倉見山 富士八景の里山とクマガイソウ群生地を巡る

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山梨県都留市と西桂町にまたがる倉見山(くらみやま)に登りました。
河口湖から大月に向かって流れ下る、桂川沿いのすぐ傍らに立つ里山です。富士展望に優れた山であるものの、近隣にある三つ峠や杓子山と比べると人気知名度共に低いマイナーな存在です。山の麓に絶滅危惧種の希少な花であるクマガイソウの群生地があり、4月の下旬から5月の上旬頃にかけて見頃を迎えます。
ゴールデンウィークの人気の山の喧騒を避けて、近場のマイナーな山を巡って来ました。

2023年5月3日に旅す。

倉見山は桂川沿いを走る富士急行線のすぐ傍らに立つ駅チカの里山です。登山者に人気のある三つ峠と杓子山のちょうど中間あたりにポツンと立っており、登山の対象としてはマイナーと言える存在です。
新倉山から見た倉見山
富士八景なるものの一つにも選ばれている富士展望に優れた山ではあるのですが、いかんせん近隣にもっと眺めの良い山が多くあるためか、イマイチ人気がふるわない不遇の山です。

その不人気さ故に、ゴールデンウィークであっても比較的空いているだろうと思い訪問してきました。

ゴールデンウィークの時期に倉見山を訪問したもう一つの理由がクマガイソウです。倉見山の麓にクマガイソウの群生地があり、5月の上旬ごろに見頃を迎えます。訪問のタイミングとしては完璧で、満開の見頃を迎えていました。
西桂町のクマガイソウ群生地
クマガイソウはランの仲間の多年草で、環境省が定める絶滅危惧種レッドリストにも登録されている大変希少な花です。

下山後は桂川の下流方向へ少しばかり足を延ばし、桂川流域にある太郎滝・次郎滝と田原ノ滝を巡ります。希少な花と富士展望と名瀑の豪華三点セットを巡り歩いた、ゴールデンウィークの一日の記録です。
田原ノ滝

コース
倉見山のコースマップ
富士急線の三つ峠駅からスタートし、クマガイソウ群生地を見物した後に堂尾山公園を経由して倉見山に登ります。下山後は太郎滝・次郎滝と田原ノ滝を見物したのち、十日市場駅へと戻ります。

1.倉見山登山 アプローチ編 ゴールデンウィークに行く、山梨県の穴場エリアの旅路

6時10分 JR高尾駅
いつもの6時14分発松本の行きの鈍行列車で山梨を目指します。ゴールデンウィークにしては比較的空いていると思ったのも束の間で、東京方面からきた中央線快速が到着するなり、ドッと乗客が押し寄せて車内は超満員となりました。
JR高尾駅のホーム

大月駅で富士急行線に乗り換えます。こちらも超満員とまではいかないものの、普段と比べるとやはり乗客は多めです。
富士急線の大月駅ホーム
ゴールデンウィークなんだから皆遠出して、近場の山は案外空いてるのではないかと期待した訳なのですが、案外近場の山で過ごす人も多いようですね。考えることは皆一緒と言う事か。

7時35分 三つ峠駅に到着しました。乗客の大半は終点の河口湖駅を目指しているらしく、三つ峠駅で下車した人はほとんどいませんでした。この辺りは穴場なのではないかという見立ては、間違っていなかったようです。
三つ峠駅のホーム

こじんまりとした瀟洒な駅舎が素敵です。富士急行線の駅舎には、どこか昭和を感じさせる何処かノスタルジーなものが多いように思えます。
富士急線三つ峠駅の駅舎

三つ峠駅と名乗っているだけの事はあって、駅の裏手に三つ峠の山頂が良く見えます。3つのピークを持つ山であることが名前の由来ですが、ここから見るとピークは3つではなく4つあるようにも見えます。
三つ峠駅から見た三つ峠

ちなみに、これから向かう倉見山も最初から真正面に見えています。三つ峠のような見上げる絶壁感もなく、まさに駅チカの里山といった風体です。
三つ峠駅の駅前から見た倉見山

2.桂川公園を通って、クマガイソウ群生地へ

7時40分 身支度を整えて行動を開始します。分岐には必ずクマガイソウ群生地とかかれた道標が設置されているので、その導きに従えば迷う事はありません。
西桂市内の倉見山への道標

