神奈川県、山梨県および静岡県の三県にまたがる三国山稜(みくにさんりょう)を歩いて来ました。
丹沢山塊が富士裾野に向かって沈みこむ末端部に位置する、起伏の少ないなだらかな尾根です。また、三国峠を挟んで隣接する鉄砲木ノ頭は、一面にカヤトの広がる好展望地となっており、三国山と合わせて登るのが定番です。
今回は三国山と鉄砲木ノ頭のセットにさらにプラスして、山中湖畔からのダイヤモンド富士を狙うと言う欲張りな計画での訪問でありましたが・・・ダイヤの方は雲に阻まれ空振りとなりました。
2019年2月17日に旅す。
山中湖の南岸に沿って東西に延びる、三国山稜ハイキングコースを歩いて来ました。三国山稜は静岡県と山梨県の境界となっている尾根で、標高1,000メートル前後のなだらかな山が連なっています。

ブナの樹林に覆われ展望にはあまり恵まれていない山域ですが、アップダウンが少なく歩きやすい尾根であることから人気のハイキングコースとなっています。
そして2月の中旬と言えば、山中湖の湖畔から、富士山に向かって太陽が沈むダイヤモンド富士を鑑賞することのできるシーズンであります。

山中湖畔まで出向く以上は、当然ながら三国山稜巡りと同時にダイヤ鑑賞も狙ったわけですが。

結果は見事に惨敗。
コース

籠坂峠(かごさかとうげ)より三国山稜を歩き三国山へ。三国山からは三国峠を越えて鉄砲木ノ頭まで歩きます。その後は山中湖畔へと下りダイヤモンド富士を鑑賞する。
標準コースタイム6時間ほどの行程です。
1.三国山登山 アプローチ編 御殿場から籠坂峠を目指す
7時39分 小田急線 新百合ヶ丘駅
小田原行きの急行に乗り込み、新松田駅へと向かいます。

どうでもいいことですが、最近の山行きは、このアングルのシーンからスタートする割合がやけに多いですな。
8時38分 新松田駅に到着しました。
富士五湖エリアへのアプローチとしては、富士急線を利用して山梨側からアプローチする方が一般的かとは思いますが、今回は趣向を変えて、南の御殿場側からアプローチします。

天気が良いと富士山が見える窓から、いつものように本日の天気を占います。

ふむ、まったく見えませんな。という事で、本日のお天気占いの結果は凶です。ダイヤモンド富士に黄色信号が灯り、登山開始前からすっかりテンションダウンしてしまいました。

JR東海は新幹線で大儲けしているくせに未だに御殿場線を交通系ICカードに対応させていません(※)。そのためこのように、小田急線の到着と共に切符購入のための行列が発生します。

※沼津から御殿場の区間にだけはトイカが導入されている模様。
御殿場線のホームからは、松田山のハーブ園の川津桜が見ごろを迎えつつあるのが見えました。いっそ三国山は中止して花見に変更しようかなー、などとぼんやり考えつつ電車の到着を持ちます。

8時47分発の御殿場行きに乗車します。御殿場線の運行本数はおおむね1時間に2本です。

9時28分 御殿場駅に到着しました。
相変わらず頭上は曇り空です。はたしてここからの逆転劇はあるのでしょうか。

お次は御殿場駅から河口湖駅行きのバスに乗車します。9時40分発の便ですが、バス停に現れたのは45分を過ぎてからでした。ひょっとして冬期ダイヤは別なのかと、一瞬あせりました。

前々から思っているのですが、富士急バスの公式サイトはなぜあんなに見難いのでしょうか。目的の路線の時刻表をスムーズに発見できたためしがないのですが。。
バスの車窓から、これから歩く三国山稜の山並みが見えました。のっぺりとした丘のようなシルエットをしており、見るからに歩きやすそうな山並みです。

