笠倉山 残雪の越後三山を目の前に望む魚沼アルプスを巡る

トヤの頭から見た笠倉山
新潟県魚沼市と南魚沼市にまたがる、笠倉山(かさくらやま)に登りました。
魚沼市の市街地の傍らにある標高1,000メートに満たない里山です。日本国内でも指折りの豪雪地帯にあるため、低山ながらも稜線上は森林限界を超えていて眺めがよく、通称魚沼アルプスと呼ばれるハイキングコースが整備されています。
雪解け直後の花々が咲き誇る里山で、残雪の越後三山を目の前に望む大展望を満喫してきました。

2023年4月29日に旅す。

今回は近年日本各地に増殖中のいわゆるご当地アルプスと呼ばれるもの一つである、魚沼アルプスに登って来ました。その名の通り、魚沼市の傍らに立つ里山です。
小出から見た魚沼アルプス
魚沼地方の象徴的存在である越後三山の前衛部に位置しており、尾根上をグルっと周回できるハイキングコースが整備されています。

古くから米所として名高い魚沼地方は、日本国内でも有数の豪雪地帯です。そのため笠倉山は、標高1,000メートルに満たない低山であるにもかかわらず森林限界を超えていて、大変眺めの良い山です。
魚沼アルプスの稜線
4月の下旬であっても山中にはまだまだ残雪が多く残っており、豊富な雪解け水により多種多様な花々が溢れんばかりに咲き誇っていました。

それなりにアップダウンの多い道程を登り詰めた先には、越後三山を目の前に望む息をのむような大パノラマが広がっていました。マイナーなご当地アルプスという域を大きく逸脱した絶景に圧倒された、魚沼アルプス訪問の記録です。
笠倉山から見た越後三山
先に断っておきますが、魚沼アルプスは凄いですよ。

コース
魚沼アルプスのコースマップ
宝泉寺よりスタートし、送電鉄塔巡視路を登り鳴倉山へ。そこから魚沼アルプスと呼ばれている尾根上の小ピークを越えながら、最高地点の笠倉山に登頂します。

下山は大力山を経て宝泉寺に戻る周回ルートです。往路では駅からタクシーを使いましたが、下山後は小出駅まで歩いて戻りました。

1.魚沼アルプス登山 アプローチ編 新幹線で行く魚沼への旅路

5時50分 JR東京駅
新潟県の山への日帰り登山を可能としてくれる魔法の乗り物新幹線で、遠路はるばる魚沼市を目指します。コロナ渦の頃に比べると、朝一番の東京駅にもだいぶ客足が戻って来ましたな。
朝の東京駅新幹線ホーム
誰もが知っているような名だたる名峰を目指すならいざ知らず、多くの人がそもそも聞いたことも無いようなマイナーなご当地アルプスに出かけるに新幹線を使うのは、割に合わない行為なのではないだろうか。

そんな疑問は当然湧いてこようかと思います。

結論から言ってしまうと、魚沼アルプスにはその価値が十分すぎるほどにあります。

7時35分 浦佐駅に到着しました。駅の周辺は閑散としており、そもそもなぜこの駅が新幹線の停車駅に選ばれたのかいささか不可解にも思えます。田中角栄先生のごり押しパワーによる賜物なのか。
浦佐駅の新幹線ホーム
今でこそ寂れていますが、かつては駅の目の前に浦佐スキー場があり、スキーブームの時代には賑わっていたのだそうです。兵どもの夢の跡ですな。

越後の国と言えば上杉謙信と言うことなのか、毘沙門天のノボリがはためいていました。山梨県における武田信玄愛と比べると、新潟県における謙信人気と言うのは、それほどの熱量が感じられません。どこで人気に差がついたのか。
浦佐駅の在来線改札

