神奈川県山北町にある不老山(ふろうざん)から、静岡県小山町および山梨県山中湖村にまたがる三国山(みくにさん)までを縦走しました。
西丹沢の端に連なり、神奈川県、静岡県および山梨県の三県境界を形成している三国山稜(みくにさんりょう)の稜線を辿る行程です。三国山稜の稜線上には富士箱根トレイルと呼ばれる登山道が整備されており、その名の通りにコース上の様々な場所から富士山を望みつつ歩くことが出来ます。
加齢による衰えに少しでも抗うべく、県境の山々を横断するロングコースを歩いて来ました。
2023年11月19日に旅す。
不老山は西丹沢の中でも最西端に位置している、三国山稜と呼ばれる尾根上にある山です。丹沢山地の中ではあまり歩く人の数が多くはなく、どちらかと言うとマイナーなエリアに属してます。
この三国山稜を辿る富士箱根トレイルにはそこそこのアップダウンがあって歩き応えが十分にあり、所々で展望も大きく開けている、知る人ぞ知る優良コースです。
三国山稜の東端に位置している不老山は、特にこれと言った特徴があるわけでもない地味な山なのですが、登山コース上に数多くの手作り道標が設置されていることで有名です。
この標識は岩田澗泉さんと言う地元小山町の町議を務めていた一人の翁による作で、全部で170本近く存在していました。現在は風化が進み、その大半が既に失われています。
不老山に登った後は、三国山を越えて山梨県の山中湖村を目指します。三県を股にかけるロングコースをゆるりと歩いて来た秋の一日の記録です。
コース
御殿場線の駿河小山駅よりスタートし不老山に登頂します。不老山から富士箱根トレイルを辿って三国山まで縦走して、そこからはコースを外れて三国峠へ下り、好展望地の鉄砲木ノ頭へと登り返します。
下山は御殿場駅方面への路線バスがある山中湖旭丘へと下ります。なかなか歩き応えがあるロングトレイルの行程です。
1.不老山登山 アプローチ編 神奈川と静岡の県境を目指す旅路
7時 小田急線 新松田駅
西丹沢方面の玄関口である新松田駅へとやって来ました。本日の目的地である不老山は、西丹沢と呼ばれるエリアの中でも端の方に位置しており、登山口は静岡県内にあります。
新松田駅訪問時の恒例行事である、晴れていると富士山が見える窓からの本日のお天気占いを実施します。この通り雲一つない快晴で、本日は絶好の登山日和になりそうです。ナイスだぜジーフー。
西丹沢ビジターセンター行きのバス乗り場には、既に登山者の行列が出来ていました。
昔の西丹沢はせいぜいミツマタとシロヤシオのシーズン中に少し混みあう位で、後の季節は閑散としているイメージでしたが、近年では年間を通じて入山者が増えたように感じられます。
バスの待ち行列には加わらずに、新松田駅のすぐ向かいにあるJR松田駅から御殿場線へと乗り換えます。過去に御殿場線が交通系ICカードに対応していなかったことを散々ディスってきましたが、今ではしっかりと対応しています。
7時22分発の御殿場行きの電車に乗車します。御殿場線の運行本数は概ね1時間に1本しかなく、いつも結構混雑しています。松田から乗車する場合、座れないことのほうが多いです。
7時46分 駿河小山駅に到着しました。名前にことさら駿河と付ていることから察せられる通り、静岡県内にある駅です。不老山の山頂は神奈川県の山北町に属していますが、山頂に到る登山道は県境のラインに沿っています。
身支度もそこそこに、7時50分に本日の行動を開始します。
4月下旬から11月下旬までの期間限定で、駿河小山駅から三国山稜上にある明神峠行きの路線バスが運行されています。
このバスを利用することで比較的容易に不老山や三国山に登ることが出来るのですが、本日はあえてバスは使わずに全行程を歩いて登ります。
不老山の登山口は駿河小山駅の北側にあるのですが、改札口は南側にしかありません。そのためまずは駅前の道を道なりに、グルっと大回りして踏切を渡ります。