桂川沿いに整備された歩道を進みます。この時間はまだ空気がひんやりとしており、気持ちの良い散歩道です。
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川沿いに進むと、桂川公園の敷地内に入りました。トイレもあるので用はここで済ませておくと良いと思います。
桂川公園

ステゴサウルスの遊具の背後に佇む三つ峠。ジュラシックパークは西桂町にあったのか。
桂川公園の恐竜型の遊具

水車も展示されていましたが、給水はされておらず停止いていました。動いていることもあるのだろうか。
桂川公園の水車

公園の脇にふれあい橋と言う名前の木製の橋が架かっています。この橋を渡って倉見山に取り付く登山ルートもあり、クマガイソウ群生地に立ち寄らずに真っすぐに山頂を目指すのならば、ここから登るのが最短です。
桂川公園 ふれあい橋

ふれあい橋は見送って、川沿いにさらに上流方向へと進みます。道路脇の畦には、こぼれんばかりに野草が花を咲かせていました。うーん、春ですねえ。
桂川と富士山

ふれあい橋よりも一つ上流に架かっている橋を渡って対岸へ移ります。ここでもしっかりと道標はあるので、それに従えば大丈夫です。
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大月より上流部の桂川は、何気に急流な河川です。大月駅と河口湖駅の標高差は実に500メートルにも及びます。桂川の流域一帯では昔から、この大きな落差を利用した水力発電が盛んに行わています。
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富士急行線は走行距離の割にやたらと所要時間がかかる印象がありますが、登山鉄道並みの標高差を登っている訳ですから当然と言えば当然です。

逆に大月行きの電車は、始動時以外は殆ど力行せずに惰性だけで走行しています。

川縁から高台の上にある道に登ったたころで、背後に三つ峠の全容が一望できました。遠目には割と急峻に見える山ですが、側面から見ると横に長くてだいぶ印象が変わります。
桂川公園の近くから見た三つ峠

三つ峠から伸びた尾根上にあるこちらのピークは新倉山(あらくらやま)です。桜の名所として名高い新倉山浅間公園は、この山の中腹にあります。記事の冒頭に乗せた倉見山の全景は、この山から撮影したものです。
桂川公園の近くから見た新倉山

橋脚を改修工事中の、中央道富士吉田線の下を潜って道なりに進みます。
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中央道を潜った先に、西桂町民グランドがあります。無料駐車場が併設されており、車でお越しの人はここまで入ってこれます。
西桂町民グランド

グランドと中央道の間に挟まれるようにして、まるで取って付けたかのような小道が続いていました。クマガイソウの群生地は、ここを登った先にあります。
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8時25分 クマガイソウ群生地まで歩いて来ました。クマガイソウ開花期間中は入口の脇に仮設テントが設置されて、パンフレットの配布が行われています。協力金箱も設置されているので、小銭を用意しておきましょう。
西桂町のクマガイソウ群生地

群生地はフェンスで囲われており、一般開放される開花期間中以外は施錠されています。本来は9時に開園するらしいのですが、たまたま管理人の方が居たので中へ入れてもらえました。
西桂町のクマガイソウ群生地
あぶないあぶない。立ち入り可能な時間に制限があるとは思っていなかったので、危うく入りそびれるところでしたよ。開園時間は9時から16時とのことです。

早速お目当てのクマガイソウとご対面となりました。訪問のタイミングとしては完璧で、今がまさに見頃のど真ん中です。
クマガイソウ

ぱっと見では食虫植物なのかと思うような袋状の花弁を持っています。まったく似てはいませんが、ランの遠い親戚にあたる多年草の花です。直射日光を嫌う性質があるため、雑木林の木陰の中に咲きます。
クマガイソウの花弁
クマガイソウは日本全国に広く分布していますが、生育環境に対する要求が厳しく栽培が難しい花です。環境省レッドリストの絶滅危惧II類の指定を受けています

