神奈川県丹沢山地の丹沢主稜(たんざわしゅりょう)を縦走して来ました。
丹沢主稜は東丹沢と西丹沢を繋ぐように東西に向かって伸びる稜線で、檜洞丸(ひのきぼらまる)から蛭ヶ岳(ひるがたけ)へと至る、起伏の激しい険しい道が続きます。一泊二日の行程で歩かれることが一般的であり、日帰りで踏破しようとすると、体力勝負の苦難な道程となります。
ツツジとシロヤシオが咲き誇るベストシーズンの丹沢にて、丹沢山塊屈指の険路を日帰りで突き抜けるハードな山行きをしてきました。
2017年5月27日に旅す。
warning!
・丹沢主稜は体力に自信のある人向きのルートです。
1泊2日の行程で歩くのが一般的です。1泊したとしても、決して楽なコースではありません。
・日帰りするならヘッドランプ必携です。
標準コースタイムは11時間を越えます。よほど歩くのが早い人で無い限り、日没には間に合いません。
丹沢主稜とは、丹沢山塊の最高峰の蛭ヶ岳から西に向かって伸びる長大な稜線です。非常に起伏の激しい稜線で、比較的なだらかな道の続く塔ノ岳-蛭ヶ岳間の稜線とは趣を異にしています。
ちなみに塔ノ岳から蛭ヶ岳までの南北に伸びる稜線は丹沢主脈と呼ばれています。
主脈に主稜。なんとも分り難い命名ですね。
主脈であろうと丹沢主稜であろうと、どちらにしても非常に長丁場です。今回はその主稜と主脈を繋げて、一日で歩ききろうと言う狂気の計画です。
何でそんなことをする気になったのかと言うと・・・
なんででしたっけ?忘れてしまいました。なんとなく、ガッツリ歩きたい気分だったのでしょうかね。
ついカッとなってやった。今では後悔している。
5月の下旬から6月の上旬にかけて、丹沢山地ではツツジ科の花であるシロヤシオが見ごろを迎えます。この季節が丹沢訪問のベストシーズンであることは間違いありません。
天気も上々で、まさに最高の季節を迎えた丹沢を、ヘロヘロになりながら横断してきた一日の記録です。
コース
西丹沢ビジターセンターよりツツジ新道を通って檜洞丸へ登頂。そこから丹沢主稜を歩き、丹沢最高峰の蛭ヶ岳へ。蛭ヶ岳からは丹沢主脈を歩き、塔ノ岳から大倉尾根を下山する。
丹沢の主要な山の大半を一日で巡る非常に贅沢なルートです。標準コースタイムは圧巻の11時間20分。言うまでも無く健脚者向けコースです。
1.丹沢主稜縦走 アプローチ編 多くの人で賑わうベストシーズンの西丹沢へ
7時4分 小田急線 新松田駅
西丹沢行きの朝一番のバスに乗車するべく、始発電車を乗り継いできました。なにせ本日は標準コースタイム11時間越えの行程です。時間との戦いはすでに始まっているのです。
7時15分発のバスに乗るつもりでいましたが、目の前に臨時の増発便が止まっていて首尾よく乗り込むことが出来ました。
この先に待ち構えている長い長い行程のことを考えれば、きわめて幸先のよいスタートと言えるでしょう。
バスの車窓から丹沢湖が見えました。
このバス路線は過去に何度も乗ったことがありますが、いつも発車と同時に眠てしまい、丹沢湖の姿を真面目に眺めたことはあまりないかもしれません。
丹沢湖と同じく神奈川県の水瓶である宮ヶ瀬湖と比べると、幾分小ぶりな湖ですね。単に宮ヶ瀬湖が大きすぎると言うだけのことかもしれませんが。
8時5分 西丹沢自然教室あらため西丹沢ビジターセンターに到着しました。いつの間にこんなハイカラな名称に変わったのでしょうか。
バスの出口にスタッフの人が待ち構えていて、登山届けを提出するようにと声をかけられます。山の深い西丹沢は、人が多く登山道の整備も行き届いている東丹沢と比べると、遭難者の数が多いエリアです。
トイレを済ませたり登山届けを書いたりと、身支度に15分ほどを費やし、8時20分に行動を開始します。
標準コースタイム11時間20分にも及ぶ、長く厳しい道程の始まりです。
普段は人影疎らな西丹沢ですが、今日は多くの登山者の姿がありました。
丹沢山地は年間を通じて人影が絶えることの無い人気の山域ですが、ベストシーズンはいつかなのかと問われれば、それは間違いなく5月下旬から6月上旬にかけた今の時期です。
