越前岳 宝永噴火口を目前に望む、愛鷹山塊最高峰

愛鷹山 馬の背から見た越前岳
静岡県裾野市にある越前岳(えちぜんだけ)に登りました。
富士山の南側に隣接する愛鷹山塊の最高峰です。富士山の周辺にある山々の宿命で、この山もまた富士山の展望台としてのみ、その名を広く知られています。この山からは富士山のほかにも、相模湾や箱根の姿なども一望することが可能であり、こと展望に関しては恵まれすぎているともいえる立地にあります。
最高の展望を求めて、はるばる静岡県へと日帰りの遠征登山をして来ました。

2018年1月21日に旅す。

今回の行き先は静岡県にある愛鷹山(あしたかやま)です。
丹沢や箱根などから良く見える山であるので、眼にしたことのある人も多いのでは無いでしょうか。
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富士山の南隣に、裾野に半分埋まったような状態で存在しています。

非常に古い時代の火山であるため、侵食による開析が相当進んでいますが、かつては富士山とよく似たシルエットをした円錐形成層火山だったと考えられています。

富士山の南側に隣接している立地上、この山は秀逸な富士展望台として知られています。

晴れていれば、東京や山梨方向からでは見ることの出来ない、山腹に宝永噴火口が大きく口を開けた様を目の前にすることが出来ます。
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そう、晴れてさえいればね。

コース
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十里木(じゅうりき)バス停から愛鷹山地の最高峰である越前岳に登頂。

その後は黒岳方向へ下り、愛鷹登山口へ下山する。標準コースタイム5時間30分ほどの行程です。

 

1.愛鷹山登山 アプローチ編 JR東海はいい加減、御殿場線をICカードに対応させてくれませんかね

7時10分 小田急線 新松田駅
愛鷹山は公共交通機関によるアクセスは良好とは言いがたい場所にあります。まずはJR御殿場線で御殿場駅に向かいます。
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なお都内から御殿場駅へ行くには、小田急線から直通運転している特急あさぎりに乗るのが、最も速くて快適な方法です。

特急料金を払う気のない私は、当然ながら鈍行です。

松田駅のシンボルマニラ食堂の脇を通って、JR松田駅に向かいます。
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東海道新幹線以外はやる気ゼロのJR東海は、未だに御殿場線をスイカ・パスモ等のICカードに対応させていません。よって切符を購入する必要があります。御殿場駅までの運賃は500円です。
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21世紀に入ってから既に18年も経過したというのに、未だに切符の購入などという前時代的な行為を求められるとは!

地方のローカル鉄道ならばいざ知らず、ここは天下の首都圏900万パワーの神奈川県内ですよ?

ホームで震えながら待つことおよそ15分で、御殿場行きの電車がやって来ました。
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御殿場線の松田駅は、土を盛った土手の上にあります。おかげで吹っさらしで非常に寒いです。なお、ホームに待合室はありません。本当に新幹線以外のことなんてどうでも良いんですね、JR東海は。

松田駅から30分ほどで、終点の御殿場駅に到着です。
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駅前で、特急あさぎりに乗ってやってくるという、リッチメンな友人の到着を待ちます。
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合流した所で、8時30分発の十里木(じゅうりき)行きのバスに乗り込みます。あさぎりの御殿場到着は8時22分なので、バスの乗り換え時間は8分しかありません。すばやく行動しましょう。
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バス車内は満員とまではゆかずとも、そこそこの乗車率でした。
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御殿場線がICカードに対応していなかったせいで、改札で足止めを食らい、危うくこのバスに乗り込み損ねるところであった友人HI君は、先ほどからJR東海ディスりが止まりません。

バスの車窓から箱根の姿が一望できました。左端のほうに見えている金時山(1,212m)の姿が際だっています。
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こちらはこれから登る愛高山です。なんだかどんよりとした天気ですね。
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9時20分 十里木バス停に到着です。
十里木と言うのは別荘地のようですね。地図を見たときは住宅地なのかと思っていたら、イメージとはまるで違う山の中でした。
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2.愛鷹山登山 登頂編 十里木から愛鷹山地最高峰の越前岳へ

身支度を整えて、9時30分に行動開始です。まずは道なりに進みます。
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10分ほど歩いたところで、十里木高原の無料駐車場に到着しました。車でお越しの人は、ここからスタートできます。
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トイレもあります。この先には当分無いので、ここで済ませておきましょう。
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ここから登山道がスタートします。登り始めは階段です。
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霜柱が大いに育ってはおりますが、雪や凍結はありません。アイゼンなしで歩ける状態です。
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トレイルランナーのHI君は、相変わらずのハイペースでどんどん登ってゆきます。登り始めて早々に汗が噴出して来ました。
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10分ほど登ったところで、富士山の展望台があります。さて、本日の富士展望はと言うと・・・
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この通り全然駄目です。まるで狙い済ましたかのように、富士山だけがぐるりと雲に囲われています。
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まあ、ここまで来る過程で、既に見えないと言うのは判ってはいましたが。富士展望が売りの山で、富士山が見えなかったときのガッカリ感たるやね。