長岡行き上越線に乗り換えます。実は意外なことに、魚沼駅と言う駅は存在しません。魚沼市の中心と言える駅は上越線の小出駅です。
浦佐駅の上越線ホーム

電車の車窓から、横一列に綺麗に並んだ越後三山の姿が良く見えました。左から順に越後駒ヶ岳(2,003m)、中ノ岳(2,085m)および八海山(1,778m)です。
上越線の車窓から見た越後三山
まだまだ残雪がたっぷり残っていて白い姿をしています。この豊富な雪融け水が、米所として名高い魚沼の田畑を潤しているのでしょう。

7時52分 小出駅に到着しました。以前に浅草岳に登った際にも訪れており、自身にとって2度目となる訪問です。
小出駅のホーム
小出駅から登山口のある宝泉寺へと乗り入れている、バスなどの公共交通機関は存在しません。タクシーに乗るか、もうしくは約1時間をかけて歩いて行くかの2択です。

今回はちょうど良いタイミングでタクシーが居たので、そのまま乗り込みました。特に事前予約はしていませんでしたが、基本的に小出駅にはタクシーが常駐しています。
小出駅前のタクシー乗り場

8時5分 宝泉寺に到着しました。若干うろ覚えですが、ここまでのタクシー料金は2,000円と少々くらいでした。
魚沼市 宝泉寺
本日はここを起点に、時計回りにぐるっと周回します。

2.入り口がわかり難い、鉄塔巡視路の取り付き

8時10分 身支度を整えて行動を開始します。まずは宝泉寺の前から道なりに進みます。
230429魚沼アルプス-013

やがて道は大きくUターンするかのように小出駅のある方向へ戻り始めるので、カーブ地点から田んぼの畦道に入ります。道標の類は一切ないので、事前に国土地理院地図などで道順をよく確認しておいてください。
230429魚沼アルプス-014
ちなみにこの魚沼アルプスの登山コースは、山と高原地図の収録範囲には含まれていません。

進行方向の右手に見えている、宝泉寺のすぐ背後にあるこの山は大力山と言う名のピークです。本日の行程では、最後に登る予定でいます。
魚沼アルプス 大力山

あぜ道の左側に用水路があり、登山道への取り付きは水路の対岸にあるはずなのですが、渡る場所が見当りません。ズルズルと奥へ進んで来てしまいましたが、この小屋が現れた行き過ぎです。引き返しましょう。
230429魚沼アルプス-016

水路の対岸へ渡る方法の正解は、この橋とも言えないような金属の足場でした。というかこれ、本当に乗っても大丈夫なのだろうか。
230429魚沼アルプス-017

恐る恐る対岸へ渡ると、藪に没しかけた踏み跡が続いていました。・・・あっさりと辿り着いたかのように書いていますが、実際は結構迷いました。
230429魚沼アルプス-018
登山口への取り付きが一番の核心部であると言うのは、マイナーな里山には割とありがちな現象です。

と言う事で入り口探しでいきなり時間を空費してしまいましたが、8時45分に登山口に辿り着きました。この八色線と書かれているところから、山中へと分け入って行きます。純粋な登山道ではなく、送電鉄塔の巡視路であるようです。
230429魚沼アルプス-019

3.始めからいきなりの急登が続く、鳴倉山への道程

頭上高くに鉄塔が見えています。あの場所を目指して、ほぼ一直線に登って行きます。初っ端からかなりの急登です。
230429魚沼アルプス-020

豪雪地帯の山特有の、雪の重みに負けて横向きに延びた木の姿が目立ちます。もっと標高の高い山ならいざ知らず、里のすぐ傍らにある低山がこの状態と言うのは、流石は豪雪地帯として名高い魚沼の山です。
230429魚沼アルプス-021

歩き始めて早々に頭上が開けて、ツツジの姿がチラホラと目につくようになりました。
230429魚沼アルプス-022

これはユキグニミツバツツジと言う名前のツツジです。普通のミツバツツジと比べてると、紫というよりもピンク寄りの色味をしてます。
ユキグニミツバツツジ

早くも森林限界を越えてしまったらしく、周囲は笹と灌木しか存在しない状態となりました。それはすなわち、この先はずっと直射日光に晒されれ続けると言う事を意味しています。
230429魚沼アルプス-024
・・・いくら何でも早すぎませんかね。恐るべし、豪雪地帯魚沼。

