社山-黒檜岳 中禅寺湖の南に連なる尾根歩きと千手ヶ浜のクリンソウ群生地を巡る

社山から黒檜岳に至る稜線1
栃木県日光市にある社山(しゃざん)から黒檜岳(くろびだけ)を縦走して来ました。
中禅寺湖の南側に連なる、足尾と日光との境界を形成している尾根上にある山です。5月下旬から6月の中旬ごろにかけて、シャクナゲやシロヤシオが咲くツツジの名所として知られています。
例年よりも少し早く咲き始めた千手ヶ浜のクリンソウと合わせて、日光の花の名所を巡り歩いて来ました。

2021年6月4日に旅す。

クリンソウはサクラソウの一種で、湿地帯などの水辺に咲くことの多い花です。サクラソウ科に属する花のなかで花弁が最も大きく、大変見栄えのする花です。
千手ヶ浜のクリンソウ
日光の中禅寺湖西端にある千手ヶ浜に、大規模なクリンソウの群生地が存在します。2021年は、クリンソウが例年よりも少し早くに咲き始めたと言う情報を耳にして、早速見物しに繰り出して来ました。

千手ヶ浜に真っすぐ行きたければ、奥日光湯元行きのバスが停車する赤沼バス停より、千手ヶ浜行きの低公害バスが運行されています。また、中禅寺湖の遊覧船で行くことも出来ます。

しかし、せっかく日光まで出向くわけですから、どうせならついでに山登りもしたいところです。・・・世間一般ではどうなのか存じませんが、少なくとも私の内部では日光に行くことと山に登ることは、常にセットとして扱われます。

という事で今回は、中禅寺湖の南岸に立つ社山から、私自身が未踏の黒檜岳への稜線を繋げて歩いてみようと思い立ちました。
男体山の山頂から見た中禅寺湖
なお、黒檜岳に至る道は山と高原地図上で破線扱いのルートです。クリンソウ見物のついでと言うには、いささかヘビーな行程ではあります。

途中までは気持ちの良い青空が広がっていたのですが、稜線の上は濃密なガスに包まれていました。クリンソウ見物に出かけたはずが、何故か視界不良の笹薮を彷徨い歩いてきた一日の記録です。
ガスに覆われた黒檜岳の稜線

コース
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中禅寺温泉バス停よりスタートし、湖畔を延々と歩いて阿世潟峠登山口から社山に登頂します。そこから稜線上の破線扱いのコースを歩いて黒檜岳へ。

下山は千手ヶ浜方面へ下りクリンソウを見物します。その後は徒歩で竜頭の滝バス停へ。標準コースタイム9時間越えの、骨太な行程です。

1.黒檜岳登山 アプローチ編 東武特急で行く日光への旅路

6時25分 早朝の浅草よりおはようございます。このビルの天井に乗っかっている物体が何度見てもう〇こにしか見えないのは、私の心がそれだけ薄汚れてしまっているからなのでしょうか。
浅草のスーパードライホール

なお都営浅草線のホームと東武日光線の浅草駅は、結構距離が離れています。おまけに赤信号に行く手を阻まれて、乗り換え時間にまったく余裕が無い状態でした。悠長にう〇この写真などを撮っている場合ではありません。
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発車10秒前と言うタイミングで、辛くも特急列車乗り込むことが出来ました。危ない所でした。これに乗り損なうと、本日のその後の計画はすべて破綻してしまいますからね。
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東武特急は全席指定で、自由席と言うものはありません。ネット予約も出来るようですが、当日に切符を買い求めるつもりでいる人は、乗り換え時間には十分な余裕をもって行動しましょう。

8時25分 東武日光駅に到着しました。降り立つなり、頭上はどんよりとしていてスッキリとしないお天気模様です。
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しかし、何となく晴れそうな予兆が感じられます。駅前は曇空だったのに、いろは坂を登ったらスッキリ青空だったという現象は、日光において割と良くあることです。
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8時35分発の中禅寺温泉行きのバスに乗車します。奥日光湯元行きのバスは満員御礼状態のようでしたが、こちらの便は比較的空いていました。
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9時16分 中禅寺温泉バス停に到着しました。なんと言うことでしょう!男体山は何となく雲に覆われているものの、頭上にはまさしく期待していた通りの青空が広がっていました。
中禅寺温泉バス停から見た男体山
これはもう、本日はなにもかもがうまくいってしまう日なのではないだろうか。・・・と、この時はまだそう思っておりました。