10時18分 籠坂峠に到着しました。
登山開始時刻としては遅めの時間ですが、本日のスケジュールはダイヤタイムまでに山中湖畔に到達出来ていればよいため、特に問題はありません。

籠坂峠は山梨県と静岡県の境界に位置する、標高1,100メートルのほどの峠です。かつては鎌倉往還と呼ばれる古道がこの場所を越えており、古くから人の往来のある場所です。

2.富士山の好展望地、立山展望台
バスから降り立って早々に、いきなり破壊された道標に出会いました。結論としては、進むべき方向は地面に置いてある道標が指し示している方角であっています。

登山口は墓地を通り抜けたところにあります。お行儀よく通過しましょう。

足元は富士山の火山灰が堆積した砂礫上の地面となっており、ザクザクと小気味よい音がします。

登り始めてすぐにルート分岐が現れます。三国山へ最短で向かうのならば左ですが、今日は先を急ぐ旅でもないので右へと進み、富士山の好展望地であると言う立山展望台へ向かいます。

標高が上がるにつれて雪が増えて来ました。凍結はしていなかったので、アイゼン無しのまま登ります。

踏跡が雪に埋もれてしまっているため、この付近はやや道が不明瞭でした。ピンクテープはしっかりとあるので、周囲をよく観察しながら歩きます。

11時5分 実にあっけなく稜線まで登って来ました。立山東分岐と呼ばれる地点です。三国山へ行くには左ですが、反対側に少し寄り道します。

立山展望台は、立山の山頂より少し下った地点にあります。

という事で、登って来た早々ではありますが、せっかく稼いだ位置エネルギーを無題に費やします。山歩きをしたくてここまで来たのですから、登る量が増えるだなんてむしろご褒美です。(強がり)
前方に視界の開けた場所が現れました。ここが立山展望台のようです。頭上を覆う空の色からして、結果はすでにわかりきっておりますが、一応は期待して見てみることにしましょう。

真正面にマウントフージー!

・・・デスヨネー。まあ、わかってはいましたとも。ダイヤモンド富士は黄色信号ではなく赤信号です。
何とも腹立たしいことに、頭上には青空が広がっていました。富士山の周囲だけが曇り空に包まれているような状態です。この青空を富士山にも分けてあげて!

行きしには気にもしていませんでしたが、ここが立山(たちやま)の山頂です。山頂っぽさのまるでない、ただの分岐地点のような場所です。

3.三国山登山 登頂編 穏やかなる三国山稜の稜線を歩き、三国国境の頂へ
気を取り直して三国山を目指すことにしましょう。三国山稜上にはいくつかの小ピークが連なっていおり、まずはお次のピークの畑尾山を目指します。

