大野山-日影山 丹沢湖畔のマイナーエリアを巡るヤブ山賛歌

大野山から見た日影山
神奈川県山北町にある大野山(おおのやま)から日影山(ひかげやま)を縦走して来ました。
手軽に登れてかつ展望がよく人気の山である大野山に対して、別名でブッツェ平とも呼ばれる日影山は、笹薮に覆われた破線コースしか存在しない極めてマイナーなピークです。
まだ歩いたことが無いからと言うだけの理由で、なんと無しに足を踏み入れた山域で待っていたのは、想像を上回る道なき道でした。

2021年1月9日に旅す。

過去に丹沢山地は塔ノ岳の大倉尾根コースを一度でも歩いたことがある人ならば、登山口に立つこの丹沢クリステルなる存在が強く印象に残っているのではないでしょうか。
丹沢クリステル
入り口を挟んだ隣には、姉妹の丹沢キャサリンもいました。この姉妹はもともと、かつてこの場所にあった乗馬教室のマスコットキャラクターでしたが、誰かがおふざけで下げたネームプレートの名前がすっかりと定着していました。

このクリステル&キャサリン姉妹は、ある日忽然と大倉から姿を消してしまっておりました。しかし、最近になって大野山へ移動したらしいと言う風の噂を耳にしました。

そういう事であれば、一つ様子を見に行こうか。という事で大野山へと繰り出します。
大野山の山頂
大野山は手軽に登れてかつ富士展望が素晴らしい山で、登山初心者向けの一座として大変人気のある山です。しかし手軽でありすぎるといのも考えようで、せいぜい4時間少々しかないコースタイムには若干の物足りなさも感じます。

もう少し足を延ばせる場所は無いものか。そう思いながら登山地図を眺めていたところ、大野山の北に日影山と言う名の未踏のピークがあるのが目にとまりました。

「ここまで足を延ばしてみよう」と深い考えも無しに目標を決めた私は、大野山から日影山に至る道が破線で描かれていることには、さほどの注意も払ってはいませんでした。

深い考えも無しに足を踏み入れた一帯には、笹薮に覆われた道なき道が続いていました。完全に想定外の事態でしたが、しかし結果としてはとても楽しめた藪山賛歌の記録です。
日影山の笹薮

コース
210109日影山-map
大野山入口バス停よりスタートし。大野山へ登頂します。その後は破線ルートに沿って日影山まで縦走し、林道を秦野峠を経由して田代向バス停へ下山します。

大野山から先は、自身にとって未踏のマイナーエリアを巡る行程です。

1.大野山登山 アプローチ編 西丹沢行きの路線バスで大野山入口へ

7時23分 小田急線 新松田駅
毎度お馴染みの西丹沢方面へ窓口である、新松田駅へとやって来ました。
新松田駅のホーム
そもそも大野山は、エリア的に言うと西丹沢の範疇に含まれているのかどうかよくわかりません。西なのか東なのかが微妙な、中間の位置にあります。

新松田駅訪問時の恒例行事である、晴れていると富士山が見える窓からのお天気チェックは、この通りパーフェクトな快晴です。本日は格好の登山日和となってくれそうな予感です。
新松田駅から見た富士山

西丹沢行きのバスに乗車します。乗車率はそこそこ高く、発車ギリギリの時間にやってきたこともあってか、座席にはありつけませんでした。
新松田駅前に停車する西丹沢行きのバス
このバス路線、以前は混雑するのはツツジの季節くらいなものだったのですが、最近は割といつ来てもそこそこ混んでいるように思えます。西丹沢はいつからこんな人気のエリアになったのでしょうか。

7時53分 大野山入口バス停に到着しました。ここまで御殿場線の山北駅からでも歩けないことは無い距離ですが、バスの方がより登山口の近くにまで行ってくれます。
大野山入口バス停

バス停があるのは登山口からは少し離れた場所です。本当の登山口は、バスの進行方向の反対に少し戻った場所にあります。
大野山入口周辺の様子

2.大野山へと向かう道中で、久しぶりに姉妹と再開する

バス停傍らの歩道上で身支度を整えて、8時ちょうどに登山を開始します。ここからしばらくの間は、舗装道路歩きが続きます。
大野山入口

はい、今日も元気よく行ってまいります。
「今日も元気に大野山」と書かれた標識

目指す大野山の山頂部が、始めから正面に見えています。大野山の山頂部には、カヤトの広がる平坦地が広がっており、低山ながらも眺望が良いことで知られています。
麓から見た大野山の山頂部

