
稜線を覆っていた雲は完全に晴れて、明日歩く予定の尾根がすべて見えてます。よい眺めだあ。

それでは皆さん準備はよろしいですか。良ければ腹にめいっぱい力を込めて、大きな声でさんはい。飯豊はいいで~
ふう、満足しました。
一番奥に見えているのが、飯豊連峰のほぼ中央に位置している北俣岳(2,025m)だと思います。飯豊本山や大日岳は、朳差岳からは見えません。

反対方向の北側には、うっすらと朝日連峰の山並みが見えています。飯豊連峰以上に輪をかけて交通アクセス困難な僻地にある山塊です。あちらも夏場は、灼熱地獄になるのでしょうね。

ちょうどまもなく陽が沈むタイミングだったので、このまま夕焼けを眺めていきます。

空気が霞んでいて境界線がよくわからない状態ですが、日本海だと思われる場所にむかって陽が沈んでゆきます。

陽が沈みました。この時間になると流石に半袖Tシャツ1枚では少し涼しくなってきたので、ぼちぼち小屋に引き揚げましょう。

どうやら水場があるらしいので、足りるとは思いますが念のため一応補充しておきます。

小屋から水場までは結構大きく下ります。水くみは、まだ暗くなる前に済ませておいた方が無難だと思います。悠長に夕焼けを眺めている場合ではありませんでした。

この水場は雪渓からの雪解け水なので、雪が完全に消えてしまう秋以降は、あまりアテてにはしない方が良いかと思います。

水場から戻ってくると、周囲はすっかりと暗くなっており、ぼんやりと夜景が見えていました。

いつものお湯すらも沸かさない食事を済ませた後は、早々とシュラフに潜り込みます。夜中に目が覚めたら星空撮影をしようと思っていたのですが、よほど疲れていたのか翌朝まで目を覚ますことはありませんでした。

5.朳差岳山頂から望むご来光
明けて7月25日 4時30分
避難小屋前のお花畑からおはようございます。昨日に引き続き、今日もとても良いお天気になりそうです。それはつまり、今日もとても暑い一日になるだろうと言うことにほかなりませんが。

山の上で宿泊したからには、朝一番にやるべきことは一つしかありません。それは山頂からのご来光を眺めることです。

1日ぶり2度目となる朳差岳に登頂しました。このまま日の出時間まで待機します。

下界には雲海が広がっていました。上の方は晴れているので、ご来光は問題なく拝めそうです。

昨日は霞んでいて気が付きませんでしたが、朝日連峰の左後方に月山(1,984m)らしき山が見えていました。なるほどこういう位置関係になるのか。

待つことおよそ15分。太陽が登ってきました。間違いなく良いお天気なるであろうことを予感させる日の出です。・・・なにとぞお手柔らかにお願いします。あまり暑すぎると死んじゃいます。

あーたーらしーいー あーさがきたー♪といつものように、脳内でラジオ体操のテーマ曲が勝手に自動再生されました。もはや条件反射になってしまっているのかもしれない。

飯豊連峰の稜線上にも、徐々に陽が差してきました。あらゆるものが美しく見える時間帯です。

朝日に染まる朝日連峰。・・・別にダジャレを言っているわけではありません。目にした光景を目にした通りに言っただけです。

6.地神山へと至る飯豊連峰北部の稜線歩き
5時20分 2日目の行動を開始します。本日は前回訪問時の最終到達地点である地神山北峰まで歩いて軌跡をつなげたのち、バスのある飯豊山荘へと下山する予定です。

まずは手始めに鉾立峰への登り返しと言う、最初から約束されていた気乗りしない行事に取り組みます。

昨日は虚無の中を歩いていたので全く見えてはいませんでしたが、反対側もなかなかの絶壁感があります。名が体を表していると言うか、どちら向きに歩こうと鉄壁の布陣の山です。障害物呼ばわりした理由をご理解いただけるかと。

6時 こちらも1日ぶり2度目となる鉾立峰に登頂しました。こんなにも眺めの良い場所だったのですね。

背後を振り返ると、昨日は全く見えていなかった朳差岳の姿がありました。これは間違いなく名山の風格。

続いて今度は、最初から約束されていた登り返しその2の大石山が立ちはだかります。

大石山は鉾立峰に比べればずっと緩やかな山容をしており、それこそ鼻歌交じり歩ける道です。

7時 大石山まで戻って来ました。ここからは再び未踏の領域へと入ってゆきます。

大石山から振り返って見た朳差岳です。少し引いた位置から見ると、ドッシリとした重量感のある姿をしています。つまり、とてもかっこいい。

大石山を過ぎると、あまり高低差がなくフラットに近い稜線になります。そうそう、こういうので良いんですよ。飯豊にエキサイティングなアップダウンは求めていません。

前方にまるでラクダのこぶのように2つ並んだ小ピークが見えています。頼母木山(たもぎやま)という、朳差岳と同様に極めて難読な名称の山です。

7時50分 頼母木山避難小屋まで歩いて来ました。朳差岳避難小屋よりはやや小さく、収容人数は30人ほどです。こちらの小屋には、夏の間管理人が常駐しています。

頼母木小屋には、飯豊のアルプスと称する水場があります。10月下旬の紅葉シーズンの終わりまで利用可能な、信頼がおける水源です。

小屋からは少し下がった位置にある湧水を引いているとのことで、水量は豊富で大量に出ています。下山時に必要な分は、ここで確保しておきましょう。ついでに頭から水をかぶってクルーダウンしました。冷たくて気持ちがいい。