森林限界を超えたことにより、背後の展望が開けました。ちょうど左奥に見えているのが、目的地である笠倉山です。現在地から見て左からグルっと回って行き、帰りは右側から降りて来る予定です。
230429魚沼アルプス-025

大力山の背後に、八海山がひょこりと頭を覗かせました。八峰と呼ばれる山頂のギザギザっぷりが目につきます。
魚沼アルプスから見た八海山

前方にまたもやモリモリとした急登が現れました。一見穏やかそうに見えていて、なかなかの険しい道ですぞ。
230429魚沼アルプス-027

九十九折れなどはない直登勝負の急坂です。特に傾斜がきつくなっている場所にはお助けロープが垂らされていました。この魚沼アルプスの登山道は地元の有志により整備されたとのことですが、全般的にとても良く整備されています。
230429魚沼アルプス-028

急登を登りきると、背後の展望が開けました。集落が近いため、車の音やらなんやら麓の生活音がすべて聞こえてきます。
230429魚沼アルプス-029

遠くに薄っすらと見えているこの白い山は、位置的に巻機山(1,967 m)なのかな。残雪期のマッキーにも一度登ってみたいんだよな。
魚沼アルプスから見た巻機山

足元に咲き始めのイワカガミが多数ありました。イワカガミは高山植物の一種であるイメージなのですが、こんな標高の低い山も咲くものなんですね。
魚沼アルプスのイワカガミ

この白くて花弁が大き目の花は、タムシバと言う花です。ユキグニミツバツツジと並んで、そこかしこに咲いていました。
230429魚沼アルプス-032

陽射しが容赦なく照り付けてくるため、先ほどから暑くて汗が止まりません。水は合計3Lを携行しているものの、足りるかどうか一抹の不安を感じる展開です。
230429魚沼アルプス-003

魚馬アルプス縦走最初のピークである、鳴倉山の山頂らしき場所が見えて来ました。見るからに眺めが良さそうで、期待が高まります。
魚沼アルプス 鳴倉山

山頂に到着したと思いきや、山頂のすぐ脇をかすめる林道らしき道に出ました。なんだ、鳴倉山は車で上がってこれてしまう山でしたか。
230429魚沼アルプス-034

道の脇にまるで取って付けたかのような取り付きから、今度こそ山頂を目指します。
230429魚沼アルプス-035

振り返ると、およそ低山らしからぬ素晴らしい眺望が広がっていました。まさに魚沼市の裏山的な立地です。
魚沼 鳴倉山からの眺望

この遠くにモヤ―と霞んで見えているのは、位置的に妙高山(2,454m)と火打山(2,462m)だと思いますが、さすがにこれだけ霞んでいると確証が持てません。
230429魚沼アルプス-037

山頂は広々としており、ゴム製のマットが敷き詰められていました。鳴倉山の山頂はパラグライダーの発着場になっているとの事です。先ほど横断した道は、林道ではなくパラグライダーを運び込むための道でしたか。
230429魚沼アルプス-038

10時 鳴倉山に登頂しました。高尾山よりも少し標高が低いくらいの山ですが、山頂からは大パノラマが広がっていました。
魚沼アルプス 鳴倉山の山頂

奥に見えている三角形のピラミダルな山容の山は越後駒ヶ岳です。ちょうどその手前に重なって見えているのが、目的地の笠倉山です。
鳴倉山から見た越後駒ヶ岳と笠倉山
こうして見ると、まだ結構な量の雪が残っているように見えます。一応チェーンスパイクは用意してありますが、それだけで大丈夫なのかな。

