雲竜渓谷 女峰山の懐深くに抱かれた、氷瀑が立ち並ぶ氷の神殿

220122雲竜渓谷-001
栃木県日光市にある雲竜渓谷(うんりゅうけいこく)に行って来ました。
日光市街地のすぐ裏手に立つ赤薙山と女峰山の間を流れる、稲荷川源流にある渓谷です。浸食が進み急峻な地形を成す渓谷には豊富な湧水が見られ、冬季になると凍結して氷の大伽藍とでもいうべき氷柱群が形成されます。かつては知る人ぞ知る秘境めいた場所でありましたが、近年ではその存在が広く認知され、多くの人が見物に訪れれる人気のハイキングスポットとなっています。
例年よりも少し早くに見頃を迎えた氷瀑を見物すべく、極寒の日光へと繰り出して来ました。

2022年1月22日に旅す。

日光市街地を見下ろす女峰山は、今からおよそ35万年前ごろから活動を始めた古い時代の火山です。
日光市街地から見た女峰山
すでに活動を停止して久しく、現在では浸食による解析が進み、崩落した噴火口跡を囲むように女峰山と赤薙山と言う二つのピークが馬蹄形に向かい合っています。

雲竜渓谷は、この女峰山と赤薙山の間に抱かれるようにして形成された深く急峻な渓谷です。源頭部は落差100メートルに近い絶壁に取り囲まれています。
雲竜渓谷入口

渓谷内には岸壁から染み出す多くの清水があり、冬になるとそれらは凍結して巨大な氷瀑群が出現します。例年では1月の中旬ごろから育ち始めて、2月の上旬ごろに見頃を迎えます。
雲竜渓谷の氷壁
寒冬となった2022年の冬では、例年よりもずっと早くに見頃を迎えました。

崩落が進む雲竜渓谷を源頭とする稲荷川は、江戸時代に日光に大規模な集落が形成されて以降、幾度となく大規模な土砂災害を引き起こしてきました。

そうした土砂災害を防ぐため、現在では稲荷川沿いに幾重にも砂防堰堤が築かれており、その工事用の道が渓谷の最深部近くにまで伸びています。
稲荷川第10上流砂防堰堤
そのおかげで、雲竜渓谷は相当山深い場所にありながらも、作業道経由で比較的容易にアクセスすることが可能です。

今回は神橋バス停から延々徒歩でアプローチし、名高き氷の神殿を見物して来ました。

コース
神橋バス停から雲竜渓谷のコースマップ
雲竜渓谷へは、車で入ることのできるゲートまで、マイカーかタクシーによりアプローチするのが最も一般的です。

車も買えない貧乏人環境意識高い系ハイカーである私は、公共交通機関の利用を前提としたアプローチをとるべく、神橋バス停から往復しました。

往復でおおよそ18kmほどの行程です。

1.雲竜渓谷 アプローチ編 東武特急で行く日光への旅路

6時30分 東武線 北千住駅
日光方面へお出かけの際の玄関口である、北千住駅へとやってまいりました。以前はよく日光まで鈍行列車で出かけていたものですが、最近はすっかり贅沢を覚えてしまいもっぱら特急を利用しています。
北千住駅の東武線特急ホーム

東武の特急は全席指定で自由席はありません。切符は特急専用ホームの入り口にある券売機で買えます。
東武特急けごん1号の切符

6時42分発の東武日光行きの特急けごん1号に乗車します。ゴールデンウィークや紅葉シーズン中の週末であれば事前に席を押さえておいた方が無難ですが、流石に真冬ともなると当日の朝に買い求めても満席で乗り損なう事はそうそうありません。
北千住駅に入線するリバティけごん1号

快適な特急列車のシートから夜明け前の荒川を眺めているうちに、いつの間にかうつらうつらと意識が飛びました。
東武線の車窓から見た荒川

終点に近づいてきたところで、車窓に白く染まった女峰山の姿が見えて来ました。右に見ているピークが赤薙山で、左のピークが女峰山の山頂です。目指す雲竜渓谷は、この二つのピークの間に挟まれた場所にあります。
東武線の車窓から見た女峰山

