神奈川県伊勢原市、秦野市および厚木市にまたがる大山(おおやま)に登りました。
広大な丹沢山地の中で平野部に面した前衛の位置に立つ山です。アクセスが容易であるうえに眺望にも優れており、年間を通じて多くの登山者が訪れる非常に人気の高い一座です。中でも特に紅葉シーズンともなると、紅葉のライトアップイベントが行われて、登山者のみならず多くの観光客で賑わいます。
まだ比較的空いているであろう平日を狙って、紅葉シーズンの大山を巡って来ました。
2021年11月25日に旅す。
丹沢山地の南東部に立つ大山は、遠目には半ば独立峰のように見える姿をしており、麓の平野部からの距離も近く大変目を引く存在です。かくも里に近くて目立つ山を古人達がほっておくはずもなく、古くから雨乞信仰の対象となってきました。
大山の山中にある阿夫利(あふり)神社は、正確な創建年次は不明ですが、西暦8世紀ごろには既に存在していたと言う記録が残されています。
大山のちょうど中腹付近にある阿夫利神社の下社では、毎年紅葉シーズンの11月中旬から下旬にかけて、紅葉のライトアップが行われています。ライトアップの期間中はケーブルカーの運転時間が延長され、多くの見物客で賑わいます。
この催しはとても人気が高く、週末の土日ともなると麓には果てしない道路渋滞が引き起こされ、現地へと向かうバスも大混雑します。今回はすこしでも人混みを避けるべく、平日に訪問してきました。
ライトアップを見たいだけならば、山頂まで登る必要は全くありませんが、それでもしっかりとピークハントもして来ました。山頂からの夜景と紅葉を満喫した1日・・・ではなく半日の記録です
コース
ヤビツ峠よりスタートし、イタツミ尾根を登り大山の山頂へ。登頂後は表参道を下ってライトアップが行われている阿夫利神社下社へ下ります。
阿夫利神社からはケーブルカーは利用せずに、女坂ルートを下って大山寺を経由しつつ大山ケーブルバス停へと下山します。
しっかりとピークハントとしつつ、帰りがけに紅葉ライトアップを見物する行程です。
1.大山登山 アプローチ編 最終バスで行くヤビツ峠への道程
13時42分 小田急永山駅
さて、本日は半ドンを取得しての平日登山です。ライトアップ期間中の週末土日の大山は大混雑しますが、平日であればいくらかは空いているだろうと言う目算です。
最近は半ドンと言う言葉は殆ど使われなくなったそうですね。少なくとも、職場の若者には通じませんでした。これがジェネレーション・ギャップと言うやつなのか。
秦野駅に近づく頃になると、車窓に大きく大山の姿が見えて来ます。しかし本当によく目立つ山ですよね。古くから信仰の対象とされてきたことにも、大いに納得がゆくだけの貫禄があります。
秦野駅から14時50分発のヤビツ峠行きのバスに乗車します。平日はこの便が最終です。乗っていた電車が秦野駅に到着したのがバス発車時刻の2分前であったため、大慌てで階段をかけ上がり何とか転がりこむことが出来ました。
やれやれ、危ない所でした。まったくなんでこういつもいつも、私の立てるアプローチ計画と言うのはギリギリの綱渡り状態なのでしょうか。・・・出発の直前になってから決めるからですよね。はい。
15時35分 ヤビツ峠に到着しました。蓑毛を過ぎて以降は、乗客は私一人の貸し切り状態でした。まあ確かに、普通に考えればこんな時間から山に向かう人なんていないですよね。
乗り合わせたバスのICカードリーダーが故障中であったため、現金で清算しました。秦野から運賃が500円未満であることにあらためて驚かされます。流石は天下の神奈中バスです。
2.大山登山 登頂編 遠き山に陽は落ちて・・・
15時40分 身支度を整えて登山を開始します。山頂までは僅か2.3kmしかありません。実はケーブルカー山頂駅から登るよりも楽だと言う事実は、もっと広く認知されても良いと思います。
しかし、陽の短い11月下旬の15時過ぎから登山を始めようなどとは。さては貴様、山をナメているな。
登山口から階段を上がった所に、ヤビツ峠レストハウスなる施設が立っていました。いつの間にこんなものが。自転車ラックがある辺り、登山者よりも自転車乗りが主な客層なのかな。
時間が時間だけに、当然ながら営業はしていませんでした。
日没まではもう殆ど時間がありません。下山がヘッドライト装着になることは始めから織り込み済みですが、できれば山頂までは明るいうちに到達したいところです。
いかにも丹沢らしく、初っ端からいきなり階段地獄が始まります。それではいっちょう、気合を入れて足早に参りましょう。
先ほど私を運んでくれたバスが折り返して下って行きました。平日と言えども、下りの方はそれなりの数の乗客がいました。この時間にバスから降り立った私の事を、みな怪訝そうな表情で見ておりましたな。
この標高付近の紅葉は、もう既に終わりかけです。それでもこうして、僅かな名残が残っていました。
歩きだして早々から、相模湾が良く見えました。基本的に道中は展望の無い樹林帯が続きますが、時々こうして展望の開けるポイントが存在します。