4.花々に飾られた、延々とアップダウンが続く尾根道を行く

先へ進みましょう。鳴倉山からは一度大きく標高を落とします。その先にも延々とアップダウンが続いている様子が見て取れます。なかなか一筋縄では行かなそうな道程です。
鳴倉山から見た魚沼アルプスの登山道

下りきった鞍部に、鑑池と呼ばれる池がありました。鑑と言うほどには反射しておらず、雪解け水がたまったただけの水溜まりです。
魚沼アルプス 鏡池

鑑池の周囲がカタクリの群生地となっていました。なかなかお目にかかれない規模に密集して咲いています。道の上にまで堂々と咲いているので、踏みつけてしまわないように注意を要します。
鏡池のカタクリ群生地

陽の光に当たると、このようにくるりんと花弁が反り返します。その独特なフォルムから、春の妖精の異名を持ちます。
鏡池のカタクリ

カタクリに負けじとばかりに、イワウチワも大量に花を咲かせていました。
魚沼アルプスのイワウチワ

日陰に雪が残っていました。こうして絶え間なく供給されるフレッシュな雪融け水が、カタクリやイワウチワなどの花々を育んでいるのです。
230429魚沼アルプス-046

登っては下りを繰り返しつつ進みます。相変わらず頭上は開けていてお日様ギラギラ状態で、尋常じゃない暑さです。冬の間は忘れていた、暑さによりバテると言う感覚を久しぶりに味わいました。
230429魚沼アルプス-047

足元はどこもかしこもイワウチワだらけです。イワウチワは奥多摩や奥武蔵の山にも咲きますが、それなりに希少な花です。これだけの規模で咲いている場所は、かつてお目にかかったことがありません。
魚沼アルプスのイワウチワ

イワウチワロードを汗だくになりつつ登りつめると、広々と開けた場所に出ました。もうだいぶ感覚がマヒしてきましたが、相変わらず周囲の眺めはマイナーな低山らしからぬ凄まじいクォリティです。
230429魚沼アルプス-049

11時 トヤの頭に登頂しました。魚沼アルプスを構成している主要ピークの一つです。
230429魚沼アルプス-050
何組かのハイカーが山頂で寛いでいましたが、聞こえてくる会話から察するに、皆地元の人であるようです。東京から新幹線で登りきたなんて人は、どう考えても少数派なんでしょうね。

笠倉山へと続く尾根が一望できました。この先にもまだまだ多くのアップダウンが残っていそうですね。・・・水、足りるのかな。
トヤの頭から見た笠倉山

またもや一旦大きく高度を落とします。魚沼アルプスはなかなか本格派と言うか、標高から受ける印象ほどには易しくない道のりですぞ。
230429魚沼アルプス-051

鞍部まで下ると、ブナの樹林が頭上を優しく覆ってくれました。だいぶ陽射しにやられていたので、これには思わずにっこりです。
230429魚沼アルプス-052
そもそも頭上が開けている場所があまりない、奥多摩や奥秩父の山ばかりを歩いていると忘れてしまいそうになる感覚ですが、樹林帯と言うのは登山者に優しいですよね。

谷川連峰などの、豪雪地帯にある森林限界を越えた山を歩いているとしみじみ感じます。

登山道上に残る残雪がチラホラと現れるようになりました。特に滑り止めを必要とするほどではないので、チェーンスパイクは履かずにツボ足のまま歩きます。
230429魚沼アルプス-053

優しさにあふれていた樹林帯は終わり、再び頭上が開けた場所に出ました。
230429魚沼アルプス-054

11時35分 駒の頭に登頂しました。トヤの頭とは標高9メートルの差しかありません。ほぼ下った分だけそっくり登り返したと言うことです。
魚沼アルプス 駒の頭
ここまで思いのほか時間を要しています。漠然と12時くらいには笠倉山に登頂出来るのではないかと考えていたのですが、少々見通しが甘かったようで。

正面には奥只見地方の山並みが連なります。秘境と言う呼び名相応しい深山幽境の地です。奥只見には魅力的な山が数多くあるのですが、いかんせんどこも交通アクセスの悪すぎる難物揃いでもあります。
駒の頭からの展望