目指す越前岳のほうも、今にもガスに飲み込まれんとしているような状態です。
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一見すぐそこにあるように見えますが、実際に割りとすぐ着きます。

最初の階段地獄を登りきると、しばらくの間は馬の背と呼ばれる平坦な道が続きます。
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ベンチのある休憩ポイントに出ました。馬の背見晴台と呼ばれる場所です。
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山頂までの距離で言うと、ここがほぼ中間地点です。所要時間を見てわかる通り、ここから先は道の斜度が増します。
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富士山は相変わらずお隠れになったままです。
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ここでベンチで休憩していた下山途中のおじさんから、山頂の霧氷が見事だったと言う情報を得ました。

溶け出す前に辿り着くべく、ここからペースを上げて行きます。

そこまで極端な急登ではありませんが、そこそこの傾斜のある道です。
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馬の背展望台を出てから山頂に至るまでの道のりは、最初から最後までずっとこんな感じの光景です。
全く代わり映えのしないほぼ等間隔の等高線を、黙々と登ってゆきます。
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途中に平坦地という、なんの捻りも無い名称の休憩ポイントがあります。
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平坦地の様子。その名の通り平坦な場所です。それ以外にコメントできることはありません。
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代わり映えしない光景はなおも続く。
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勢子辻分岐まで登ってきました。これで愛鷹山の主稜線に乗りました。山頂まではもう一息です。
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山頂までのラストスパートです。
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なにやら雪の様なものが頭上から舞って来るなあと思っていたら、霧氷が剥がれ落ちたものでした。
どうやら、溶けきる前に間に合ったようです。
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山頂が見えました。
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11時10分 越前岳に登頂。
登山口から1時間30分ほどで、割とあっさり到着しました。
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何故静岡県に越前(現福井県)があるのかは誰もが疑問に思うところですが、名前の由来はイマイチ良くわかりません。

山頂の様子。
そこその広さがあり、ベンチも整備されています。今日は地面が凍っていましたが、もう少し暖かいと泥濘が惨そうです。
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急いだ甲斐あって、見事な霧氷を見ることが出来ました。
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霧氷を見かけたときは「むっひょーう!」と叫ぶのがお作法です。恥ずかしがらずに、腹の底から力いっぱい叫びましょう。ええ、私はちゃんと叫びましたよ。
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山頂からは駿河湾を眼下に一望できます。今日は霞んでいてちょっと残念な感じでしたが。
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こちらは位牌岳へと続く稜線です。登山道の崩壊が進んでおり、現在通行止めとなっています。通り抜けるにはロープによる確保が必須で、私のような一般登山者には縁の無いルートです。
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山頂に置いてあったお地蔵さん。
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3.越前岳から黒岳へ~近すぎちゃってどうしよう

立ち止まって居たら深々と体が冷えてきました。寒くてしょうがないので、短い滞在時間で山頂を後にします。
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右方向に鋸岳の稜線が見えます。これは確かに、一般登山者が通行できそうな道ではありませんな。
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下山開始から15分ほどで、謎の脚立?が置かれた場所に出ました。
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富士見台と呼ばれる場所です。50銭札に描かれていた富士山の撮影地であった場所です。
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見本の写真が、案内板状に掲載されていました。50銭札は流石に古すぎて、現物を見たことのある人は極めて稀でしょうね。
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さあこれが、50銭札に描かれていたと言う富士山の姿です。1円玉の半分の価値しかないと言うことだけあって、なんともみすぼらしい光景ですな。あるいはただ単に、雲に隠れているからなだけかもしれませんが。。180121愛鷹山_048

ほんの一瞬だけでしたが、雲が晴れて頭を僅かに覗かせました。お目当てだった、宝永噴火口の大穴は結局見えずじまいです。ガッカリ。
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下山を続行します。自衛隊の富士山演習場からのものと思われる発砲音が、断続的に響き渡ってきます。
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丹沢の山を歩いている際にもしばし聞こえることがありますが、ここは距離が近いだけあって、聞こえる音の大きさがまるで違います。

大崩落地の脇を通過します。
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愛鷹山は、今からおよそ四十万年前の噴火で出来たという、相当古い時代の火山です。
長年の侵食による開析が進み、このように至るところが大きく崩壊しています。
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足元は断崖絶壁。
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鋸岳展望台と呼ばれる場所まで下って来ました。所要時間で言うなら、本日の下山行程のちょうど半分に相当する場所です。
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確かに鋸状をしています。ガスが上がってきてあまりハッキリとは見えませんが。
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前方にこんもりとした黒岳の姿が見えてきました。
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12時45分 富士見峠に到着です。
その名に反して、富士山の姿はおろか周囲の展望は全くありません。越前岳と黒岳の鞍部にあたる場所です。
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時間に余裕があるので、黒岳に寄り道していきます。なにせ、あまり早く下山してもバスが無いのでね。
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ここにも富士山展望台がありました。
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まあ、見えないんですけどね。
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眼下に「近すぎちゃってどうしよう?」のCMでお馴染みの、富士サファリパークがありました。
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ところで、ライオンと言うのはアフリカの生き物ですよね。彼らにとって、日本の冬の冷え込みと言うのは相当厳しいのではないでしょうか。一体どうやって過ごしているのでしょう。

