
岩手県八幡平市、雫石町および秋田県仙北市の境界上にまたがる裏岩手縦走路を歩いて来ました。
岩手県のシンボルである岩手山の裏側に連なる稜線を辿る行程です。いかにも奥羽山脈らしい起伏の少ないなだらかな稜線となっており、紅葉シーズンには美しい錦模様に彩られます。相当山深い一帯ではありますが、公共交通機関を利用したアクセスも一応は可能です。
大深山荘に一泊して、最高の季節を迎えた裏岩手を縦走してきました。
2025年10月3~4日に旅す。
自分の中では長年の懸案事項の一つであった、裏岩手縦走路を歩いて来ました。その名の通り、岩手山の裏側に連なっている稜線を辿るコースです。

裏岩手縦走と言うと一般的には岩手山から八幡平の区間のことを指しますが、残念ながら岩手山に噴火警戒レベル引き上げによる入山規制がかかっていたため、八幡平から三ツ石山までの区間を歩いて来ました。

再訪となる今回は、路線バスによるアプローチが可能な八幡平からスタートして、岩手山を目指して南下する行程を辿ります。

北進でも南進でも難易度に大きな違いはありませんが、南進ルートの方が常に岩手山の姿を眺めながら歩くことができるためオススメです。
避難小屋の大深山荘に宿泊して、1泊2日の行程で巡ります。2日共に最高の快晴秋晴れに恵まれた、会心の山行でありました。

この裏岩手縦走に関しては、長々と何事かを語るのも無粋に思えてくるくらいには、素晴らしいき絶景が広がります。そんな訳なので、今回は写真多め言葉少なめでお送りしようと思います。
いざ、裏岩手の絶景に刮目せよ。
コース

盛岡駅から出ている八幡平自然散策バスでアクセス可能な、八幡平頂上バス停からスタートします。縦走路上にあるいくつかの小ピークを辿りながら南下して、大深山荘で1泊します。
翌日は三ツ石山まで縦走したのちに、秘湯の松川温泉へと下山します。岩手山を除いた裏岩手縦走としては、ごく一般的な行程です。
1.裏岩手縦走 アプローチ編 夢の超特急新幹線で行く、みちのくへの旅路
10月3日 6時19分 JR東京駅
岩手県は遠いい。普段は自由席にしか乗車しないドケチ倹約家の私ですが、本日は珍しく全席指定のはやぶさ号ではるばる盛岡駅を目指します。

贅沢のためではありません。この朝一番のはやぶさに乗車しないと、その後のバスへの乗り継ぎに間に合わないのです。
はやぶさに乗ると言った矢先になんですが、はやぶさ側の車両はすでに満席状態であったため、ギリギリ空席が残っていたこまちの車両に乗車します。毎度のことながら、どうして私は当日の朝になってから指定席乗車券を買い求めるのか。

ちなみに満席だった場合には、立席特急券なる謎の切符を購入することになります。まあ要するに、デッキに立っていけと言うことです。過去に何回か買う羽目になったことがあります。
だからもっと早くに、えきねっとで予約しておけとあれほどに…
8時44分 快適な新幹線の座席でうつらうつらとしている間に、つつがなく盛岡駅に到着しました。おら岩手さ来たただ。

当日の朝に東京を出発して、9時になる前にもうすでに盛岡に居る。やはり新幹線とはすさまじい乗り物です。運賃はとっても高いけれどね。

盛岡駅東口のバスターミナルから、9時10分発の八幡平自然散策バスに乗車します。このバス案内所で前もって乗車券を購入することが可能ですが、いつの間にか交通系ICカードにも対応していたので、まあ別に買っておかなくても良いと思います。

高速バスタイプの車両による運行ですが、路線バスの扱いで事前予約は不要です。乗り切れない場合は増発してくれます。

11時10分 盛岡駅から長々と山道に揺られて、八幡平頂上バス停に到着しました。このバス停の名称には若干の偽りがあり、厳密に言うとここはまだ頂上ではなく頂上への入り口です。まあ、すぐそこではありますが。

