山梨県小菅村と丹波山村の境界にまたがる大寺山(おおでらやま)から鹿倉山(ししくらやま)を歩いてきました。
大寺山の山頂には、インドにある寺院を模して作られたと言う巨大な仏舎利塔が建ち、奥多摩の様々の場所から見える、非常に目立った存在となっています。
前々からずっと気になっていた奥多摩の謎の白い建物の姿を、実際にこの目で確かめて来ました。
2018年1月13日に旅す。
今回は、奥多摩の山へ足を運んだことのある人ならば、誰しもが抱くであろう一つの疑問に迫ります。
その疑問とは、「あの白い建物は一体何?」です。
見た目の雰囲気からして、何らかの宗教施設であろうことは想像がつきますが、それにしてもかなりの大きさであるように見えます。
幸いなことに、インターネットが高度に発達した現代においては、疑問に感じたことは検索すれば大抵すぐに答えは見つかります。
と言うことで、あの白い建物の正体もすぐに判明しました。あの建物は奥多摩仏舎利塔と言い、日蓮系の宗教団体である日本山妙法寺が建てた物です。
記録によれば、インドに実在した寺院を模して作られ、高さは36メートルもあるのだとか。なんにせよ、相当大掛かりなものであるのは間違いありません。
これはもう実際に見に行くしか無いだとうという事で、張り切って奥多摩まで繰り出して来ました。
コース
深山橋バス停から仏舎利塔のある大寺山へ登頂。その後、稜線沿いに鹿倉山、大丹波峠をへて小菅の湯へと下る。全行程で5時間30分ほどのコースです。
本来であれば、大丹波峠から道の駅たばやまへ下山し、丹波山温泉のめこいの湯へ立ち寄るのが最もスマートなコース取りになろうかと思います。
ところが間の悪いことに、のめこいの湯は改装工事に伴い休館中でした。2018年3月15日よりリニューアルオープンするとの事です。
1.大寺山登山 アプローチ編 奥多摩駅からバスで深山橋へ~下車するバス停をお間違いなく
7時15分 JR立川駅
毎度お馴染みホリデー快速奥多摩号に乗って、奥多摩駅へと向かいます。
こんな寒い冬の最中であるので、ホリデー快速もさぞ空いているだろうと考えておりましたが、意外なことに座席がすべて埋まるくらいに盛況でした。世の中、物好きな人は結構いるものです。
立川から1時間以上をかけて、奥多摩駅に到着です。さっ寒い。奥多摩は平野部とはだいぶ体感温度が違います。
時刻表上には存在しない鴨沢行きの臨時便が停車していたので、そのまま乗り込みました。
バスもこの通り満員でした。
テントが入っていると思しき巨大ザックを抱えた集団は、雲取山へでも行くのでしょうかね。
9時2分 深山橋(みやまばし)バス停に到着です。途中に峰谷橋(みねだにばし)と言うよく似た名前のバス停があるので、間違えて降りてしまわないように気をつけましょう。
2.大寺山登山 登頂編 白き寺院の立つ、奥多摩湖傍らの頂へ
お目当ての仏舎利塔の先端が、バス停から早くも見えています。橋の袂で、軽く腹ごしらえと身支度を済ませて、9時15分に行動開始です。
まずは橋を渡って道なりに進みます。右の橋が深山橋で、正面に見えているのは三頭大橋です。
橋を渡ったところにある、陣屋という蕎麦屋が入り口の目印です。陣屋の前を右に入っていきます。
道標もありますが、進行方向から見て反対側を向いているので見落とすかも。
陣屋の前の脇道を奥へと進んでいきます。右側は崖で、その下は湖面です。
すぐに登山口が現れました。古タイヤを並べた階段とはまた珍しい。
奥多摩の山の多くがそうであるように、大寺山は登り始めからいきなりの急登です。正月休みの美食と怠惰ですっかり鈍りきっていた体には、少々応える道です。
序盤で一気に高度を稼ぎ、後半は比較的なだらかになります。
足元は一面の霜柱です。サクサクと小気味良い音を立てながら登ります。
このような平坦になっている場所では、一部踏み跡が不明瞭でした。尾根筋を外さないように歩いていれば、いつしか自然とルートに復帰できます。
眼下には留浦の浮き橋が見えます。大寺山の山頂があるのは、ちょうど鴨沢バス停の対岸付近の位置です。
痩せ尾根の通過します。このルートで唯一の、危険箇所と言えないことも無い場所です。写真ではわかり難いですが、道の両側とも大きく切れ落ちています。
10時15分 大寺山に登頂しました。
登頂するなり、目の前に仏舎利塔がその姿を現しました。これは思った以上の大きさです。事前情報も無しに訪れた人は、さぞ驚くのではないでしょうか。
3.奥多摩仏舎利塔の周囲を観察する
早速周囲を見て回りましょう。インド様式ということで、何処となくタージマハルを思わせるような外見をしています。
奥多摩仏舎利塔は昭和47年に作られたそうです。という事は既に40年以上に渡って、奥多摩の風景の一部であり続けたことになります。
案内板が設置されてました。転記するのは面倒なので、興味のある方は拡大して読んで下さい。(投げやり)
