奥大日岳 室堂から称名滝へ花咲く夏の大日連峰を縦走する

みくりが池温泉から見た奥大日岳
富山県立山町と上市町にまたがる奥大日岳(おくだいにちだけ)に登りました。
北アルプスの立山連邦から西に向かって伸びる、大日尾根にある山です。大日岳、中大日岳および奥大日岳の三座を合わせて、大日三山ないしは大日連峰とも呼ばれています。霊峰立山の前衛峰として、地元の富山では古くから信仰の対象となってきました。室堂周辺の喧騒に比べると、歩く人の姿は少なく静かな山域です。
テントを担いで、室堂平から称名滝まで大日連峰を横断するロングルートを歩いて来ました。

2023年8月11~12日に旅す。

奥大日岳は、室堂平を挟んで立山連邦と向かい合う位置に立つ山です。日本二百名山に名を連ねる山ですが、隣接する立山や剱岳などと比べると人気知名度共に高くはなく、訪れる人はあまり多くない山域です。
中大日岳から見た室堂方面の展望
豪雪の山であるため森林限界高度は低く、展望が大きく開けた稜線が続きます。周囲を名だたる名峰に取り囲まれた立地にあることから、稜線上からの展望は圧巻です。

かくも素晴らしき景観の広がる山が、なぜあまり広く知られることもなく半ば埋もれているのか、怪訝に思えてくるほどです。

当初は麓の称名滝からスタートして、奥大日岳を越えて室堂を目指す行程を考えていました。しかし直前になってから計画したため山小屋の予約が間に合わず、逆向きに室堂にある雷鳥沢キャンプ場で一泊して歩いて来ました。
雷鳥沢キャンプ場
室堂側スタートだと下りの方がはるかに長くなりますが、コースタイム的には1日で歩き切ることも可能です。それでも、なかなかのロングトレイルではあります。

下山後は落差350メートルを誇る称名滝を見物します。立山を源頭として火砕流台地の弥陀ヶ原を流れ下る、称名川の河川浸食によって作り出された大瀑布です。
称名滝
夏の大日連峰を端から端まで満喫してきたお盆休み2日間の記録です。

コース
230813奥大日岳-map
初日は長野県側の扇沢から黒部立山アルペンルートで室堂入りして、雷鳥沢キャンプ場で一泊します。

2日目は奥大日岳、中大日岳および大日岳の3座を縦走したのちに、称名滝バス停へ下ります。室堂側から大日連峰を縦走する行程です。

1.奥大日岳登山 アプローチ編 お盆休みの大混雑の中を行く、扇沢への旅路

8月11日 6時10分 JR東京駅
時はお盆休みの初日。東京駅は大混雑の極みにありました。指定席は当然のごとく完売しており、自由席の待ち行列がホーム上にとぐろを巻いていました。
盆休みの東京駅新幹線ホーム

乗車予定だったはくたか号はデッキにまで人が溢れて乗ることができず、その後にやって来た臨時便のあさま号になんとか乗車することが出来ました。恐るべし、お盆休みの東京駅。
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8時19分 長野駅に到着しました。東京より多少は涼しいのではないかと期待していましたが、普通にむわっとした生ぬるい空気が出迎えてくれました。今日も暑くなりそうです。
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はくたか号に乗れなかった時点で8時15分発扇沢行きのバスには乗れないことが確定していたので、次の9時発の便に乗車します。既にバス停に行列が出来上がっていてギョッとしましたが、並んでいたのは上高地行きの便でした。
長野駅北口のバス乗り場

長野駅から出ている扇沢行きの高速バスは、路線バス扱いのため事前予約は不要です。片道運賃は3,100円なり。バスは出発までに満席となり、補助席を出してギリギリ全員が乗り切れました。
扇沢行き高速バスの切符

快適な高速バスタイプ車両の座席でうつらうつらとしている内に、車窓に後立山連邦の山並みが見えて来ました。今のところは良いお天気ですが、午後からは崩れる予報となっています。
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10時47分 扇沢駅に到着しました。黒部立山アルペンルートの長野県側の入り口です。ここから複数種類の乗り物を乗り継ぎ、黒部ダムを越えて立山室堂へと続いています。
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2.黒部立山アルペンルートで室堂を目指す