山頂までのわずかな距離ですらも歩くつもりのない観光客のためなのか、山頂標識的なものがバス停の目の前に立っていました。あえて博多弁で言うと、八幡平たい。

レストハウスの裏手に展望台があるので、出発前にまずは登ってみましょう。これから歩く裏岩手縦走路のすべてが一望できます。実に素晴らしい。

如何にも東北地方の山らしい雄大なスケール感の光景を前に、いやが上にもテンションが上がります。えっ、この稜線を本当に全部歩いても良いのか?
ここで野暮なセルフツッコミを入れてしまうと、火山警戒レベルの引き上げに伴い、現在岩手山には登ることができません。歩けるのは途中までです。まあそれは仕方がありません。

反対側のすぐ目の前に八幡平の山頂があります。平とついている名前の通りに、ほぼ平坦なのっぺりとした姿をしています。

2.歩き始めて早々に現れる好展望地の畚岳
11時35分 身支度を整えて行動を開始します。歩き始めからしばしの間は、岩手県道の八幡平公園線に沿って進みます。

登山開始時刻としてはかなり遅い時間ですが、公共交通機関頼みの身の上としては、こればかりは致し方ありません。本日は大深山荘までたどり着ければ良いだけなので、特に問題は無いでしょう。
道が大きくカーブしたところで、前方に本日の縦走における最初の1座である畚岳(もっこだけ)が姿を見せました。見るからに眺めがよさそうで、期待が高まります。

畚(もっこ)とは普段まったく目にすることがない漢字ですが、荷物を運ぶために藁などで編まれた運搬袋のことです。
肝心の紅葉の色づき具合の方はと言うと、文句なしに見頃のど真ん中です。ただこの裏岩手の稜線は大部分が笹に覆われているため、紅葉よりは全体的に緑色の方が目立ちます。栗駒山のような一面の錦模様とはいきません。

裏岩手縦走路の中でも紅葉が一番見所なのは、明日歩く予定でいる三ツ石山の周辺一帯です。本日は紅葉よりも、雄大なスケール感のある稜線美を楽しむことに主眼を置いて行きましょう。
レストハウスから10分少々歩いたところで、道の脇に登山口が現れました。数台分の駐車スペースもしっかりとあります。

裏岩手縦走路の案内板が置かれていました。登山口までバスに運んでもらえるためあまり実感がわきにくいですが、当地は人里からは遠く離れた途方もない山奥にあります。縦走をするのであれば、予備の水や食料は十分な量を携行してください。

大規模な雪崩に影響により、登山道が不明瞭になっている個所があるとの、注意喚起が張り出されています。地図に示されている場所を見ると、今回歩こうとしているルート上ではなく、松川温泉と大深山の間の登山道のようなので影響はなさそうです。

畚岳に向かって緩やかな道が続いています。スタート地点から既に森林限界を越えているため、このルートは夏には間違いなく灼熱地獄と化します。花の季節も捨てがたくはありますが、ベストな訪問時期は秋だと思います。

奥羽山脈の山と言うと全般的に水はけがあまり良くなく、粘度が高い火山性の土壌でネチョネチョしている印象があります。歩きだして早々に、印象通りの泥濘が出迎えてくれました。

縦走路は畚岳の山頂を通らずに脇を巻いています。と言うことで、分岐から山頂をサクッと往復していきます。

分岐からはせいぜい5分もあれば登れる距離です。最初から開けているため空が広い。

12時10分 畚岳に登頂しました。山頂は360度の全方位に開けています。駐車場から歩いて30分とかからずにこの眺めとは、裏岩手は全く持って素晴らしい。

何気にここが、今回の縦走における最高地点であったりします。この先はほぼ似たりよったりな高さの、標高1,500メートル付近をうろつくことになります。
これから歩く稜線上には、山とも言えない丘のような、なだらかなピークが幾重にも重なっています。いいですね、実に私好みの稜線です。

視線を右に少し動かすと、秋田駒ケ岳(1,637m)の姿がありました。あの辺りは秋田県だということですな。

西側の遠くに見えているのは森吉山(1,454m)かな。冬にスノーモンスターが出現する山として有名です。だいぶ以前から登りたい山リストの上位の方に入っているのですが、いかんせん交通アクセスが非常に悪くていまだに訪問がか叶っていません。