通常は一つの房に一つの花しか咲きませんが、まれにこうして双子のものがあります。
双子のクマガイソウ

綺麗な花とは形容しがたい姿形ですが、他に似ている花が思い浮かばない極めてユニークな外観の花です。
クマガイソウ

珍しいもの見せてもらいました。そろそろ本題(?)である、登山の部へと移りましょう。
西桂町のクマガイソウ群生地

3.通行止めの木橋と、寂れてしまった堂尾山公園

クマガイソウ群生地の入口まで戻って来ました。右側が西桂町民グランド方面で、倉見山の登山口は左へ進んだ先にあります。
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しれっと、この先の登山道は利用しないで下さいとの張り紙が張ってありました、特に迂回路などの案内は無いので、とりあえずはこのまま進んでみます。
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相変わらず、中央度の脇に取って付けたかのような小道が続いています。特に封鎖などの処置は取られておらず、普通に歩けます。
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道なりに進むとやがて涸れた水路にぶつかり、そこに架かる木橋が朽ち果てていました。なるほどこの橋のことを言っていましたか。
クマガイソウ群生地入口の朽ちた木橋
完全に腐ってしまっており、確かにこれを渡るのは危険です。

ではどうすればよいのかと言うと、先ほどの群生地入口の分岐を元来たグランド方面へ少し戻って迂回してください。
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しかし、迂回路の案内もせずにただ「通るな」とだけ書いてあるのは、いささか不親切すぎるのではありませんかね。

迂回路を具体的に地図で示すとこうなります。大した距離の迂回ではありません。
クマガイソウ群生地入口の迂回ルート

あらためて先へ進みましょう。通行止めと書かれたカラーコーンが置いてありますが、これは車両に対するもので歩行者は入れます。
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倉見山の登山口へとやって来ました。倉見山の山頂に到るルートは複数存在しますが、こちらは堂尾山公園を経由する大回りルートです。
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登山口の脇にコンクリート製造所があります。おそらくは桂川の護岸工事で使用するのであろう、コンクリートブロックが山積みになっていました。
コンクリート製造所

山道に入るなり、周囲はまるで奥多摩のような圧倒的杉林となりました。里に近い山の宿命みたいなものです。
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山の中に突如として人工的な真っすぐの空間が造成されていました。これは地面の下を通っている暗渠化された水路の蓋です。
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前述の通り桂川の流域では標高差を利用した水力発電が盛んで、川の上流で取水した水をこうして山の中を通る水路で下流の発電所へと送り込んでいます。

道の一部が崩れて思いっきりナナメになっていました。このルートを歩く登山者はあまりいないのでしょうか。
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道中に鉱山跡地への分岐の案内がありましたが、涸れ沢に呑み込まれて踏み跡が完全に消失していました。昭和の中頃まで、小規模に砂鉄の採掘がおこなわれていたそうです。
倉見山鉱山跡地への分岐

堂尾山公園まではあまり大きな標高差がなく、ほぼ水平移動に近いような緩やかな登りが続きます。
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やがて前方に、頭上が明るく開けた尾根が見て来ました。
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9時25分 堂尾山公園に到着しました。倉見山から伸びた尾根上にある、肩のような空間です。公園を名乗っていますが、ここへ至る道程は完全に登山道の範疇です。
堂尾山公園

かつてはここに東屋が立っていたようですが、老朽化により取り壊されて現在は瓦礫の山が残るのみです。
堂尾山公園の東屋の跡

公園の標識までもが、朽ち果てて土にかえりつつありました。この公園はすでに管理されておらず、完全な放置状態にあるようです。
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高圧電線が横切っているのが少々いただけませんが、公園からはこの通り見事な富士展望が得られます。東屋が健在だったころは、地元の人の憩いの場だったのでしょうか。
堂尾山公園からの富士展望

4.倉見山登山 登頂編 富士八景に数えられた静かなる頂

この先は山頂までずっと尾根道となります。周囲は檜やら松やら広葉樹がミックスした、雑然とした感じの植生に変わりました。
倉見山の登山道

三つ峠の姿が良く見えます。あちらは人気が高い山なので、今頃はさぞや多くの登山者で賑わっていることでしょう。それに比べて、我らが倉見山のなんと静かなることでしょう。
堂尾山公園近くの登山道から見た三つ峠