江ノ島も良く見えました。この大山が、どれほど絶好のロケーションに立っている山なのかが良くわかる光景ではないでしょうか。
先ほど足早に参りますと言いまいたが、実はこの日は二日連続登山で、始めからお疲れ風味だったため一向にペースは上がりません。足早に歩こうとしただけで、実際にはまったく早くはないペースでノタノタと登ります。
まあ、焦ってもしょうがありません。ライトは持っているのだから、ここは鷹揚に構えて参りましょう。
このイタツミ尾根コースには、一応クサリ場も存在しますが、別に使わなくても登れるレベルのものです。
距離が短い分だけ、最初から最後までずっとそこそこ急勾配の道が続きます。
早くも山頂が見えてきました。ヤビツ峠から大山山頂までの標高差はおよそ500メートルほどしかなく、高尾山よりは少し長いと言う程度です。登山初心者向きなルートだと思います。
夕日に照らされて、山肌が不気味なくらいにオレンジ色に染まりつつありました。この季節は、本当に日が短い。
背後を振り返ると、ちょうど今まさに陽が沈まんとしているタイミングでありました。
とーおきーやーまにー ひーはおーちてー♪
夕焼けを見ていると、なぜかいつも家路のメロディーが脳内で自動再生されます。ちなみに、朝日を見た時にはラジオ体操のテーマが再生されます。
さて、完全に日が沈みました。薄っすらとした残光に照らされた登山道を進みます。
丹沢登山においては、ザレ場のあるところに好展望ありです。という事で絶景スポットの予感です。
目の前にドーンと、富士山と表尾根が一望できました。しかし、側面を守ってくれていた樹木が無いので、風が尋常じゃなく寒い。
これまで大山には結構な回数登っているのですが、いつも微妙な天気で大山から富士山が見えたのは自身初めての事かもしれません。当たり前ですが、塔ノ岳の山頂から見た時の姿と殆ど違いはありません。
表参道ルートと合流しました。大山における最もメジャーなルートですが、しかし流石にこの時間帯ともなると、人の気配は全くありません。
山頂へ向かいましょう。だいぶ薄暗くなってきましたが、当初の目論見通り登りではヘッドライトを出さずにギリギリ間に合いそうです。
合流地点からは10分とかからずに、山頂の鳥居が見えて来ました。
山頂を貸し切りかなと期待していましたが、山頂には何人かの先客の姿がありました。こんな時間に山登りとは、世の中物好きな人もいるものです。
16時50分 大山に登頂しました。紅葉ライトアップ目当てであるならば、別に山頂まで登ってくる必要なんて全くなかった訳ですが、しかしそれは登頂してから言うことではありませんよね。
でもこれで良いのです。ここはもともと、そういうブログなのですから。
3.大山山頂から望む相模平野の夜景
せっかく登って来たのですから、このまま暗くなるまで待機して夜景を眺めて行くことにしましょう。夜の大山山頂では、野良タヌキが足元をウロウロと動き回っていました。
人間を警戒するそぶりが全く見られません。なお、タヌキは結構気が強い生き物なので、まかり間違っても手を出そうとなどとはしないでください。
夜の帳が降りたところで、眼下を埋め尽くすような夜景が広がっていました。これは東京湾方面を見たところです。
なお三脚は担いできていないので、すべて手持ちの腕力手振れ補正による撮影です。
続いてこちらは相模湾方面です。前衛部にある山だけに、麓の平野部がすべて見えます。実に素晴らしい。
江の島大橋に照明が灯っているおかげで、江ノ島のシルエットも良くわかります。見たところ灯台はライトアップされているようですね。
続いてこちらは秦野盆地と小田原方面です。背後の真鶴半島と伊豆半島の姿も何となく見えます。
大山山頂に立つ阿夫利神社の奥の院です。この通り山頂の奥社は簡素なもので、中腹にある下社が本殿にあたります。
4.紅葉ライトアップを実施中の大山阿夫利神社
17時20分 ピークハンターとしての責務も十分に果たせたことであるし、そろそろ本題へ戻りましょう。ヘッドライトを点灯して下山を開始します。
大山の表参道コースは整備の行き届いた明瞭明快な道で、ヘッドライト下山であっても特段危険な箇所はありません。だからと言って、スマホのライトだけで歩こうとしてはいけませんよ?ちゃんと明るいライトを用意して来ましょう。
真っ暗であるし特に見所もないないので、道中の様子はスパッと省略します。
最後に長ーい石階段を下ればゴールです。結構急なので足元注意です。最後の最後で怪我をしてもつまらないですからね。
18時5分 大山阿夫利神社下社に下山しました。ここから先は、ケーブルカーで登って来ることのできる観光地の領域となります。
真っ暗な中を下山してきたのに、何故か標準コースタイムよりも速いペースでの到着となりました。理由は至って単純に、途中で写真を一切撮らなかったからでしょうね。
写真撮影と言う行為が、いかに歩行のペースを乱してしまっているのかが伺えますな。
大山阿夫利神社の下社拝殿です。現在の建物は近年になってから建て替えられたもので、鉄筋コンクリート製です。あまり風情はありませんな。