北側にはテーブル状の八幡平が広がっています。まるで高原大地か何かのような外観をしていますが、八幡平は古い火山です。

古い火山と言うと普通は浸食によって険しく切り立っている山が多いものですが、八幡平がこのような平坦な地形となっている理由は、ものすごく簡単に言うと粘度の低いサラサラな溶岩が広範囲に流れ出して固まったためです。
粘性が高い溶岩でないと、いわゆる富士山型の成層火山にはならないということです。
東側にぼんやりと霞んで見えているのは、八幡平市の市街地の辺りだと思います。八幡平市は平成の大合併によって誕生した自治他ですが、もともと非常に人口密度が希薄な地域です。

3.緩やかなアップダウンを繰り返しつつ歩む、大深山荘への道程
分岐まで戻って来ました。寄り道はこれくらいにして、縦走を再開しましょう。

本日の宿泊予定地である大深山荘は、管理人のいない無人の避難小屋です。そのため到着がどれだけ遅くなろうと別に問題は無いと言えば無いのですが、混んでいて良い場所が確保できないのは嫌だなあということで、ここからは少しペースを上げていきます。
視界の端に常に岩手山の姿が見えており、岩手山に向かって歩いている感がとても良い感じです。個人的に岩手山は贔屓にしている山なものですから。

疎らに紅葉してはいますが、やはり全体的には笹の緑色の方が圧倒的に優勢です。それでも、良い色に色づいていますねえ。

鞍部になっている個所は、たいていはこうした池塘になっています。草紅葉の色づき加減も良い感じです。

木道は腐ってガタガタ状態なものが殆どです。これは裏岩手に限らず、東北地方の山で全般的に見られる傾向です。登山道整備に回せる予算が無いのでしょうね。

所々にオオシラビソの森になっている個所があります。別名でアオモリトドマツとも呼ばれる、雪に強く豪雪地帯の山に多く見られる樹木です。ちなみに、スノーモンスターのコアになるのはこのオオシラビソです。

振り返って見た畚岳です。どの辺が畚に見えるのかはイマイチ良くわかりません。一面が緑色をした笹の山です。

鞍部から緩やかに登り返すと、開けた真っ平らな空間が広がっていました。どういう自然力の作用が働くと山頂部にこういう地形が出来上がるのか、不思議なものです。

運動場のような空間を通り抜けると、一応はピークらしい場所がありました。

13時 諸桧岳(もろびだけ)に登頂しました。畚岳に続いて難読な名称の山です。特に何かがあるわけでもなく、基本的にただの通り道と言ったところです。

どんどん先へ進みましょう。諸桧岳かなり大柄な山体をしており、この先もほぼ平坦な道が続いています。

ようやく道が下り始めたところで、前方の視界が広く開けました。この先にも、ほとんど山とは言えないようないくつかのピークが並んでいるのが見えます。

鞍部まで下って来ると、池塘と呼ぶには少々大きな池がありました。ちなみに池塘とは泥炭層上にある比較的浅い池のことを指す言葉で、ただの池との厳密な区別はないそうです。

標識の文字がかすれてしまっていて読めませんが、石沼と言う名称です。なるほど、池でも池塘でも無くて沼でしたか。ちなみに池と沼の違いは・・・ウンチク語りはやめておきましょう。脱線が過ぎるので。

池なのか沼なのか池塘なのかはわかりませんが、小さな水たまりが複数あります。稜線上にこれだけの水が常にたまっているあたり、泥炭の保水力の高さが良くわかります。

石沼からは再び緩やかに登り返します。急坂は無く、どこまでも優しい稜線です。

登り切った地点が前諸桧(まえもろび)と呼ばれているピークです。岩手山側から見た時に前と言うことか。

ここもほぼまっ平らです。全くと言ってよいほどに疲労も感じずに、テンポよく進んでいます。

前方の視界が開けて、横に長い大深岳の姿が見えました。大深山荘はあの山の手前にあるはずです。あまりにも気持ちよくサクサクと進みすぎており、想定よりもかなり早くに到着しそうです。

尾根の片側が崩れていて、道が斜めになっている箇所がありました。と言っても傾斜自体が緩いため、滑ったところで滑落することはないでしょう。どこまでも優しい裏岩手です。

ここまでずっと、お椀を逆さに伏せたようなシルエットの山が続いていましたが、この先は少し細くなった明瞭な尾根筋になっている様子が見えます。

その前にここでも1度、鞍部に向かってゆるゆると下ります。裏岩手縦走路のこの広々としたスケール感は、本当に凄いと思います。これだけ広い範囲が見えていて、人工物が一つも視界に入らないのですから。