最初の乗り物は電気バスです。映画黒部の太陽でお馴染みの破砕帯を貫くトンネルで、黒部ダムへ向かいます。
黒部立山アルペンルートの電気バス

バスと下りたら、トンネル内の220段の階段を登って、黒部ダムの展望台へと向かいます。なお、展望台に興味がないと言う人は階段を登る必要はありません。
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展望台に上ると、目の前に立山連峰の雄山(3,015m)がドーンと姿を見せました。室堂はこの雄山を越えた反対側にあります。
黒部ダムの展望台から見た雄山

眼下には観光放水の黒部ダムの姿がありました。なんだかんだで過去に何度も訪れている場所なので、初めて見た時のような感動はありません。
展望台から見た黒部ダム

前方にはエメラルドグリーンの湖水を湛えてた黒部湖が広がります。本当にこんな山奥によくもまあ、これほど巨大な人工物を作り上げましたよね。
展望台から見た黒部湖

若干の空腹感を覚えたので、展望台の下にあるレストハウスで名物のダムカレーを食べようとしたのですがが、30分待ちの行列が出来ていたので諦めました。腹を鳴らしつつ、このまま先へ進みます。
黒部ダム堤体上の道

ダムの放水によって、虹が見えていました。
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次なる乗り物は斜坑の中を行くケーブルカーです。トンネルの中は気温が低く、半袖だと少し肌寒いくらいです。
黒部ケーブルカー

ケーブルカーを登った地点が黒部平と呼ばれています。お次の大観峰まではロープウェイでの移動となります。
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ロープウェイでは待ち時間が発生していました。いろいろなタイプの乗り物を乗り継いで行くと、当然ながら輸送力には違いが生じる訳で、このロープウェイ区間がボトルネックとなってしまっているようです。
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この待ち時間を利用して、ダムカレーではない普通のカレーを頂きました。味はともかく、千円でこの量は少なすぎませんかね。
黒部平のカレーラス

30分程待ったところで案内がありました。この立山ロープウェイはワンスパン方式で、途中に柱がないのが特徴です。何故ワイヤのテンションが保てるのか理屈がイマイチよくわからないのですが、ともかく実際に支柱はありません。
立山ロープウェイ

最後の乗り物はトロリーバスです。先ほど見えていた雄山の真下を貫くトンネルで、反対側の室堂に抜けます。
黒部立山アルペンルートのトロリーバス

12時54分 室堂バスターミナルに到着しました。扇沢を出発してからおよそ2時間程の小旅行でした。
室堂バスターミナルのトロリーバス乗り場

3.観光客で賑わう室堂を抜けて、雷鳥沢キャンプ場へ

東京駅を出発してからおよそ6時間をかけて、やってまいりました室堂平。何度来ても背後に見えている光景と、ラフな格好をした観光客の姿とのギャップが凄い。
室堂平から見た立山

目指す奥大日岳の姿もこの通り、始めから見えています。かなり目を引く存在だと思うのですが、しかし登る人はあまりいません。
室堂平から見た奥大日岳
まあなにしろ、目の前に立山と言う名山の中の名山がありますからね。それと比較されてしまったら、見劣りすのはやむおえません。

ちなみに、奥大日岳の山頂はこのピョコっと飛び出したオデキみたいな部分です。室堂から見た時に一地番目立つ右端の部分には、そもそも道がありません。
奥大日岳の山頂

みくりが池が空を写して青々としていました。そう言えば、青空の下のこの池を見たのは初めてかもしれない。
室堂平 みくりが池

池のほとりに、日本一標高の高い場所にある天然温泉であるみくりが池温泉があります。日帰り入浴も出来るので、室堂にお越しの際は是非どうぞ。
みくりが池温泉

無風状態だと、池に映ったさ逆さ立山の姿を見ることが出来ます。本日は残念ながらすこし風があり、水面が揺らいでいました。
みくりが池に映った立山

温泉の建物の正面に、大日連峰の山並みが連なります。足元には噴煙が立ち込める地獄谷が広がり、立山が生きている火山であることが良くわかります。みくりが池温泉の源泉はこの谷の中にあります。
みくりが池温泉から見た奥大日岳

以前は地獄谷の中を歩くことも出来たようですが、噴気活動が活発化したことに伴い現在は立ち入り禁止となってます。
室堂平 地獄谷

すでに綿毛化したチングルマの姿が目につきます。咲いている個体は一つも残っていませんでした。チングルマは初夏の花なので、咲いている姿を見たかったらもっと早い時期に訪れる必要があります。
室堂平の綿毛化したチングルマ