小屋の前から朳差岳がよく見えています。飯豊連峰は登山口までやってくるのには大変な苦労をしますが、一度稜線まで登ってさえしまえば、避難小屋が多くあるため縦走登山のハードル自体はそこまで高くありません。

朝日連峰も相変わらず良く見えています。飯豊連峰と朝日連峰は比較近隣にあり、どちらも交通アクセスが極めて悪いという点において共通しています。そのため私の中でこの2つの山塊は、似通った兄弟か何かのような漠然とした感覚があります。

水をかぶって多少は涼しくなったところで、行動を再開します。頼母木小屋からは、大きく登りに転じます。

振り返って見た頼母木小屋です。大変すばらしいロケーションではありますが、荒天時には風雨の影響をモロに受けそうで、冬の間に潰れてしまわないか心配になってきます。

7月下旬時点でも、かなりの大きの雪渓が残っています。念のためチェーンスパイクは用意してきていますが、今のところ登山道上に残っているものはありません。

ニッコウキスゲがポツポツと疎らに残っていますが、こちらももほぼ終わりかけです。飯豊連峰のお花の最盛期は6月下旬から7月上旬くらいの雪解け直後の時期で、7月の下旬ともなってしまうとさすがに少し遅すぎました。

通行止めであったり梅雨が長引いたりで、花の最盛期の飯豊を訪れるのは、思い立ったらすぐにでも出発できるマイカーがある人でないと、なかなかどうして難しいのが現実です。この山はとにかく遠すぎる。
8時50分 頼母木山まで歩いて来ました。ここまで来れば、未踏破区間も残りあと僅かです。

朳差岳はこの頼母木山から見た時の姿が最も秀逸であると思います。飯豊連峰北部の雄という呼称に恥じない風格があります。

正面に見えているのが地神山(1,850m)で、左側の肩のような小ピークが前回訪問時の最終到達地点である地神山北峰です。あそこまで歩けば軌跡がつながります。

ここでも小さいコブのような小ピークがいくつか並んでいます。最後の仕上げに取り掛かりましょう。

そこまでキツイ登りではありませんが、相変わらずお日様はカンカン照りで徐々に暑くなってまいりました。飯豊の稜線上を快適に歩くことができるのは、本当に午前中の早い時間帯だけなのではなかろうか。

9時25分 地神山北峰まで歩いて来ました。2回に分割するという不本意な形ではありましたが、これで飯豊連峰の主稜線を端から端まで縦走するという目標は達成されました。

前方の梶川尾根にゼブラ状に雪渓が残っています。夏の飯豊連峰と言うと、このゼブラ模様の稜線を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

ここまで歩いてきた稜線です。まさに稜線歩きの喜びがすべて詰まっているかのような道でした。

もっと先にまで進みたい衝動に駆られますが、この先には進めば進むほど登山口の交通アクセスが悪くなり、帰還自体が困難になって行きます。当初計画の通り、飯豊山荘に下りましょう。

7.朳差岳登山 下山編 酷暑の丸森尾根を下る
9時40分 下山を開始します。この丸森尾根は前回訪問時にも雨の中を下った道ですが、まあまあ酷い道であったと記憶しています。気を引き締めてまいりましょう。

飯豊山荘までの標高差は1,400メートルほどあり、途中までは日影が一切ないカンカン照り状態です。稜線から外れるなりピタリと風が吹かなくなり、最初から尋常じゃなく暑いです。はい。
結局は下山でも暑さに苦しめられるのか。夏の飯豊は1にも2にも、とにかく暑さとの戦いです。
ちなみに隣の梶川尾根にも登山道があり、あちらからでも飯豊山荘へ下ることができます。事前に軽く調べてみたところ、あちらも丸森尾根とそう変わらない酷い道であるようですが・・・

丸森尾根上では、チングルマがちょうど見頃を迎えていました。今回は明らかに花の最盛期を外してしまったタイミングのでの訪問でしたが、最後になって少しだけ華やかな光景を見せてくれました。

すでに綿毛化しているものありますが、まだまだ見頃です。ハクサンイチゲとチングルマは、どちらも白い花でぱっと見の印象は良く似ていますが、咲く時期で言うとハクサンイチゲの方が早くチングルマは後発です。

登山道の直ぐ脇に雪渓が残っていますが、道の上にかぶってる箇所はなく、結局最後までチェーンスパイクの出番はありませんでした。

尾根上にお椀伏せたかのようなシルエットの小ピークがあるのが見えています。あちらが尾根の名称の由来にもなっている丸森峰です。

飯豊連峰は花崗岩が隆起してできた山で、こうして洗堀により露出している個所が所々にあります。場所によってはかなり大きくえぐれてしまっており、なかなかどうして歩きづらい道です。