8時25分 東武日光駅に到着しました。暖房の効いた車内から降りるなり、身を切るように冷たい空気が出迎えてくれました。
東武日光駅のホーム
それはそうと、けごん車内の暖房はいくらなんでも効き過ぎじゃありませんかね。じっとりと汗をかいてしまいましたよ。

東武日光駅の構内に、いちご王国の王様がいらっしゃいました。無駄にクォリティが高いですね。ツヤツヤしていておいしそう。
いちご王のモニュメント

雲竜渓谷まで出向くまでもなく、駅前の噴水が既に氷瀑化していました。日光の冬の冷え込み厳しさが伺えます。
凍結した東部日光駅前の噴水

2.神橋バス停から歩いて雲竜渓谷の入り口を目指す

肝心の駅からの雲竜渓谷までのアプローチですが、まず雲竜渓谷入口の近くまで行ってくれる路線バスは存在しません。そのため、入口のゲートまではタクシーの利用が最も一般的です。
東武日光駅のタクシー乗り場
駅からはだいたい3,000円ほどで行けるそうです。ただし一つだけ注意事項があります。

東武日光駅の周辺では複数のタクシー会社が営業していますが、そのうち入り口のゲートまで行ってくれるのは三英自動車と言う会社の車両だけです。

チェーンの着用が必須となる林道を通るため、利用の際には事前に予約しておいた方がスムーズです。当日現地に着いてから依頼すると、チェーン着用のために一度営業所まで戻るため余計な待ち時間が発生します。

と散々説明していてから言うのもなんですが、私は歩いて行きます。例のごとく雲竜渓谷へ行こうと思い立ったのが前日の夜中であったため、予約の電話を入れる時間は無かったのです。
東武日光駅の駅前

始めから歩いて行くと決めてはいたものの、一応行けるところまではバスで行きましょう。
220122雲竜渓谷-015
雲竜渓谷入口に最も近いバス停はホテル清晃苑前バス停です。・・・最寄りとは言っても距離的にはかなり離れていますが。通常はこの世界遺産巡りバスで行くことが出来ます。

しかし、冬期の間は渋滞緩和のために世界遺産めぐりバスの運行経路が変更されており、ホテル清晃苑前バス停の前は通らないルートに変わっていました。そのため、今回このバスはアプローチに使えません。

となると、最寄りのバス停は神橋バス停と言うことになります。と言う事で、日光湯元行きのバスに乗車します。
東武日光駅の日光湯元行きバス乗り場

8時47分 神橋バス停に到着しました。大した距離は短縮できませんでしたが、駅前から直接歩いて行くより多少は下道歩きの行程が短縮されました。
神橋バス停

こちらがその神橋です。「しんきょう」と読みます。現在架かっているこの橋は後年に復元されたものですが、元の橋は江戸時代からこの場所にあったと言う大変歴史のある橋です。
日光 神橋

雲竜渓谷とは全くもって関係のない日光の観光案内で、露骨な記事の尺稼ぎをするのは程々にして、そろそろ先へ進みましょう。大谷川を渡ったら、正面の階段を登って行きます。
220122雲竜渓谷-019

いくつかの寺院が立ち並ぶ住宅地の小道を進みます。歴史ある寺町らしく、どこか風情のある街並みです。
220122雲竜渓谷-020

ホテル清晃苑(せいこうえん)まで歩いて来ました。日光東照宮のすぐ裏手に位置している宿泊施設です。
220122雲竜渓谷-021

本来はこのバス亭が雲竜渓谷入口に最も近いバス停と言うことになりますが、前述の通り現在、世界遺産めぐりバスはここを通りません。
ホテル清晃苑前バス停

見方によっては、ここでようやくスタート地点に立ったったとも言えます。それでは改めて、本日の行動スタートです。
220122雲竜渓谷-023

程なく、稲荷川沿いの砂防工事用の道と合流します。ここから先はずっと、この作業道に沿って進んでいきます。
220122雲竜渓谷-024

正面に見えているのは赤薙山です。見ての通りまだまだ結構な距離があります。この先はしばらく、ひたすら長ーい舗装道路歩きが続きますので覚悟してください。
220122雲竜渓谷-025
・・・始めからタクシーを使えば覚悟も何も必要ないわけなのですが、しかしこれでよいのです。ここはもともと、そういうブログなのですから。