11時35分 畑尾山に登頂しました。
特に何があると言う訳でもない、ただの通り道と言ったところです。

下りはさすがに滑るので、ここでチェーンスパイクを装着します。

鞍部まで下ったところで、最初のルート分岐を左へすすんだ場合の道と合流します。

畑尾山と大洞山との間に広がる鞍部一帯は、アザミ平と呼ばれる平坦地になっています。なんだかトゲトゲしていそうな名前の場所ですね。

アザミ平からは御殿場方面の展望が開けますが、今日はこの通り曇っていて全然駄目です。

どうやら三国山稜のちょうど真上が、天気の境界となっているようです。こんなのっぺりとした丘のような山であっても、気圧配置に影響を及ぼしてしまうものなのですね。

富士山は相変わらず雲に包まれたままですが、立山展望台から見た時より多少は雲が取れてきたように見えます。これは万に一つの逆転なるか。

がんばれ大陸性高気圧。その忌々しい雲を、海側へ押し出してしまえ。
こちらは南アルプスの白根三山です。山梨上空の方は本当に良く晴れておりました。

青空の広がりつつある頭上の光景に一縷の望みを託しつつ、先へと進みます。

12時30分 大洞山に登頂です。
畑尾山と同様に、特に何があると言う訳でもない稜線所のコブと言ったところです。

三国山までは大人55分とのことです。わざわざ大人と強調して書いているあたり、このコースは親子連れが多く訪れる場所であることが窺えます。

さあどんどん行きましょう。相も変わらずな緩やかな傾斜の道が続きます。確かに小さな子を連れた親子ハイキングにはピッタリの場所かもしれません。

日当たりの問題なのか、三国山に近づくにつれて周囲に雪が少なくなって来ました。

12時55分に楢木山を通過します。道標すら立ててもらえないような何もないピークです。

楢木山から先は、殆ど傾斜の無い平坦な道です。火山灰の地面をザクザク踏み鳴らしながら、気持ちよく歩けます。

雪は殆どなくなったもの、かわりに氷った水たまりが多数あるため、チェーンスパイクを外すに外せません。

見るべきものの少ない単調な道です。そういう時にはこうして足元のコケに着目すれば、幾分か無聊を紛らわせられます。

13時45分 三国山に登頂しました。
籠坂峠を出発してから3時間ほどの、ラクラクなトレイルでありました。

山頂の様子
樹林に覆われており眺望はありません。その名が示す通りの、甲斐(山梨)、駿河(静岡)、相模(神奈川)の三国国境となっている場所です。

4.一面にカヤトの広がる好展望地、鉄砲木ノ頭
正面にこの後に立ち寄る鉄砲木ノ頭が見えました。ここまで歩いて来た地味極まりない三国山稜とは違って、山中湖を見下ろす好展望地として知られる場所です。

三国峠を名乗っていますが、この峠自体は山梨と神奈川の2県にしか接していません。二国峠ですね。


またいつ必要になるとも知れないので、手首にチェーンスパイクをぶら下げた世紀末風のいで立ちで登り返します。

登り始めて早々に、ススキ原の中に飛び出して一気に視界が開けました。これは気持ちの良い道です。

ススキ越しに、雲が取れかかっている富士山の姿が見えました。これはもしかしなくても、逆転満塁ホームランがあり得るのではないでしょうか。・・・と、この時は思っておりました。

背後には、ここまで歩いてきた三国山稜の山並みを一望できました。横から見ると殆どまっ平ですね。

眼下には、青き衣を纏いて降り立ちたくなるような、金色に輝くススキ原が広がっていました。

山頂が見えました。前評判通りの見るからに眺望がよさそうな姿に、期待が高まります。

14時10分 鉄砲木ノ頭に登頂しました。
広々としている開放的な空間です。三国峠からは30分とせずに上がってこれるため、大変お手軽な場所と言えるでしょう。

正面には富士山と山中湖を一望することが出来ます。素晴らしい眺望です。雲が掛かっていなければもっと素晴らしかったのですがね。。

富士山を包んだ雲の方はと言うと、、うーん、現時点ではまだ何とも言えませんな。

この頭一つ飛び出した山は、道志山塊最高峰の御正体山(1,681m)です。

鉄砲木ノ頭と同様にカヤトの広がるこの見るからに眺望がよさそうな山は、大平山(1,282m)です。大平山へは、昨年の12月に石割山へダイヤモンド富士を見に行った際に登りました。

山中湖を見下ろすこの白い建物はホテルマウント富士です。宿泊料はおおよそ2万円/人数からだそうです。おそらく一生泊ることは無いだだろうなぁ。

私は基本的に、宿と言うのは風雨をしのげる屋根壁と寝具さえあればそれだけで十分と考える人間なので、宿代を奮発すると言う発想そのものがありません。
さて、時刻はまだ14時を少し回ったところです。ダイヤタイムが始まるのは16時30分過ぎになってからなので、まだ2時間以上待つ必要があります。