コタツで丸くなっているのかな。

黒岳山頂付近には、天然杉の巨木が多数そびえ立っています。
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天然記念物にも指定されています。平成27年指定とあるので、結構最近の出来事です。
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程なく黒岳の山頂が見えてきました。
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13時10分 黒岳に登頂です。
日本全国津々浦々で見かける名前の山です。黒岳の名を冠する山には展望が無いことが多いのですが、ここは比較的良好な展望が得られます。
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山頂の様子。
平坦で非常に広々とした山頂部です。ベンチ等も完備しており休憩向きな場所です。
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相変わらず富士山本体は雲に覆われており、裾野の広々とした原っぱだけが良く見えました。
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自衛隊の訓練射撃音が、絶え間なく鳴り響きます。この音でライオンがノイローゼになったりはしないんですかね。演習場が近すぎちゃってどうしよう。

4.愛鷹山登山 下山編 黒岳から愛鷹山登山口へ

13時40分、下山を開始します。
登っている時にはあまり気にしていませんでしたが、黒岳と言うのは結構な急登です。
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富士山の見えない富士見峠まで戻って来ました。ここから、山神社方面に向かって下山します。
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こちらも割りと急坂です。靴のソールが磨り減りすぎて、グリップ力が少々心もとない状態にある私には、思わず肝を冷やすような斜度です。
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なにやら建物の屋根が見えてきました。
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富士見峠の直下に立つあしたか山荘です。無人の避難小屋として開放されています。
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せっかくなので中を偵察しました。中はとても綺麗に整備されていました。毛布まで完備しています。
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囲炉裏もありました。
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一応トイレもありますが、外観からして禍々しい気配しか感じられなかったので、中は検めておりません。
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横から見ると、すぐ下まで崩落が迫っていました。この小屋の前途は、最早風前の灯火といったところでしょうか。
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下山を続けます。道中には鉄のハシゴがあったり、
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崖のフチを歩く場所があったりします。
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危険とまでは言いませんが、気の抜けない道ではあります。

標高が下がってきたところで、道はいつしか苔生す谷筋になりました。
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苔と言うのは、何故こんなにも見るものの心を癒すのでしょうか。
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杉の植林帯に入ったら、ゴールはもう間近です。
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ただの切り株ですら、まるで芸術品のように魅せる苔マジック。
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14時30分 山神社まで下ってきました。自家用車がある人は、ここまで車で入れます。
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これが山神社ですかね。
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山神社からバス停までは、徒歩20分ほどの林道歩きです。
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今まさに花粉を飛ばさんとしている杉の木。こんな物騒なものはすべて伐採して、割り箸にでもしてやればいいんですよ。
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そんな花粉症患者達の怨嗟の声が届いたからなのかはわかりませんが、この杉林は今まさに伐採中でした。
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積みあがった丸太の山を見ると、童心に還ってよじ登ってみたくなりませんか。私はなります。もう分別ある大人なので、実際に登ったりはしませんが。。
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ゴールのバス停が見えてきました。
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14時55分 愛鷹登山口バス停に到着です。
行動開始から5時間20分ほどの、程よい行程の山歩きでありました。
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15時14分発のバスに乗って帰還します。
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この路線は運行本数が非常に少ないので、事前に良く時間を確認してから訪れた方が良いです。

愛鷹登山口バス停の周囲には、風雨を防ぐスペースはおろか、自動販売機すらありません。ここで長く待つことになると、結構悲惨です。

あれほど頑なに雲から出てこようとしなかった富士山が、この時間になってから今更姿を現しました。
なんとも腹立たしい限りです。
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再びICカードに対応していない事をこき下ろしつつ、御殿場線に乗って無事帰還です。
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愛鷹山訪問記は、深い敗北感とともに幕を閉じました。
やはり、富士展望が売りの山で富士山が空振りだった時のガッカリ感だけは、どうしよもありません。晴天の日の再訪を誓った山行きでした。
愛鷹山地は最高峰の越前岳のほかにも、位牌山等のいくつかのピークをもつ懐の深い山域です。そういう意味では、たった一度の訪問では、この山の魅力を味わい尽くすことなど到底出来はしません。
丹沢の山を歩いていて、遠くに見える富士山に隣接したこの山に興味を持った人は、是非一度実際に訪問してみることをオススメ致します。晴れてさえいれば、きっと素晴らしい展望に巡り合うことが出来ることでしょう。晴れてさえいれば。

<コースタイム>
十里木BS(9:30)-十里木高原登山口(9:40)-馬の背展望台(10:10)-勢子辻分岐(11:00)-越前岳(11:10~11:30)-富士見台(11:45)-富士見峠(12:45)-黒岳(13:10~13:40)-富士見峠(13:50)-山神社(14:30)-愛鷹登山口BS(14:55)

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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