稲荷川沿いの向かいに見えているこの山は、外山(880m)です。東照宮の鬼門にあたる位置にあることから、山頂に守護のために毘沙門天が祀られています。
220122雲竜渓谷-026

トボトボと道を歩いていると、背後から颯爽とタクシーに追い抜かれました。・・・別にちっとも羨ましくなんてないですよ?
220122雲竜渓谷-027
三英自動車の車両ではなかったので、ゲートまでは行かずにその手間の滝尾神社まで行くのでしょう。

道路脇の水路を流れる水が凍結し、見事な氷の芸術を作りだしていました。麓の時点で既にこれだ冷えているのだから、山の上の方では大いに期待が出来そうです。
220122雲竜渓谷-028

この道はもともとが砂防工事用の道であるので、こうして結構な頻度で工事車両が通行します。くれぐれも、通行の邪魔にならないよう要注意です。
220122雲竜渓谷-029

一度渓谷の中入ると、携帯の電波は一切届かなくなります。スマートフォンでルートを確認しながら歩きたいと言う人は、事前にダウンロードしてオフラインでも見れる状態にしておきましょう。
220122雲竜渓谷-030

路肩に駐車した車の姿がチラホラと散見されるようになってきました。ゲート前の駐車スペースは、この時間には既に満車状態だと言う事ですね。結構な数の入山者がいるようです。
220122雲竜渓谷-031

10時10分 ゲートまで歩いて来ました。車が入れるのはここまでとなります。案の定、さほど広いとは言えない駐車スペースは、既に満車状態になっていました。
雲竜渓谷入口のゲート

3.日本一の大きさの砂防ダムを眺めながら進む、稲荷川沿いの道

ゲートから先は、稲荷川沿いに並ぶ砂防堰堤群を望みながら歩む川沿いの道となります。
220122雲竜渓谷-033

登山届の投函ポストもあります。筆記用具も備え付けれていますが、肝心の筆記スペースが雪に埋もれていました。
220122雲竜渓谷-034

ゲートを通り抜けて、川沿いに向かって下って行きます。今は雪に埋もれているのでよくわかりませんが、ここはまだ舗装されている道であるようです。
220122雲竜渓谷-035

巨大な砂防堰堤が現れました。稲荷川第10上流砂防堰堤です。この堰堤は道を兼ねており、上を渡って対岸へ移動します。
稲荷川第10上流砂防堰堤
稲荷川第10上流砂防堰堤の上路

上流方向を望むと、赤薙山の足元へ向かってずっと谷が続いているのが見えます。この先はこの谷沿いに進みます。
雲竜渓谷から見上げる赤薙山

背後に見えているのは鳴虫山(1,104m)です。東武日光駅のすぐ裏手にあり、手軽に登れる人気の里山です。ツツジの名所なので、春の訪問がオススメです。
雲竜渓谷から見た泣き虫山

河原よりは少し高い位置をトラバースしながら進みます。今のところは急な場所もなく、アイゼンなしで歩けます。
220122雲竜渓谷-039

源頭部が大規模な崩落地となっている稲荷川は、古くから暴れ川として悪名高い急流河川です。過去に幾多の土砂災害を引き起こして来ました。
220122雲竜渓谷-040
直近では、昭和41年に発生した台風26号により、麓の日光の市街地にまで大量の土砂が流れ込む大氾濫が発生しています。そうした土砂災害に備えるべく、川沿いにはこうして多くの巨大な砂防堰堤が築かれています。