これは反対側から見たところです。完全にシンメトリックな形状をしており、どちらから見ても同じ姿をしています。
4方向に階段があり、それぞれに異なる意匠の仏像が設置されていました。
大仏さんもこの通り金ピカです。定期的にメンテナンスがされているのでしょうか。かなり綺麗な状態でした。
この四方の登り口を守っている小型のマーライオンのような生き物は、一体何なのでしょう。狛犬のようなものなのですかね。
写真だと少々高度感が伝わりにくいですが、この階段の上の空間は、落っこちたらタダでは済まないくらいの高さがあります。
屋根に上るための梯子が見えます。登りたい。すごく登りたい。こちとら煙と一緒で高いところが大好きなんだよ。
建物の裏手には、かつて建設作業時に使われたであろう資材が散乱していました。
これは発電機かな。置きっぱなしにしてあると言うことは、メンテナンス時に使用しているのでしょうか。
トイレもありました。禍々しい気配を感じたので、中は検めておりません。怖いもの見たさは時と場所選びます。
この白い建物は、あれほどいろんな場所から見えているのだから、ここからの展望はさぞかし良いのだろうと期待していました。しかしながら、周囲には思いのほか木が多く茂っており、展望はさほど好くありませんでした。
遠くからも見えていたのは、建物の上のほうだけだったと言う事です。屋根のてっぺんまで上がれるのであれば、周囲は360度のパノラマなのかもしれませんが。
僅かながらに開けている展望を眺めてみましょうか。こちらは三頭山(1,531m)です。
これは石尾根の鷹ノ巣山(1,737m)です。山頂部に剥げている部分があるので、遠くからでも比較的識別しやすい山です。
眼下には奥多摩湖が見えました。冒頭で紹介した写真のちょうど反対側から見たアングルです。
いやはやまさかこんな山奥に、これほどの建物があるとは思いませんでしたよ。良いものを見せてもらいました。
今日はもう仏舎利塔だけで満足感いっぱいです。このまま帰っても良いかなと言う気分になってしまいました。
でもまあせっかくなので、このまま予定通り鹿倉山まで行ってみることにしましょう。
4.登っても特に良いことは無い鹿倉山
冬枯れの道を進みます。ここから鹿倉山までの高低差はさほど大きくなく、緩やかな傾斜の道が続きます。
山と高原地図には記載がありませんが、鴨沢バス停へ降りられる道もあるようですな。留浦の浮橋の向こう側に出るのかな。
幅が広く歩きやすい尾根道が延々と続きます。鹿倉山までは結構な距離がありますが、まるで疲れません。
大マルト山なる聞いたことも無い山の名が手書きで記載されていました。黄色いペンキはシシクラと書いてあるように見えます。色々とカオスな道標ですね。
ひたすらキツかったと言う印象しか残っていませんが、地味山が好きだと言うなもの好きな方は是非どうぞ。
目指す鹿倉山が見えてきました。遠目からでも、登っても何も良いことが無さそうなオーラが出ているのがなんとなく分かってしまいます。
突如、地図には一切記載の無い林道に出ました。最近出来た道なのでしょうか。何せ古い地図しか持っていないで、最新版には記載されているのかもしれません。
伐採されて視界の開けた場所に出ました。ここでの作業を行うために延長した道なのかもしれません。
伐採されているおかげで、展望がすこぶる良好です。こちらは先ほども見えていた鷹ノ巣山です。
こちらは、もう旬が過ぎてしまった2017年の山、雲取山(2,017m)です。まあ、東京都最高峰という肩書きもあるので、この山の人気が陰ることは無いのでしょうけれど。
なんと言うか、非常にアツイ山行きでありました。
振り返ってみた光景。撮影時には全く気がついていませんでしたが、右下の方に仏舎利塔の先端が見えていました。
この後もしばらくずっと林道歩きが続きます。歩き易いですけれど、なんだか山登りをしている気分にはなれず、ちょっと残念な感じです。
林道を外れて尾根に取り付く分岐を見落としてしまったらしく、危うく鹿倉山を通り過ぎそうになりました。仕方が無いので、途中から道の無い斜面を直接よじ登りました。
登りきった所で、狙い済ましたかのように山頂標識の裏側に辿り着きました。
12時5分 鹿倉山に登頂しました。道標に書かれていた大マルト山と言うのが、結局何処のピークのことだったのかは分からず仕舞いのまま到着してしまいました。
山頂の様子。
三角点があるだけの、なにも無い場所です。展望も一切ありません。地味山を画に描いたがごときの空間です。
こちらが本来の道です。分岐の存在に全く気がつきませんでした。おそらく道標も何もなかったのでしょう。
5.大寺山登山 下山編 少し遠回りして小菅村へ下山
展望の無い場所に長居しても、得るものは何もありません。山頂の土を踏んだと言う事実だけ残して、早々と下山を開始します。