富士山からの降着火山灰からなる栄養に乏しい土壌なのか、松を始めとする有機物の多い土壌を嫌う性質の植物が多く生育しています。あまり森が鬱蒼としていないため、全般的に明るくて気持ちの良い尾根道です。
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遠くに残雪で未だに白い姿のままな赤石岳(3,120m)と荒川岳(3,141m)の姿が良く見えます。どちらも登りたい山リストの上位に入っている山なのですが、南アルプス南部の山はいかんせん交通アクセスが悪すぎるのですよ。
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電源ケーブらしきものが、登山道の脇にずっと続いています。この先に、電源を必要とする何らかの人工物があると言う事でしょうか。
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10時40分 相定ヶ峰と呼ばれるピークまで登って来ました。ここから向原峠を経て杓子山へ縦走することも出来ます。倉見山だけでは物足りないと言う人は是非どうぞ。
相定ヶ峰

ここからも一応は富士展望があります。カラマツが育ってくると、やがては見えなくなってしまいそうですが。
相定ヶ峰から見た富士山

分岐を見送り、倉見山方面へと進みます。尾根が若干痩せて来ましたが、特に危険という程ではありません。
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道すがらにさり気なく展望スポットがあります。山と高原地図にも展望所と記載のある場所です。この一枚だけ写真を撮ってさらっと通り過ぎましたが、後から思い返すとこの場所が倉見山では一番眺めが良い場所でした。
倉見山の展望所

山頂らしき場所まで登って来ましたが、ここはいわゆる偽ピークで本当の山頂は隣にあります。山頂はかなり狭いので、ゆっくりと昼食休憩を取りたいならここで取る方が良いかもしれません。
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ということで、最後にもう一回だけ登って降りてがあります。幸いにも大した登り返しではありません。
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こんどこそ、本当の山頂が見えました。
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10時55分 倉見山に登頂しました。登り始めてから2時間少々のお手軽な道程でした。
倉見山の山頂

展望は一部だけが開けています。まるで画に描いたかのような見事な松と富士です。
倉見山山頂からの富士展望
富士八景なるものに選ばれています。富士五湖観光圏整備推進協議会が制定たものらしいのですが、いくら調べてみても一覧を発見できません。

とりあえず確認できたのは①倉見山②パノラマ台③河口湖北岸④もみじ台⑤二十曲峠の5箇所です。残りの3つはどこなのだろうか。

お隣の杓子山も何となく見えます。展望が開けているのはこの2ヵ所だけです。
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謎の火の用心人形がくくりつけられていました。これは火防の神か何かなのか。
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5.倉見山登山 下山編 今宮神社に向かって尾根道を下る

見るべき光景も見たし、ボチボチ引き上げましょう。下山は元来た道には引き返さずに、東桂駅方面へと下ります。
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山頂から少し下ったところで、厄神社法方面への分岐が現れました。ここから三つ峠駅へ戻る周回ルートを取るのが最も一般的な行程であるようです。私はこの分岐は見送って直進します。
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里山らしく麓の集落がすぐ傍らに見えています。高速道路を走る車の音が常時聞こえてくるのだけは若干いただけません。
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一部急な場所があり、トラロープが張られていました。こうした箇所は限定的で、全般的に緩やかで歩きやすい道が続きます。
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こちらのルートを歩く人はあまりいないのか、踏跡が枯れ葉に埋もれて不明瞭な場所もありました。基本的に最後までずっと尾根筋です。変な方へ下ってしまわないように、よく周囲を観察して踏跡の気配を探ってください。
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ツツジの中では開花時期が後発のヤマツツジが、もうチラホラと咲き始めていました。令和5年のお花前線は、すべてが前倒しに進行しています。
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ちょこっとだけ展望が開けました。正面に見えているのは、大月市の雁ヶ腹摺山(1,874m)です。
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道の脇にポツンと山の神様がいらっしゃいました。この尾根には古くから人の往来があったと言う事です。里に近い山なので、恐らくは柴刈りや山菜取りなどに入る人が一定数いたのでしょう。
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送電鉄塔の巡視路でよく見かける、プラスチック製の階段が設置されていました。これがあると言う事は、近くに鉄塔があるのでしょう。
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そう思った矢先に、案の定鉄塔がありました。登山道が巡視路を兼任しているのでしょう。
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アカマツ林が切り開かれて、檜の幼木が育ちつつありました。松は栄養に乏しい土壌を好む性質があるので、もともと松林だった場所は植林には適していないと思うのですが、どうなのだろう。
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最後の最後にまた少しだけ急な下りがありました。短時間で標高差を稼げるので、個人的に急登は嫌いではありません。
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今宮神社の奥の院が現れたら、もうゴールは目の前です。
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最後は墓地の裏手にでました。下山地点に墓があると言うのは、里山歩きにおいては割とよくありがちな光景です。
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13時 倉見山登山口に到着しました。ここから最寄りの東桂駅まで、歩いておおよそ20分ほどの距離です。
倉見山の登山口