前方に見上げる高さの巨大砂防ダムがあらわれました。砂防ダムとしては日本一の大きさを持つ日向砂防ダムです。堤体の高さは46メートルあります。
日向砂防ダム

このダムは文字通り壁となって立ちはだかっており、道は右側の斜面に迂回しながら登ります。日本一の高さのダムを乗り越えるというだけの事もあってか、かなり急な登りです。安全のための虎ロープも張ってありました。
日向砂防ダムの迂回路

上まで登ると、思わず腰が引けるような高さです。特に柵などの防護処置は施されていないので、くれぐれも足元にはご注意ください。
日向砂防ダムの堤体上面

ダムの上部には、堆積した土砂が溜まった平原が広がっていました。一体どれほどの量の土砂がここに溜まっているのか、皆目見当もつかないような広大な空間です。
日向砂防ダムに堆積した土砂 width=

側面は法面でガッチガチに補強されていました。相当なお金がかかっていそうに見えます。ここからは、それこそ止めどもなく土砂が流出し続けていたのでしょう。
220122雲竜渓谷-045

遥か頭上の斜面までもが補強されています。一体どうやってあの高さまでコンクリートを運び上げたのでしょうか。まさかヘリで運んだのか。
220122雲竜渓谷-046

だだっぴろい川幅とは裏腹に、水流は中央付近にチョロチョロとした程度しかなく、一跨ぎに渡渉します。恐らく稲荷川の水流の大半は、この堆積した土砂の下を伏流しているものと思われます。
220122雲竜渓谷-047

広い河原で迷わないように、目印のマーキングが施されてました。ここまで、進行方向から見て川の右側を歩いて来ましたが、この砂防ダムの上で左側へ移ります。
220122雲竜渓谷-048

対岸に渡ると再び工事用道路と合流しました。ここからはしばしの間、単調な道となります。
220122雲竜渓谷-049

11時35分 洞門岩と呼ばれる地点まで歩いてきました。ここから先はルートが二手に分かれます。
雲竜渓谷 洞門岩分岐
道なりに左に進むのが林道コースです。ジグザグと九十九折れを繰り返しながら尾根上を行く道で、歩行距離的には遠回りになりますが、危険個所のない安心安全な道です。

右に進むと川沿いのコースです。こちらに進む方が最短ルートとなりますが、何度か渡渉があり、やや道が不明瞭な箇所もあります

ここは当然、川沿いルート一択です。この先はしっかりと山道となるので、軽アイゼンを装着して進入します。
220122雲竜渓谷-051

あれだけ広かった谷も何時しかすっかりと幅が狭まり、両側の崖が切り立ってまいりました。雲流渓谷の中心部に近づいて来ましたよ。
220122雲竜渓谷-052

堰堤の手前で対岸へ渡渉します。大した水量ではありませんが、ストックを使用した方が安心感があります。
220122雲竜渓谷-053
ここで転んで全身を濡らしてしまいでもしようものなら、ゲートまで帰り着くまでに凍死してしまう可能性も十分にあり得ますので、注意を要します。

この片側だけが開いているような堰堤の構造には、どんな意味があるのでしょうか。谷が大きくカーブしているので、開いている側には土砂は流れてこないいのだろうか。
220122雲竜渓谷-054

この堰堤を越えてすぐの地点が、道迷いが多いと言われているポイントです。谷沿いには進まずに、その手前で右側のガレ場を登ります。
雲竜渓谷の道迷いポイント
仮に間違えて真っすぐに進んでも、ゴルジュ帯に突入してすぐに進めなくなるので、間違いに気が付かないまま奥まで行ってしまうと言う事態にはなりません。