私よりも後ろを歩いていたはずのグループが、何故か前にいました。彼らもまた鹿倉山への分岐を見落とし、そのまま素通りしてしまったのでしょう。
眼下に丹波山村の集落が見えました。本当はあそこを目指したかったのですが、のめこいの湯が休館している以上は仕方がありません。
このまま峠までずっと林道が続くのかと思ったら、途中から登山道がありました。
この道は普段からあまり踏まれてはいないらしく、土の感触がフカフカしていました。まあ、極めて地味かつマイナーな場所ですからねえ。
前方に先ほどの林道が現れて、結局合流しました。少しだけショートカットが出来だけの道でした。
その後も単調な林道を延々と下り続けたところで、ようやく峠が見えてきました。
12時55分 大丹波峠に到着です。
丹波山村と小菅村の間に位置する峠です。現在の県道は、ここよりももう少し西寄りの地点を通っています。
丹波山村へ向かう道は、地図を見た限りでは谷筋であるようです。今日はこちらへは行きません。
前方の視界が開けました。ここからは一切見えませんが、前方の谷底にある小菅川に沿った場所に集落があります。
木材の集積場がありました。できれば花粉が舞い始める前に、杉の木をすべて伐採してくれませんかね。
ここでいつもの、ススキを見るとアップで写したくなる病を発祥し、しばし撮影タイムに突入しました。
しばしススキの穂と戯れつつ、県道との合流地点まで下って来ました。
ここからは舗装道路歩きです。この後はもう消化試合のようなものなので、駆け足気味のペースで一気に下ります。
何故か電線に、発砲注意とか言う物騒な文字が書かれています。そもそも、こんな県道の近くで猟をするものなんでしょうか。
小菅村へと向かっているのに、何故か反対方向ののめこいの湯の広告が張られていました。「だってお前、今営業して無いじゃん」と思わず独り言を漏らしかけました。
川久保バス停に到着です。ちなみにここへは、1日4便しかバスはやって来ません。ここで待っていても17時過ぎまでバスは来ないので、素直に小菅の湯を目指して歩きましょう。
道の駅小菅までは、2kmほどの道のりです。結構距離がありますね。
モダンなデザインの小菅村役場。この写真には写っていませんが、役場の前には小菅村で唯一の信号機があります。
小菅川の下流方向を望む。この先に奥多摩湖があります。奥多摩湖の先からが多摩川と呼ばれます。
道の駅小菅は、鹿倉山とは反対側の山腹にあります。つまり、登り返さないといけないということです。まさかここにきてまた登りとはね。
坂の上からは、小菅村の中心部を一望できました。谷間のほんの僅かな平地に沿うようにして、人家が立ち並んでいます。
13時50分 小菅の湯に到着です。かつては秘湯といわれたこの場所も、いまではすっかり観光地化しています。
入浴料は3時間で620円と、この手の施設としてはリーズナブルです。風呂も休憩スペースも広くてとても快適です。そうそう気軽に来れる場所ではありませんが、ここは非常にオススメです。
奥多摩駅へ行くバスは17時50分までありません。と言うことで、帰りは14時41分発の大月行きのバスに乗ります。
平成26年に松姫峠のバイパストンネルが開通したことにより運行が開始された、比較的新しい路線です。なお、鶴峠を越えて上野原駅まで行く路線は、冬季の間は運休となります。
これがその松姫トンネルです。全長3kmにも及ぶ長大なトンネルです。
山道を延々と50分ほど走って、ようやく猿橋駅に到着しました。運賃は1,000円オーバーです。需要の少なさと走行距離を考えると、こればっかりは仕方が無いですね。
青梅線の駅からスタートした旅が中央線の駅で終わると言うのは、なんとも不思議な気分です。
今回の山行きでは、奥多摩に初めて足を踏み入れたころからずっと気になっていた場所を、ようやく実際に自分の目で確かめることが出来ました。5時間にも満たないような短い行程でしたが、非常に満足しました。
大寺山は深山橋から標準コースタイム1時間30分ほどで辿り着ける場所であるので、比較的簡単に訪問することが可能です。
仏舎利塔の圧倒的スケール感は、実際に目の前に立ってみないことにはわかりません。興味をもたれた方は、是非とも実際に訪問してみることをオススメします。きっと、その大きさに圧倒されることでしょう。
なお温泉まで足を伸ばす場合は、帰りのバス時間が結構シビアであるので、事前によく時間を確認したうえで訪問してください。
<コースタイム>
深山橋(9:15)-大寺山(10:15~10:40)-鹿倉山(12:05~12:10)-大丹波峠(12:55)-小菅の湯(13:50)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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