2.中禅寺湖の南岸をぐるりと回り、阿世潟峠へ

とりあえずは中禅寺湖の目の前まで移動しましょう。同じバスに乗っていた登山の格好をしている人々は、みな男体山方面へと向かってきました。いつも大人気ですね男体山は。
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湖の対岸に見えているこの尖った山が、本日最初の目的地である社山です。黒檜岳は社山の背後に隠れているため、ここからでは見えません。
中禅寺湖から見た社山
ちょうど社山の背後辺りから、雲が沸き立ちつつあるのが気になりますね。

まずは社山の登山口である阿世潟を目指します。湖畔に沿ってしばしの舗装道路歩きです。
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少し離れたところで、男体山(2,486m)の全容が見えました。いつ見ても惚れ惚れするくらいに見栄えがする山ですな。
中禅寺湖と男体山

西には関東地方最高峰の肩書を持つ、日光白根山(2,578m)の姿がありました。あちらはまだ少し残雪があるらしく、白いものが見えます。
中禅寺湖と日光白根山

このアプローチの下道歩きは、結構な距離があります。中禅寺温泉バス停から出ている、半月山行きのバスに乗れば多少は短縮できますが、まあウォーミングアップにはちょうど良いでしょう。
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この道すがらに、無料の駐車場である歌ヶ浜駐車場があります。車でお越しの人はここに停めて行けます。
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程なく分岐が現れました。道なりに左に行くと半月山方面です。阿世潟に向かうには、ゲートの脇を通って右の道へ進入します。
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この歌ヶ浜周辺の中禅寺湖畔には、明治初期にヨーロッパの諸国が建てた大使館の別荘が存在します。現在は記念館として一般公開されており、中を見物可能です。
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これから山に登ると言う明確な目的のある私にとっては、単なる通り道でしかない場所ですが、一度くらいはゆっくりと見物してみたいですねえ。

目指す社山の姿がかなり大きくなってきました。そして危惧していた通り、社山の背後から立ち昇って来た雲が、山頂へとのしかかりつつあるように見えます。さあ果たして、登頂するまで持ちこたえてくれるでしょうか。
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この大使館記念公園にも、中禅寺湖遊覧船の乗り場が存在します。ちょうど目の前に停船しているところでした。
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そういえばこの遊覧船には、一度も乗船したことがありません。一度くらいは乗ってみたい気もするのですが、うまいこと登山と組み合わせられるような計画を立てられるかな。

道端にチラホラと僅かながらにクリンソウが咲いていました。目指す千手ヶ浜の群生地は、こんなものではないハズです。
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前日が雨だったこともあり、足元はドロドロです。尾根の上はこうでないことを願うばかりです。
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10時10分 半月峠登山口まで歩いて来ました。前回の訪問時はここから取りつきました。本日は半月山には登らないので、ここは素通りします。
半月峠登山口

湖畔の新緑の森の中を先へ進みます。周囲にはエゾハルゼミ鳴き声が響き渡り、気持ちの良い道です。
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恐らくは樹齢数百年だったのであろう、朽ちた巨木の残骸が苔生していました。こうして森は常に新陳代謝を繰り返しているわけです。
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砂浜の先には男体山がドーンと立っていました。ここは完全無風のコンデションの時にだけ、逆さ男体山が見られることで有名な場所です。
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10時30分 阿世潟峠の登山口まで歩いて来ました。バス停から延々1時間以上歩き続けて、ようやく登山を開始できます。
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右手には中禅寺湖周遊歩道が続いており、このまま湖畔を歩き続けて千手ヶ浜まで行くことも可能です。可能と言うか、当初の計画ではもともとこの歩道を歩くつもりでいました。

しかしそこで地図を見ていてふと、そう言えばこの黒檜岳にはまだ登ったことが無かったなあと、出発の直前になってから思い付きで計画を変更した次第であります。・・・まったく、毎度毎度適当なものです。