東名高速道路の下を潜ります。陽が差し込まない谷底は、実に寒々しい光景です。
東名高速道路の高架

分岐地点が現れました。徒歩で登る場合はここを右に入ります。なおマイカーでお越しの人は、真っすぐ道なりに進むと山頂のすぐ直下まで車で入れます。
大野山登山口の分岐

この付近にはクマのような高齢者が出没して、タケノコを取りに来た人を襲ったりするのでしょうか。いやまあ、ドライバーへの注意喚起なのでしょうけれど、しかしこの書きぶりは・・・
「高齢者に注意」とかかれた立看板

住宅地の只中を行く、結構な急勾配の坂をえちっらおっちらと登ります。この辺りは古宿と呼ばれている集落です。
山北町古宿の市街地

恐らくは大野山と書かれていたのであろう標識が、朽ち果てつつありました。文字は読めませんが、指し示している方角はあっています。
文字がかすれてしまった道標

やがて前方に、2体の人形が並んでいるのが見えて来ました。どうやら、姉妹はあそこにいるようですな。
山北町古宿の市街地

おおよそ2年ぶりに、丹沢クリステル&キャサリン姉妹にご対面となりました。塗装もしなおされて、すっかりと小奇麗になっていました。お久しぶり、お元気そうで何より。
丹沢クリステルとキャサリン
確か足元には犬がいたような記憶があるのですが、見当りません。犬だけリストラされてしまったのか。

クリステルが姉で、キャサリンは妹らしい。そんな設定まであったのですね。
丹沢クリステルとキャサリン

3.富士山を横目に歩む、山北町のチベットこと共和地区

さて、早くも本日の主たる目的は達成されてしまったわけですが、ピークハンターとしてのお勤めも果たさなければいけません。
山北町古宿の市街地

猛獣に注意。って、これはカカシなのでしょうか。はたして効果はあるのだろうか。
空気注入式の虎のおもちゃ

道すがらに共和小学校の跡地があります。集落の人口減少により平成22年に廃校となり、校舎の建物は現在炭焼きの体験施設として使用されています。
山北町の旧共和小学校

近頃はめっきりと見かけなくなってしまった、二宮金次郎像が校庭の隅に残っていました。
二宮金次郎像
かつては日本各地の小学校に存在していたこの像ですが、現在ではそのほとんどが撤去されています。撤去の理由は「子どもが働いているのは児童就労だ」とか「歩いて本を読むのは危険」など批判を受けてのものだそうです。

まあたしかに、歩きスマホみたいなもので危ないですよね。

この旧共和小学校の横を通る道は、富士見通りと呼ばれています。さてどんな景色が見えるのでしょうか。
山北町 富士見通り

まあ確かに見えると言えば見えますが、頭の先だけです。嘘はついていませんが、若干誇大表記ですかね。
山北町 富士見通り

大野山の山腹のかなり高い所にまで集落が広がっているのが見えます。この共和地区は、山北町のチベットなどとも称されています。
富士見通りから見た大野山

目指す地蔵岩登コースの登山口まで、舗装道路歩きがもう少しだけ続きます。
山北町 共和地区の山道

これは体重制限か何かでしょうか。だとしたら、残念ながら私は大幅に制限をオーバーしています。
80以上と書かれた看板
足元に薪が並べられていたので、単にその長さの事だと思われます。

9時5分 地蔵岩コースの登山口まで登ってきました。延々長かった舗装道路歩きはここまでで、ようやく登山道が始まります。
大野山 地蔵岩コース登山口
やれやれやっとですか。やはり私はアスファルトの道を歩くよりも、土の上を歩く道の方がずっと好みです。

しかし、そんな気分に水を差すような案内が掲げられていました。登山道は崩落により通行止めのため、迂回路としてこのままアスファルトの上を歩き続けろとのお達しでございます。
地蔵岩コース通行止めの案内

通行止めとあっては致し方ありませんな。それでは十分に気をつけて行ってみましょう。
地蔵岩コースの通行止め
・・・「お前馬鹿じゃないの」と言われてしまいそうなものですが、いつも私は通行止めの案内を見ると、崩落地点を実際に自分の目で確かめてみたいと言う衝動に駆られてしまうのです。