あれほど遠くに見えていた笠倉山が、いつに間にかすぐ目の前にありました。
駒の頭から見た笠倉山
山頂のすぐ下にまで林道高石中ノ又線が伸びており、以前は駐車場からものの10分少々で登れてしまう山でした。ここ最近は長らく通行止め状態が続いており、下から歩いて登る以外の選択肢はありません。

5.笠倉山登山 登頂編 残雪を踏み越えた先に待つ大展望の頂

時間も押しているので、休憩は撮らずに行動を再開します。再び涼しくて優しげなブナ林の中を進みます。
230429魚沼アルプス-058

笠倉山に近づくにつれて、尾根はいよいよ真面目に標高を上げ始めました。なかなかの急勾配ですが、随所にこうしてお助けロープなどが整備されています。
230429魚沼アルプス-059

振り返ってみたトヤの頭と駒の頭です。同じような高さの小ピークが並んでいるのが良くわかります。
230429魚沼アルプス-060

ここに来て、これまでとは桁違いの量の残雪に遭遇しました。そしてどうやら進むべきルートは、この雪の上に続いています。
230429魚沼アルプス-061

前方に、思わず2度見しそうになる傾斜度の雪の斜面が立ちはだかりました。まさかあそこを登れと言うのだろうか。前爪があるアイゼンなんて持ってきていないのですが。
230429魚沼アルプス-062

幸いにも、脇にちゃんと夏道がありました。しかし、標高1,000メートル未満の山に4月下旬でもこれだけの量の雪が残っていようとは、豪雪地帯の山ならではの光景です。
230429魚沼アルプス-063

夏道は途中で途切れて、結局は雪の上を歩かされました。今更チェーンスパイクを履くのも億劫だったので、先ほどからツボ足のままです。
230429魚沼アルプス-064

笠倉山が視線とほぼ同じ高さになりました。近くから見ると、思っていた以上に残雪が多くて驚かされます。
230429魚沼アルプス-065

またもやピークらしき場所へと飛び出しました。
230429魚沼アルプス-066

12時30分 黒禿の頭に登頂しました。大力山方面との分岐地点となっているピークです。ここから笠倉山の山頂をサクッと往復します。
魚沼アルプス 黒禿の頭
本当にどうでもよいことですが、個人的にとても親近感を感じる名前の山です。

眼下に魚沼市のほぼ全域を一望できます。素晴らし眺望です。以前は林道から簡単に登ってこれる場所であったため、夜景や星空を見に来る人も多かったのだとか。
黒禿の頭からの眺望

勿体ぶっていないでそろそろ笠倉山の山頂を目指しましょう。黒禿の頭から片道およそ30分程の距離です。
230429魚沼アルプス-069

両ピークの間を通る林道に向かって一度下ります。もともとは繋がっていた尾根を切通しにしたらしく、かなり無理やり感のある急勾配な下ります。
魚沼アルプス 林道高石中ノ又線

一部露出している部分もありますが、林道の上にはまだまだ大量の雪が残っていました。
230429魚沼アルプス-071

今は完全に雪に埋まってますが、どうやら駐車場だったらしい場所の脇から、再び登山道へと分け入って行きます。
230429魚沼アルプス-072

山頂に向かって、最後のビクトリーロードです。しかしこの光景だけを見ると、やはり標高1,000メートル未満の山には見えませんよね。
230429魚沼アルプス-073

なお、山頂直下は片側が切れ落ちているので、最後まで油断せずに登りましょう。特に残雪がある場所は要注意です。
230429魚沼アルプス-074

12時50分 笠倉山に登頂しました。なんやかんやで、登山開始から4時間10分を費やしての登頂です。意外と手ごわい道程でした。
魚沼アルプス 笠倉山の山頂

6.越後三山を目の前に望む、笠倉山からの展望

笠倉山山頂からの展望は圧巻です。目の前に越後三山の山並みが連なります。ちょっとちょっと、何ですかこの絶景は。マイナーなご当地アルプスのレベルを大きく逸脱していますよ。
笠倉山から見た越後三山

