蛭ヶ岳 丹沢山塊の中央に佇む神奈川県最高峰

鬼ヶ岩付近から見た蛭ヶ岳
神奈川県相模原市と山北町にまたがる、蛭ヶ岳(ひるがたけ)に登りました。
標高1,672メートルの丹沢山塊の最高峰にして、神奈川県の最高地点でもあります。山頂からは、視界を遮るものが一切無い360度の大パノラマが広がります。単純な標高だけで見れば低山の範疇に含まれかねない山ですが、丹沢山地のほぼ中心に位置することから、そう簡単には登らせてはくれない奥深い山であります。
神奈川県の天井を目指す日帰りの旅をしてきました。

2015年10月19日に旅す。

1泊2日のコース

登山ブームといわれる今日、町の本屋さんへ行くと、そこには数多の登山ガイドブックが溢れ返っています。

その中のどの本を開いて見ても、蛭ヶ岳を紹介するページには、必ずといって良いほどこう書かれていることでしょう。「1泊2日のコース」「日帰りも可能だが健脚者向け」と。

ほほう、健脚者向けとな。それはつまり蛭ヶ岳を日帰りで制した者は、以降健脚者を名乗る資格を得ると言えるのではないでしょうか。

目標は決まりました。健脚者への道のスタートです。

さて、そもそも神奈川県にある2,000メートルにも満たない山が日帰り困難だというのは、一体どういうことなのでしょうか。地図を見てみると、なるほどこの山がなかなかどうして厄介な場所にあるのが良く分かります。
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全長40kmに及ぶ広大な丹沢山塊のほぼど真ん中に位置しています。麓からこの山に直接取り付けるルートは存在しません。そして何処から取り付くにしても遠い。

東丹沢の最も一般的な玄関口といえば大倉ですが、大倉から蛭ヶ岳山頂を往復した場合、総歩行距離は25kmをオーバーしてしまいます。

世の中にはこのルートを日帰りで往復する物好き豪脚の者も居るようですが、トレランならいざ知らず、徒歩で一日25kmオーバーはちょっと尻込みする距離です。

そこで今回私が目をつけたのが、丹沢の裏側とでも言うべき道志村からアプローチするルートです。

道志村の平丸BSから蛭ヶ岳山頂までのコースタイムはおよそ5時間で、蛭ヶ岳へのアプローチとしては最短です。ここから大倉に向かって丹沢山塊を縦断するルートを計画しました。
丹沢主脈ショート縦走のコースマップ
コースタイムはおおよそ10時間。健脚者向けと呼ぶにふさわしいロングコースです。

1.丹沢山地の裏口、道志村から行く姫次への道程

8時10分 平丸バス停
場面は突然登山口にワープしましたが、実はここまで来るのは結構大変です。
道志村 平丸バス停

ここ道志村は公共交通の不毛地帯です。平丸バス停へ来るためにはまず橋本駅から三ヶ木(みかげ)行きのバスに乗り、そこから更に月夜野行きのバスに乗り換える必要があります。
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三ヶ木発の月夜野行きのバス便は1日に2本しかありません。乗り遅れるとアウトなので要注意です。

バス停からはまず月夜野方向に向かって道なりに進みます。
平丸付近の道志道

車道がトンネルに入る手前の脇道へ入って言ったところに登山道の入り口があります。ここはちょっとわかりにくいポイントです。
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資材置き場の脇を通って登山開始です。まずは丹沢主脈の尾根に乗ることを目指して登って行きます。
蛭ヶ岳 平丸の登山口

登り始めてしばらくは、まるで奥多摩のような植林帯の中を進みます。
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この森の中を歩いているタイミングで、いつの間にか靴にヤマヒルがくっついていて狼狽する。既に晩秋と言って良い季節ですが、まだ奴らがうごめいていましたか。
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しばらく進むと若干荒れ気味の道になっていました。蜘蛛の巣が跋扈しており、この平丸ルートはあまり歩かれていない道であることが窺えます。
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登り始めて2時間ほどで、尾根上の道に合流しました。これで丹沢主脈に乗ったことになります。ここから先は、最後までずっと尾根筋です。
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この道は東海自然歩道として整備されており、姫次までは非常に歩きやすい道が続きます。
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途中に水場がありました。水は既に十分な量を携えていますがせっかくなので見に行きます。
丹沢 焼山の水場