この季節、登山道にはツツジやシロヤシオが満開に咲き誇り、なんとも華やか光景を見せてくれます。
歩き始めて5分ほどで、つつじ新道の入り口へと辿り着きました。ここからは登山道です。
まるで前途を祝福してくれているかのように、神々しいばかりの木漏れ日が差し込んでいました。これは吉兆だとムリヤリ自らを奮い立たせて、いざ登山開始です。
2.シロヤシオ満開のツツジ新道を登り、縦走最初のピーク檜洞丸へ
新緑の美しい道を進みます。上り始めにいきなり高度を上げたあとは、ゴーラ沢出合までわりと平坦な道が続きます。
この先の長さを鑑みるに、ここでも少しでもコースタイムを巻くべきと言う考えと、余計な体力の消耗は抑えるべきという矛盾した考えが頭の中で堂々巡りします。
本日は初めからヘッドライト上等のつもりで来ているので、最終的には体力の消耗を抑えるため飛ばさないという結論に行きつきました。ペースを上げずにのんびり歩きます。
つつじ新道の入り口からおよそ30分ほどで、ゴーラ沢出合いに到着しました。ツツジ新道コースにおける最初のチェックポイントと言った所です。
橋は無いので、浅そうな所を適当に見繕って渡渉します。この日は難なく渡れましたが、水量によっては苦戦を強いられることもあります。
西丹沢クォリティーの美しい沢です。真夏に訪れればきっと水遊びが捗る事でしょう。
登山道は沢の対岸に続いています。
この取り付きは迷いやすいポイントとよく言われていますが、なにをどう迷うのかよく分りません。ロクに周りを見ずに沢を登っていってしまう人がいるのでしょうかね。
言わんとしていることを要約すると「山をナメるな」。
野暮は承知でツッコませてもらうと、地図と言うのは道に迷わないためのものであって、迷ってから広げても手遅れだと思うんです。
上り始めにいきなりクサリ場があります。濡れていると非常に滑りやすいので注意しましょう。・・・要するに、私が登り始めて早々に滑ったと言うことです。
新緑のブナ林が実に美しい。表丹沢と比べるとイマイチ人気が無い西丹沢ですが、沢と森の美しさにかけては断然優っているように思えます。
新道と名が付く登山道というのは、何処も大抵は山頂へ最短ルートを突き進む急登です。このツツジ新道もその例に漏れません。開始早々から無慈悲な急登が続きます。
いずれも取り立てて危険というほどのものではありません。まあ、東丹沢の大倉尾根と比べたら経験者向けの道なのかなあ。
ツツジ科に属する花です。その名の通りの白い花弁で、葉のフチが赤く色づいているのが特徴です。
これは普通のミツバツツジですね。この季節には割と多くの山で見かけます。
山頂が近づいて来ると、丹沢らしい木道が現れ徐々に視界が開けてきます。
振り返ると、世界遺産のアイツが堂々たる姿を惜しみも無く晒しておりました。
この季節としては珍しく、今日は春霞が一切ない非常にクリアな空気をしています。前日まで降っていた雨が、大気中の霞成分をすべて酸性雨として地面に降らせてくれたのでしょうか。
ここからは圧巻のシロヤシオロードが始まります。檜洞丸は今まさに最高の季節を迎えていました。
飽きもせずに同じような写真を何枚も撮ってしまします。この先に待ち受けている行程の長さを考えると、ゆっくりしている場合ではないのですがね。
なんだかもう丹沢主稜縦走なんてどうでもいいから、このままシロヤシオ鑑賞を続ける方が良くない?なんて気分になってくるくらいに素晴らしい。
満開のシロヤシオのおかげで実に気持ちよく歩けていますが、ツツジ新道の登りは最後の最後まで急登続きです。
木道の整備された平坦な場所に出たら、山頂はもう間もなくです。山頂付近は、足元にコバイケイソウがびっちりと茂っていました。
11時 檜洞丸に登頂しました。本日の縦走登山における最初の頂です。つまりはまだまだ序の口と言う訳ですな。前座と言ってしまうにしては、かなりの防御力でしたがね。
山頂の様子
ここはかつて秘境の山とか言われていたくらいで、普段はあまり人の居ない静かな場所です。シロヤシオシーズン中とあってか、今日は多くの人で賑わっていました。
樹林に囲われていて、山頂の展望は今一つです。犬超路方面に少し行くと一挙に眺望が開けます。
ここで下山すれば、沢山の花を愛でた普通の日帰り登山で終わることでしょう。しかしながら本日のメインイベント、丹沢主稜縦走はここからがスタートなのです。
谷向かいから、丹沢最高峰の蛭ヶ岳がおいでおいでをしています。蛭ヶ岳さんのお誘いとあっては、お断りするわけには参りませんね。
こちらは塔ノ岳です。山頂にある尊仏山荘が何となく見えます。今日は最終的にあそこを越えて、大倉まで歩いて行かなくてはなりません。
う~ん、遠いなぁー(月並みな感想)
山頂から蛭ヶ岳方向へ少し下ったところに青ヶ岳山荘があります。前に見たときよりも更に青々として見えますが、ペンキを塗りなおしたのでしょうか。
NHKのBSプレミアムで放映している「にっぽん百名山」の丹沢山の回では、確かあそこに1泊していたような。
3.丹沢山塊屈指の険路へと足を踏み入れる ~登って下ってまた登って
蛭ヶ岳へ向かいます。この先にはもう途中でエスケープできるルートは存在しません。歩き切る覚悟を決めて突撃します。
まずは稜線に向けて、もったいないくらいに大きく下ります。せっかっく稼いだ位置エネルギーが失われて行く。
なかなか鞍部が見えてきません。最終的に300メートルくらい下ります。その後に待ち受けるであろう登り返しのことを思うと、暗澹たる気分になってきます。
下りきってようやく平坦な場所に出ました。実に丹沢らしい痩せ尾根です。
蛭ヶ岳がだいぶ高い所に見えます。いやはや、ずいぶんと下ってしまったものです。
丹沢主稜の領域に入ってからも、相変わらずシロヤシオが見事に咲き誇っていました。
厳重に補強された、ガレ場のフチを通ります。山と高原地図に危険アイコンが書かれている場所です。
見上げる高さの蛭ヶ岳。思わず眩暈を起こしそうになる絶壁感です。
直しても直しても次々と崩壊する登山道に、日々悪戦苦闘しながら整備しているような道です。登山道を整備している地元自治体の方々にはまこと頭が下がります。
ハシゴやら丸太やら、色々なものが散乱していて、やっつけ感の溢れる道です。
まるで工事現場の足場の様な渡りまで。これらの資材は、やはりヘリで運んでいるのですかね。
目の前に臼ヶ岳(1,460m)が立ちはだかります。
丹沢山塊の中でも最も深い位置にあるこの山は、丹沢主稜を険路たらしめているある種の要害です。蛭ヶ岳に闘いを挑むには、まずはコイツを先に倒さねばなりません。
丹沢名物のテーブルみたいなベンチがありました。ヤマビルを避けながら休憩するためのものです。これがあるという事は、ここにもヒルがいるという事ですね
臼ヶ岳手前の鞍部、神ノ川乗越まで下ってきました。さあ、ここからは怒涛の登り返しが始まりますよ。腹をくくってまいりましょう。
地図によると、この道標の先に少し進んだところに水を取れる場所があるようです。確かに薄っすらと踏み跡が続いています。今日は十分な量の水を持っているので、偵察はしませんでしたが。
臼ヶ岳に向かって、丹沢名物の階段地獄を登り返します。この付近は、大倉尾根などとは違ってそんなに通行量は多くなさそうな一帯ですが、それでもしっかりと整備されています。
崩壊の進んだ痩せ尾根のフチを通ります。安全のために張られていたのであろうトラロープまでもが、すでに崩落に巻き込まれて垂れ下がっていました。
まるで滑り台ですね。そう遠くは無い将来、通行不能になり迂回路に付け替えられそうな気がします。
結構ガッツリと登らされます。臼ヶ岳の山頂ですら蛭ヶ岳よりは200メートル近く低い位置あると言うのに、この主稜線は一体どれだけ高度を落としていたのでしょう。
シロヤシオ鑑賞を口実にしばし小休止。だってしんどいんだもの。
12時50分 臼ヶ岳に登頂しました。丹沢山地の最深部であるとされている頂です。ここまで足を運んだことのある人というのは、それほど多くは何のではないでしょうか。
山頂の様子
ブナ林に覆われています。ここにも丹沢名物のテーブルみたいなベンチが二つありました。
ここでようやく蛭ヶ岳と真正面から向き合いました。丹沢最高峰の貫禄十分な堂々たる姿です。
山頂へはここを登ります。かなりの急勾配であることがお分かり頂けるでしょうか。
眼下の谷底には砂防ダムの堤防が点々と並んでいる姿が見えました。丹沢の谷というのはどれも非常にスケールが大きい印象です。
蛭ヶ岳に向かいます。鞍部に向かって一旦下りです。「この期に及んでまだ下るか」と一人悪態をつきつつ進みます。
・・・ボッチ登山をしていると独り言が多くなって困りますね。
鞍部一帯は完全に崩壊しています。迂回路ははちゃんと下のほうにあります。ここを通れとは言われないのでご安心を。
鞍部から望む鍋割山陵と雨山峠です。あちらもなかなかの険路です。
蛭ヶ岳本体がまるで絶壁のように立ちはだかります。この先は手を使わないと登れない道になるので、ここでストックはザックに収容します。
斜面に咲き誇るミツバツツジ。この日眼にした中で最大の群落です。
クサリ場が出現です。ステップはしっかりしているので、腕力は必要ありません。
ガレ場の急登をロープとクサリを頼りに登ります。ここまでの疲労の蓄積もあってか、かなりキツイ。
振り返ってみるとこんな感じです。このルートは登りよりも下りの方が注意を要します。よほど慎重に下らないと谷底まで一直線に転げ落ちかねません。
クサリ場が延々と続きますが、特に使わなくても登れる程度の傾斜です。このクサリはどちらかと言うと、下るときのためにあるように思えます。
視界が開けたら山頂はもう間もなくです。笹が生い茂る、見慣れた丹沢主脈の光景になって来ました。
振り返ると、ここまで歩いてきた丹沢主稜が一望できました。かなり大きくアップダウンしているのがお分かりいただけるかと思います。
こちらは丹沢山塊きってのファット・マウンテン大室山(1,587m)。
遠くには相模湾も見えました。神奈川県の最高地点という事もあって、蛭ヶ岳からは全方位に大変素晴らしい眺望が開けます。
そしてシロヤシオ。ここでも満開でした。蛭ヶ岳にはあまりシロヤシオの山と言うイメージがありませんが、結構な量が咲いていました。
山頂が見えました。もうあと一息だと言うのに、疲労でなかなか足が前に出ません。血反吐を吐きそうです・・・
14時10分 蛭ヶ岳に登頂しました。歩き始めてから実に5時間50分かかっての到着です。いやはや、噂に違わぬ厳しい道のりでありました。
これから歩く丹沢主脈の稜線が連なります。丹沢主稜とは違って、比較的フラットな尾根が続いてるように見えます。
そして丹沢主脈のゴール地点の塔ノ岳。はははは、まだまだ遠そうですねえ。もはや乾いた笑いしかこみあげて来ません。
ここまで歩いてきた達成感で感無量の気分、と言いたいところですが・・・・
何処に向かって下山するにしても、これからまだ10km以上の距離を歩かなければならない場所に、14時を過ぎた時間に居る。この客観的事実を前にしばし暗澹たる気分になりました。
暗澹たる気分になったのは今日何度目だろう。
蛭ヶ岳山荘の戸をたたいて「今夜泊めて下さい」と言いたくなる衝動に駆られましたが、グッと堪えて下山を開始します。・・・ここからは下山と言うことでいいんですよね?まだあと13kmも残っていますが。
なお、シロヤシオシーズンは丹沢の山小屋が1年で最も混雑する時期なので、予約なしの飛び入りで宿泊できる見込みはほぼありません。
くれぐれも、途中でへばって動けなくなるようなことがなきよう、自身の体力をしっかりと見極めたうえで計画を立てるようにしてください。
4.快晴の丹沢主脈で爽快なる稜線歩き ~すでにお疲れ風味
蛭ヶ岳から塔ノ岳へ至る丹沢主脈は、それだけをメインディッシュにして良いだけのボリュームを持ったルートです。その主脈歩きを下山のついでに味わえるなんて、なんてお得なんでしょう!(強がり)
檜洞丸のような大群落とまでは行きませんが、それでも十分に見ごたえがあります。
早速登り返しがあります。クサリ場になっていますが、登る分には特に難しくはありません。
蛭ヶ岳の向かいにあるこの2つの大きな岩は、鬼ヶ岩と呼ばれています。鬼の角に見立てているのでしょう。
鬼ヶ岩直下の岩場は丹沢主脈ルートでは唯一の、危険地帯と言えなくもない場所です。
鬼ヶ岩の間から望む蛭ヶ岳は、定番の撮影スポットです。忘れずに抑えておきましょう。沸き立つ雲が幻想的です。
それにしても、今日のこの空気の澄み具合は一体何事なんでしょう。真冬並みに遠望が利きます。
丹沢主稜と違ってなだらかな起伏の道が続きます。そうは言っても、ここまでの道で既に体力を消耗しきっている体には、このようなちょっとした登り返しでも非常にしんどい。
蛭ヶ岳方面へと向かう人の姿がチラホラとあります。恐らくは山荘に宿泊するのでしょう。やはりどう考えても、一泊して歩くべき行程ですよね。
次なるチェックポイントの丹沢山が見えてきました。結構登り返すんですね・・・
塔ノ岳に至る稜線も一望できます。途中にある小ピークの数だけ上り返しがあると言うことです。
丹沢山の手前で一旦大きく下ります。なにもそんなに下らなくたっていいじゃないか。
そして鞍部からの登り返し。丹沢名物の圧倒的木階段地獄に痺れます。口から泡吹きそう・・・
ところで、私は一体何のために、こんなしんどいことをしているんでしたっけ?
15時55分 自問に対する答えが見出せないまま丹沢山に到着です。つっ疲れた。
何故か木製の山頂標識は取り外されていました。メンテナンス中ですかね。
疲れ果ててはいますが、休憩は無しで塔ノ岳に向かいます。日没強制ゲームセットが近づきつつあるのでね。
驚いたことに、この時間になってもこっちに向かって登ってくる人が結構沢山居ました。小屋に泊まるのでしょうけれど、それにしたって遅すぎませんか。農鳥門限を過ぎていますよ?
最高の展望ですが、私の足取りは大分重くなってきました。無我の境地で黙々と歩き続けます。
丹沢主脈歩き最後の試練とでも言うべき、塔ノ岳への登り返しが目前に迫って来ました。
16時50分 塔ノ岳に到着しました。人の多さにびっくりです。大半は尊仏山荘に泊まる人たちでしょうけれど。
この時間から大倉まで下ろうなどと言う物好きはあまり居ないでしょう。
もうだめびゅー
しばしテーブルの上でダウンしました。もうこの後は下山するだけなのですが、そうは言っても相手はあのバカ尾根です。舐めてかかれる相手ではありません。
続いてザックの中を漁って、出てきたものを片っ端から食べる。
半年以上前に賞味期限が切れているソジョイは、少し硬くなっていたものの味は普通でした。
今日はここまでに、お握り4個、菓子パン2個、ウィダーInゼリー2個、スニッカーズ2本を平らげておりますが、それでもなおシャリバテの兆候が現れていました。このルートを歩ききるにはどれほどのエネルギーが必要なのでしょうか。
その後、15分ほどグッタリしてようやく体に力が戻って来ました。タウリン1000mgが全身に浸透したのでしょう。
よし、まだ歩ける!
いくらか元気を取り戻したところで、あらためて塔ノ岳からの展望です。いつ見ても素晴らしいですな。
まだ辺りは明るいですが、日没までに大倉に辿り着くのは時間的にもう間に合いません。ヘッドライト下山が確定です。1年で最も日が長い季節だと言うのに、まさか日没に間に合わないとは。。。
こちらは表尾根方面です。ガスが沸きつつありました。それにしても、今日は一日本当に良く天気がもってくれました。
5.丹沢主稜縦走 下山編 宵闇のせまる大倉尾根を下る
17時20分、下山を開始します。ルートはいつもの大倉尾根です。
出来れば堀山の家までは日のあるうちに辿り着きたいと言うことで、少し足早に下ります。
実際には、少し足早に下ろうとしただけで、全然早くはありませんでしたが。
徐々に日が傾いて来ました。もうとっくに足の踏ん張りが利かなくなっているので、焦りは禁物です。一歩一歩確実に踏みしめて下ります。
18時15分 堀山の家に到着しました。周囲はかなり薄暗くなってはいますが、まだライトなしでいけます。
駒止め茶屋を過ぎた辺りでタイムオーバーとなり、ヘッドランプを装着しました。
19時に見晴茶屋を通過します。中から談笑する声が聞こえました。ここって泊まれるんでしたっけ?
見晴茶屋から望む夜景。夜景を見れる時間まで歩き続きける気など無かったのですがねえ。後半すかっり失速してしまいました。
真っ暗な森と言うのはある種のホラーですね。途中で何度か野生動物の気配を感じました。多分鹿でしょう。・・・鹿だよね?
お馴染みの丹沢クリステルも、真夜中に見るとちょっとしたホラーです。
19時30分 無事大倉バス停に下山しました。西丹沢ビジターセンターを出てから、実に11時間10分にも及んだ死闘でありました。
今回はまさに死力を尽くした感のある山行きでした。やり遂げたと言う達成感と共に、もう二度とやらないと言う思いでいっぱいです。丹沢を極めたいとか、己の肉体の限界にチャレンジしたいなどの動機が無い限りは、このルートを日帰りで歩くことは全く持ってオススメしません。
日帰りは推奨しませんが、このルートそのもは非常に素晴らしいです。展望、スリル、歩き応えと3拍子そろった文句なしの良コースです。蛭ヶ岳山荘か、あるいはみやま山荘に一泊する計画を立てれば、充実した素晴らしい山行きとなることでしょう。
シロヤシオシーズンの丹沢は非常にオススメです。
<コースタイム>
西丹沢ビジターセンター(8:20)-ゴーラ沢出合(9:00)-檜洞丸(11:00~11:10)-臼ヶ岳(12:50)-蛭ヶ岳(14:10~14:30)-丹沢山(15:55)-塔ノ岳(16:50~17:20)-堀山の家(18:15)-見晴茶屋(19:00)-大倉BS(19:30)
長々と最後までお付き合い頂き、誠にありがとうございました。
コメント
登山初心者で塔ノ岳の情報収集をしており、
こちらのブログを拝見いたしました。
山、道、人などの状況も分かりやすく
とても面白く書かれており
笑いながら読ませていただきました!
これからもブログ更新を楽しみにしております!
むにむに様
コメントをありがとうございます。
今後もポツポツと更新して行きますので、またご気軽にご訪問ください。
これだけ沢山の登山をされており尊敬します。
これだけの山々を制覇されているということは、体力作りや筋トレなどしてますか?
私は鍋割山に登っただけでヘトヘトしてしまったので(>人<;)尊敬です!
>むにむに様
山登りのための最適なトレーニングは山に登ることです。という事で私の場合、ほぼ毎週どこか山の中をほっつき歩いるのがトレーニング代わりで、筋トレなどは特にしていません。
毎週登る時間の取れない場合は、スクワットや踏み台昇降運動などが有効らしいです。・・・自分ではやっていないので「らしい」としか言えません。
なるほど。
毎週末に山登りですね、
かなり鍛えられそうですね!
塔ノ岳に登ってみたいけど、
大倉尾根がキツイらしく…
でも登山慣れする為にも大倉尾根
行ってみます!
お忙しい中コメントいただきありがとうございます!
お身体に気を付けて登山されてください。
ブログこれからも楽しみにしてます!
初めまして。還暦のゆるゆるトレランナーです。
このルートを4/29に行き、事前調査でこちらにお邪魔しました。
蛭ヶ岳手前の登り、強風にあおられ振り向くのも恐ろしかったけど、下山後の達成感はたっぷりでした。
*筋肉痛が一週間収まらなかったことは内緒(-_-;)。
ユーモアたっぷりの文章、今後も楽しみにしております。
おがじいさま
コメントを頂きましてありがとうございます。
還暦過ぎで丹沢主稜を日帰りで踏破されるとは壮健ですね。願わくば私もそれくらい元気であり続けたいです。
このルートにはまた再訪してみたい気もしますが、次回は素直に一泊して歩きます。。