言うまでもないことですが、何が起きようともこの先での出来事はすべて、自己責任の領域となる事をあらかじめご認識置きください。

4.大野山登山 登頂編 通行止めの地蔵石コースをへて、好展望が広がる頂へ

登山道に入ってすぐの場所に、お地蔵様が安置されています。これがコース名の由来ともなっているお地蔵さんでしょうかね。
大野山の地蔵

急坂もなく、緩やかな傾斜の歩きやすい道が続きます。大野山が初心者向けとされている所以です。
大野山 地蔵岩コースの登山道
地図の等高線を見る限りでは、山頂までずっとこの調子で、特に急峻な場所はなさそうに見えます。崩落があっても、少し手前から高巻けば恐らくは通行できるだろうと目論んでいます。

途中から、尾根沿いを外れてトラバース地帯に入りました。なるほど、崩落が起こりえるとしたらこの辺りなのかな。などと漠然と考えつつ進みます。
大野山

という事で、その崩落地点へとやって来ました。小さな浸食谷を渡るための橋が破壊されていました。
210109日影山-035
この壊れかけの橋にのるのはやめておいた方が無難でしょうけれど、特に難なく崖沿いに通行は出来ました。

崩落地点を過ぎてほどなく、麓からも見えていたカヤトの一帯に入りました。
大野山のカヤトの斜面

ここまでが緩やかな道だった分を一気に取り戻すかのような階段地獄です。なお、右手に張られているワイヤーは電気柵なので、うっかり握ってしまわないように要注意です。
大野山のカヤトの斜面

カヤト地帯に入ったことにより、背後の展望が開けます。陽の光の反射でギラギラと眩しく輝いている相模湾が一望できました。
大野山から見た相模湾

山頂側の通行止め地点まで登って来ました。通行止の案内の反対側から現れた私の姿を見て、猟師のおじさんが一瞬あきれた顔をしたように見えたのは、多分気のせいでは無いと思います・・・
大野山 地蔵岩コースの通行止地点

この後に歩く予定の、日影山方面へと続く尾根が一望できました。意外とアップダウンは多そうです。
大野山から見た日影山

遠くには塔ノ岳の姿も見えました。山頂にある尊仏山荘の建物もなんとなく見えています。
大野山から見た塔ノ岳

日影山方面へ歩みを進める前に、まずはサクッと大野山の山頂へ立ち寄って行きましょう。
大野山の稜線

広々とした気持ちの良い山頂部です。かつてはこの山頂のスペースを活用した県営の牧場が存在しましたが、現在は廃止されています。
大野山の稜線

山頂の直下に駐車場があり、車でお越しの方はここまで入ってこれます。この駐車場からスタートした場合、登頂に要する時間は5分程度です。
大野山山頂の駐車場

進行方向正面に、箱根がその広大なすそ野を広げているのが見えました。箱根と言うのは、遠くから見ると本当に大きな山です。
大野山から見た箱根

山頂まで登って来ました。広々とした陽だまりの気持ち良い空間ではありますが、見ての通りの吹きっ晒しな場所であるため、風がある時だとかなり寒いです。
大野山の山頂

10時25分 大野山に登頂しました。予期せぬ通行止めの件を除けば、確かに初心者向きと言えそうな登りやすい道程でありました。
大野山の山頂標識 width=
しかし今回歩いた大野山入口から登るよりは、谷峨駅の側から登るルートの方が、舗装道路歩きの区間も短くてより登山らしい登山が出来ると思います。

富士山が真正面にあります。大野山は丹沢山地の中でも富士山に近い位置にあるため、塔ノ岳付近から見た時よりもかなり大きく見えます。
大野山から見た富士山

北側に目を向けると、三保ダムの堤体と丹沢湖を見下ろせました。
大野山から見た丹沢湖

南側には足柄平野とその先の相模湾の大パノラマが広がります。車で簡単に来れる場所であるため、夜景を眺めに来るのにも悪くないと思います。
大野山から見た足柄平野

遠く海上の彼方に浮かぶ、伊豆大島の姿も良く見えました。本日は素晴らしいまでの空気の透明度です。先ほどから吹きっ晒しで、寒くて仕方がありませんがね。
大野山から見た伊豆大島