鞍部まで下って来ると、しっかりと見上げる感はあります。と言っても、登りの辛さは全くと言ってよいほどにはありませんけれどね。

太陽がだいぶ傾いて来ました。これだけお日様がギラギラ状態だと暑いのではないかと懸念していましたが、流石に10月ともなると気温自体が低めで、吹き抜ける風は涼しいを通り押して少し肌寒いくらいです。

振り返って見た前諸桧です。こちら側から見るとしっかりとしたピークになっており、何なら諸桧岳の本体よりもずっと存在感があります。

如何にも火山らしい、片側が切れ落ちている細尾根になりました。と言っても登山道の横幅は十分にあり、ここでも特に危ない感じのする箇所はありません。

地形的にカルデラの縁のように見えます。この辺り一帯の山は基本的にすべて火山なので、おそらくは左側に火口が存在したのでしょう。

14時20分 嶮岨森(けんそもり)に登頂しました。岳でも山でもなく森と言う、風変わりな名称のピークです。

山頂脇の崖下に鏡沼と呼ばれている沼があります。位置関係的にはカルデラ湖のようにも見えますが、どうなんでしょう。

細尾根上を辿る道がもう少しだけ続きます。それにしても、開放感がありすぎやしませんかねこの尾根。自然と鼻歌が漏れ出てきてしまうではありませんか。

前方に広がるオオシラビソの森の中に、小屋の屋根らしきものが小さく見えます。あそこが目指す大深山荘であるようです。

道が斜めになっていて、少しだけ滑落注意な箇所がありました。朝露に濡れている時間帯には注意した方がよさそうです。

振り返って見た鏡沼です。視界に入る光景のすべてがイチイチ絶景過ぎて、後で現像するのが大変だとわかっていても、つい同じような写真を何枚も撮ってしまいます。

池なのか池塘なのか沼なのかわからない水たまりの脇を進んでいくと、小屋が見えてきました。

ここでもやはり木道はガタガタです。この木道がいつ頃整備されたものなのかはわかりませんが、大々的な整備が必要であることは明らかです。

14時55分 大深山荘に到着しました。あまりにも気持ちよく歩けすぎて、ここまでノンストップで来てしまい、想定していたよりもずっと早くに到着しました。

この大深山荘は裏岩手を縦走する人にとっては絶妙ともいえる立地にあるため、大変人気があります。特に紅葉シーズンの週末ともなると大混雑し、定員オーバーの詰め込み状態となってしまうことがザラなのだとか。

その評判を聞き及んでいたため、今回は週末になる前の金曜日に訪問した次第です。はたして平日の混雑具合はどの程度なのか、ドキドキしながら戸を開けます。
4.大深山荘で過ごす一夜
内部は2階建てのロフト構造になっています。先客は5名ほどで1階部分にも空きがありましたが、まだ後からやって来て増えるかもしれないで、2階の隅に陣取りました。

小屋に入るなり、先客の一人の青年が話しかけてきました。この青年は現在大学4年生で、「東北の山における避難小屋の活用状況」と言うテーマで論文を書こうとしているのだとか。
彼はちゃんと学校名と学部まで名乗っていたのですが、どこの大学だったのかは私がすっかり忘れてしまいました。ともかく礼儀正しくてハキハキとしている好青年です。
ついては論文の資料として使用するための写真を何枚か撮らせて欲しいと依頼されたので、快諾しました。
寝床を確保したら、続いて水を汲み行きます。水場までは3分と案内なされていましたが、実際は片道5分くらいはかかります。

湿原になっている場所に向かって木道を下って行きます。どうやら水場はこの湿原のどこかにあるようです。

ここでも木道はもはやガタガタを通り越して、完全に土に還りつつありました。水気が多い場所はどうしたって腐敗が早くに進むでしょうから、当然こうなるでしょうね。

秋口にもなると水量が減っていたりするのかなと懸念していましたが、それは杞憂でした。冷たい水がじゃぶじゃぶと大量に出ています。

私は基本的に水に旨いも不味いないだろうという考えの持ち主で、普段はミネラルウォータを一切買わずに水道水を飲んで過ごしています。
ですがこの大深山荘の水場の水は、これまでの人生で飲んだ水の中で一番おいしかったような気がします。泥炭層から何か特別なミネラル成分が溶けだしていたりするのでしょうか。
このいつものお湯すらも沸かない食事が先ほどの青年の興味を引いたらしく、食べているところの写真を何枚も撮られました。あと何故か寝ているところの写真も…