ですが踏切を渡る前に、道なりにあるこの坂の上までちょっと登ってみましょう、何のことは無い、坂の上から目指す不老山の姿が見えるんじゃあないかなと期待した次第です。
坂の上に登ると、三国山稜の山並みが見えました。中央左に見えているピークが三国山です。不老山は位置的に右端の辺りにあるハズですが、手前にある小ピークに阻まれてここからは見えませんでした。
2.手作りの道標に見守られながら歩む、不老山への道程
寄り道はこれくらいにして、先へ進みましょう。踏切を渡って道なり進みます。
踏切を渡ると、今度はすぐに鮎沢川にぶつかるので橋を渡ります。なるほどこの川に隣接しているから、駿河小山駅にはそもそも北口が存在しないわけですな。
川を渡ったら右折して、もと来た方角へぐるりとUターンするように進みます。5万分1スケールの山と高原地図ではどうなっているのかが少々わかり辛い地形でしたが、現地に来てみると納得のルートです。
道の脇に早速手作りの道標が現れました。これが話に聞く岩田澗泉さんの作品であるようです。曰く「不老山登る人百歳壮健」。
この標識の作者である岩田澗泉さんは、地元小山町の町議会委員を務めておられた方で、大正15年の生まれです。
ご存命であれば令和5年現在で97歳になるはずでしたが、平成29年に亡くなられたとのことです。百歳まで壮健とはなりませんでしたか。
標識の前から振り返って見ると、視界のすべて埋め尽くすかのように世界遺産のアイツが頭を覗かせていました。相変わらずでっけえなあ。
道なりに進んでこのY字路が現れたところで、左の小道へ入って行きます。一応は目印となる富士箱根トレイルの案内板も掲げられています。
小さな沢に沿って坂道を登って行きます。山から直接市街地へと流れ込んでいる沢であるためか、土砂災害特別警戒区域である旨の張り出しが掲げられていました。
8時25分 不老山の登山口に到着しました。このフェンスも何もないおっかない水路の脇から、山中へと入って行きます。
登り始めて早々から、砂防堰堤に沿った荒れ気味の道となりました。もともと登山道というよりは、堰堤を整備するための作業道だったのかな。
ここにも翁が作った標識がありました。「ご注意あれ」との日本語の警告だけではなく、わざわざ英語でも併記されていました。なかなか凝っていますな。
途中で沢沿いから外れて、かなり無理やり感がある急階段で尾根の上へ向かいます。私が勝手に東電標準仕様と呼んでいるプラスチック製の階段が埋め込まれていました。これがあると言うことは、この道はもともと送電鉄塔の巡視路なのでしょう。
登り切った所にも手作り道標がありました。曰く「山を歩く一歩も油断するな」。明治時代に上高地で猟師兼ガイドをしていた嘉門次氏の言葉だそうです。
これらの標識はそもそもいったい何のために設置されたのかという話になるのですが、もともとは地元の行政が不老山に設置した道標が老朽化していて、道迷い遭難が多発していたことが発端となっています。
翁はその現状を改善するように何度も町に申し入れを行っていたのですが、一向に改善されないことに業を煮やし、遂には「だったらワシが自分で設置したるわい」と一念発起するに至った。という経緯であるようです。
それだけを聞くと美談のようにも聞こえますが、実際はいろいろトラブルもあったようで・・・
尾根の上に乗りました。道が荒れ気味なのはここまでで、この先は安心安全な尾根筋の登山となります。
そろそろ紅葉が見頃の時期なのではなかろうかと期待していましたが、現在地の標高付近はまだ薄っすらと黄色く色付き始めた段階でした。本命は三国山稜の尾根上にあるブナ林なので、今は気にせずとにかく前へ進ましょう。
予想していた通り、道の脇に送電鉄塔がありました。鉄塔の周辺は展望が開けていることが多いのですが、ここでは鬱蒼とした杉林に覆われていました。