5.鹿よけの柵と笹薮が延々と続く、日影山への道程

10時55分 大野山の山頂を後にし、日影山方面への分岐地点へと引き返します。
大野山の稜線

分岐地点まで戻って来ました。直進するのが元来た道で、日影山方面へ向かう場合はここを左に入ります。
大野山 三保ダム方面への分岐

林道沿いに一度大きく下ります。この道は丹沢湖方面へ下るルートでもあり、現在地はまだ破線エリアではない一般登山道扱いの領域です。
210109日影山-052
先ほどの分岐地点からずっと、少し距離を開けた背後に夫婦連れらしき登山者が付いてきているのが気にかかります。

どこに向かって歩いているのわかっているのであれば良いのですが、どうも何も考えずに前の登山者(つまり私)の後をついて歩いているだけなような予感がします。当人達は山北駅へ向かっているつもりなのではなかろうか。

しかし、丹沢湖へ下りようとしている可能性もゼロではないし、わざわざ立ち止まって行き先を訪ねるのも気が引けます。うーん、どうしたものか。

11時10分 湯元平分岐まで下って来ました。以前はここからも丹沢湖方面の湯元平へ降りることが出来ましたが、現在は廃道状態となっています。
湯元平分岐

林道歩きがしばし続きます。足元はいつの間にか舗装が無くなり、砂利道になりました。
210109日影山-054

前方にゲートが見えてきたところで、再び登山道が始まります。道標には行き先は三保ダムとだけ書かれており、日影山の名前はどこにもありません。
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流石になにかおかしいと気が付いたのか、後方を歩いていた夫婦はいつの間にか姿が見えなくなっていました。これでとりあえずは、背後に憂いは無くなりました。

シカよけの柵に沿って進みます。この先のルートはずっと、この柵と共に歩み続けることになります。
210109日影山-057

ちょっとだけ展望が開けました。見えたのは、大野山山頂からのものと大差はない足柄平野の光景です。
210109日影山-058

道中に一か所、丹沢名物のテーブルのようなベンチがありました。これがあるという事は、暖かい季節になれば、ここにもヤマビルが出没するという事ですな。
210109日影山-059

まだ破線ルートではない一般登山道エリア内にいるはずなのですが、早くも日影山ルートの特色である笹薮の姿が見え隠れし始めました。
210109日影山-060

12時5分 秦野峠分岐までやって来ました。三保ダム方面へ下る道との分岐地点となります。道標に案内はありませんが、日影山へ向かうにはここを直進します。
秦野峠分岐

眼下に丹沢湖の姿が見えます。地図の等高線の間隔からして、ここからの下るのはかなりの急勾配であると思われます。
210109日影山-062

ここからいよいよ、破線地帯へと足を踏み入れて行きます。実線のルートから外れるなり、いきなり踏み跡が心許なくなりました。地図にもしっかりと竹ヤブと書いてありますね。
日影山の笹薮

木の根と笹竹に覆われた痩せ尾根を直登します。登りならまだしも、下るのは相当怖そうな勾配です。バリエーションルートらしく、最初から飛ばしてきましたな。
210109日影山-064

箱根の外輪山を思わせるような、背丈を越える笹竹が繁茂しています。一応は道らしきものはありますが、この辺りは尾根の横幅が結構広いため、少々ルートが分かりにくいかもしれません。
210109日影山-065

シカよけ柵がありましたが、しかしすでに倒壊しており用を成してはいません。しかしこれ、もし倒れていなかったら、どうやって越えたら良かったのでしょう。
日影山 倒れた鹿よけの柵

再び濃くなってきた竹ヤブの只中を突っ切ります。踏跡と言えるほどのものは殆どありませんが、右手に鹿よけの柵がずっと続いているので、それに沿って前進します。
日影山の竹ヤブ

薮地帯を突破したらしく、ようやく人心地がつけました。ここまでは尾根筋を忠実に辿れば良いので、迷う要素は特に無かったかと思います。
210109日影山-068

右手に見えているこの山は高松山でしょうか。今見えている、この高松山へ至る尾根も破線扱いのルートではありますが、しかし日影山の周辺に比べればはるかに明瞭な道です。
210109日影山-069

再び柵に行く手を阻まれました。ここは這って鉄線の下を潜ります。
日影山の鹿よけ柵
横着してザックを背負ったままの状態で潜ろうとしたら、ザックに外付けしてあったストックが鉄線に引っかかってしまい、激しくもがくハメに陥ったのはナイショです。