まるで崖のような急斜面を下ったところに水場がありました。尾根筋の道が多いからか、丹沢エリアは全般的に水場が少ない印象があります。
丹沢 焼山の水場

東海自然歩道の案内板がありました。東京近郊の山を登っていると割りとよく目にします。実は東京から大阪まで全長1,697キロにもおよぶ長大な歩道です。
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黍殻避難小屋の脇を通過します。中を覗いては見ませんでしたが、最近リニューアルされたばかりの非常に綺麗な小屋らしい。トイレもあります
丹沢 黍殻避難小屋
この付近で、再びヤマヒルに取り付かれているの気が付き、デコピンで撃退しました。これは忌避剤を用意して来るべきであったか。

谷を挟んだ対岸から望む丹沢三峰です。宮ケ瀬湖から丹沢三峰をへて丹沢山に至るルートも存在します。昔一度歩いたことがありますが、ひたすら長くて結構ハードな道です。
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東海自然歩道の最高地点であることを示す標識がありました。標高は1,433メートルです。
東海自然歩道最高地点の標識

11時10分 姫次に到着しました。ここまで歩いてきて、初めて蛭ヶ岳の名前が道標上に出現します。
丹沢 姫次

お蛭さんの山頂が初お目見え。蛭ヶ岳は奥まった場所にある山であるが故に、麓からはその姿を伺うことが出来ません。
姫次からみた蛭ヶ岳

姫次の様子
広々としており、休憩にはもってこいです。
丹沢 姫次
この机のような見た目をしたベンチは、腰掛けるのではなく上に乗って休憩するのが正しい使い方です。なぜそんなことをするのかと言うと、地面に足をつけた状態で休憩しているとヤマビルが群がってくるからです。

東丹沢のほぼ全域で猛威を振るっているヤマビルですが、この姫次の一帯はそのなかでも特に多く発生する場所なんだとか。蛭ヶ岳と言う名前自体が蛭が多いから付けられたと言う説があるくらいです。(他にも諸説あり)

姫次は富士山の展望スポットとしても有名です。この通り真正面に見えました。
丹沢 姫次から見た富士山

富士山をズーム。すでに薄っすらと冠雪しておりますな。
丹沢 姫次から見た富士山

2.蛭ヶ岳登山 登頂編 丹沢最高峰へと続く健脚者への道

蛭ヶ岳に向かいます。姫次からはまずは一旦大きく下ります。
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西丹沢の山々が良く見えます。右の山が大室山1,587m)。中央付近の鞍部が犬越路。左の枠からはみ出ている山が檜洞丸(1,601m)です。
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紅葉のピークはもう過ぎてしまっており、落葉に向かいつつありました。
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原小屋平を通過。名前からして昔小屋があったんですかね。今は何も無い平場でした。
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この場所にはかつて原小屋山荘が立っていいましたが、昭和56年に解体されました。

道中の紅葉です。さほど期待はしていなかったので、見られたのは嬉しい誤算です。
蛭ヶ岳の紅葉

紅葉の森を進みます。この付近で、この日初めて他の登山者とすれ違いました。口髭がダンディなおじさんです。軽く挨拶して通り過ぎました。
蛭ヶ岳の紅葉

髭が微笑む~蛭ヶ岳~♪
即興の「麦と兵隊」の替え歌を口ずさみながら登ります。
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いよいよ蛭ヶ岳本体にアタック開始です。山頂までは丹沢名物階段地獄が延々と続きます。
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この階段がかなりキツイです。延々と続いて先が見えません。背後に広がる絶景を眺めつつ、しばし小休止を取ります。
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眼下になにやら立派な橋が見えました。檜皮橋(ひわたばし)と言うらしい。
丹沢 檜皮橋

山頂まで緩むことなく急登が続きます。健脚者への道とはかくも厳しいものでありましたか。
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12時40分 蛭ヶ岳登頂しました。登り始めてから4時間半もかかってようやく到着です。丹沢最高峰は実に遠かった。
蛭ヶ岳の山頂標識

3.神奈川県の天井から望む大絶景

山頂の様子
広々としています。そして誰もいません。
蛭ヶ岳 山頂の様子

蛭ヶ岳山頂に立つ蛭ヶ岳山荘。通年営業の有人小屋です。健脚者への道とか意味不明なことを言ってないで、ここで一泊した方が無難だとは思います。
蛭ヶ岳山荘

塔ノ岳へと続く丹沢主脈の山並みです。今日はこの後、ここをずっと歩いて行きます。見るからに眺めが良さそうで期待が高まります。
蛭ヶ岳山頂から見た丹沢主脈の稜線

こちらは丹沢主稜と呼ばれる稜線と、その先にある檜洞丸です。激しくアップダウンを繰り返すかなりの険路です。
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こちらは西丹沢の犬越路と大室山です。
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富士山は麓が雲に覆われて頭だけしか見えなくなっていました。
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富士山をバックにドヤ顔の自撮しようとして完全に失敗した図。頭で隠してどうすんだ。
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頭に巻いているのはお隣丹沢山のみやま山荘オリジナル手拭です。本当は蛭ヶ岳山荘の手拭が欲しかったのですが売り切れで買えなかったので腹いせに(?)に巻きました。