大山信仰は江戸時代になってから爆発的に人気が増大し、全国各地に大山への参拝を目的とした大山講が組織されました。コマ参道の周囲に今も数多く残る宿坊も、江戸時代に整備されたものです。
大山は江戸文化とは切っても切れない関係にある場所だと言えます。
浮世絵風の照明が並べられていました。昔は蝋燭で照らしていたのでしょうけれど、現在では中身はLED照明です。
LEDの方が合理的であると言うのはよくわかるのですが、蝋燭で照らされたぼんぼりとでは、色味が全く違うんですよね。こうしてまた一つ、風情が失われて行く・・・
拝殿正面の階段から、麓の町の夜景が良く見えました。何も無理をして山頂まで出向かずとも、こうして阿夫利神社からでも夜景見物はできます。
とは言っても見える範囲は限定的で、やはり山頂から眺めた時のようなスケール感はありません。
肝心の紅葉の方はと言うと、もうほぼ終わりかけで一部はの木は既に枯れていました。もっとも、始めから本命は阿夫利神社ではなくもっと下にある大山寺の方です。
ライトアップ期間中の週末は立錐の余地もない程に込み合うらしいのですが、目論見通りに空いていました。まあ、ケーブルカー運転の終了時刻が近いからだと言うのもあるかもしれませんが。
茶屋がまだ空いていたので、焼き団子と甘酒で冷えた体を温めました。お団子うまし。
5.紅葉が見頃の大山寺を見物しつつ下山
それではボチボチ、本日の本命である大山寺へと向かいましょう。大山寺へは下りのケーブルカーで途中下車して行くことも出来ますが、大した距離でもないので歩いて下ります。
ケーブルカーを使用せずに阿夫利神社へと至る登山ルートは、男坂と女坂の二つがあります。大山寺があるのは女坂ルートの途中です。
女坂ルートにはまさかの街灯がありました。街灯がある登山道だなんて、世界広しと言えど高尾山くらいなものだろうと思っていましたが、ここにもありましたか。
ケーブルカーの沿線では、七色に変化するライトアップが行われていました。そういえば、私はこの大山ケーブルカーには一度も乗ったことがないような気がします。なんだかんだで、いつも歩いて上り下りしていますからね。
18時40分 大山寺まで下ってきました。期待した通り、見事なまでに真っ赤に紅葉しております。
人が大すぎぃー。平日ですらこの有様となると、週末はどういうことになってしまうのでしょうか。
気味が悪いくらいに真っ赤に紅葉しています。これだけ混じりけなしの一色に染まるのは、楓の種類の違いなんですかね。
隙間から夜景もチラッと見えます。本当は三脚を立てて撮影したいところですが、こう人が多くてはどうにもなりませんな。
紅葉の大山寺と言えば大定番なのが、この階段を見上げるアングルです。ケーブルカー最終便の発車時刻が近づいてきたためか、周囲の人影は少なくなってきました。
もう少し粘れば、無人状態の光景を見ることも出来たのかもしれません。この照明が何時まで灯っているのかは不明ですが。
混雑をよそ眼に、私は最後までケーブカーには乗らずに下山します。照明もあるため、夜間でも特に危険はありません。
大山ケーブル駅まで下って来ました。人を満載した最終便がちょうどホームへと入ってくるところでした。
大半の店が既に店じまいをしている人気のないコマ参道を足早にと下り抜けます。なにをそんなに急いでいるのかと言うと、先ほどのケーブルカー最終便に乗っていた乗客と、帰りのバスで椅子取りゲームが発生するのではないかと予想したからです。
バス停が見えてきたところで、間の悪いことにちょうど目の前で伊勢原駅行きのバスが発車してしまうところでした。もっと急げばよかったか。
幸いにも増発便が出ており、さしたる待ち時間もなく次のバスがやって来ました。
その後は特に渋滞に巻き込まれることもなく順緒に流れて、定刻通りに伊勢原駅へと戻って来ました。そのまま小田急線に乗り込み、帰宅の途につきました。
かくして目論見通り、平日の大山訪問はさしたる混雑にも巻き込まれるなくスムーズに進行しました。
大山ライトアップは非常に人気の高いイベントなので、週末土日の訪問を考えているのであらば、相当な混雑に巻き込まれる事を覚悟する必要があります。特に阿夫利神社よりも大山寺の混雑の度合いがより大きいと言うことであるので、ケーブルカー営業時間の終わり際を狙うのも一つの手ではあると思います。
蓑毛かヤビツ峠スタートであらば、バスやケーブルカーの混雑とは無縁に訪れることが出来ます。山頂からの夜景見物と合わせて訪れてみては如何でしょうか。
なお、くれぐれも山をナメずに、ヘッドライトはしっかりと用意してから訪れましょう。
<コースタイム>
ヤビツ峠(15:40)-大山(16:50~17:20)-阿夫利神社下社(18:05)-大山寺(18:40)-大山ケーブルバス停(19:15)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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