彼の書いた論文がその後外部に公開される機会があったのかどうかは知りませんが、どこかの大学に私の食事シーンや寝顔が使用されている論文が眠っているかもしれません。
5.紅葉の只中を行く小畚山への道
明けて10月4日 6時25分
縦走2日目となる本日も特に先を急ぐ旅路ではないため、周囲が十分に明るくなってからゆったりと始動しました。今日は三ツ石山まで縦走した後に松川温泉に下ります。

うっすらと朝日が差し込み始めた静寂な森の中は、涼しいを通り越して少し肌寒いくらいです。今日も頭上が開けたお日様ギラギラの稜線を行くことになるので、寒さを感じるのは朝のうちだけでしょう。

相変わらず木道はガタガタですが、特に通行に支障をきたすような場面はありません。ですがこの状態では、木道の本来の目的であるところの登山道の土壌保護は全くできてはいなさそうですが。

背後を振り返ると、昨日歩いた稜線のほぼ全容が一望出来ました。ちなみに三ツ石山まで行ってしまうと、大深岳に遮られて八幡平方面は一切見えなくなります。今のうちにこの光景を目に焼き付けておきましょう。

大深山の稜線まで登ってきました。ここで松川温泉方面から登ってくる登山道と合流します。

この先はもう、過去に1度歩いたことがある領域となります。前回の訪問時は雲が多めでイマイチピリッとしない空模様であったため、青空の下を歩けるのがとても楽しみです。

6時55分 大深岳に登頂しました。昨日通った諸桧岳と同様にお椀を伏せたような、のっぺりとしたとしたシルエットのピークで、展望はありません。基本的にはただの通り道と言ったところです。

ここまでと同じように、高原台地状のなだらかな山並みが視界いっぱいに広がっています。過去にそれこそ何度も繰り返し述べていますが、私はアルペン的な岩峰よりも、こうした放牧的で緩やかな稜線の山の方がずっと好みです。つまり奥羽山脈は最高だってことです。

特徴的なシルエットの秋田駒ヶ岳と、その手前を横切っている乳頭山が良く見えています。昨年に繋げて歩きましたが、あちらも最高の稜線でしたよ。

この遠くに薄っすらと霞んで見えているのは、方角的に鳥海山(2,236m)だと思います。秋田駒ヶ岳と同様に、良い評判しか聞かれない登ったら絶対に幸せになれる山です。東京から行こうとすると、途方もなく遠いいですけれどね。

目指す三ツ石山が姿を見せました。紅葉が良い感じに色づいている様子がここからでも良く見えます。訪問のタイミングとしては完璧であったようです。

続いて八瀬森方面への分岐を通過します。この八瀬森を経て乳頭温泉へと至るルートも非常に魅力的ではあるのですが、行程的にさらに1泊を要し、裏岩手以上に人が少なく熊が跋扈する領域を長々と歩くことなります。

大深岳を過ぎて以降が、裏岩手縦走のラウンド2と言ったところでしょうか。相変わらず眺めは最高で、どこまででも歩いて行きたいと思わせる稜線が続いています。

岩手山がかなり大きく見えるようになりました。表の盛岡側から見るときれいな富士山型をしている岩手山ですが、裏側は何と言うか、かなりデコボコしています。

ここで小畚山との鞍部に向かって、一度しっかりと標高を落とします。

この鞍部の一帯が紅葉ゾーンになっています。緑一色な笹薮の中に、色鮮やかな錦模様が浮かんでいます。

ジグザクと九十九折れに下って行きます。ここまでの鞍部とも言えないような小さな下りとは違って、200メートル近く標高を落とします。

小畚山がすっかりと見上げる高さになりました。ここからは登り返しです。

紅葉のトンネルの中を進みます。ようやく紅葉登山らしい光景になってきましたよ。

今回の縦走ルートでは、ここまでほとんど登りとも言えないような登り坂しかありませんでしたが、ようやくまともな登りが始まりました。と言っても、あっという間に終わるのですけれどね。