この後も何度か柵を越えて行きます。ハシゴがあればそれを使用し、なければ下を潜ります。・・・くれぐれも潜る時は横着せずにザックは下ろしましょう。
日影山の鹿よけ柵

突破したと思った竹ヤブですが、結局はこの後も何度も出現しました。だいぶ侵犯されつつありますが、一応は踏み跡らしきものが存在します。
日影山の竹ヤブ

急な登りが始まりました。日影山の本体に取り付いたようです。相変わらず道がどこなのかはよく分からないので、登りやすそうな場所を見繕って適当に登ります。
210109日影山-073

山頂らしき空間に辿り着きました。これはまた、とびっきり地味な場所ですねえ。
日影山山頂の様子

13時 日影山に登頂しました。別名でブッツェ平とも言います。不思議な響きの名前ですね。
日影山の山頂標識
はじめはブッシュ(英語で藪の事)平なのかと思っていたのですが、しかし地図にも山頂標識にもブッシュではなくブッツェと書かれています。ブッツェとはいったい何語なんでしょう。

気になって帰宅後に調べたところ、南北朝時代に南朝方の落ち武者の一団がこの場所へ逃げ延びて住み着き、武士平と呼ばれていたのが由来なのだとか。またえらく辺鄙な場所まで逃げましたな。
日影山の山頂

6.秦野峠とへと続く廃道状態の道

ピークハントは無事に果たされました。このまま元来た道を引き返しても良かったのですが、しかし「往復ヨリ周回ヲ持ツテ尊キモノトス」という私自身の不可解な価値観が発露されたことにより、このまま前進を続けます。
210109日影山-077
日影山からの下りは、思わず腰が引けてしまうような急勾配の斜面でした。足元は枯れ葉が堆積した砂地で、グリップには全く信頼がおけません。小股でチマチマと慎重に下ります。

眼下に強大な堰堤と枯れ沢があるのが見えます。この界隈は、私にとっては全く未知の領域です。
210109日影山-078

下の方はヤセ尾根となっており、通行するのに若干緊張を強いられました。
210109日影山-079

気の抜けない急坂を下りきって、ようやくホッと一息付けました。まったく酷い悪路でした。
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・・・この先にもっとひどい悪路が待ち受けていることを、この時の私はまだ知りませんでした。

秦野峠林道を横断します。このまま林道に脱出してエスケープすることも出来ますが、せっかくの機会なのでこのまま破線ルート歩きを続行します。
秦野峠林道

登山道はこの法面に取って付けたような急坂の先に続いているようです。初っ端から四つん這いにならないと登れないような勾配を前にして、行く手に一抹の不安がよぎる展開です。
210109日影山-082
私がいまだに使用している2012年度版の山と高原地図には、この先の秦野峠まで続く破線ルートがしっかりと描かれています。しかし、最新版の地図からはすでに消されてしまっているのだそうです。

つまり、この先のルートは現状ですでに廃道状態にあるという事です。そんなことは露知らずに前進してしまったわけですがね。

振り返って見た日影山です。山頂直下がかなりの急勾配であるのが、何となくお分かりいただけるかと。
秦野峠林道から見た日影山

地図によればルートは尾根上にあるはずですが、踏跡と言えるもが全く見当たりません。本当にあっているのか疑心暗鬼になりつつも、地図を信じて前進します。
210109日影山-084

前方に見ているのは伊勢沢ノ頭と檜岳(ひのきだっか)ですかね。この檜岳山稜もまた未踏の領域なので、いずれは歩かなければなりません。
檜岳山稜

相変わらず踏跡の気配が全く感じられませんが、割と明瞭な尾根筋があるので、とりあえず迷いはしません。たまに鹿よけの柵が現れるので、人の往来自体があることは間違いなさそうです。
210109日影山-086

ちょっとだけ富士山のビュースポットがありました。朝の時点では雲一つない快晴でしたが、だいぶ雲が湧いて来ましたな。
210109日影山-087

このルート上で唯一見かけた道標です。踏跡は枯れ葉に埋もれて全く見当たらず、この道標の導きが無ければ降下地点を発見するのはかなり難しいかもしれません。
210109日影山-088

道標の導きに従い鞍部に向かって下ります。ここでも、これが本当に道なのか確信が持てないような急勾配でした。
210109日影山-089

鞍部まで下って来ました。紛らわしい踏跡のようなものがいくつか見えていますが、ここは尾根を忠実になぞって直登するのが正解です。
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かなり崩壊が進んでいるヤセ尾根の急登です。ここは手もフルに使って木の根を掴みながらよじ登ります。
210109日影山-091

