岩手県八幡平市と雫石町にまたがる三ツ石山(みついしやま)に登りました。
岩手山裏側の秋田県との県境近くに連なる、通称裏岩手縦走路と呼ばれる稜線上にある山です。栗駒山と並び、東北地方の山の中でも最初に紅葉が始まる山として知られています。
松川温泉を起点に、紅葉の裏岩手を巡り歩いて来ました。
2021年9月27日に旅す。
三ツ石山は岩手山の裏手に立つ標高1,466メートルほどの山です。三ツ石山を含む裏岩手縦走路と呼ばれる稜線上は、東北地方の山の中でも特に早くに紅葉が始まります。
例年ですと9月の中頃には色付きが始まり、下旬になると見頃の最盛期を迎えます。
三ツ石山があるのは、秋田県との県境にも近い奥羽山脈の懐深くです。山の麓には秘湯と名高い松川温泉があり、ここを起点にして歩くのが一般的です。
松川温泉には路線バスも乗り入れしており、最寄駅から2時間近くもバスに揺られる長丁場ではあるものの、公共交通機関による訪問が可能です。
もっとも、公共交通機関を利用して日帰り登山をしようとすると、コースタイム的になかなかシビアで慌ただしい行程となりますが。
ひとたび稜線まで登れば、そこにはまるで紅葉の絨毯を広げたかのごとき圧巻の光景が広がっていまいした。晴れたり曇ったりを繰り返す不安定な空模様でしたが、爽快なる秋の一日でした。
夜行バスで行く、0泊2日弾丸の慌ただしき裏岩手訪問記をお送りします。
コース
松川温泉を起点にして、三ツ石山を含む裏岩手縦走路を馬蹄形に周回します。標準コースタイム8時間5分の行程です。
始発のバスが松川温泉に到着するのが8時50分で、最終バスが温泉を発つのが16時20分であるため、日帰りするには全行程を7時30分で踏破する必要があります。
・・・ん?なんか計算があわないぞ。
1.三ツ石山登山 アプローチ編 夜行バスと路線バスで行く、裏岩手への遠き道のり
9月26日 22時 バスタ新宿
盛岡行きの夜行バスへ乗車すべく、毎度おなじみのバスタ新宿へとやって来ました。
松川温泉行きの始発バスは6時54分に盛岡駅を出発するので、それに間に合わせるためには前日の内に前乗りするか、さもなくば早朝着の夜行バスしか選択肢はありません。
三ツ石山へ行こうと思いたったのは、例のごとく出発日当日の昼間だったわけですが、滑り込みで何とか夜行バスの座席を確保することができました。
4列シートの車両ですが、2席を占有できると言うプランで運賃は4,600円なり。
空けて9月27日、5時55分
バスは快調に東北自動車道をひた走り、時間通りにつつがなく盛岡駅西口に到着しました。広々とスペースを使えたおかげで、しっかりと眠れて体調は万全です。
岩手山はどんよりと雲に覆われており、すそ野の部分だけが見えている状態です。三ツ石山があるのは、この山の裏側であるわけですが、さあ果たしてこの雲は取れてくれるのでしょうか。
松川温泉行きのバスが発着するのは東口の方なので、連絡通路を歩き駅の反対側へ移動します。早朝の盛岡駅前には人影もなく、閑散としていました。
駅前にコンビニにがあるので、ここで準備を整えられます。時間には十分にあるので、慌てずにゆったりと買い物を済ませつつ朝食を取りました。
6時54分発の松川温泉行きのバスに乗車します。高速バスタイプの車両による運行ですが、扱いは路線バスであり事前の予約などは不要です。
このバス移動はかなりの長丁場です。なにしろ岩手山をグルリと回り込んで行くわけですから。途中で八幡平リゾートにあるホテルに立ち寄ったり色々と寄り道もするため、終点の松川温泉までは2時間近くを要します。
8時54分 松川温泉バス停に到着しました。ここまでの運賃は1,160円でした。移動距離を考えればかなり格安であると言えるでしょう。
松川温泉には現在、3軒の温泉宿が存在します。バス停の目の前にあるこちらの建物は、そのうちの一つの峡雲荘です。登山者にはお馴染みの日本秘湯を守る会に所属しています。