今度は不老山の仙人(?)が描かれた標識です。もはや安全のためであると言う当初の名目も何もあったものではない内容ですが、ユーモアがあって純粋に見ていて飽きない意匠です。
急登もなく緩やかな尾根道が続きます。三国山稜の登山道は標高差こそれほど大きくはないのですが、そのかわりに横方向への移動距離が結構大きめです。
ここにも恐らくは手作り標識が掲げられていたのでしょうけれど、風化によりすでに失われて柱だけが残っていました。
こうして柱だけになってしまっているものを、この後も複数個所で目にしました。特にラミネート加工などを施しているわけでもない木製の標識なので、山中で風雨にさらされ続けていれば当然いつかはこうして朽ち果ててしまいます。
こちらの標識は擦れてしまっていて、もう内容を読み取ることが出来ません。花らしき絵柄が描かれているのだけが、何となく見て取れます。
もっと早くに見る来るのだったと言う、後悔の念が込み上げて来ました。
不老山の手作り標識にまつわる話はずっと以前から耳目に触れていたのですが、なんとなしに後回ししていた間にその多くが失われてしまっていました。後悔先に立たずです。
再び送電鉄塔が現れました。今度はいかにも眺めが良さそうで期待が高まります。
富士山がドーンと姿を見せました。三国山稜はそのほぼ全域が樹林に覆われて展望は無いのですが、こうして何ヵ所か視界の開けている展望スポットが存在します。
今度はラッパ(?)のようなものがかぶさられた標識がありました。だいぶ朽ちてきてはいますが、まだ辛うじて書いてある内容を読み取れます。
曰く当時は56本あったと言う道標が全て破壊されたと、何やら怒り心頭のご様子です。この件に関しては若干の補足事項がありまして、標識を破壊したというか撤去したのは行政の手によるものです。
これら翁の手作りの道標は行政の許可を得ることなく、無断で設置されていました。となれば、登山道を管理する行政からすれば撤去という対応を取るのは、まあ当然と言えば当然の対応です。
その後も翁と行政との間の軋轢はエスカレートして行きました。
行政の設置した案内板を勝手にペンキで修正したり、行政の設置した道標を「内容に誤りがある」と切断して引っこ抜いたりして、ついには警察にご厄介となり静岡地裁で執行猶予なしの実刑判決を食らうに至ります。
その後の東京高裁での控訴審で実刑は回避されて、最終的には執行猶予が付いたようですが、何れにせよ相当パワフルなご老人であったことは間違いなさそうです。
3.不老山登山 登頂編 西丹沢の果てにひっそり立つ地味なる頂
そろそろ登りの中間地点を過ぎた頃合いですが、相変わらず緩い勾配の尾根道がダラダラと続きます。
標識を無断で設置するのは決して褒められた行為ではありませんが、特にこれと言った特徴があるわけでも無い地味山でしかなかった不老山の魅力と知名度を大きく高めた点において、翁が果たした功績は計り知れないものがあります。
現存している道標については、保存のための何らかの処置を施して欲しいとは思う所ですが、経緯が経緯だけに色々と難しいのかな。
杉林に少しだけ切れ目があり、お隣の大野山の姿が見えました。山頂部がカヤトになっているため遠目からでも大変よく見立ち、同定は容易です。
また送電鉄塔があるらしく、再び頭上が大きく開けました。今までで一番眺めが良さそうな光景に期待が高まります。
期待していた通り、大きく展望が開けていました。素晴らしい。不老山の山頂には展望が一切ないため、事実上この場所が最大の展望スポットとなります。
富士山の裾野に半分めり込むむようにして立つこの山は、愛鷹山(1,504m)です。富士山よりも古い時代に活動していた火山で、かつては富士山とよく似た姿をしていたと考えられています。
富士山の右隣には、不老山の登頂後に目指す予定でいる三国山の姿が見えます。しかし今更ですけれど、こうして見ると何気に結構遠いような・・・