本日の宿泊予定地である雷鳥沢キャンプ場は、みくりが池温泉から大きく下った地点にあります。
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本日はキャンプ場まで行けば良いだけなので特に先を急ぐ必要はないのですが、あんまりのんびりし過ぎると良い場所がすべて埋まっていまう可能性があります。

この後ゆっくりと過ごすにしても、とりあえずテント泊の受付と場所取りだけは済ませてしまいましょう。

右手に点在する池塘郡は血の池地獄と呼ばれています。水が赤銅色なのは、火山性物質が溶け込んでいる事による影響です。地獄谷に続いて血の池地獄とはまた、物騒な名前の地名が多いですね。
室堂平 血の池地獄

続いて正面に現れた建物は雷鳥荘です。こちらの山荘でも日帰り入浴が出来ます。
室堂平 雷鳥荘

2年前のゴールデンウィークに立山へ訪れた時は、こちらに宿泊しました。なつかしや。風呂ではシャンプーや石鹸を普通に使えて、山小屋の域を越えた快適空間でした。
室堂平 雷鳥荘

眼下に雷鳥沢キャンプ場が見えました。北アルプスにあるキャンプ指定地の中では最大級の規模を誇る、人気のテント場です。
雷鳥荘から見た雷鳥沢キャンプ場

既にかなりの数のテントが張られています。おそるべしお盆休み。
雷鳥沢キャンプ場
雷鳥沢キャンプ場が最も混雑するのは紅葉が見頃を迎えるシルバーウィークの頃で、最盛期にはトイレ待ちの行列が出来てしまうほどなのだとか。

それに比べれば、お盆休みの混雑はまだマシなレベルなのかもしれません。

この後もテントはさらに増えるのでしょうから、まだ空きスペースが残っている内に受付を済ませてしまいましょう。
室堂 雷鳥沢キャンプ場

13時50分 雷鳥沢キャンプ場に到着しました。右端に見ている建物がトイレ兼受付棟です。混雑を避けるためにテントを張ってから代表一人が受け付けてくださいとありましたが、もともと一人なので背負ったまま受付に向かいます。
雷鳥沢キャンプ場

テントひと張りは千円なり。ここ最近北アルプスのテント場はどこも軒並み値上げが続いていますが、雷鳥沢キャンプ場は据え置き価格でした。
雷鳥沢キャンプ場の受付

今宵のお宿を手早く設営します。地面は水はけの良さそうな砂地で、ペグも差しやすく快適なキャンプ場です。
雷鳥沢キャンプ場

4.雷鳥沢キャンプ場で過ごす一夜

予報の通り、午後になったら少し雲が出て来ました。お日様ギラギラだとテントの中が暑っちくなってしまうので、曇ってくれた方がむしろ好都合です。
雷鳥沢キャンプ場から見た立山

本日はもう特にすることも無いので、とりあえず温泉にで浸かってゆっくりしましょう。雷鳥荘まで登り返さずとも、キャンプ場のすぐ隣にあるこちらの雷鳥沢ヒュッテでも日帰り入浴できます。
雷鳥沢ヒュッテ
外壁がボロボロで遠くから見た時は廃墟なのかと思いましたが、しっかりと営業しています。どうでも良いけど、「沢」の文字が取れちゃってますね。

日帰り入浴の受付時間は18時30分までで、料金は700円です。古い建物なので浴場の方も相応に古く、カランはありますがシャワーはありません。
雷鳥沢ヒュッテ

一風呂浴びた後は、飲んで食ってしつつキャンプ場の周囲をプラプラと散策して過ごします。
夕暮れ時の雷鳥沢

キャンプ場の周囲にも綿毛化したチングルマが沢山ありました。ひと月前に訪れていたら、花咲くキャンプ場だったのでしょうね。
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雷鳥沢キャンプ場は谷底にあるため、残念ながら夕日を見ることはできません。素晴らしいロケーションにあるキャンプ場ですが、ほぼ唯一のケチの付け所です。
日没後の雷鳥沢キャンプ場

沈む夕日に照らされた立山が、茜色に染まっていました。この後、夜中の星空撮影タイムに備えて早々と寝床に入りました。
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深夜にテントから頭を出すと、期待していた通りの満天の星空が広がっていました。素晴らしい。早速撮影を始めましょう。
夜の雷鳥沢キャンプ場