3.中禅寺湖の大パノラマが広がる好展望地、社山

阿世潟峠に向かってユルユルと登っていきます。傾斜もゆるくて、とても歩きやす道です。
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そんなわけでサクサクと快調に飛ばすうちに、あっけなく峠が見えて来ました。
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10時50分 阿世潟峠に到着しました。さあ、ここから先は気持ちの良い好展望の稜線歩きが始まりますよ。
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大変眺めが良いのが特徴である尾根道ですが、もう一つ忘れてはならないのがツツジです。アカヤシオに始まり、シロヤシオ、ヤマツツジからシャクナゲと、季節の推移に合わせて実に多種多様なツツジが咲きます。
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峠の近くでは、早速ヤマツツジが良い感じに見頃を迎えていました。
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峠までは緩やかだった分、尾根上に出るなり初っ端から結構な急勾配です。「こんなに急だったっけ?」と独り言ちながら、粛々と高度を上げて行きます。
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山頂を視界に捉えたところで、やはり嫌な予感は的中してしまいました。足尾方面から立ち上って来た雲が、社山の山頂を覆い隠しつつありました。間に合いませんでしたか。
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ちょうど今私のいるこの稜線が、南からやって来た雲の侵攻を押さえているかのような状態です。日光方面は相変わらず青空が広がっていました。
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ヤマツツジに続いて、今度はシロヤシオがお目見えしました。こちらも見頃のド真ん中な状態です。
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シロヤシオに男体山。一目見ただけで、撮影地が社山であることが判ってしまう組み合わせの光景です。
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眼下に本日の行程におけるゴール地点である菖蒲ヶ浜(しょうぶがはま)が見えます。厳密にいうとゴールはここではなく竜頭の滝バス停ですが、ほぼ隣接しています。
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割と近くのようにも見えますが、左側からグルっと回り込んで行くため、まだまだ相当な距離があります。

菖蒲ヶ浜の背後には、日光連山ファミリーの子供たちが連なります。
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そういえば、太郎山(2,368m)にもいつか登りたいと思いつつまだ未踏なんですよね。コースタイム的には、何気に男体山よりも厳しい山であるようですが。

反対側の南には足尾地方の山並みです。孤高のブナで有名な中倉岳には、是非とも一度登ってみたいのですが、こちらもまだ未踏です。まったく、登りたいのに登れていない山の何たる多い事か。
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眼下に見えているこの平坦地は、銅親水公園(あかがねしんすいこうえん)ですね。田中正造氏が明治天皇に直訴までして止めようとしたことで有名な、足尾銅山の鉱毒事件に関連する施設です。
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足尾銅山からの鉱毒によって、足尾周辺の山林はすっかり荒れ果てて、保水力を失ってしまいました。その結果、下流にある渡良瀬川は、雨が降るたびにしばし大氾濫に見舞われるようになりました。

その渡良瀬川を治水するために作られらたのが、この銅親水公園にある超巨大砂防ダム群です。中倉岳登山とセットで、一度は訪問したいと思っている場所です。

遂に約束されていた未来に辿り着いてしまいました。すっぽりと雲の中に入りました。
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とは言っても周囲はわりと明るく、何となく太陽の熱も感じられます。たいした厚みは無い雲のようですな。

唐突に視界が開けて、山頂が現れました。
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11時55分 社山に登頂しました。ここまでは過去にも一度訪れた事があり、言ってみれば単なる前座でしかありません。
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道中からは素晴らしい眺望が広がる社山ですが、実は山頂からの眺めはさほど良くはありません。このとおり、日光方面の展望だけが少し開けています。
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山頂ではシャクナゲの開花が始まりつつありました。まだまだ、見頃となるのはこれからです。
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4.黒檜岳登山 登頂編 ガスと笹薮に覆われた尾根を歩き、地味極まりない頂きへ

12時15分 着いて早々ではありますが、まだまだ先は長いので、ボチボチ行動を再開しましょう。ここからいよいよ、破線地帯へと足を踏み入れます。
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黒檜岳へ向かうには、山頂から真っすぐ道なりに進んで、途中で右のコメツガ林の中へ曲がるのが正解です。