振り返った見た鞍部の一帯には、見事な紅葉の絨毯が広がっていました。ここだけを切り取って見ると、栗駒山並みに紅葉しているように見えます。素晴らしい。

八瀬森方面の稜線が見えています。こちらもすごく気持ちの良さそう稜線に見えますが、歩く人は極めて少なく登山道は全般的に荒れ気味であるらしい。

ズームで覗いてみると、山の上にテーブル状の高層湿原がいくつも点在しているのが見えます。うーむ、やはりこれは1度は歩く必要がありそうです。いつ訪問出来るかはわかりませんが、登りたい山リストに加えておきましょう。

このリスト、残数が増える一方で登っても登っても一向に減る気配がありません。果たして一生のうちにすべて登りきることは出来るのだろうか。
いい加減、風呂敷を広げるのではなく畳むフェーズに入るべき時期に来ていることは重々承知しているのですが、それでもなかなかね…
山頂まで登ってきました。三ツ石山は縦走だけでなく日帰りで周回する人も大勢いるため、山頂は大賑わいしていました。

8時5分 小畚山(こもっこやま)に登頂しました。裏岩手にはわざとなのかと思うくらいに、難読な山名が多い印象です。

三ツ石山と言うと、この小畚山から見た時の姿が一番有名かと思います。紅葉は今がまさに見頃のど真ん中といったところで、天気も上々で最高の一日をつかみ取ることが出来たのではないかと思います。素晴らしい!

6.最高の季節を迎えた三ツ石山の頂
いつまでも同じような写真を何枚も撮っていてもしょうがないので、いい加減先へ進みましょう。いや本当に、先ほどから撮影が捗りすぎて一向に歩みが進まないのです。

この辺りはハイマツが跋扈していて、登山道の横幅がかなり狭くなっています。そんな中すれ違いが結構頻繁に発生するため、地味に歩きにくいです。

この辺りで、昨日同宿だった例の論文を書いている青年が、猛スピードで背後から追い抜いて行きました。若いって良いねえ。
なんでもこのピークは、にせ小畚と言う名称であるらしい。マッキーこと巻機山のように、小畚山はニセモノを従えている山でありましたか。

ニセモノから見た本物の小畚山です。大深岳側から見るとあれだけ顕著にピーク感があったのに、反対側から見ると尾根の一部のようにしか見えません。

ここまで来ると、だいぶ岩手山に近づいて来た感があります。八幡平の展望台から見た時はあれほど遠くに見ていたというのに、人間の歩く速さと言うのは意外と早いものです。

三ツ石山の本体を正面に捉えました。山頂にある岩の上にいる人影もなんとなしに見えています。

紅葉の先には岩手山。一体何度目だよと言われてしまいそうですが、進むにつれて見え方が少しづつ変わって行くものですから、飽きることもなくついつい何度もカメラを向けてしまいます。

にせ小畚と三ツ石山との鞍部には、その名も三ツ沼と言う池があります。ここでも当然のように木道がガタガタなので、特にすれ違い時には注意を要します。

需要があるかどうかはわかりませんが、三ツ沼に写った逆さにせ小畚を置いておきます。

三ツ石山に向かって最後の登り返しです。錦模様の只中を駆け上がって行きます。

最高地点は岩の上にあります。この岩がどこから見ても3つに見えるというのが、三ツ石山と言う名前の由来です。3つに見えませんけれど、はて?

一見すると切り立っていて、とても登れなさそうに見えますが、裏側から回り込めば簡単に登れます。

9時10分 三ツ石山に登頂しました。人気のある山だというのは承知していましたが、山頂のあまりの人の多さに面喰いました。昨日の静けさが嘘のような混雑ぶりです。

紅葉シーズン真っ盛りの週末で、しかもこれだけ天気が良いとあっては、混雑するも致し方なしと言ったところでしょうか。
前回訪問時にはガスに覆われていて見ることができなかった三ツ石山から見た岩手山も、今回こうして無事に回収することが出来ました。