しかしいかんせんやはり、F4通しの標準ズームで星空を写すのは厳しいものがあります。20mmF1.8辺りの単焦点レンズが欲しいところです。
雷鳥沢キャンプ場から見た星空

天の川がどこにも見当たらないと思ったら、ちょうど真上にありました。何となく写せたので良しとしましょう。
雷鳥沢キャンプ場から見た天の川

30秒の長秒露出で撮影しているので、その間にヘッドライトを付けた人が通りかかるとこうなります。トイレに行く人通りが結構あるので、タイミングを見計らうのが意外と難しい。
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5.剱岳を目の前に望む好展望地の奥大日岳へ

明けて8月12日 4時50分
一夜を過ごした我が家を撤収し、本日の行動を開始します。
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雷鳥沢キャンプ場はちょうど立山の日陰になる場所であるため、日が昇ってくるのはそうとう遅い時間になってからです。
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当初は夜中の内に出発して、奥大日岳の山頂からご来光をキメるというプランも検討していましたが、山頂までのコースタイムが思いのほか長かったため取り止めました。
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その場合、奥大日岳に至る区間の稜線を真っ暗な中歩くことになってしまいますからね。周囲の絶景が期待できる稜線だけに、それはあまりにも勿体ないと思った次第です。

本日はそこそこのロングトレイルとなるため、水は多めに合計4Lを調達しました。雷鳥沢キャンプ場の水場は要煮沸と言う事になっていますが、生水を飲んでも特にその後お腹が緩くなったりはしませんでした。
雷鳥沢キャンプ場の水場

称名川を渡って登山開始です。この川は本日の下山予定地である称名滝まで続いており、ずっと川を横目にしながら下ることになります。
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川を渡るとすぐに分岐が現れました。右へ登ると剱御前方面で、奥大日岳へ向かう場合は真っすぐです。
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木道が整備された道を、前方の尾根の上を目指して登って行きます。見るからに眺めが良さそうで期待が高まります。ご来光は、この尾根の上でのどこからか見えるかな。
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木道の周囲一帯が、綿毛化したチングルマに覆われていました。最盛期に訪れたら、さぞや壮観だったのでしょうね。うーむ、これは完全に訪問すべき時期を誤ってしまったのか。
奥大日岳のチングルマ群生地

良く良く見ると、凄まじい数のチングルマです。立山の一帯がチングルマの名所であると言う認識はあまり持っていなかったのですが、これは秋田駒ヶ岳にも匹敵しうる規模なのではなかろうか。
奥大日岳のチングルマ群生地

奥大日岳の頂上(ではない)が、朝日に照らされつつありました。大日岳と言う名前の由来は間違いなく大日如来から来ているのでしょうが、大日如来とは太陽を象徴する仏です。
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室堂平から見た時に一番最初に陽が射し始めるこの山に、大日如来に由来する名前を付けた昔の人の気持ちは、たいへん良く理解できます。

5時30分 稜線まで登って来ました。右側の剱御前方面からやってくる道とここで合流します。
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室堂平にはこの時間になってもまだ陽は届かず、朝の静寂な空気の中に沈んでいました。
奥大日岳から見た雷鳥沢キャンプ場

地獄谷の様子も良く見えます。こうして横から見ると、しっかりと噴火口の形をしていたのですね。
奥大日岳から見た地獄谷

気持ちの良い稜線の道が続いています。やはりここを真っ暗な中歩くのはあまりにも勿体ないと思います。
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横から朝日に照らされた剱岳がチラ見えしていました。眼下の谷はカガミ谷と言うらしい。イワカガミが沢山咲いているのだろうか。
230813奥大日岳-068

反対側に目を向けると、つい先ほど渡ったばかりの称名川が、深いV字の峡谷を刻んでいました。川を挟んだ向かいには、立山で発生した火砕流によって作り出された弥陀ヶ原の溶岩台地が広がっています。
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ついに日陰のエリアを脱して、陽の光の下を歩く時がやって来ました。さあ、ここからは暑くなるぞ。覚悟は良いか。
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奥大日岳の本体が見えて来ました。このまるで削ぎ落されたかのような絶壁は、いかに豪雪の山らしい光景です。奥大日岳は、冬になると巨大な雪庇が形成されることで知られています。
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8月に入ってもなお、道の脇にチラホラと雪渓が残っていました。冬の積雪量の多さが伺えます。
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その豊富な雪融け水の恵みにより、奥大日岳の稜線上には多種多様な高山植物の花が咲きます。すでに花の最盛期は過ぎているものの、こうしてポツポツと残っていました。
奥大日岳のハクサンフウロ