なお、尾根沿いに真っすぐ直進する、紛らわしい薄い踏み跡がありますが、こちらではありません。山と高原地図には記載がない道ですが、方角からして足尾方面の林道へ下山してしまうものと思われます。
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だいぶ下ってしまってから間違いに気づいて、慌てて引き返しました。初っ端から一筋縄に行かない道ですな。これは気を引き締めて行く必要がありそうです。
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気を取り直して正しいルートへと進みます。一応は踏み跡らしきものがありますが、かなり分かり難いです。
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ここで前方に、これから歩く尾根が一望でき・・・るはずなんですけれど、ガスが沸き上がってきておりますな。よりによってこれから破線地帯に足を踏み入れようと言うタイミングとは、何とも間が悪い。
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さあて、迷わずに歩けるかな。

何となく道筋らしきものが見えます。尾根沿いに行けばよいはずなので、まあガスって視界不良になっても大丈夫だよね?
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再び始まるシロヤシオロードです。見事な天然の花のアーチを作り出していました。
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山腹が大きく崩落しつつありました。樹木が失われてしまった山の斜面というのは、風雨の浸食に対しては無力です。崩落が新たな崩落を呼び、止めどもなく崩れて行きます。
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この付近の稜線上に大きな樹木が一切無いのは、足尾銅山から出た鉱毒を含む煙による煙害の結果だと言われています。鉱毒の被害は渡良瀬川の下流域にとどまらず、こうして今なお広域に多大な影響が残っています。
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遠目にはなだらかそうに見えた稜線ですが、意外とアップダウンがあります。山と高原地図によれば、社山の山頂から黒檜岳までの標準コースタイムは、3時間となかなか重め数字が掲げられています。
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今のところは踏み跡もしっかりしており、こうして道標も整備されています。かなり年季が入っているようではありますが。
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熊笹に覆われた稜線は、どこか丹沢主脈を思わせる光景です。違いと言えば、人の姿が全く見当たらないことでしょうか。
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人のいない丹沢主脈・・・。もしかしなくても、それって最高なのでは。

何となくチラチラと顔を覗かせていた青空ですが、徐々に姿を見せ無い時間が長くなってきました。ここからの天候のV字回復は、望みが薄そうですね。
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そしてついには、完全なる虚無の世界へと突入してしまいました。残念!
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来て早々になんですが、これはいつか再訪しないと駄目なやつですね。どう考えたってこの道は、晴れている日に歩いてみたじゃないですか。絶対に眺めが良い奴ですよ。

ルートは基本的にずっと尾根沿いなので、迷うような要素などは無さそうなものですが、獣道(?)なのか何なのか分かりませんが、紛らわしい踏み跡のようなものが沢山あります。
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ここはおそらく、地図に「凹地の南側を行く」とかかれている場所だと思われます。確かに大きな空間が広がっているように見えます。
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続いて「笹がうるさい」と書かれた一帯に入ります。うん、確かにこれはうるさいですね。
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それでも、笹薮は何となく道筋が見えるだけまだマシです。森の中に入ると、最早どこが道なのかはさっぱりわかりません。とにかく尾根筋を外さないように注意しながら進みます。
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14時15分 大平山分岐と呼ばれる地点を通過します。この先へ進んだ場所に大平山と言うピークが存在するようですが、ただでさえ道が分かり難いこの状況なので、今回は立ち寄らずにスパッと割愛します。
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道は再び踏み跡が分かり難い森の中へ。しかし、何となくガスが薄くなりつつあるように感じられます。
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栃木県の山に多く見られる、この赤と黄色の識別表が過剰なまでに数多く設置されていました。とりあえずこれを見失わない限りは、道に迷うことはありません。
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ほとんど手付かずな原生林が広がっていました。なんだかもう、この場所は人間の勢力が及んでいる圏内ではないのだと言う感覚が、ひしひしと伝わってくるようです。
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分岐が現れました。千手ヶ浜に下るには右ですが、その前にサクッと黒檜岳を往復します。
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分岐からはほとんど高低差は無く水平移動のようなものです。登っているようないない様な、微妙な勾配の道です。
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14時30分 黒檜岳に登頂しました。あはははは、これはまた飛びっきり地味な場所ですねえ。いくら何でも玄人向け過ぎるでしょう、この山は。
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5.黒檜岳登山 下山編 シロヤシオとシャクナゲが咲き誇る、圧巻のツツジロード