せっかくなので、一応は最高地点である岩の上にも登っておきましょうか。手がかり足がかりはあるので特に難しくはありませんが、高度感はそれなりにあります。

定員はいいところ2~3人と言ったところでしょうか。限りあるスペースなので、長々と占拠しないで写真を撮り終わったら速やかに退去しましょう。

山頂の岩の上から見た大深岳方面の眺めです。見たかった光景はすべて回収することができました。これでもう思い残すことはありません。

7.松川温泉に向かって足早に下る
立錐の余地もないくらいに大混雑する山頂から追い立てられるようにして、下山を開始します。

まずはこの眼下に見えている三ツ石山荘に向かって下って行きます。池のほとりの、これまたよさげに立っておりますな。

次から次へと人が登ってきます。恐るべし、秋の三ツ石山。ちょうど日帰り登山の人が山頂に到達する時間帯と被ってしまったようで、何とも間が悪い展開です。

すれ違い待ちでだいぶ時間を浪費しつつも、それでも何とかサクサクとテンポよく小屋まで下ってきました。

こちらの三ツ石山荘も、昨日泊まった大深山荘と同様の管理人が常駐はしていない無人の避難小屋です。きっと今夜あたりは大混雑するのでしょうね。

山荘前から見た三ツ石山の姿を写真に収めたところで、本日のミッションは完了です。この辺りからもう、私の頭の中は完全に温泉モードへと切り替わりました。さあ風呂だ風呂。

松川温泉に向かって降下を開始します。過去に一度歩いたことのあるルートですが、かなり泥濘が酷い道であったと記憶しています。ここまで来て転ばないように、慎重に下ってまいりましょう。

記憶にある通りの、泥まみれの道が続いていました。初めのうちは緩やかですが、終わりが近づくほど傾斜が増してきます。反対向きに登る場合だと、立ち上がりが一番きついタイプの道だということです。

道中に一か所、岩手山の展望スポットがあります。本当はあそこまで行きたかったのですが、噴火警戒レベルが上がってしまったとあっては仕方がありません。

最後の方は階段地獄になります。この後はもう写真も撮らずに、黙々と下山と言う作業に取り組みました。

と言うことで後半はかなり端折りましたが、登山口まで降りてきました。

登山口について以降も、ゴールまではまだひと道あります。松川地熱発電所の蒸気パイプに沿って進みます。

発電所の建物が現れたところで、ぐるっとUターンして登り返します。この辺りには道標などの案内が何も無いので、道順が少々わかりにくいかもしれません。

12時10分 松川温泉峡雲荘に到着しました。登山者にはおなじみの、日本秘湯を守る会会員の温泉宿です。宿泊施設ですが、日帰り入浴も受け付けています。

温泉に直行する前に、帰りのバス時間を確認しておきましょう。盛岡駅行きのバス便は1日に3本しかありません。次のバスは14時45分発です。2時間以上あるので、時間は気にせずにゆっくりと入浴出来そうです。

ゆったり長風呂に浸かって、14時45分のバスで撤収します。帰路のバスは高速バスタイプの車両ではなく、通所の路線バスの車両でした。

バスの車窓からもずっと岩手山の姿が見えています。惚れ惚れするくらいに大きく目立ち、地域のシンボル的な存在とされている理由が大変よくわかります。

帰路でもしっかりと2時間近い時間をかけて、盛岡駅まで戻って来ました。月並みな感想ですが、岩手県は広いですね。

帰路は全席指定のブルジョワな乗り物はやぶさ号ではなく、自由席があるやまびこ号に乗車します。往路よりもずっと長い時間を費やして、東京への長い長い帰宅の途につきました。

最高の晴天いも恵まれて、長年の懸案事項の一つであった裏岩手縦走は大満足のうちに幕を閉じました。もっとも、岩手山まで行けなかったことは残念ではありますが。
歩行距離的にはそこそこ長めの行程とはなりますが、見た目通りの緩やかな稜線がずっと続き、特に難所と言えるような箇所は存在しません。現地までたどり着くことが出来さえすれば、あとは稜線歩きの喜びのすべてが詰まっているかのようなトレイルが待っています。
交通不便な奥地にあるため、なかなかここまで出向こうという決心が付きにくい場所であろうかとは思いますが、行けば絶対に良い思いが出来る事は保証いたします。奥羽山脈の雄大なスケールを感じることが出来る、裏岩手への旅に繰り出してみてはいかがでしょうか。
<コースタイム>
1日目
八幡平山頂バス停(11:35)-畚岳(12:10~12:15)-諸桧岳(13:00)-石沼(13:30)-前諸桧(13:40)-嶮岨森(14:20)-大深山荘(14:55)
2日目
大深山荘(6:25)-大深岳(6:55)-小畚山(8:05~8:15)-三ツ沼(8:45)-三ツ石山(9:10~9:40)-三ツ石山荘(10:10)-松川温泉(12:10)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。





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