流石に先ほどの絶壁のフチを直登はできないと見えて、登山道は南側の斜面をトラバースしつつ登って行きます。
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大日連峰の残りの2座である、中大日岳と大日岳が見えました。このあと奥大日岳の登頂後に、あの2座にも登りますよ。
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標高が上がるにつれて視界が開け、弥陀ヶ原の先に北アルプスの山々が姿を見せました。
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薬師岳(2,926m)が大きい。当初の計画では奥大日岳ではなく、五色ヶ原にテント泊して薬師岳まで縦走するつもりでいました。しかし、薬師岳の天気予報があまり芳しくなかったため、直前になって大日連峰縦走に振り替えた経緯があります。
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しかしこれだけ晴れている姿を見せられてしまうと、やはりあちらに行っておけばよかったと言う想いがもたげて来てしまいます。もっとも、この快晴の空が広がるのは朝だけで、昼以降は雨になる予報が出ております。

稜線の上まで登って来たところで、ようやく山頂が見えました。ここにもまだ残雪がチラホラとあります。
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残雪のあるところにお花あり。と言う事でここにも多くの花が咲いていました。これはミヤマキンバイなのかな。黄色い花は識別が難しい。
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谷を挟んだ向かいにある剱岳(2,999m)の姿が神々しい。朝日を浴びるその姿は荘厳にして荘重であり、圧倒的なまでの存在感を放っています。
奥大日岳から見た剱岳

7時5分 奥大日岳仁に登頂しました。ここまでにすれ違った登山者の数は10人にも満たず、雷鳥沢キャンプ場での喧騒が嘘のような静かな山頂です。
奥大日岳の山頂

奥大日岳から眺める立山と室堂はさぞや壮観だろうと思っていたのですが、尾根が突き出しているためイマイチな景観です。室堂方面を眺めたければ、山頂からよりも登っている途中で振り返った方が良いでしょう。
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反対側の大日岳方面の展望です。これから歩く予定のトレイルがすべて見えています。意外とアップダウンが多そうですね。
奥大日岳から見た大日岳

眼下の彼方には富山湾が見えます。立山連峰が富山県の象徴とされる所以が良くわかる光景です。
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遠くに薄っすらと見えているこの大きな山は、北陸地方きっての名峰、白山(2,702m)です。登ったことのある人間が口をそろえて素晴らしかったと礼賛する、名山の中の名山です。
奥大日岳から見た白山

こちらは先ほども良く見えていた薬師岳。北アルプスの女王の異名を持つ山ですが、確かにそう呼ばれるだけの貫禄が十分にあります。
奥大日岳から見た薬師岳

槍ヶ岳は本当にどこからでも良く目立ちます。じつは私、山登りが趣味なくせに表銀座も裏銀座も一度も歩いたことが無いんです。なかなかまとまった休みが取れなくて、数日間を費やす縦走登山など夢のまた夢です。
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奥大日岳の展望の中で最も特筆すべきはやはりこちら。剱岳の眺めです。奥大日岳が、最高の剱岳の展望台であるとことは間違いありません。
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6.中大日岳を越えて大日岳へ

7時30分 あまりの眺めの良さに、ついつい長居が過ぎました。ボチボチ前進を再開しましょう。
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奥大日岳の山頂直下は崩落気味で、尾根が痩せている部分もあります。慎重に参りましょう。
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日陰側の斜面一帯を埋め尽くさんばかりの勢いでトリカブトが咲いており、トリカブト畑状態でした。ぱっと見では綺麗な花なのですが、猛毒なんですよね。
奥大日岳のトリカブト

火砕流によって埋められた谷と、それを容赦なく削り取っていく称名川が作り出した、極めて独特な景観が広がります。見れば見るほどに面白い地形です。
奥大日岳から見た弥陀ヶ原

この弥陀ヶ原上の道を、ギアをローに入れて唸り声をあげながら登って行く観光バスの音がここまで聞こえてきます。本当によくまあ、こんな所に道を作りましたよね。
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中大日岳の手前で、一度大きく標高を落とします。この付近は足元が花崗岩の岩場で、地味に歩きにくい道です。こういう岩場を、ヒョイヒョイと跳ねるようにして歩けるバランス感覚の持ち主が羨ましい。
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途中からはほぼ崖を下る様な勾配となり、鉄製のハシゴが掛かっていました。ハシゴの前後共に足元がグズグズのザレ場なので、注意を要します。
奥大日岳と中大日岳の間にあるハシゴ