少々わかりにくいですが、しっかりと道筋はあります。目印のピンクリボンもあるので、よく観察して歩きましょう。
220122雲竜渓谷-056

ゴルジュ帯を迂回するようにトラバースに移ります。左側は切れ落ちているので、ここは慎重に行きましょう。
220122雲竜渓谷-057

トラバース地帯を突破すると、再び渡渉です。ここも降雪直後などで先行者のトレースが無い状態だと、少々分かり難いポイントです。
220122雲竜渓谷-058

左岸に移ったら、川沿いには進まずにこの正面の急斜面をよじ登ります。取り付きの目印はあるので、見落とさないようによく観察してください。
220122雲竜渓谷-059

ザレ気味の急斜面を強引な感じに登りきると、林道に飛び出しました。あとは道になりに進むだけです。
220122雲竜渓谷-060

12時 雲竜渓谷入口に到着しました。時刻が正午を迎えたところで、ようやく目的地の入り口へと辿り着きました。やけに長いアプローチでありましたな。
220122雲竜渓谷-061

4.雲竜渓谷の奥地に立つ氷の宮殿と雲竜瀑

雲流渓谷の最深部が姿を現しました。雲竜渓谷があるのは、もともとは女峰山のカルデラ火口の底だった場所です。稲荷川の長年の浸食により、現在は南東部が切れた馬蹄形状態となっています。
雲竜渓谷入口
現在地は、その切れ目部分の入り口にあたる場所です。

雪の下には階段が埋まっているのであろう急坂を下り、河原へ降ります。
雲竜渓谷最深部の入り口

さあいよいよ、雲竜渓谷の最深部へと足を踏み入れて行きます。あまり陽の光が差し込まない谷底は、まるで冷凍庫の中に居るかのようなような寒さです。
220122雲竜渓谷-063

見上げる高さの氷の壁が現れました。真下から見上げると、かなりの迫力があります。
雲竜渓谷の氷壁

氷壁に囲まれた氷の回廊が続く様は、まさに氷の神殿です。何度か渡渉があるので、あまり頭上にばかり気を取られずに、足元に集中して歩いてください。
雲竜渓谷の氷壁

ここではもともと、岩の表面を濡らす程度の清水が常時染み出しています。その清水が時間をかけて少しずつ凍結し、このような氷の壁を作り出しています。
雲竜渓谷 氷壁の回廊

重さはいったい何トンあるのだろうと言うような、巨大なツララが垂れ下がっていました。稀に落ちてくこともあると言う事で、雲竜渓谷へ訪問の際には、ヘルメットの着用が推奨されています。
220122雲竜渓谷-066
かく言う私は着用していません。理由は極めて単純に、こんなものが落ちてきたら、ヘルメットを被ったくらいでは防げないでしょうと思っているからです。

この場所で確実に安全を確保する方法は一つしかありません。それは絶対にツララの下には立たないことです。

氷壁に囲まれた狭窄部を抜けると、開けた空間に飛び出しました。冬の雲竜渓谷の象徴とでも言うべき、燕岩の氷柱です。
雲竜渓谷 
雑誌などのメディアで何度も目にしていた光景であるためか、初めて訪れた場所であるにもかかわらず、どこか既視感のある光景です。

この氷瀑を下から見上げれば、さぞや迫力のある写真を撮れることでしょう。実際に下に入り込んで撮影している人も結構いました。
雲竜渓谷の氷瀑
前述の通り、もし落下してきたらヘルメットでどうにかなるような重さではない代物です。普通に考えれば、ツララの下には立たない方が無難でしょう。

どうしてもと言う人は、自撮り棒などを使って撮影するのが良いかと思います。

時間的に完全に日影になってしまっていました。もう少し早時間帯だと、この谷底まで陽の光が届くタイミングがあるようです。だからタクシーに乗れば良かったのに!
220122雲竜渓谷-069

雲竜渓谷は、アイスクライミングのゲレンデとしても有名な場所です。これに登ろうと言うんですかい。なんと言うもの好きな人達なのでしょう。
220122雲竜渓谷-070

この雲竜渓谷を巡るハイキングコースは、始めから山頂は目指さないコースであるわけですが、一応は終点と言える場所があります。それがこの見上げる氷の滝。その名も雲竜瀑です。
凍結した雲竜爆