10時30分 丸森峰まで下ってきました。直射日光に苦しめられるのはひとまずここまでで、この先からは樹林帯へと入って行きます。早く日影に逃げ込みたい。

稜線の絶景はこれで見納めです。さらば飯豊連峰。願わくばいつかまた、今度こそハクサンイチゲが咲き誇る6月中に訪問したいものです。

と言うことでようやく待望の樹林帯の中へと下ってきた訳なのですが、森の中は風がそよとも吹かないため、少しも涼しくはないです。まあそれでも、日差しがないだけでまだいくらかマシではあります。

所々に開けた場所があります。本当にもう直射日光は勘弁してください。溶けちゃいます。

途中で何名かの登って行く人とすれ違いましたたが、彼らは昨日の私と同様に、暑すぎて行動不能状態に陥ってしまうのではなかろうか。
眼下の谷底に道があるのが見えています。飯豊山荘があるのはあの道沿いです。つまり、あの高さまで降りて行かなければならないということです。

12時35分 夫婦清水まで登ってきました。丸森尾根の途中にある貴重な水場です。前回訪問時にちょうど雨が降っていたので、泥臭くて飲めた代物ではありませんでしたが、今はどんな感じでしょうか。

うん、やっぱり泥臭い。どうやら雨が降っていたことは無関係であったようです。と言うことで、この水場はアテにはしない方が良いかと思います。

丸森尾根は谷底に近づく程に険しさが増して行き、疲労がたまってくる後半に難易度が上げてくる非常に厄介な道です。ここからはほとんど写真も撮らずに、黙々と下山と言う作業に取り組みました。

15時10分 場面は一気に飛んで、飯豊山荘まで下ってきました。汗だく状態ですぐにでも温泉に直行したい気分ですが、その前に帰路のバス停の位置を確認しておきます。

バス停は山荘の目の前ではなく、下山した地点から見て右手にあります。最終便は16時50分発なので、まだ時間にはだいぶ余裕があります。

飯豊山荘行きの町営バスは季節運航で、7月と8月は毎日、9月は週末のみの運航です。それ以外の時期は手前の梅花皮荘どまりとなります。
飯豊山荘でひと風呂浴びて行きます。この下山後の温泉を何よりも楽しみにしていた訳なのですが、源泉井戸にトラブルがあったということでまさかの入浴中止中でした。・・・なん・・だと・・・

入浴は出来ませんが、シャワーだけなら使えるということだったので、それを利用しました。とりあえず汗を洗い流せただけでもまだ幸いでしたが、しかしトホホなタイミングの悪さでした。
その代わりと言っては何ですが、バスの時間まで扇風機のある涼しい食堂で休ませて頂きました。飯豊山荘さんは最高です。
長々と山道を下り、17時30分に小国駅に到着しました。ここまでの料金は驚くなかれ、たったの600円です。何らかの補助金が注入されているのでしょうが、部外者からはもっと取れば良いのにとはいつも思うところです。

そしてここからがさらに長い。JR米坂線は令和4年の豪雨被害により長らく運休状態が続いており、現在は代行バスによる運行となっています。本数が非常に少ないので、時刻表は事前によく確認しておいてください。

乗客はほとんどおらずガラガラな状態です。米坂線もともと赤字路線で、このまま復旧せずにバスに置き換えて廃止するとう言う論議が度々取りざたされています。
18時30分 坂町駅に到着しました。最寄駅に戻ってくるだけでも、多大な時間を要しました。やはり飯豊は遠い。

往路と同様に新潟駅を経由して、長い長い帰宅の途につくのでした。飯豊はいいで。されど遠し。

飯豊連峰の主稜線をすべて縦走しようと言う1年越しの宿題は、こうして無事に回収されました。事前に予想していたこととはいえども、夏の飯豊は尋常ならざる酷暑の世界でした。
朳差岳は飯豊連峰の中でも特に人気が高い飯豊本山や大日岳からは少し離れた位置にあることから、縦走時にスルーされてしまうことの多い山かと思いますが、それはとても勿体ないことだと思います。もう1泊追加してでも、足を延ばすだけの価値は十分にあります。
通行止めの影響もあって、明らかにベストではないタイミングでの訪問となってしまったので、いつかまたハクサンイチゲの季節に訪れたい山です。次回訪問があるとすれば、その時は奥胎内ヒュッテに前泊して早朝から登ります。日中に足の松尾根を登るのは、もうこりごりなので・・・
<コースタイム>
1日目
奥胎内ヒュッテ(9:50)-足の松尾根登山口(10:50)-姫子ノ峰(12:00~12:10)-イチジ峰(14:10)-行動中止(14:25~15:30)-大石山(16:25)-鉾立峰(17:25)-朳差岳避難小屋(18:10)
2日目
朳差岳(5:20)-鉾立峰(6:00~6:10)-大石山(7:00)-頼母木小屋(7:55~8:10)-頼母木山(8:50)-地神山北峰(9:25~9:40)-丸森峰(10:30)-夫婦清水(12:35~13:10)-飯豊山荘(15:10)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。






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