さて、展望もない山頂に長く留まっても、得るものは何もありません。登頂の証拠写真を撮影したところで、足早に下山に移ります。
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前方に何か動くものの姿があると思ったら、シカでした。この山に関して言えば、確実に人よりも鹿の方が数が多いのではないかと思います。
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何時の間にかガスがすっかりと晴れてくれたおかげで、踏み跡を見失う事は無くなりました。サクサクと足早に高度を落として行きます。
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標高がだいぶ下がってきたところで、今度はシャクナゲロードが始まりました。
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まだ最盛期には少し早く、咲き始めと言ったところでしょうか。これはシャクナゲとしては最も一般的な種である、アズマシャクナゲです。
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そしてシロヤシオも、シャクナゲに負けじと咲き誇っていました。
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シャクナゲとシロヤシオの競演が繰り広げられます。もう少し早い時期だと、アカヤシオも見られるようです。
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そうこうする内に、いつの無いか中禅寺湖との標高差がだいぶ小さくなってきました。
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そして、ここからのシロヤシオが凄かった。かつて目にしたことない規模の、大群生地が形成されていました。
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どうやら今年のシロヤシオは、大当たり年だったようですね。凄まじい数の花です。
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前日の雨で落花してしまったらしい花びらが、足元に白い絨毯を作り出していました。
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飽きもせずに、同じような写真を何枚も撮ってしまいます。
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シロヤシオの咲き誇る尾根歩きは途中で終わり、湖畔に向かっての急降下が始まります。この先は破線ルートらしくかなり道が悪いので、気を引き締めてまりましょう。
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まず手始めに、靴一足分ギリギリの横幅しか無いような、危なっかしいトラバース地帯を抜けます。足元はドロドロでかなり神経を使いました。
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お次はザレ場の急行下です。お助けロープが垂らされているので、しっかりと活用して下ります。このロープ無しでは、下りはともかく登るのは相当難しいと思われます。
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16時20分 気の抜けない下りがしばし続いた後に、黒檜岳登山口までたどり着きました。ここでようやく、中禅寺湖周遊歩道と合流します。やれやれ、最後の最後でえらい緊張しましたよ。
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6.千手ヶ浜のクリンソウを鑑賞する

途方もない遠回りをした末に、ようやく本来の目的地である、千手ヶ浜へとやってきました。さあて、クリンソウは咲いているかな。
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千手堂と言うお堂がありました。比較的最近に建て替えたらしく、真新しい状態でした。
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この場所から中禅寺湖上に千手観音の姿が見えたと言う伝説が残っており、それが千手ヶ浜という地名の由来にもなっています。

その千手観音は、まさか中禅寺湖をクロールで泳いでいた訳ではないんですよね?見てみたいぞ、泳ぐ千手観音の姿を。

木橋で小さな沢を渡ります。この橋の周辺が、小規模なクリンソウの群生地となっていました。
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クリンソウは元々こうして、水辺のすぐ近くに咲くことが多い花です。
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花弁の形状は、まさしくコイワザクラそのものです。紫っぽい色合いのものと白いものとがあり、華やかな姿を見せてくれます。
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湖畔に整備された木道沿いに進みます。この辺りは観光客もやってくるエリアなので、道は良く整備されています。
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小さな池が点在する、ちょっとした湿地のようになっている場所が現れました。この湿地の周辺が、クリンソウの大群生地となっています。
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凄まじい密度のコロニーが形成されている様子が見えます。ただ、木道からは少々遠い場所に咲いているので、大きく映したければ望遠レンズが必須です。
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最盛期にはもっと凄まじい密度で咲くようですが、本日はまだまだ咲き始めです。ベストな訪問時期は6月の中旬から下旬頃なのかな。
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この吊り橋を渡ると、クリンソウ地帯は終わりです。もうすっかり時間が押してしまっており、余り長居は出来ませんでしたが、しかし良いものを見せてもらいました。
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17時 千手ヶ浜に到着しました。対岸の男体山は、いつの間にかすっかりと雲隠れしてしまいました。
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前述の通り、この場所へは赤沼バス停から出ている低公害車のバスでも訪れることが出来ますが、帰路の最終便の発車時刻は15時50分と結構早い時間です。くれぐれもご利用は計画的に。