燕岩前の広場から雲竜瀑の真下まで行くには、この実に危なっかししいトラバースの急斜面を登る必要があります。
220122雲竜渓谷-072
入り口のゲートからから燕岩までの道は軽アイゼンやチェーンスパイクでも十分でしたが、この最後の登りだけは前爪のあるアイゼンを履いたほうが安全です。

などと偉そうに言っておきながらなんですが、当の私は6本爪の軽アイゼンしか用意してきておりません。と言う事で、十分に注意しながら行ってみよう。

背後を振り返るとこの高度感です。登りはまだしも、帰りはおっかなそうですな。
220122雲竜渓谷-073

恐怖のトラバース地帯を抜けると、雲竜瀑を見下ろす場所に出てきました。
220122雲竜渓谷-074

12時45分 雲竜瀑に到着しました。これは凄い、完全にコチンコチンに凍結して氷瀑化しています。
雲竜渓谷 雲竜瀑

雲竜瀑の落差160メートルほどあります。途中でねじれている滝なので、下からだと上段の部分は見えません。
雲竜渓谷 雲竜瀑

良く見ると、アイスクライミング中の人が張り付いていました。クライミングの対象として見た時には、凍っている冬の方がかえって登りやすかったりするのでしょうかね。
雲竜瀑のアイスクライミング

雲竜渓谷の氷瀑の見頃は、例年ですと2月の下旬ごろまでです。3月に入ると崩れ始めるので、近づくのは大変危険です。
雲竜渓谷 氷瀑化した雲竜瀑

雲竜渓谷はまだ先へと続いていますが、この先はさらに険しさを増すため、安全に歩けるのは雲竜瀑までとなります。と言う事で、ここが本日のゴール地点です。
220122雲竜渓谷-079

5.雲竜渓谷 下山編 もと来た道を延々と引き返す~ピストンとはそういうものです

13時10分 氷の宮殿を十分に堪能して満足しました。動かずにいると寒くてしょうがないので、そろそろ撤収に移りましょう。
220122雲竜渓谷-080

思った通りに、下りはかなりおっかなかったです。ここだけはピッケルがあると安心感があると思います。・・・私は持ってきていませんけれどね。
220122雲竜渓谷-081

燕岩に戻ってくる頃には、すっかりと周囲の人影が少なくなっていました。時刻はまだ13時台なのに、谷底はすっかり薄暗くなっていました。
220122雲竜渓谷-082

ここでもアイスクライミングに興じる人の姿がありました。こうして人の大きさと比べると、氷瀑のスケール感が良くわかるのではないでしょうか。
220122雲竜渓谷-083

燕岩はこれで見納めです。次回にまた訪問する機会があったら、その時はちゃんとタクシーを予約して、もっと明るい時間の内に辿り着けるようにしましょう。
雲竜渓谷 燕岩の氷瀑

さあ、帰りましょう。基本的に一本道なので、元来た道を忠実に引き返します。
220122雲竜渓谷-085

往路では意識していませんでしたが、スノーブリッジになっている場所もありました。不意に踏み抜きはしないかとヒヤヒヤします。
220122雲竜渓谷-086

入口まで戻って来ました。狭い谷底から出てくれば、まだしっかりと陽のある時間帯です。
220122雲竜渓谷-087

帰りは安心安全だと言う林道コース経由にしようかと逡巡するも、結局は往路と同じ川沿いコースを下りました。地図を見る限り、どう見てもこちらの方が距離が短いですからね。
220122雲竜渓谷-088

洞門岩を過ぎればもう注意を要する場所はありません。足早に下山と言う作業に取り組みます。
220122雲竜渓谷-089

気温の上昇に伴い、下の方では雪が溶けて泥濘状態になっていました。
220122雲竜渓谷-090

しかしこの道はひたすら長い。「こんなに歩いたっけか」と、いつものようにボヤキながら下ります。
220122雲竜渓谷-091

14時55分 ゲートまで戻ってきました。車でお越しの人は、達成感に満たされる瞬間であることでしょう。ええ、私はここからまだまだ歩くんですけれどね。
雲竜渓谷のゲート

