大菩薩峠 古の峠越えルート、牛ノ寝通りを歩く

牛ノ寝通り
山梨県甲州市にある大菩薩峠(だいぼさつとうげ)に登りました。
奥多摩よりもさらに奥地の、多摩川源流域にある小菅村からのアプローチです。上日川峠からのアクセスが主流となった今日においては、下山に使用する人がごく稀に居る程度の人影疎らな静かな道です。
新緑に包まれた、巨樹の道を巡る静かな山旅をしてきました。

2017年5月20日に旅す。

牛ノ寝通りとは、大菩薩嶺の東にある石丸峠付近から東に向かって延びる、長大な尾根です。どこからどこまでが牛ノ寝通りなのか、正確な定義はありませんが、だいたい奈良倉山付近までを指すことが多いようです。
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比較的緩やかな傾斜の尾根が長々と続くため、遠方からは寝ている牛の背中のように見えると言うことでこの名が付いたと言われています。

この道はガイドブック等で大菩薩嶺からの下山路として紹介されることが多いです。全長10km以上におよぶロングルートであるためか、この道を登りに使う物好きはあまり存在しません。

しかし、逆にそんなところがクラシック・ルートが大好物である物好き系ハイカーである私のツボを強く刺激するのです。ただの天邪鬼とも言いますが。

と言うことで、本日は大菩薩峠からの下山路として名高い牛ノ寝通りを登ります。
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コース
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小菅村役場前より牛ノ寝通りに取り付き、石丸峠を経て大菩薩峠へ。下山はメジャールートである上日川峠へ下ります。

コースタイムはおおよそ7時間ですが、その大半をずっと登り続けなければならないタフな行程です。

1.牛ノ根通り アプローチ編 多摩川源流の小菅村へ

7時20分 奥多摩駅
大菩薩嶺は一般的に中央本線沿線の山と見なされておりますが、今日の旅は青梅線の奥多摩駅から始まります。
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本日のテーマは物好き登山ですから。

7時25分発の小菅の湯行のバスに乗り込みます。
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奥多摩駅到着が8時過ぎになってしまうホリデー快速では、このバスへの乗り継ぎに間に合いません。この便に乗るためには鈍行列車を乗り継いでこなければなりません。

バスに揺られることおよそ1時間で小菅村役場前に到着です。発車時には満員だったバスが、小菅村に到着した時点で乗客は2人だけでした。やはり牛ノ寝通りを登りに使おうなんて物好きは居ないんですね。
小菅村役場
乗客の大半は途中の留浦(とずら)で降りて行きました。お目当てはおそらく雲取山でしょう。

バス停から登山口までは歩いて5~10分くらいです。道標が一切無いので地図を良く確認しましょう。魚の養殖場の脇を通っていきます。
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8時35分 牛ノ寝方面登山口に到着しました。
さあ、本日は登りだけで10km以上のロングコースです。気合を入れて行きましょう。
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2.石丸峠までのながーい道のり

登り始めからいきなり杉林の急登が始まります。まあ、奥多摩の山は大概がそうですね。
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ワサビ田の脇を登っていきます。後なって振り返ると、この最初の登りがこの日の全行程の中でも一番厳しい場所でした。
小菅村のワサビ田

しばらく登ると杉の人工林が終わり広葉樹の森に変わりました。落ち葉が厚く堆積しており、足が沈み込んで何気に歩きにくい道です。
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傾斜が緩み、ほぼ平坦な道になりました。この辺りは熊が多いようです。何故分かるのかと言うと、糞が至るところに落ちていたからです。そういえば熊鈴を持って来てないな。
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9時30分 モロクボ平に到着
小菅の湯方面から来る道との合流地点です。その名が示すとおり平場が広がっています。
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道中に咲いていたツツジ。ツツジは種類が多すぎて識別が難しい。これはただの山ツツジですかね。
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急登箇所は終わったのでここで同行者ST君と先頭を交代です。
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ロクに詳細も知らされずに物好き系登山に駆り出された彼は、はたしてこの長く厳しい道を最後まで歩き通すことが出来るのでしょうか?

モロクボ平から牛ノ寝通りの尾根に取り付くまでは、まだ一道あります。高低差はほとんど無く平坦で歩きやすい道です。
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大マテイ山の山腹を巻くようにして道が続いています。道はやや荒れ気味で、道幅が極端に狭くなっている場所がありました。
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10時10分 大ダワ(棚倉)に到着
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ようやく牛ノ寝通り本体に取り付きました。ここまでの道のりは言わば前座のようなものです。やけに長い前座でしたが。

ここでザックを落として昼食休憩を取りました。時間はまだ10時ですが、起床したのが4時なので既に腹ペコです。
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腹が満ちたところで行動再開です。牛の背中に例えられる緩やかな道を進んで行きます。
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眩いばかりの圧倒的新緑の中を歩きます。冬枯れの季節にこの道を歩いても、多分面白くもなんとも無いことでしょう。
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歩きやすい道ではありますが、非常に長いです。下山者の姿は何人か見かけましたが、登っている人間は居ません。この後、一人だけトレランに抜かされました。
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この道は、江戸時代に整備された青梅街道よりも更に古い時代の街道跡です。甲州古道と呼ばれる武蔵府中(現東京都府中市)と甲斐府中(現山梨県甲府市)を結んでいた道の一部だったとのこと。

朽ちた道標。野生動物が爪とぎに使ったような跡が付いていました。・・・えーと、ノラ猫さんかな?
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平坦な道を歩くボーナスタイムは永遠には続きません。ゴールに近づくにつれて尾根道は徐々に高度を上げ始めます。
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ST君にはまだ余力があるらしく、その足取りには力強さが感じられます。

11時30分 榧ノ尾山に到着しました。牛ノ根のだいたい中間付近にあるピークです。
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山頂の様子
三角点があると言うだけで、山頂っぽさはまるでありません。ただの尾根上の張り出しです。
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樹林に囲まれており、展望はありません。水の詰め替えを行っただけで、休憩は取らずに出発しました。
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段々と登りの斜度が増してきました。歩き始めてからすでに3時間以上が経過し、疲労の色が濃くなってきました。
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この道はいったい何時まで続くのでしょうか?

木の根に八つ当たりのちゃぶ台返しを始めるST君。
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阿呆なことやっているうちに益々疲労の度が増したようです。歩みに力が感じられなくなってきました。
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「牛ノ寝通りなんて距離が長いだけで緩い道だし楽勝だよガハハ」と太鼓判を押した当の私も既にバテ気味です。
こんなに長かったっけ?

振り返ったところで、ここまで歩いてきた牛ノ寝通りの尾根が一望できました。こうして上から見下ろす分には確かに平らな尾根です。とっても長いけどね!
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標高が上がってきたところで道脇に笹の姿が見え始めました。実に大菩薩嶺っぽい景色です。
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谷向かいに雁ヶ腹摺山が見えました。500円札に描かれた富士山の撮影地として知られている山です。
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何度もニセピークに騙され、心が折れそうになったところで、ようやく終わりが見えました。
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12時50分 天狗棚山(の脇)に到着
小金沢蓮嶺の稜線に到着しました。歩き始めて4時間5分で牛ノ寝通り完登です。
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昔の旅人と言うのはみんな健脚だったんだなぁ、と改めて思わされました。

3.大菩薩峠へと続く爽快な稜線歩き

前方には南アルプスの展望が広がります。
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眼下には大菩薩湖が見えました。
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こちらは天狗棚山。牛ノ寝通りの付け根付近にある小金沢蓮嶺上の小ピークです。ここで崩れ落ちるようにして小休止を取りました。
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ウィダーinゼリーでエネルギーを補充した所で石丸峠に向かって下って行きます。
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石丸峠とその先に立ちはだかる熊沢山が目の前に現れました。「今からあれ(熊沢山)を越えるんだよ」と言ったらST君の顔から見る見る生気が失われました。
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13時10分 石丸峠を通過
今は亡き塩山市(現在は合併して甲州市)の名前を冠した年代物の道標です。
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石丸峠から望む小金沢山(2,014m)。その右奥には世界遺産のアイツが薄っすらと霞んで見えました。
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急登と格闘するST君。心なしか死相が浮かんでいるように見えました。
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登るにつれて展望が開けてきました。
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こちらは今日歩いてきた牛ノ寝通り方面の展望。奥には奥多摩三山が並んで見えます。
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奥多摩三山をズーム
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熊沢山より見下ろす石丸峠。こうして見ると結構な急坂ですね。
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坂を上りきってからの展望。若干霞んではいますが、最高の登山日和と言えるでしょう。
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笹原の斜面から一転して熊沢山の山頂部は鬱蒼とした樹林帯に覆われています。地面が濡れていて異様に滑りました。
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ひんやりとした空気の森の中を歩くこと10分と少々で大菩薩峠が見えてきました。
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これまでの静かな道から一転して、喧騒に満ちた場所に出ました。
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13時35分 大菩薩峠に到着しました。牛ノ根通りを歩き切りました。いやはや、下る分には楽な道ですけれど、登るとなると結構大変でした。
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大菩薩嶺の山頂はここから更に1時間ほど歩いたところにあります。
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帰りのバスの最終便が上日川峠を立つのは15時45分。時間的には山頂まで行けないことも無い時間です。先ほど死相が出ていたST君に「山頂行きたい?」と聞いたところ、無言で首を横に振られました。

と言う事で本日はここでゴールです。

峠より望む甲府盆地。霞んでいて良く見えませんでした。
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峠より望む大菩薩湖
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こちらは反対側、石尾根方面の展望です。真ん中の尖った山は鷹ノ巣山(1,737m)かな。
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眼下にスタート地点の小菅村が見えました。秘境の村と言われるだけのことあって、すごい山の中にあります。
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こちらはここまで歩いてきた牛ノ寝通り。
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山頂行きを断念し時間に余裕が出来たので売店を物色します。
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山バッジが21種類も売られていました。全部揃えると10,500円です。バッチコレクターの方は是非挑戦してみて下さい。
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ここでアイスキャンディー(150円)を食す。
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4.上日川峠にラクラク下山

下山を開始します。車も通れるような道なので、もう後は消化試合のようなものです。
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人だかりが出来ていたので何事かと思いきや、鹿が居ました。人の視線など何処吹く風で食事に没頭中です。
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道が平坦になるなり急に元気になった中年二人。
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14時25分 福ちゃん荘を通過します。馬刺しが名物らしいですが、今回は特に用事もないので素通りします。
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福ちゃん荘から上日川峠までは15分くらいです。途中の登り返しにブーたれつつ、あっという間に到着しました。
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14時40分 上日川峠に下山
晴天と言う事で増発便を出したらしく、バスが3台待っていました。
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帰りは途中下車して大和天目温泉に寄ります。PH値10.3と言う強アルカリ性の温泉です。肌がヌルヌルになります。170520牛ノ根通り_070
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料金は510円と大変リーズナブルです。

帰りは甲州市の市民バスを利用しました。料金先払い方式で、距離に関係なく300円です。スイカ・パスモは使えません。
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以前に訪れた時よりも運行本数が増えており、利用しやすくなっていました。

17時35分 甲斐大和駅に到着
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ちょうど良いタイミングで特急通過待ち中の電車がホームで待っていたので、それに乗って帰還です。
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牛ノ寝通りはガイドブックやヤマレコなどサイトで大菩薩峠からの下山路としてだけ紹介されていることが多い道ですが、歩いてみて納得しました。延々と続くこの道は、登りで使うには結構ハードな道です。
下山に使用すれば小菅の湯にも立ち寄ることができて一石二鳥といえるでしょう。
この道を登りで使うことをオススメできるのは、厳しい道でトレーニングしたい人、もしくは物好きな人くらいですかね。
コースタイム通りに歩くと帰りのバス時間が結構ギリギリになるので、挑戦しようと思う物好きな方は早め早めの行動を心がけてください。

<コースタイム>
牛ノ寝方面登山口(8:35)-モロクボ平(9:30)- 大ダワ(棚倉)(10:10~10:25)- 榧ノ尾山(11:30)- 天狗棚山 (12:50~13:00)- 石丸峠 (13:10)- 大菩薩峠 (13:35~13:55)-福ちゃん荘(14:25)-上日川峠(14:40)

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物好き系登山 完

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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