遊覧船の乗り場もありますが、しかしこちらもすでに最終便の時刻は過ぎており、本日の営業は終了しております。自分の足で歩いて帰るしないと言うことです。
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7.竜頭の滝バス停へ、足早に歩道を駆け抜ける

さて、時刻は既に17時。目標は18時18分に竜頭の滝バス停を通る日光駅行きのバスに乗車することです。実はもう既に、時間にはまったく余裕がありません。足早に参りましょう。
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18時18分の後にもう一本、19時43分の最終便が一応は存在します。しかしながら、その最終便になってしまうと、その後に宇都宮まで出て新幹線に乗らないと、今日中に自宅へ帰り付くことが出来なくなってしまうのです。

日光と言うのは、意外と遠い場所なんですな。

名目上は歩道と言う事になっている道ではありますが、実態としては完全に登山道です。スニーカーでも歩けないことはありませんが、登山靴を履いてきた方が無難だと思います。
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この歩道周辺のヤマツツジがまた、圧巻の光景でありました。もっとも、あまりゆっくり愛でていられる時間はありませんが。
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この期に及んで結構ガッツリと登らされます。勘弁してください。もう登り返しはお腹いっぱいです。
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登り切ったところが赤岩と呼ばれている場所です。さて現在時刻は17時35分。だいぶ余裕が無くなって来ました。果たして18時18分までに、竜頭の滝バス停まで辿り付くことが出来るのでしょうか。
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登ったからには当然下り。もっと湖畔のすぐ近くを歩けるようになっているのかと思っていましたが、意外と高巻きの道でアップダウンが多めです。
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この先はもう写真を撮る間も惜しんで、がむしゃらに早足で歩きました。

菖蒲ヶ浜の駐車場までたどり着きました。このあと残すは、僅かな舗装道路歩きのみです。しかしなんだってこう私は毎度毎度、時間に追われるようなギリギリの山行きばかりをしているのでしょうかね。
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竜頭の滝の入り口までやって来ました。本当は時間があればこの滝も見物していきたかったのですけれど、もう既に結構ギリギリな時間ので、滝見物は割愛します。
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18時 竜頭の滝バス停に到着しました。一時はどうなることかと思いましたが、何とか18時18分のバスに間に合わせることが出来ました。
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その気になれば滝見物が出来ないことない時間ではありますが、千手ヶ浜からノンストップでかっ飛ばして歩いたため、もうすっかり足が棒状態です。

「もう歩きたくねぇス」という事で、この場に崩れ落ちました。

時刻表よりも5分以上遅れてバスが現れました。これは後知恵の結果論に過ぎませんが、そこまで必死になって歩かずとも間に合ったのかもしれません。
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この奥日光湯本発のバスは、中禅寺温泉バス停でトイレ休憩を兼ねて少々停車します。傍らには、すっかりと曇に包まれてしまった男体山の姿がありました。
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東武日光駅に戻って来た時には、時刻は既に19時を回ってすっかり周囲は暗くなっていました。ほぼ丸一日を費やしたガッツリ登山でありました。
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これだけ遅い時間帯になると、もう特急けごんは走っていません。鈍行列車に乗り込み、長い長い帰宅の途に付きました。
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日光の花の名所をゆるりと巡るはずが、蓋を開けて見れば濃密なガスに覆われた笹薮の中を彷徨うエクストリームな登山でありました。ただでさえ踏み跡が不明瞭な破線コースなので、訪問を考えている人は晴天が約束されている日を狙った方が良いと思います。
あまり歩かれてはいないルートのようですが、特に後半のツツジロードは圧巻の光景でした。稜線からの眺望はとても残念な状態であったので、次回は是非とも晴天が約束されている日を狙って再訪したいところです。
黒檜岳は、どこから登るにしても結構な長距離を歩くことになるため、万人向けとは言い難い山です。ガッツリと長距離を歩きた人向けです。千手ヶ浜のクリンソウ見物を主眼に据えるのであれば、もう少し軽めに高山あたりと合わせて巡るのが良いのかもしれません。

<コースタイム>
中禅寺温泉BS(9:25)-阿世潟(10:30)-阿世潟(10:50)-社山(11:55~12:15)-黒檜岳(14:30~14:45)-黒檜岳登山口(16:20)-千手ヶ浜(17:00)-赤岩(17:35)-竜頭の滝BS(18:00)

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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