行きはタクシーで来たと言いう人も、ゲート前では電波が入らないで、帰路は歩くしかないのではないでしょうか。それとも、あらかじめ迎えの時間を決めて頼んでおくものなのでしょうか。
220122雲竜渓谷-093
まあどちらにしろ、始めから歩く気が満々の私には関係の無いことです。

その後も脇目を触れずに歩き続け、日光の市街地まで戻って来ました。時間があったら帰りがけに東照宮でお参りでもしようかと思っていましたが、15時30分に閉門でした。意外と早くに閉まってしまうものなんですね。
220122雲竜渓谷-094

16時5分 神橋バス停へ戻って来ました。バスの待ち時間が長いようであれば、このまま駅まで歩いて戻るつもりでいましたが、ちょうど間もなくやってくるタイミングであったため、素直に待つことにしました。
220122雲竜渓谷-095

時刻表よりもわずかに遅れてバスが現れました。結果としてこれで、雲竜渓谷へ神橋ピストンをしたことになりますな。
220122雲竜渓谷-096

16時20分 東武日光駅へ戻ってきました。まだ暗くなる前の時間帯にこの駅へ戻ってこれたのは、かなり久方ぶりなような気がします。なんだかんだで、いつももっと遅くまで歩きまわっていることが多いですからね。
夕暮れ時の東武日光駅

女峰山と赤薙山が、夕日に照らされて茜色に染まりつつありました。
東武日光駅の駅前から見た女峰山
こんな市街地のすぐ裏手に巨大な堰堤群が人知れず存在し、町を土砂災害から守っているのだと言う事実を、はたしてどれくらいの人が知っているのでしょうか。

帰路は特に先を急ぐ旅路でもないため、特急は使わずにのんびりと鈍行列車に揺られて、長い長い帰宅の途につきました。
東武日光駅の普通列車用ホーム

アプローチにだいぶ無駄な時間を費やした感はあるものの、雲竜渓谷への訪問は大満足の内に幕を下ろしました。
しかし反省すべき点のある訪問でもありました。幅の狭い渓谷の内部にまで陽の光が届く時間帯は非常に限られており、明るく照らされた氷柱群を見たければ、もっと早くに最深部へ到着する必要があります。それを踏まえると、やはり前日までに予約を入れたうえで、ゲートまではタクシーを使ってアプローチするのが妥当であろうかと思います。
氷の神殿と称される渓谷最深部の迫力は、聞きしに勝るものがありました。やはり伝聞と実際に自分の目で見るのとでは雲泥の差があります。興味のある方は、是非とも実際に自分の目で確かめてみてほしいです。

<コースタイム>
神橋バス停(8:50)-ゲート(10:10)-洞門岩(11:35)-雲竜渓谷入口(12:00)-雲竜瀑(12:45~13:10)-雲竜渓谷入口(13:40)-洞門岩(14:05)-ゲート(14:55)-神橋バス停(16:05)

220122雲竜渓谷-100

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント

  1. もうもう より:

    オオツキ様

    他のブログやSNSで雲竜渓谷を見かけることが有りましたが、スタッドレスタイヤを持っていないので詳しく調べませんでしたが、公共交通機関を使っても行けるんですね。

    写真で見るだけでも素晴らしい氷瀑ですので実際に見るともっと良いのでしょうが、とてつもなく寒そうなので冬用の登山靴でないと無理そうですね。

    • オオツキ オオツキ より:

      もうもうさま
      コメントをありがとうございます。

      タクシーを使わずに歩いて行く人は少数派だとは思いますが、決して歩けない距離ではありません。なお、舗装道路歩きがかなり長いため、私は冬靴ではなく3シーズン靴を履いて行きました。(寒く無かったとは言っていない)