こちらは先ほども見えていた丹沢三峰です。その先には首都圏の市街地が広がっているはずですが、ぼんやり霞んでいて良く見えません。
蛭ヶ岳から見た丹沢三峰

麓の宮ケ瀬湖が見えました。
蛭ヶ岳山頂から見た宮ケ瀬湖

ここまで歩いてきた焼岳方面の主脈稜線です。良い色に黄葉いておりますねえ。
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4.爽快だがひたすら長い丹沢主脈の稜線歩き

丹沢山に向かって下山を開始します。まあ下山と言いつつも、この後何度も激しく登ったり降りたりしますがね。
蛭ヶ岳から見た丹沢主脈

正面に見えているのは鬼ヶ岩と呼ばれる場所です。鬼の角のように二股に分かれている岩です。
丹沢主脈 鬼ヶ岩

鬼ヶ岩の直下はちょっとしたクサリ場になっていますが、登り使う分にはまったく難しくありません。
丹沢主脈 鬼ヶ岩

鬼ヶ岩の間から望む蛭ヶ岳は定番の撮影スポットです。忘れずに抑えておきましょう。
鬼ヶ岩の間から望む蛭ヶ岳

気持ちの良い稜線歩きが続きます。右奥に見えているのは大山1,252m)です。
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大山をズーム
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振り返ってみる蛭ヶ岳です。丹沢最高峰の名に恥じない、堂々たる山容をしています。
蛭ヶ岳丹主脈の稜線から見た蛭ヶ岳

緩やかなアップダウンの稜線が続きます。このあたりに背の高い木がまったく無いのは、鹿に食い尽くされたからだとか。
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道中に東屋がありました。不動ノ峰の休憩所です。
丹沢 不動ノ峰の東屋

何時作られたものかは知りませんが、大分老朽化が進んでいました。ここは、稜線上で天候が急変した際に逃げ込める、数少ない場所です。
丹沢 不動ノ峰の東屋

見事なまでに何もない笹っ原です。恐るべし鹿の食欲。
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丹沢山の目の前までやってきました。暗部へはかなりガッツリと下り、その後の登り返しがキツそうです。
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14時半 丹沢山に登頂しました。流石にかなり疲れましたが、しかしまだまだ先は長いので休まずに進みます。
丹沢山の山頂

紅葉を口実に何度も小休止。「もう歩くの嫌だ、健脚者なんて辞めてやる」と言う気分になっていたのは秘密です。
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15時20分 塔ノ岳に登頂しました。最後の登り返しですっかりグロッキーです。この先は下りとはいえ、大倉まではまだあと7kmも残っています。
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塔ノ岳から望む蛭ヶ岳。蛭ヶ岳の姿はこれで見納めです。
塔ノ岳から望む蛭ヶ岳

大倉尾根(通称バカ尾根)の降下を開始します。ここで取っておいたファイト一発を投入しました。タウリン1,000mgの力で長くつらいバカ尾根の下山に立ち向かおうと言う算段です。
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長い長いバカ尾根を黙々と下ります。
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2時間ほどかけて大倉へ下山。健脚者への道は終わりました。

蛭ヶ岳への日帰り登山はずっと前から暖めていた一つの目標でした。それだけに達成した際の喜びは一入でした。
日帰り困難といわれる蛭ヶ岳ですが、日の長い季節を選べば十分に余裕を持って日没までには戻ってこれます。今回歩いた道志村からのルートは、あまり歩かれていないようでしたが、蛭ヶ岳日帰り制覇を目指している人には非常にオススメです。少なくとも大倉から往復するよりは遥かに楽でしょう。
同じく日帰り困難といわれる東京都最高峰の雲取山と比較すると、歩行距離はほぼ同じ位。道中のアップダウンは蛭ヶ岳の方が多い印象です。実際に両方とも日帰りで登ってみましたが、蛭ヶ岳の方が若干難易度が高いかと思います。

<コースタイム>
平丸BS(8:10)-姫次(11:10)-蛭ヶ岳(12:40~13:10)-丹沢山(14:30)-塔ノ岳(15:20)-大倉BS(17:10)

蛭ヶ岳の山頂にて記念撮影

健脚者へ道 完

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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