上の方は殆どナイフリッジ状態でした。ここで滑落して身動きできなくなろうものなら、偶然通りかかった人に発見してもらえる望みなどは殆どない場所です。慎重に安全第一でまいりましょう。
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この痩せ尾根上で、ようやく一般登山道と合流しました。秦野峠から、先ほど見えていた檜岳山稜へと続くルートです。
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一般登山道と合流して以降も、しばしの間ヤセ尾根が続きます。しかし、踏跡ははっきりとした明瞭なものになりました。
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鹿よけの柵に両側を囲われた金網デスマッチ状態のような道です。流石に電流が流れてはいないと思いますが、左右のどちらに転んでも痛い目に合うのは確実なので、転ばないように気を付けて歩きましょう。
210109日影山-095

眼下に舗装道路が見えて来ました。思いのほか長かった破線ルート歩きも、いよいよ終わりです。
210109日影山-096

15時5分 林道秦野峠に到着しました。先ほど一度林道を横断していた時点でエスケープしていれば、何の危険も冒さずにここまでこれたのですけれどね
林道秦野峠
まあでも、なかなかスリリングで楽しい道程でありました。

7.日影山登山 下山編 林道を延々下り、田代向バス停へ

さて、ここからはダルマ沢ノ頭と言うマイナーピークを越えて行くことも出来ますが、過去に一度登ったことのあるピークなので、今回はパスしてこのまま林道沿いに下ります。
210109日影山-098

路面上を流れる湧き水が凍結して、思いがけず氷の川を作り出していました。しかしこれ、渡ろうと思うと意外と難儀します。仕方がなく走り幅跳びで対岸へ移りました。
林道の凍結した路面

前方にシダンゴ山が見えて来ました。時間があれば登って行こうかとも思っておりましたが、しかしすでに日没ゲームセットの時間が近づきつつあるので、こちらもパスします。
秦野峠林道から見たシダンゴ山

これは鍋割山(1,272m)ですね。普段あまり目にしたことが無いアングルなので新鮮です。左奥に見えているのは丹沢主脈の不動ノ峰と棚沢ノ頭かな。
秦野峠林道から見た鍋割山

15時40分 シダンゴ山分岐までやって来ました。先ほど宣言した通り、シダンゴ山はパスしてこのまま田代向バス停へ下ります。
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だいぶ日が傾いてきました。今の季節は本当に日が短い。
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サクサクと足早に下って、宮地山入口まで下って来ました。ここからバス停までは、標準コースタイムで残りあと25分の行程です。
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麓の寄の集落が見えて来ました。谷合の集落ではすでにすっかりと日が沈んでおり、黄昏時の僅かな明かりに照らされていました。
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終点の寄バス停に向かって登って行くバスの姿が見えます。あのバスが、帰路の私を運んでくれる便になるのでしょう。
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中津川の橋の上から、夕日に照らされた鍋割山の姿を写真に収めたところで、本日のミッションは終了です。
中津川の橋の上から見た鍋割山

16時40分 田代向バス停に到着しました。ほんとんど思い付き選んだ周回ルートでしたが、結果としてほぼ丸一日を費やす骨太な登山でありました。
田代向バス停

タイミングよく、さしたる待ち時間もなしにやって来たバスに乗り込み、帰宅の途の付きました。
210109日影山-109

未踏だったからと言うなんとなしの理由で訪れた日影山周辺の破線ルート歩きでありましたが、登山技術の総合力を問われるような、なかなかの険路でありました。
誰でも気軽に歩ける道では決してありません。ある程度登山経験を積んだ人向きのルートです。訪問を考えている方は、ルートを見失った時の備えとして、GPSは必ず携行した方が良いと思います。
日影山には特にこれと言った見所があるわけではありませんが、ほとんど人の気配の感じられない薮に覆われた尾根を歩くのは、そのこと自体が一つの非日常のアドベンチャーのようなものです。ありきたりな一般登山道を歩くことに退屈を感じ始めている方には大いに推奨します。ヤブ山を歩くことの楽しさを体験するために、日影山まで繰り出してみては如何でしょうか。

<コースタイム>
大野山入口BS(8:00)-地蔵岩登山口(9:05)-大野山(10:25~10:55)-湯本平分岐(11:10)-日影山(13:00~13:20)-林道秦野峠(15:05)-田代向BS(16:40)

210109日影山-110

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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