尾根沿いにこの先へ進んで、高指山まで足を延ばしてみようかとも少し考えましたが、たまには時間に追われずにゆっくりするのもよかろうとすぐに思い直しました。という事で、1時間ほどボーと富士山と山中湖を眺めて過ごしました。
陽がだいぶ落ちて来ましたが、雲は取れるどころか厚みを増して来ました。うーむ、これは駄目なやつなのか。

陽の光が雪解け水で湿った土を温めた結果なのか、地面から湯気が立ち上っていました。

5.山中湖畔からのダイヤモンド富士は空振り
15時10分 取れない雲に一喜一憂しながら時間を過ごしましたが、ボチボチ下山を開始することにします。

眼下に見えるこの公園のような場所が、このあとダイヤ鑑賞を行う予定の山中湖交流プラザきららです。

登山者の土足に踏み荒らされ剥き出しになった砂礫の地面は、風雨の浸食に対して無力です。登山道は大きく抉れて、障害物競走状態になっていました。

山頂から20分ほどで、あっさりと下山は終了です。三国峠パノラマ台と呼ばれる場所まで下って来ました。

パノラマ台は富士展望スポットとして有名な場所です。これはもう、ダメかもしれませんね。

だがしかし、もみじ台からのダイヤ富士を見た時のように、最後の最後で逆転して雲が取れる可能性だって決してゼロではありません。諦めずにダイヤ鑑賞スポットへ向かいます。
パノラマ台からは車道歩きです。割と交通量は多めなので事故には要注意です。

最後の最後にほんの少しだけ登山道があり、ショートカットできます。

麓まで降りて気ました。山中湖交流プラザきららは、登山口の真正面にあります。

振り返って見た鉄砲木ノ頭は、こんな姿をしております。かなり目立つので、気になっている人も多いのではないでしょうか。

湖畔までやってきたところで、ズラリと三脚が並んでいる光景に面くらいました。山中湖からのダイヤ富士と言うのは、こんなにも人気のスポットだったのですね。

日没まで残すところあと30分。その間に、この厚ぼったい雲は消えてくれるのでしょうか。

その瞬間が刻一刻と近づきます。スッキリ晴れろだなんて贅沢は言いません。山頂部分だけでいいから見せてください、プリーーーズ!

そして迎えたダイヤタイムの写真がこちらです。カンネーの会戦並みの大敗北です。なんと言う空気を読まない雲なのでしょう。

反対側にはスッキリとした青空が広がっていました。うまくいかないものですなあ。

未練タラタラに湖畔に残っている人々を横目に、撤収に移ります。

大人になった醜いアヒルの子達が、水際に三脚を並べたカメラマン達に餌をせびっていました。山中湖の白鳥は餌付けされているため、水際に近づくと向こうから近寄って来ます。

その優美なる外見とは裏腹に、公園のドバト並みに厚かましい鳥ですね。

観光案内所の壁に、ダイヤモンド富士の写真が掲示されていました。こういうのを見たかったんでけれどねえ。

珍しく時刻表通りに現れたバスに乗り込み、帰宅の途につきました。

富士山駅にたどり着くと、そこには見事に山頂部が晴れた富士山の姿がありました。・・・もうすこし早く晴れてくれよ。。

三国山稜と山中湖畔を巡る山旅はこれにて終了です。一日の最後を飾るはずだったダイヤモンド富士こそ残念過ぎる結末ではありましたが、三国山ハイキングコース自体は、手軽に歩ける爽快な道でありました。
三国山そのものは地味極まりない山なので、鉄砲木ノ頭と組み合わせて登ることを強く推奨します。カヤトの原から望む眺望は、登山口から30分でたらず登頂可能な山とは思えない素晴らしい光景です。
<コースタイム>
籠坂峠(10:25)-畑尾山(11:35)-大洞山(12:30)-楢木山(12:55)-三国山(13:20~13:35)-三国峠(13:45)-鉄砲木ノ頭(14:10~15:10)-パノラマ台(15:30)-山中湖交流プラザきらら(15:55~16:40)-山中湖平野(16:50)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。



















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