宿泊施設ですが日帰り入浴も受け付けているため、下山後にここでひと風呂浴びることを本日の最終ミッションと位置付けます。
2.原始の森が広がる源太ヶ岳への道程
バスを降りた目の前に掲げられている道標には、三ツ石山は右方向であると示されています。これは山頂への最短ルートである三ツ石山荘を経由するルートの案内です。馬蹄形コースへと進むのであらば反対の左です。
身支度を整えて、9時ちょうどに登山を開始します。本日の行程は、標準コースタイム通りのペースで歩くと、温泉に入るどころか帰りのバスにすら間に合わなくなってしまうので、少しばかり気張って歩く必要があります。
今から歩こうとしている馬蹄形コースの案内が掲げられていました。こちらに描かれているコースタイムを積算すると、6時間15分になります。
はて、山と高原地図のコースタイム8時間5分とは、かなりの違いがありますな。はたして実態に近いのはどちらなのでしょうか。
歩き始めてすぐに、車道を横断します。この通称八幡平樹海ラインと呼ばれている岩手県道318号線は、八幡平の山頂へと通じています。
道を横断したところが登山口です。それではいっちょう、気合を入れて行ってみましょう。
登り始めてすぐに砂利道に合流しました。この先に松川地熱発電所の変電所施設があるため、そこへ車両が出入りするための道です。
登り始めてからしばらくの間は、ほとんど水平移動に近いようなゆるやかな道です。足元は泥まみれですが、泥濘がひどい所には木道が通してありました。
丸森川という小川を渡ります。この川を越えるまではずっと、あまり高低差がない道が続きます。
太古からその姿が変わっていないであろう、原始の森の光景です。とても良い雰囲気の森ですが、いかにもクマが沢山生息していそうでもあります。
長々と続いた横移動が終わり、ようやく真面目に高度を上げ始めました。
振り向くと、岩手山がそのドッシリとした大柄な姿を晒していました。しかし、何度見てもでっかい山ですねえ。
私の母は岩手県の出身です。つまり私の体には半分、南部の血が流れているわけです。だからだと言いう訳ではありませんが、個人的に岩手山はご贔屓にしている山の一つです。大きいことは良いことだ。
チラホラと紅葉の色付きが始まっている木々が目立ち始めました。しかし、三ツ石山の紅葉はまだまだこんなものではありません。本命は稜線に出て以降です。
水量はかなり豊富で、ここで給水すること始めから当てにしていても問題はなさそうです。冷たくておいしい。
水場からしばらく登ったところで、ようやく馬蹄形縦走路の最初のピークである、源太ヶ岳の姿が視界に入りました。まだ結構登りますな。
登り始めが緩やかだった分を取り戻すかの如く、山頂付近は割と急登です。コースタムを巻いて行かなければ温泉に入れないと言う危機感もあり、息を切らせつつも気持ち早めのペースでガシガシと登ります。
10時35分 大深山荘分岐まで登って来ました。山と高原地図では、ここまでのコースタイムは2時間30分とありましたが、実際は1時間35分での到着です。
やけに甘いコースタイム設定ですな。まだ油断はできませんが、入り口の駐車場に掲げられていた案内板のコースタイムの方が、実態に近いのでしょうかね。
分岐を過ぎると、いよいよ森林限界を超えて大展望が広がります。
背後を振り返れば、岩手山がドーンと立っています。まさに裏岩手と言う名称通りの光景です。
岩手山は別名で南部富士とも呼ばれている山ですが、富士山型に見えるの角度限定です。裏側から見ると、まるで背ビレのような山並みが連なっているのが良くわかります。
山の反対側で発生した雲が今まさに岩手山を乗り越えんとしており、雲滝となって流れ落ちて来ていました。今この瞬間に岩手山の山頂に居合わせている人は、さぞや凄い絶景を目にしていることでしょう。