登山口のすぐ近くに乗り合いタクシーの停留所がありましたが、時刻表もなにもありません。果たしてこれは今でも有効なのか、それともただの残骸なのだろうか。
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鹿留発電所の送水管が見えます。往路に見かけた水路トンネルは、ここへと繋がっています。
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このまま東桂駅へゴールするのが、倉見山登山としては一般的な行程でしょう。しかしせっかくの機会なので、もう少し寄り道をしてゆきます。
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6.おまけの延長戦 太郎滝・次郎滝と田原の滝を巡る

東桂駅の脇を通り過ぎ、中央自動車道の下をくぐってさらに先へと進みます。お目当ては桂川支流の柄杓流川(ひしゃくながれがわ)にある双子の滝、太郎滝と次郎滝です。
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この滝の存在は、山梨県が作成した冊子やまなしハイキングコース100選を見て知りました。

以前から興味はあったものの、単体で訪れるには少々ボリューム不足に感じれれて訪問を躊躇していました。今回はちょうど近くにまで来ていたので、これ幸いにと計画に組み入れた次第です。

目的地に近づくと、しっかりと道標による案内がありました。案内に従って進みます。
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ごく普通の住宅地の只中に、滝への入口がありました。「本当にここ?」と疑いを抱きそうになる場所ですが、ここであっています。
太郎滝次郎滝の入り口

半信半疑のまま進むと、住宅地のすぐ裏手に柄杓流川の深い谷が連なっていました。
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つい先ほどまで街中を歩いていたはずなのに、いきなりの景色の変化に少々驚かされました。それだけ川岸のすぐ近くまで隙間なく宅地開発が行われたのでしょう。
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崖中の至るところから水が湧き出して川に流れ込む、壮観な光景が広がっていました。夏狩湧水群と呼ばれるものひとつで、流れ出ている水はすべて富士山からの伏流水です。
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繰り返しになりますが、ここは住宅地のすぐ裏手にある場所です。背後こんな場所があるなんて、誰が予想できるでしょうか。

崖から染み出している水流の中でも、一際大きく水が流れ落ちている場所があります。これがお目当ての太郎滝と次郎滝です。
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二つ並んだ双子の滝です。伝承によれば、太郎と次郎という兄弟の盗賊が追っ手に追い詰められて逃げ場を失い、この滝の上からそれぞれ転落死したことにちなんで命名されたそうです。盗人の名前が由来とはまた珍しい。
太郎滝・次郎滝

そんな話を聞いてしまうと、滝の上部がどうなっているのかに興味が湧いてきます。地図を見た限りでは、残念ながら滝の上へ登れる道は存在しないようです。
太郎滝・次郎滝

滝見物を終えた後は東桂駅へ戻っても良いのですが、次の電車の時間までだいぶ間があったので、一つ先の十日市場駅まで歩くことにしました。
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普段はあまり意識したことがありませんでしたが、こうして実際に線路の脇を歩いてみると、富士急行線の急勾配っぷりが大変よくわかります。

十日市場駅の入り口まで歩いて来ました。駅前をいったんは通り過ぎて、さらに先まで進みます。お目当てはこの先にある田原ノ滝です。
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田原の滝は、松尾芭蕉が「勢あり 氷柱消えては 滝津魚」と詠んだ事で知られる滝です。桂川の本流上にあります。

十日市場駅から5分少々歩いた場所にある、こちらの橋の上から鑑賞することが出来ます。
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橋の上から桂川を見下ろすと、壮観な3段の滝が流れ落ちていました。でも実はこの現在の田原ノ滝は、造り物の人工物なんです。
田原ノ滝
かつてこの場所にあり松尾芭蕉も見た本物の田原ノ滝は、その後浸食が進み周囲の住宅に影響を及ぼしかねない危険な状態となったことから、昭和33年に高さ10メートルのコンクリート製の砂防堰堤に作り替えられました。

その後平成21年に行われた補強工事の際に、当時の姿を模した姿に作り替えられました。

この柱状節理の岩は全て、コンクリートによって作られた模造品です。面白いこと考えるものですね。確かにアップで見ると若干の不自然さは感じられます。それでも、味気ないただの堰堤よりは全然良いと思います。
田原ノ滝

14時40分 おまけの滝見を終えて、十日市場駅へと到着しました。プレハブのような小さな駅舎がポツンとあるだけの無人駅です。
富士急線 十日市場駅

程なくやって来た大月駅行きの電車は、始めから満員御礼状態でした。そういえば今日はゴールデンウィークの最中でしたな。
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やれやれと肩をすくめつつ、平日朝の通勤時並みの満員電車に揺られて帰宅の途につきました。

クマガイソウと倉見山と滝巡りの豪華三本立てで送るゴールデンウィーク初日は、こうして大満足の内に幕を下ろしました。
今回私は最初にクマガイソウを見物してから倉見山へ登りましたが、群生地の開園時間のことを考えると、逆向きに下山後の最後にクマガイソウ群生地へ立ち寄るプラントとした方がよりスマートであったかと思います。
三つ峠などの付近の人気がある山の影に隠れてしまいがちな倉見山ですが、その分だけ静かな山行きを楽しむことが出来ます。人気の山の喧騒を避けて避衆登山を洒落込みたい人には大いにオススメします。
倉見山だけでは物足りないと言う人は、こう言う機会でもない限りなかなか行くことはなさそうな、滝巡りと組み合わせてみては如何でしょうか。

<コースタイム>
三つ峠駅(7:40)-クマイガイソウ群生地(8:25~8:40)-堂尾山公園(9:25~9:45)-相定ヶ峰(10:40)-倉見山(10:55~11:20)-倉見山登山口(13:00)-太郎滝・次郎滝(13:30~13:50)-田原ノ滝(14:30)-十日市場駅(14:40)

倉見山山頂での記念撮影

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント

  1. ペン子 より:

    オオツキさん、こんにちは。
    いつも山歩きの参考にさせていただいております。
    実は、同じ日にクマガイソウを見に倉見山に登っていました!

    いつかは、どこかの山でオオツキさんに遭遇したいなぁと常々思っていました。
    クマガイソウが咲いている時期に登ろう、みたいなことを書かれていらっしゃったので、
    まさかオオツキさんに会えちゃったりして、なんて軽く思っていたのが・・・。
    オオツキさんとは逆コースでしたが、相定ヶ峰を通過したのが10時半ころ。
    下り途中に誰かとすれ違った記憶はあるのですが、あれはまさかのオオツキさんだったのでしょうか。
    今回の倉見山のレポを見て「やっちまった!」という残念な思いに駆られております・・・(涙)

    この日は天気が良く、朝の桂川公園は、川の水も綺麗で歩いていてとても気持ちが良かったです。
    倉見山からの富士山も素晴らしい姿でした。
    私も念願のクマガイソウが見られてテンション高く帰宅することができました。

    • オオツキ オオツキ より:

      ペン子さま
      コメントを頂きましてありがとうございます。

      確か相定ヶ峰の少し手前で2~3人とすれ違った記憶があります。しゃがんでスミレの写真を撮っていた人かな。

      小粒ながらも、とても良い山でしたよね。機会があれば、次は杓子山まで縦走してみたいところです。

  2. 井上幸夫 より:

    倉見山は昔登った山なので懐かしく、興味深く読ませて貰いました。10年以上も前のこと、まだ登る人も少なく、クマガヤソウの自生地があると知りませんでした。頂上から眺める富士山は絶景で印象に残ってます(当年93才)。

    • オオツキ オオツキ より:

      井上さま
      コメントを頂きましてありがとうございます。

      御年93歳でおよそ10年前に登ったと言うとは、80代だったと言う事ですか。ご壮健で羨ましいです。私もそれくらい元気に活動できような歳の重ね方をしていきたいものです。