端正な山容の越後駒ヶ岳。作家深田久弥が選んだ日本百名山にも選ばれている一座です。百名山の中にあっては人気知名度共にあまり高い方ではありませんが、とても良い山ですよ。
笠倉山から見た越後駒ヶ岳

こちらは八海山です。恐らく大多数の人には日本酒の名前として認識されているであろう山ですが、古くから修験の山として知られている存在です。
笠倉山から見た八海山

頭の部分だけですが、一応は越後駒ヶ岳と八海山の間に中ノ岳も見えています。中ノ岳はまだ未踏なので、いつか登りに行かねばなりません。話に聞く限りでは、相当キツイ山であるようですが。
笠倉山から見た中ノ岳

越後駒ヶ岳の右隣に見えているこの山は、越後の穂高の異名をもつ荒沢岳(1,969m)です。だいぶ以前より登りたい山リストに名を連ねているものの、未だに訪問が叶っていません。いかんせん、交通アクセスが悪すぎるのですよ。
笠倉山から見た荒沢岳

北側には秘境、奥只見の山並み。なにぶんなじみの薄い山域であるため、見えている山がどこなのかイマイチ同定に自信が持てません。
笠倉山の展望

この奥に見えている白い山は守門岳(1,537 m)かな。冬に東洋一と称される大雪庇が出来ることで有名な山です。
笠倉山から見た守門岳
この山も登りたい山リストに入っていますが、やはり登れていません。立地が余りにも僻地過ぎて、公共交通機関の利用を前提とした場合は、小出駅からタクシーで行く以外の選択肢がないのです。

アプローチするのだけで一体いくらかかるのやら。くわばらくわばら。

これは恐らく浅草岳(1,586m)だと思います。希少な花であるヒメサユリが咲く事で有名です。良い山であることは間違いないのですが、個人的にはトラウマ級のひどい目に遭った山として記憶されています。
笠倉山から見た浅草岳

最後に南側の展望です。魚沼盆地のほぼ全域を一望することが出来ます。素晴らしい。
笠倉山から見た魚沼盆地

7.笠倉山登山 下山編 絶景と酷暑が同居する道程

13時30分 山頂からの絶景を十分に堪能しました。名残惜しくはくはありますが、そろそろ撤収に移りましょう。
230429魚沼アルプス-085

最大望遠で覗くと、遠くに薄っすらと小出駅が見えています。帰路ではタクシーを呼ばずに、駅まで歩いて戻る予定でいます。うーん、しかし遠いいな。
230429魚沼アルプス-086

ここまで登って来た尾根道がすべて見えます。帰路ではこちらへは下りずに、大力山方面へと下ります。
230429魚沼アルプス-087

サクサクと足早に、黒禿の頭まで引き返します。
230429魚沼アルプス-088

14時5分 黒禿の頭へ戻って来ました。天気予報では13時過ぎくらいから高曇りの雲に覆われることになっていたのですが、相変わらず晴れていてお日様ギラギラで状態です。暑いな。
魚沼アルプス 黒禿の頭

大力山方面へ続いている尾根も、相変わらず森林限界を越えていてとても眺めが良さそうです。それは同時に、とても暑そうであると言うことでもありますが。
230429魚沼アルプス-090

往路に歩いた尾根ほどではありませんが、下り一辺倒ではなく小刻みにアップダウンがあります。思っていた通りに眺めは大変よく、そしてやはり暑い。
230429魚沼アルプス-091

谷を挟んだ向かいに、往路に登った尾根が一望できます。あちらからグルっと回ってきた格好です。
230429魚沼アルプス-092

尾根上のシャクナゲが開花しつつありました。令和五年のお花前線は、本当に進行が早い。油断していると、いろいろな花を見逃してしまいそうです。
魚沼アルプスのシャクナゲ