眼下に広がるのは北上平野です。北上平野はその名の通り北上川に沿って広がる南北に長い盆地で、今見えているのは平野の北端付近の光景です。
北には広大な裾野を広げる八幡平が横たわっています。まるで高原台地か何かのような外観をした平たい山ですが、こう見えても成層火山です。
眼下には何やら煙突のような人工物の姿が見えます。松川地熱発電所です。昭和41年から運転を行っており、日本の地熱発電所としては最も古い発電所です。
10時55分 源太ヶ岳に登頂しました。本日の馬蹄形ルートにおける最初のピークです。
実は三ツ石山よりも源太ヶ岳の方が僅かに標高が高く、この場所が本日の行程における最高地点です。
前方の視界が開けて、これから目指す三ツ石山の姿が見えました。見るからに眺めの良さそうな稜線が連なっており、いやがうえにも期待が高まります。
かなり雲が湧いてきているものの、山頂がガスにすっぽりと覆われることはなんとか免れている状態です。このまま山の神様の機嫌が変わらないうちに、山頂へと急ぎましょう。
右側からこの稜線を辿ってグルっと回り込んで行きます。まさに言葉通りの馬蹄形をしたコース取りです。
岩手山は、反対側から山を乗り越えて来たガスの前に屈してしまったようで、頭が隠れてしまっていました。まあ、猛スピードで雲が流れているので、きっとまた晴れる瞬間もあることでしょう。
3.足元に紅葉の絨毯が敷かれたかの如き小畚山
ここから先は、まるで天国のような稜線歩きが始まります。三ツ石山馬蹄形コースの真骨頂は、この好展望な稜線歩きにあります。
北側に向かって尾根が続いているのが見えます。八幡平へと続く裏岩手縦走路の稜線です。本日歩こうとしている三ツ石山とは反対方向ですが、あっちも歩いてみたいんだよなあ。
三ツ石山から八幡平に至るコースは、日帰りで歩くにはコースタイムが少々長く、道中には営業小屋も存在しないため、避難小屋の利用が前提となります。
三ツ石山の山頂部分にかかっていた雲が取れました。山頂付近がオレンジ色に染まっているのが何となく見えます。これは期待できそうです。
実に素晴らしい稜線のトレイルです。しかし周囲を遮るものが何もないためか、半袖では少し肌寒くなってきました。いやまあ、横着せずに上を羽織れば良かっただけの話ではありますが。
前方に見えているのは秋田焼山(1,366m)かな。お花のシーズに登ってみたいと思っている一座です。できれば玉川温泉と一緒に巡りたいところです。
再び分岐です。ここからも大深山荘に下れます。ちなみにこの大深山荘と言うのは、無人の避難小屋です。八幡平方面へ縦走するのであれば、この小屋で一泊するのが妥当であると思われます。
次なるピークの大深山は、この分岐からは目と鼻の先の距離にあります。
11時25分 大深山に登頂しました。周囲を灌木に覆われた地味な山頂です。展望はありませんが、風をしのげるので休憩には適しています。
背後に岩手山の頭だけがちょこっと見えました。展望の無い山に留まっても得るものは無いので、すぐさま行動を再開しましょう。
大深山を過ぎると、縦走路は進路を南へと転じて、いよいよ三ツ石山が正面に見えて来ます。
これから紅葉の回廊へと入って行くことを予感させる光景です。それは良いのですが、頭上が曇ってきてしまいましたね。紅葉と言うのは、青空の下が一番映えるのだけれどな。
凄い速さで雲が流れて行くのですが、しかし一向に無くなる気配はありません。今日はもう、ずっとこんな感じの天気なのかな。
振り向けば、傍らにはずっと岩手山の姿があります。このルートを歩いた人は皆例外なく、岩手山のことが好きなると思います。
これから乗り越えて行く小畚山(こもっこやま)が前方に立ちはだかります。山腹の紅葉が凄まじいことになっておりますな。