悪戦苦闘しつつ、ようやく鞍部まで下って来ました。遠目から見た時はもっとこう、スキップしながらでも歩けるような稜線を思い浮かべていました、意外に急勾配なアップダウンがありました。
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下った後に待ち構えているのは、当然ながら登り返しです。縦走とはそいうものです。
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中大日岳への登り返しもまたなかなかの急勾配で、途中にクサリ場もありました。特に難しい要素はありませんが、右側が切れ落ちていて高度感はそれなりにあります。
中大日岳のクサリ場

振り返って見た奥大日岳です。ドッシリと構えた重量感のある姿をしていました。
中大日岳側から見た奥大日岳

急登を登り切り中大日岳に到着したかと思いきや、もうひと登り残っていました。正面に見えているのが中大日岳で、右奥にあるのが大日岳です。
七福園から見た中大日岳と大日岳

再び花崗岩の大岩が散乱する中を歩きます。金峰山の山頂付近を思わせるような道ですが、わたしはこの手の道は大いに苦手で、目に見えてペースが鈍ります。
中大日岳の七福園

この巨岩が並ぶ一帯には、七福園なる名前が付けられています。確かに庭園風の趣がある場所です。
中大日岳の七福園

岩石地帯をぬけると、今度は木道の整備された草原が広がっていました。そうそう、こう言う感じの道を望んでいたのですよ。
中大日岳の木道

振り返ればこの絶景。この大日連峰縦走コースを歩くのであれば、室堂側からスタートするのではなく、大日平小屋か大日小屋に一泊して反対向きに歩くべきであるかもしれない。
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当初は私もそのつもりだったのですが、お盆休みの直前になってから慌ただしく予定を立てたため、山小屋の予約が出来なかったのです。その点、雷鳥沢キャンプ場なら、予約なしの飛び込みでも宿泊できますからね。

剱岳の左奥に、小さく白馬岳(2,932m)が見えました。山頂部のシルエットがかなり特徴的なので、この山は遠くからでも同定がしやすい。
中大日岳から見た白馬岳

9時5分 中大日岳に登頂しました。大日連峰の中心に位置する一座ですが、この山単体で登られる事はほぼなく、ただの通り道扱いされることが多い不遇の一座です。
中大日岳の山頂
かく言う私も、山頂標識の存在に気が付かずに危うく素通りしかけました。

中大日岳の山頂を過ぎると、すぐ目の前に大日岳が姿を見せました。幸いにも、この鞍部ではそれほど大きく標高を落としません。
中大日岳から見た大日岳

中大日岳と大日岳の鞍部に立つ大日小屋です。北アルプスのメジャーなルートからは外れた場所にある、こじんまりとしたランプの宿です。既に宿泊客を送り出した時間であるため、静まり返っていました。
大日小屋

鞍部にザックをデポして、空荷でサクッと大日岳を往復します。小屋から山頂までは、標準コースタイムで20分ほどの距離です。
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普段はカメラをザックの肩ベルトに固定してあるのですが、本日は首からかけるためのストラップを忘れて来てしまったので、カメラを片手に持ったまま登ると言う山ナメスタイルで山頂を目指します。

ザックを降ろして身軽になった恩恵はあらたかで、10分程であっさりと山頂まで登って来ました。
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9時40分 大日岳に登頂しました。大日連峰の最高峰は奥大日岳なのですが、奥まった場所にあるため麓からは見えにくく、大日連峰の表の顔と言えるのはこの大日岳の方です。
大日岳の山頂

前衛の山らしく、山頂からは麓の富山平野を一望できます。朝には雲一つない快晴だった空にも、いつしか夏らしい雲がポツポツと沸き立ちつつありました。
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立山方面にも雲が沸き立ちつつあります。早朝の好展望時間帯はそろそろ終了かな。まあこの後はもう下るだけなので、むしろ曇ってくれた方が暑さが和らいで好都合かもしれません。
大日岳から見た立山