山頂に近づいて来たところで、尾根はようやく真面目に標高を上げ始めました。
紅葉も良い感じに色づいていましたが、そもそも不老山の大部分は杉の植林帯であるためか、一面がオレンジや黄色に染まる様な華やかさには欠けています。
背後に足柄平野と相模湾が少しだけ見えました。お隣の大野山のような大展望とまではいきませんが、全体を通じて眺めはそう悪くはない山です。
未舗装の林道にぶつかりましたが、ここはそのまま横断して真っすぐに進みます。
10時40分 三国山稜の主稜線上まで登って来たところで、富士箱根トレイルの見慣れた金太郎像付きの道標が出迎えてくれました。不老山の山頂はここから東へ少し外れた場所にあるので、サクっと往復します。
山頂までの最後の道程は、高低差がほとんどないほぼ水平移動の道です。周囲は相変わらずな杉の植林で、展望は全くありません。
山頂が見えて来ました。貸し切り状態かと思いきや、意外にも先客が数名いました。
10時45分 不老山に登頂しました。道標を兼ねた山頂標識が無造作に立っているだけの、地味極まりない山頂です。
この山の読み方なのですが、「ふろうやま」「ふろうさん」「ふろうざん」の3つの説が存在しており、なにが正解なのかはよくわかりません。
地元の小山町ではもっぱら「ふろうざん」と呼ばれているらしいので、本記事ではとりあえずそれを採用しました。
山頂は全方位がぐるりと樹林に囲われており、展望は一切ありません。頭上だけがぽっかりと開けていました。
これほど地味な山であるにも関わらずそこそこの数の入山者がいるのは、やはりあの手作り道標の評判によるところが大きのではなかろうかと思います。
4.三国山を目指し三国山稜を縦走する
眺望の無い山頂に長居したところで得るものはありません。僅かな山頂滞在期間で分岐地点まで引き返して来ました。これより、三国山稜の縦走へと移ります。
まずは世附峠に向かって、しっかりと200メートル以上標高を落とします。その後の登り返しのことを思うと憂鬱ですが、道がそうなっている以上は仕方がありません。
11時15分 サクサクとテンポよく下って、世附峠まで下りて来ました。林道が尾根を横切っており、仮設トイレがあります。
ここにも翁の作った標識がありました。保存状態は比較的良好で、書かれている内容も読み取れます。
それにしてもこの標識、情報量が凄まじいですね。ここまで来るともはや単なる道標の域を越えて、一つの芸術作品であると思います。
明神峠までは5.4kmと、結構重めの数字が掲げられていました。深い考えも無しに計画を立てましたが、本日歩こうとしている行程は結構なロングコースです。
突如前方の視界が大きく開けました。ここはサンショウバラの丘と呼ばれている場所で、三国山稜におけるハイライトとでも言うべき好展望地となっています。
ちなみにサンショウバラと言うのは、別名でハコネバラとも呼ばれる野生のバラで、花期は6月頃です。うーむ、正直さきほどから紅葉はイマイチであるし、これはもしかしなくても訪問時期を誤ってしまったのではなかろうか。
南の谷を挟んだすぐ向かいに箱根があります。噴煙を上げる大涌谷まで何となく見えています。
反対側の北側には西丹沢の山並みが広がります。いまいち同定に自信がありませんが、正面に見えているのは世附権現山から畦ヶ丸に至る尾根でしょうかね。丹沢エリアの中でも、特に歩く人が少ない一帯です。
遠くには甲相国境尾根が横切っており、三国山稜とはこの先の三国峠を挟んで接続しています。2つの尾根が山中湖に向かって窄んでいくような地形になっています。
背後には先ほど登ってきたばかりの不老山の姿がありました。なんと言ったらよいのか、一言で言うと地味っすな。
道が少々藪っぽくなって来ました。富士箱根トレイルを大真面目に縦走する人は、やはり圧倒的に少数派なのだろうか。
三国山稜の土壌は、富士山やら愛鷹山やらからの降着火山灰かならなる黒っぽい砂地の地面です。いかにも栄養に乏しそうなものなのですが、それでもこうしてしっかりと木々が生い茂っています。
ちなみにこの地面、乾燥している時だとたいへん埃が舞い上りやすいので、吸い込んでしまわないように注意を要します。
いつ設置されたものなのか、なかなかめずらしいコンクリート製のテーブルとベンチがありました。表面がびっちりとコケに覆われており、自然の一部へと還りつつありました。
湯船山に向かって、尾根が標高を上げ始めました。山頂付近には杉林ではない自然林が残っているのが遠望できます。今度こそ紅葉にも期待が持てそうかな。
ここまでが緩やかだった分を一気に取り返すかのように、結構な急登です。いっちょう気合を入れて行きましょう。
伐採地があり、南側の展望が少し開けました。見える光景に関してはサンショウバラの丘からの眺めと大差はなく、特にここから眺める意味はあまり無いと思います。
この伐採されている部分にはいずれはまた植林するのでしょうから、期間限定の展望となりそうです。
急登を登りきると、お待ちかねの自然林のエリアに入りました。さあて、紅葉はどんな具合でしょうか。
期待していた通り、ちょうど良い感じに色付いていました。ここまで歩いてきて、ようやくまともな紅葉見物が出来ました。
またもや東電標準仕様のプラスチック製階段が現れました。これがまだあると言う事は、この先にもまだ送電鉄塔があると言う事です。
標高が1,000メートルを超えた辺りから、ブナの巨木がチラホラと目につき始めました。
三国山稜には丹沢エリアの中でも最大規模となるブナ林が分布しています。近年丹沢の各地ではブナの立ち枯れ現象が深刻化していますが、三国山稜の一帯にはあまり被害がなくこうして健在です。
見上げる高さの見事なブナの巨木です。立ち枯れの被害が深刻な丹沢主脈からも、そんなに遠く距離が離れているわけでもないのですが、なぜ場所によって立ち枯れが発生したりしなかったりするのか、不思議なものです。
12時45分 白くらの頭に登頂しました。湯船山の手前にあるピークの一つです。急登区間はここまででひと段落して、この先はあまりアップダウンのないゆるやかな尾根道となります。
稜線上の紅葉はすでに終了しており、冬枯れの殺風景が広がっていました。なかなか紅葉のど真ん中を引き当てるのは難しいものがあります。
白くらの頭を出てからは実にあっけなく、次のピークが現れました。
13時5分 湯船山に登頂しました。展望こそありませんが、ここも広葉樹林に覆われたピークなので、紅葉の最盛期に訪れればさぞや華やかだったことでしょう。今回はちょっとタイミングが遅すぎました。
5.三国山登山 登頂編 明神峠を越えて、3県国境の山を目指す
明神峠を挟んだ先に、これから目指す三国山の姿が見えています。まだまだ結構な距離があり、そのうえ割としっかりと登らされそうです。
明神峠に向かって、一度もったいないくらいに大きく標高を落とします。縦走登山とは元々そいうものでございます。
三国山稜の麓には富士スピードウェイがあり、結構大きな騒音が山の上にまで聞こえてきます。その点はあまり風情が感じられない登山コースかもしれない。
やがて眼下を並走する車道が見えてきました。三国峠を越えて山中湖へと至る静岡県道147号線です。
視界が開けて、御殿場の街並みが一望できました。こうして上から見ると、御殿場と言うのは町全体が富士山の裾野の上に乗っかっているのが良くわかります。
13時50分 明神峠まで下って来ました。山道を延々と登って来た先に車道があると、なんだかとても残念な気持ちになるのはたぶん私だけでなないでしょう。
季節限定ではありますが、明神峠へは駿河小山駅から路線バスで訪れることも可能です。明神峠からスタートして駿河小山駅に向かって下るのが、恐らくは最も一般的であろう不老山登山の行程です。
下って来て早々ですが、道の脇に取って付けたかのような登山道から。三国山に向かって再び登り始めます。
この辺りまで登ってくると、もう完全に紅葉は終了しており、すっかり冬枯れの光景が広がっていました。
三国山にだいぶ近づいて来ましたが、しかし思った以上にしっかりと登るんですね。明神峠から三国山山頂までの標高差は400メートル少々あるので、だいたい高尾山1個分くらいです。
ここからも箱根外輪の山々が良く見えました。湯本が箱根の表だとすると、今見えている姿は裏側と言う事になります。
こうして真横から見ると、外輪山の中でも金時山の存在感が際だっています。
東名高速道路の行く先に、沼津らしき場所が見えています。そう言えば、御殿場線の終点は沼津でしたな。
ここで再び県道147号線を横断します。横断歩道も何もない上に、ここを通る車は例外なく飛ばしているので横断時には注意を要します。
三国山のブナ林もまた、湯船山に負けず劣らず見事です。見上げる高さの巨木が立ち並びます。
ほぼ終わりかけではあるものの、まだ紅葉しているものも残っていました。楓のような派手さこそありませんが、個人的にはブナの柔らかい感じのする紅葉が大変好みです。
ここでまたもや送電鉄鉄塔の下を通ります。県境の山間部であるためか、三国山稜の界隈はとにかくこうして送電線だらけです。
送電鉄塔のあるところに好展望ありの法則はここでも健在で、遠くに丹沢主脈の山並みが見えました。
視線を転じると、相模湾とその先にある三浦半島までもが一望できました。
三国山の山頂まではもうあと一息です。ここまでの長い道のりで流石に少々お疲れ風味になってきましたが、もうあとひと頑張りラストスパートをかけてて行きましょう。
三国峠を挟んだ向かいに、カヤトの広がる鉄砲木ノ頭の姿が見えます。この後、下山する前に立ち寄って行く予定です。
山頂が見えて来ました。ここでもやはり山頂には展望がありません。
14時55分 三国山に登頂しました。その名の通り神奈川、静岡および山梨の3県境界となっている山です。三国山稜自体はまだ続くのですが、この先はもう過去に一度歩いたことがある領域なので、本日はここまでで切り上げます。
6.山中湖を一望する好展望地、鉄砲木ノ頭
到着して早々ですが、すでに日没時間も近づきつつあるので、足早に下山を開始します。
15時20分 三国峠まで下って来ました。このまま道なりに下山することもできるのですが、せっかくなので返す刀で鉄砲木ノ頭に寄り道をして行きます。
この鉄砲木ノ頭には過去に何度か訪れているのですが、富士山と山中湖を一望する好展望地なので、素通りするのはあまりにも勿体ない場所です。
振り返って見た三国山は、のっぺりとしていてあまり特長が感じられません。不老山や湯船山もそうでしたが、三国山稜にある山はどこも基本的に、ピークよりも道中の方が眺めが良い傾向にあります。
15時40分 鉄砲木ノ頭まで登って来ました。ここは何度来ても、開放感がって気持ちの良い山頂です。
この通り富士山と山中湖がドーンと正面に見えます。山中湖側からなら比較的簡単に登ってこれる場所なので、ここは本当にオススメです。
クジラ型に見えると言う山中湖ですが、ここからだとちょうど尾の部分が切れてしまっています。
謎の観測機器が設置されていました。これは一体何を計測している機械なのだろうか。
最後に絶景も拝めて満足しました。日没までももうあまり時間も無いので、今度こそ下山します。
一面のカヤトが夕日に照らされて、金色に光り輝いていました。青き衣を纏って降り立ちたくなるような光景です。
ちょうど宝永山のある辺りに陽が沈み、特に狙っていたわけではありませんがダイヤモンド宝永山を拝むことが出来ました。
僅か数分でダイヤタイムは終了です。完全に暗くなる前に下山しましょう。
サクサクと足早に下り、展望台まで下りて来ました。駐車スペースには、溢れんばかりの車が停まっていました。ここはそんなに人気のあるスポットだったのですね。
夕日を眺めに来たのであろう人々が余韻に浸っていました。この展望台は、ダイヤモンド富士が見える日になると、かなり熾烈な場所取り合戦が繰り広げられるそうです。
7.三国山登山 下山編 山中湖旭丘まで歩く
展望台からはしばしの車道歩きとなります。道に歩道はなく交通量は割と多めなので、歩く際には周囲には十分気を付けてください。
このまま道なりに歩いても下れますが、途中から車道を外れてショートカットが出来る登山道があります。
16時40分 三国山登山口まで下って来ました。本来ならこの後は石割の湯まで歩いて一風呂浴びた後に、山中湖周遊バスで富士山駅へ戻るのが定石です。ですが本日は思うところがあり、このまま山中湖旭丘を目指して歩きます。
思うところと言ってもそんな難しい話ではありません。本日は我が第3の最寄り駅こと小田急線の喜多見駅に自転車を停めて来てしまっているので、できれば中央線方面ではなく小田急線と接続のある御殿場線方面に戻りたかったと言うだけの事です。
山中湖旭丘まで行けば、御殿場駅行きの路線バスがあります。
山中湖平野と山中湖旭丘との間には山中湖周遊バスが走ってはいるのですが、右回りと左回りが交互に運行されているため、方向を限定した場合あまり本数は多くありません。と言う事で、始めからバスはあてにせずに歩きます。
山と高原地図にコースタイムの記載のない区間なので徒歩での正確な所要時間は不明ですが、距離からすると30~40分程度であろうと見込んでいます。
陽が沈むなり急激に気温が下がって、シンシンと寒くなって来ましたぞ。山中湖は標高1,000メートル近い高地にあるため、夜の冷え込みは具合は下界とは明らかにレベルが違います。
17時20分 山中湖旭丘の前にある交差点まで歩いてきたところで、ちょうどいいタイミングで御殿場行きのバスがやって来ました。ちょっと待ったジャストモーメント!それに乗りたい。
大慌てでダッシュしてバスを追いかけて、何とか転がり込むことが出来ました。ふう、ギリギリセーフでした。
およそ40分程バスに揺られて、御殿場駅に到着した時には既に周囲は真っ暗でした。11月も中頃となると、だいぶ日が短くなりましたな。
行きと同様に結構混雑している御殿場線に乗り込み、帰宅の途に着きました。
もっと早くに訪れるべきだった。今回はそんな後悔の念に駆られた一日でした。
岩田澗泉さんの作った道標は、現状で既に8割方は失われてしまっています。現存している標識についても、完全に朽ちて土にかえってしまうまでに残された時間はもうあまりないので、現物を見てみたいと言う方は早めの訪問を推奨します。
小山町の行政に従事する方々からすれば、恐らくは相当頭の痛い存在であっただろう道標ですが、不老山の魅力を語る上では絶対に欠くことのできない要素であろうかと思います。
今回は半分オマケのような扱いをされている富士箱根トレイルについては、道中には眺めの良い場所もあって、純粋に歩いていて気持ちの良いイキングコースであると思います。
失われつつある翁の遺作を眺めつつ、丹沢の果てにある県境の山並みを巡ってみては如何でしょうか。
<コースタイム>
駿河小山駅(7:50)-不老山(10:45)-世附峠(11:15~11:25)-白くらの頭(12:45)-湯船山(13:05~13:20)-明神峠(13:50)-三国山(14:55~15:05)-三国峠(15:20)-鉄砲木の頭(15:40~15:55)-山中湖旭丘(17:20)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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