このままずっと平坦な稜線歩きが続くのかと思っていましたが、どうやらそうは問屋が卸してくれないようです。小畚山の手前でしっかり下ります。
その後の登り返しの事を思うと気乗りはしませんが、道がそうなっている以上は仕方がありません。一度鞍部まで下ります。
まるでパッチワークしたみたいな紅葉ですね。栗駒山のような一面の錦模様ともまた違う、笹の緑の部分とのコントラストが実に良い。
鞍部まで下って来ました。ここからいよいよ、あの紅葉の紅葉の回廊部分へと足を踏み入れます。
しかし、よりによって一番青空が欲しいこの場面で、頭上がどんよりと曇ってしまいました。なんと言う空気を読まないガスなのでしょう。
見事な紅葉のトンネルです。できれば木漏れ日が射す中ここを歩きたのですが。
向かいから眺めた時から何となく察してはいましたが、小畚山の登り返しは結構な急勾配です。そんなに長くは続かないので、気合を入れて一気に登ってしまいましょう。
振り返って見ればこんな光景です。ここだけ紅葉が進んでいるのは、地形的にそれだけ寒暖の差が激しい場所なのでしょう。
急登を登りきると、前方の視界が一気に開けました。こちらの紅葉も実に素晴らしいじゃないですか。むしろ、ここからが本番だと言っても良いかもしれません
山頂が見えました。紅葉シーズン真っ盛りと言う事もあってか、かなりの数の人の姿がありました。
12時20分 小畚山に登頂しました。ここが本日の行程における、ほぼ中間地点と言ったところです。
頭上は相変わらずどんよりとした雲に覆われていますが、しかし何となく晴れそうな気配があります。軽く腹ごしらえしつつ、すこし待機してみましょう。
再び何となく青空が顔を覗かせ始めました。このまま持ちこたえてくれるかな。
振り返って見た源太ヶ岳と大深山です。この2座は基本的にただの通り道扱いをされがちですが、こうして単体で見てもなかなか立派な姿をした山ではありませんか。
4.三ツ石山登山 登頂編 錦秋の稜線の先に待つ、好展望の頂き
12時35分 だいぶ青空も戻ってきたようなので、行動を再開します。この先にはもう大きなアップダウンは無く、稜線天国が広がるのみです。
なんだここは、天国か。語彙力が乏しくて恐縮ですが「おおッー」とか「すげぇぇーッ」としか形容のしようがない光景が広がっていました。
見よや、これが裏岩手の本気だ。どうですか、歩いてみたくなったでしょう?裏岩手は決してあなたの期待を裏切りません。
こうして常に、岩手山が視界の傍らにあります。逆向きに歩くと岩手山に背を向けてしまう格好になるので、この馬蹄形コースは源太ヶ岳側から回るのが正解だと思います。
撮影が捗りすぎて、なかなか歩みが進みません。「温泉に入る時間が無くなっても知らんぞ」と言う脳内の囁きには耳も貸さずに、ついつい同じような写真を何枚も撮ってしまいます。
右手に見えている小ピークを越えていきます。このピークには特に名前は無いようです。
三ツ石山がだいぶ大きく見えるようになりました。どの方向から見ても三つのピークがあるように見えるのが山名の由来らしいのですが、確かに山頂らしき場所が三ヵ所あります。
名もなき小ピークに登頂しました。この天国のような稜線歩きも、いよいよ大詰めです。
振り返って見た、ここまで歩いてきた稜線です。私はアルペン的な岩峰よりも、こういう放牧的な稜線の山の方がずっと好みです。裏岩手縦走路の事も大いに気に入りましたよ。
鞍部に向かって緩やかに下ります。ここは大した高低差ではありません。
人工的に刈り込んだのではないかと勘繰ってしまうくらいに見事な、紅葉のアーチが出来上がっていました。
下りきった鞍部の一帯は湿地帯となっており、三ツ沼と呼ばれる池があります。
初夏にここを訪れれば、きっと辺り一面がお花に覆いつくされている事でしょう。花の季節にもぜひ歩いてみたいですね。