山頂の岩屋の中に、小さな如来様がいました。これがこの山の大日如来様なのかな。
大日岳山頂の如来像

7.奥大日岳登山 下山編 大日平を越えて称名滝を目指す長き道程

9時50分 僅かな山頂滞在時間でしたが、山頂を辞去して鞍部まで引き返します。
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留守番を命じてあったザックを回収したところで、下山を開始します。この先はもうひたすら下ってゆくだけですが、まだかなりの距離が残っております。
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大日小屋からはしばしの間、大日岳の山腹を横切るトラバース路が続きます。露岩が多くて、ここでも地味に歩きづらい道です。
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トラバースが終わると、大日平に向かって降下が始まります。このタイミングで周囲は完全にガスに覆われて、一面が乳白色の世界となりました。
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途中からは小さな沢と交差しながら、ひたすらジグザグと小スパンの九十九折れを繰り返す道が続きます。登るにしろ下るにしろ、この辺りはひたすら我慢の登山が続きます。
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この下りはかなり長々と続きますが、特にこれと言った見所もなく読者の皆様を退屈させるのも偲びなので、道中の模様はスパッと省略します。

場面は飛んで大日平まで下って来ました。大日岳の麓に広がる広大な湿原です。現在は称名川が刻んだ峡谷によって分断されていますが、かつてはここも弥陀ヶ原と地続きの火砕流台地でした。
大日平湿原

池塘がポツポツと点在しています。ワタスゲシーズンはすでに終了しており、緑一色の草原となっていました。綿毛化してしまっていたチングルマと言い、今回は明らかに訪問時期が遅すぎましたな。
大日平の池塘

12時5分 大日平小屋まで下って来ました。反対向きに称名滝から奥大日岳を目指す場合は、ここか先ほどの大日小屋に1泊して歩くのが無難であると思います。
大日平小屋

小屋のすぐ裏手に、弥陀ヶ原から称名川に向かって流れ落ちる、不動滝の鑑賞ポイントがあります。せっかくなので寄り道して行きましょう。
230813奥大日岳-123

称名川はすっかりとガスに覆われちました。正面に見えている崖の上に弥陀ヶ原があり、そこから滝が流れ落ちているはずなのですが、音が聞こえるだけで姿は見えませんでした。残念!
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下山を続けましょう。これから称名川が流れる谷底へと下って行くのですが、その前に広々とした大日平を横断します。ガスってしまって視界が効きませんが、かなり広い空間であるのは何となくわかります。
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大日平を過ぎると、つるべ落としのような急降下が始まりました。過去に滑落死亡事故も発生している場所なので、慎重に下りましょう。
230813奥大日岳-126

目の前に称名川が刻んだ大峡谷の絶壁が立ちふさがります。これだけの標高差を一気に詰めようと言う訳ですから、急勾配なのも当然です。
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14時 急坂続きでだいぶ足にきましたが、何とか大日岳登山口まで下って来ました。いやはや、なかなか厳しい下りでありました。
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8.日本一の落差を誇る称名滝

帰路のバス停があるのは登山口から見て右側ですが、その前に反対方向にある称名滝をサクッと見物して行きます。14時40分発のバスに乗りたいと思っているので、実はもうあまり時間に余裕がありません。早足気味に滝へ向かいます。
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登山口から10分ほど歩いたとろで、称名滝の鑑賞スポットである飛竜橋に到着しました。轟音とともに、ここまで飛沫が飛んできます。
飛竜橋

轟音と共に流れ落ちる称名滝です。三段に分かれた滝ですが、最上段からの落差は350メートルあり、日本一の高さです。もうあまり時間がないことも忘れて、しばしのあいだ見入りました。
称名滝

さあ、いい加減良いお時間なので急いでバス停へ向かいましょう。滝見物に訪れた多くの観光客が行き交う中を、半分駆け足のようなペースで下りました。
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14時30分 称名滝バス停に到着しました。乗車予定のバスが既に停車してたのでそのまま乗り込みます。立山駅までの運賃は500円で、現金のみです。
称名滝バス停

称名川が数万年をかけて弥陀ヶ原に刻んだ渓谷です。称名滝が少しずつ谷を削り取りながら、現在の位置まで移動していったと言う事ですな。いやしかし、本当にすごい光景ですねこれは。
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バスでおよそ15分程で立山駅に到着しました。黒部立山アルペンルートの富山県側の入り口です。ここから再び室堂を越えて扇沢へ戻ることも出来ます
立山駅