大力山が徐々に近づいて来ました。途中をだいぶ端折っていますが、笠倉山からは結構な距離があります。
230429魚沼アルプス-094

分岐地点まで下って来ました。大力山には登り返さずに、このまま尾根沿いに八色駅方面へ下るルートも存在します。
230429魚沼アルプス-095

大力山に向かって本日最後の登り返しです。水の残量が結構ひっ迫してきていたので、大汗をかかないようにゆっくりと進みます。
230429魚沼アルプス-096

15時15分 大力山に登頂しました。これで魚沼アルプスのすべての主要なピークを踏みました。
大力山の山頂

山頂は灌木に覆われていて展望がありませんが、少し先へ進んだ場所に、屋根付きの東屋があります。あちらからの方が眺めが良いので、速やかに移動しましょう。
230429魚沼アルプス-098

休憩所からはこの通り、遠くに越後駒ヶ岳と八海山の姿を望むことが出来ます。笠倉山まで足を延ばすのはコースタイムが長すぎて面倒という人は、かわりにこの大力山を目指してみては如何でしょう。
230429魚沼アルプス-099

この通り魚沼市の市街地も一望できました。笠倉山に及びませんが、この山も十分すぎるほどに素晴らしき眺望です。
230429魚沼アルプス-100

大力山から下りには、階段が整備されていました。山と言うよりは公園のような扱いをされているのだろうか。
230429魚沼アルプス-101

下るにつれて、周囲は再びユキグニミツバツツジが咲く領域となりました。本日は最初から最後までお花尽くしでありました。
230429魚沼アルプス-102

ここまで下って来てから、ようやく予報の通りに高曇りの雲が空を覆いました。本当は始めからこの状態で下山する見込みだったのですけれどね。
230429魚沼アルプス-103

16時20分 宝泉寺まで戻って来ました。今朝ここから歩き始めてから、8時間10分程の山行きでした。
230429魚沼アルプス-104

大力山登山口のすぐ傍らに立つ宝泉寺です。記録によると、西暦で言うと18世紀の創建です。
230429魚沼アルプス-105

8.魚沼アルプス登山 帰還編 越後三山を遠目に見つつ、小出駅まで歩て戻る

帰りは電話でタクシーを呼んでも良いのですが、大した距離ではないので駅まで直接歩きます。
230429魚沼アルプス-106

一応は近くにバス停もある事にはあるのですが、安定の平日のみ運行です。時間的にも登山で使うのは難しそうです。
230429魚沼アルプス-107

関越道の小出インターの前を通ります。なんか見覚えのある光景だと思ったら、越後駒ヶ岳に訪問した際に確かここから高速を降りたのだったけか。
小出インターの入口

続いて魚野川を渡ります。魚野川は谷川連峰を水源としており、魚沼地方の中心を流れています。今はちょうど雪解けシーズンだからなのか、やたらと水量が多い上に流れが速く、見ていて怖さを感じます。
青島大橋の上から見た魚野川

魚野川の対岸から見た越後三山です。この3座が魚沼地方の象徴とされている所以が良くわかる、圧倒的なまでの存在感です。
230429魚沼アルプス-110
深田久弥は、越後三山の中からどれか一座を百名山に選ぼうとして相当悩んだそうですが、こうして眺めると確かにどの山にも甲乙つけ難いと言う気持ちはよくわかります。

越後三山の左隣に、今日歩いて来た魚沼アルプスの山並みも良く見えました。
小出から見た魚沼アルプス

笠倉山の山頂もこの通り良く見えています。一見するとどこにでもありそうな里山そのものなのに、よもやあれほどの大展望が広がっていようとは。
小出市内から見た笠倉山

魚沼市の中心地は魚野川の東側にありますが、小出駅があるのは川の西側です。町の中心からは少し外れており、駅の周囲は驚くほど閑散としていました。魚沼市は基本的に自動車社会なんでしょうね。
小出駅の入り口

17時30分 小出駅に到着しました。なんだかんだで、宝泉寺からは徒歩で1時間以上を要しました。道中の写真をたくさん撮りながらチンタラ歩いた結果なので、脇目も触れずに真面目に歩けはなんとか1時間以内には収まると思います。
小出駅の駅前

往路と同じ経路を反対向きに辿って、長い長い帰宅の途につきました。
230429魚沼アルプス-114

遠路はるばる日帰り弾丸で決行された魚沼アルプスの訪問は、大満足の内に幕を下ろしました。
眺めの良いコースであると事前に聞いてはいましたが、期待値を大幅に上回る絶景に圧倒され続けた一日でした。かくも素晴らしきハイキングコースが、地元の人以外にはほとんど存在を知られることも無しに埋もれてしまっているのが不思議でなりません。東京から訪問するには多大な手間と交通費を要しますが、それを費やしでも訪れるだだけの価値は確実にあると思います。
なお魚沼アルプスは、最高地点でも標高が1,000メートルに満たない純然たる低山なので、夏は恐らく灼熱地獄と化します。ベストな訪問時期は雪解け直後の春か、もしくは紅葉前線が低山にまで下りて来る晩秋の時期です。
地元新潟の人にも、そうではない人にも、あらゆる人に自信を持ってオススメします。

<コースタイム>
宝泉寺(8:10)-鳴倉山(10:00~10:15)-トヤの頭(11:00)-駒の頭(11:35)-黒禿の頭(12:30)-笠倉山(12:50~13:30)-黒禿の頭(14:05)-大力山(15:15~15:40)-宝泉寺(16:20)-小出駅(17:30)

笠倉山山頂での記念撮影

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント

  1. たむ より:

    魚沼アルプス素敵ですね
    1000mに満たなく、森林限界で眺望が良くて、気軽に楽しめそうな感じですね
    近くに見える名山も多くワクワクしそうです
    機会があれば行きたいです!

    • オオツキ オオツキ より:

      たむさま
      コメントをありがとうございます。

      アップダウンがかなり多めで、どちらかと言うとガッツリ歩きたい人向けのコースです。あまり気軽とは言えないかもしれません。

      アクセスするにも登るのにもそれなりに苦労しますが、素晴らしい絶景に出会えることに関しては間違いなく保証いたします。

  2. いわさわ より:

    初めまして。魚沼市(旧小出町)出身なのでたまに出てくる地元の名前が出てくると密かに喜んでおります。浅草岳の件は大白川で一晩過ごすことにならなくて本当に良かったですね。
    新幹線駅候補は浦佐と小出が上がってたのですが、小出駅周辺の土地が狭すぎて橋脚が作れないので浦佐になったという話を聞きました。浦佐駅前に田中角栄像が建ってるのはその関係もあるのだとか。

    新潟にもいい山はたくさんあるのですが、いかんせん公共交通機関でアクセスするのが難しい山が多すぎるのでその点では長野が羨ましすぎますね。
    私の足では魚沼アルプス縦走は難しそうなので花の季節に大力山+藤権現(駅の裏にある市民散歩コース)なども良さそうです。新潟の低山に来るとイワカガミもイワウチワもお腹いっぱい見れるのでお勧めなんですよね…新幹線代が高いことを除けば。
    オオツキさんのブログは料金なども書いてもらってるのでありがたく参考にさせていただいております。これからも山行記録楽しみにしてます。

    • オオツキ オオツキ より:

      いわさわさま
      コメントを頂きましてありがとうございます。

      確かに小出駅の周辺は魚野川と背後の丘陵地に挟まれていて、新しく新幹線の駅を作れそうなスペースは見当たりませんね。乗り換えの都合を考えると、小出の方が便利なんですけれどね。

      イワウチワの咲きっぷりは本当に凄かったです。角田山のユキワリソウにも興味があるので、春の新潟県にはいずれまたお邪魔すると思います。