三ツ石山に向かって本日最後の登りです。ビクトリーロードと言うにはちょっと微妙な空模様になって来ましたが、最後の坂を駆け上がります。
遠くからもずっと見えていた、この特徴的な岩の上が山頂です。大勢の登山者が所狭しとておりますな。
この岩には直登はせずに、裏側から回り込みます。まあ、よじ登ろうと思えば登れないことも無さそうではありますが。
13時30分 三ツ石山に登頂しました。ここまで、前評判に違わぬ素晴らしき紅葉でありました。
山頂からは、ここまで歩いてきた道程のすべてを一望することが出来ます。結構な距離を歩いてきたように思えましたが、こうして見るとコンパクトに纏まっているルートですね。
身も蓋もないこと言ってしまうと、山頂からの眺望と言う点いおいては、三ツ石山よりも途中の小畚山からの方が優れていたと思います。
馬蹄形ルートを歩かずに、松川温泉から三ツ石山をピストンしていまうと、一番美味しい光景を見逃してしまうことになるのでご注意ください。
遠くからもずっと見えていた山頂の岩ですが、上に登ることも出来ます。少々高度感はありますが、特に難しい要素はありません。
岩の上はフラットで数名が立てるだけの広さがありますが、おしくらまんじゅうになると危ないので、同時に登るのは一人だけにしておいた方が無難だと思います。
岩の上に登ると、眼下にはとても山の上の光景であるとは思えないような、広々とした空間が広がっていました。
岩手山がすぐ隣にあります。少し粘れば雲が取れそうな雰囲気ではありますが、温泉に入る時間が無くなっても困るので、到着して早々ではありますが、撤収に移ろうと思います。
5.三ツ石山登山 下山編 三ツ石湿原と泥まみれの登山道
13時45分 素晴らしき稜線の光景に後ろ髪をひかれつつも、下山を開始します。
眼下に山小屋が立っているのがのが見えます。まずはあの小屋を目指して下って行きます。
岩手山を真正面に望む下山路です。東北の山の雄大なスケール感に震えます。
松川温泉から最短で登ってこれるこちらのルートは、やはり歩く人の数が格段に多いらしく、登山道は大きくえぐれており泥まみれ状態でした。三ツ石山の近年の人気上昇に伴い、オーバーユースであるは明らかですな。
14時5分 三ツ石山荘まで下って来ました。三ツ石山と犬倉山方面との鞍部に立つ、無人の避難小屋です。紅葉シーズの週末には、それなりに混雑するようです。
小屋の裏手に、三ツ石湿原とよばれる小さな湿原があります。見事な草紅葉になっていました。
小屋のすぐ先に分岐があります。このまま岩手山方面へ直進して、犬倉山からリフトで網張温泉へ下ることも出来ます。
しかし残念な事に、網張温泉-盛岡間の路線バスは2020年から廃線となってしまいました。我ら公共交通機関組は、網張温泉へ下ってしまうと、そこから駅へ戻る方法がありません。
ここは素直に、松川温泉へと戻りましょう。
三ツ石山の山頂はこれで見納めです。ありがとう三ツ石山。素晴らしい紅葉の稜線でした。
分岐を過ぎてからはしばしの間、ほぼ水平移動の道が続きます。なにを勿体ぶっているのか、なかなか標高を落とし始めません。
長々と水平移動が続いたの後に、ようやく真面目に下り始めました。なお、日影になっている部分の足元は泥まみれです。
途中から、この泥んこの登山道を避けて林道へ逃げることの出来るルートがあるようですが、生憎と現在は工事中という事で通行止めになっていました。という事なので、このまま泥との格闘が続きます。
早くも登山道に西日が差し込み始めました。もうすっかり日が短くなりましたな。
途中の視界が開けているポイントから、すっかり雲の取れた岩手山の姿を拝むことが出来ました。・・・できれば山頂にいた時にこの状態になって欲しかったのですがね。本日の天気は上り調子だったようで。