9.奥大日岳登山 帰還編 富山駅を経由して新幹線で帰宅する

所要時間的にも金額的にも、わざわざ扇沢へ戻るよりも富山駅を経由して新幹線で帰る方が安がりです。と言う事で、奇はてらわずに普通に帰ることにしましょう。
富山地方鉄道の運賃表
実は下山後の富山県側の交通事情を事前にロクに調べていないと言う山ナメならぬ旅ナメをしていましたが、どうやら電車一本で富山駅まで行けるようです。

何故か毎度毎度、アプロ―チについては念入りに下調べする割に、帰路は行当りばったりなことが多いです。

私は乗り鉄なので、初めて乗車するローカル私鉄には無性にワクワクします。富山地方鉄道の普通列車はなかなか年季の入った車両です。
立山駅のホーム

冷房の効きがイマイチなオンボロ電車に1時間以上揺られて、終点の電鉄富山駅に到着しました。JR富山駅と隣接していますが、駅舎は独立していて少し離れた場所にあります。
電鉄富山駅のホーム

何気に富山駅に降り立ったのは自身初めての事です。とりあえずは越中ふんどしで酒を飲めばよいのだろうか。
JR富山駅の駅舎

路面電車が新幹線の高架の下を行き交うシブい町です。せっかくなので何か富山らしいものを食べようと、深く考えず適当に入った店で真っ黒なスープのラーメンを食べました。なお、店内が混んでいたので写真はありません。
富山駅前の路面電車
実は何味なのかも知らずに頼んだのですが、いたって普通の醤油ラーメンの味がしました。

お土産に購入した鱒ずし弁当とホタルイカの沖漬を携えて新幹線へと乗り込み、東京への長い長い帰宅の途に着きました。
富山駅の新幹線ホーム

こうして2日間に渡ったの縦走は、大満足の内に幕を下ろしました。かくも絶景の広がる魅惑の稜線歩きが出来る山が、地元以外ではほとんどその存在を認知されずに埋もれているのは、非常にもったいないことだと感じました。

展望あり湿原ありお花畑ありと、夏山登山としては非の打ち所の無い良ルートです。立山周辺の人混みに辟易したと言う人は、大日連峰の縦走へと繰り出してみては如何でしょうか。

初夏の花々も素晴らしいですが、紅葉もまた見事であると言う事なので、季節を変えて訪れるのも良いかと思います。縦走するもよし、室堂から往復しても良しです。あらゆる人に自信をもってオススメします。

<コースタイム>

1日目
室堂バスターミナル(13:00)-雷鳥沢キャンプ場(13:50)

2日目
雷鳥沢キャンプ場(4:50)-奥大日岳(7:05~7:30)-中大日岳(9:05)-大日岳(9:40~9:50)-大日平小屋(12:05)-称名滝展望所(14:10)-称名滝バス停(14:30)

奥大日岳山頂での記念撮影

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント

  1. もうもう より:

    オオツキ様

    旧ツイッターで「東京駅が凄く混んでいる」と呟いていましたので、お盆の真っただ中にどこに行くんだろう?と思っていましたが、まさか室堂とは!

    奥大日は去年登りましたが、好天もあり、超絶カッコ良い剱岳も見られて最高でした。山を見るための山としては過去一良かったです。

    今回のブログとは関係ありませんが、やはり白山は良いところなんですね!遠くから眺めることが多いので気にはなっているのですが、行くには遠いのでなかなか実現しません。

    • オオツキ オオツキ より:

      もうもうさま
      コメントをありがとうございます。

      奥大日岳から見た剱岳は別山から眺めた時の姿よりもより鋭利感があって、間違いなく剱岳が一番カッコよく見える山だと思います。もっと広く知れ渡っていても良さそうなものですが、不思議と登る人は少ないのですよね。

      訪問のタイミング的にやや遅きに失した感があるので、チングルマの最盛期にもう一度歩いてみたいです。

  2. ぱんち より:

    こんにちは このルート、良いですよね。地元民の私は気軽に歩けて気に入ってます。10月中旬の大日平の紅葉期も良いですよ。弥陀が原の紅葉が上から下へグラデーションになってるのが俯瞰でき、大日平の紅葉に埋もれるように歩けます

    • オオツキ オオツキ より:

      ぱんちさま
      コメントを頂きましてありがとうございます。

      大日岳は地元の方にとっては気軽に歩ける山枠なんですね。弥陀ヶ原の紅葉は是非ともこの目で見てみたいです。いつかお邪魔します!