途中まで緩やかだった分を一気に取り返すかのように、最後はかなりの急勾配な階段地獄が待っていました。逆方向に登る場合は、最初からいきなりの急登を覚悟する必要があるという事ですな。
泥で滑りまくる階段に肝を冷やしつつ、何とか無事に登山口まで下って来ました。
6.下山後のお楽しみの温泉を満喫し、長い長い帰宅の途へ
下りて来たのは良いのですが、靴底は泥まみれでかなりひどい状態となっています。道なき薮をかき分けて川べりまで下り、靴とストックについた泥を丹念に洗い落としました。
この川には温泉が多量に流れ込んでいるらしく、濃厚な硫化水素臭がしました。靴の金具が錆びてしまうかな。
この下山地点は、峡雲荘からは少し下った場所になります。という事で、バス停までは登り返しです。
道の脇を並走しているパイプからは蒸気が漏れまくっており、若干の不安感を覚えます。今このパイプが破裂でもしたら、中から熱湯が溢れ出してきて大火傷するんじゃないかな。
稜線の上からも見えていた、松川地熱発電所のすぐ脇を通ります。逆光と蒸気により、なにやら凄い画ヅラに写真になってしまった。
15時40分 松川温泉バス停へと戻ってきました。気張って歩いた甲斐もあって、しっかりと入浴時間を確保できるだけコースタイムを巻くことに成功しました。さあ、風呂だ風呂。
そして何のことは無い、峡雲荘の玄関脇に靴の洗い場がしっかりと用意されていました。
そりゃそうですよね。あんな泥まみれな山の登山口にある温泉な訳ですから、洗い場が無かったら玄関が泥だらけになってしまうのは必然でしょうから。
という事なので、下山後に川べりまで下って靴洗いをする必要は全くありません。
予定通り峡雲荘で日帰り入浴をして行きましょう。入浴料は600円とかなりお安めです。
泉質は私の大好きな白濁した硫黄泉です。なお、洗い場のカランからは水しか出ず、シャワーもありません。そのかわり源泉かけ流しの湯がドバドバと溢れ出しているので、桶で好きなだけ汲んで体を洗えます。
館内にあるのは内湯のみで、露天風呂は少し離れた場所にあります。そこまで時間に余裕はなかったので露天には行きませんでしたが、どうやら混浴であるようですな。
一日の汗を洗い流し、ゆったりと湯舟にも浸かって人心地つきました。宿の表へ出ると、帰路のバスが既に待機していました。今日は何もかもがうまく行った一日でありましたな。
再び2時間近い時間をかけて盛岡駅へと戻ります。車窓からはずっと岩手山の姿が見えていました。やはりこの山はすごく良い。
駅に帰り着いた時には、周囲はもうすっかりと暗くなっていました。朝にはあれほど閑散として人影の無かった駅前も、夕暮れ時の帰宅時間ともなると混在していました。
翌日は朝から普通に仕事に行かねばならないので、帰りはリッチに新幹線を利用します。珍しく奮発して全席指定のはやぶさ号に乗り込み、帰宅の途につきました。
思い付きからの0泊2日弾丸で行く岩手遠征は、こうして大満足の内に幕を下ろしました。
三ツ石山は、紅葉の規模だけで言うならば栗駒山にはやや及びませんが、裏岩手縦走路の稜線上に広がる山並みスケール感は圧倒的です。これは持論ですが、東北地方の山にはハズレがありません。
この広大なる山域を十分に味わいつくすためには、日帰りではなく泊りの山行きを計画した方が幸せになれるのではないかと思います。公共交通機関利用による日帰り登山も可能ではありますが、慌ただしい行程になってしまいますので。
次回再訪の機会があれば、その時は避難小屋に宿泊して、八幡平まで繋げて歩いてみたい所です。
<コースタイム>
松川温泉バス停(9:00)-源太ヶ岳(10:55)-大深山(11:25)-小畚山(12:20~12:35)-三ツ石山(13:30~13:45)-三ツ石山荘(14:05)-松川温泉バス停(15:40)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント