長野県上松町・木曽町・宮田村の境界にある木曽駒ケ岳(きそこまがたけ)に登りました。
標高2,956メートルの中央アルプス最高峰です。3,000メートル近い高峰ながら、標高2,611メートル地点の千畳敷までロープウェーが通じているため、標高の割には簡単に登ることが出来る山です。
今回はテントを担いで1泊2日の余裕ある日程でのんびりと歩いてきました。
2016年7月17日に旅す。
木曾路はすべて山の中である。
これは島崎藤村の小説「夜明け前」の書き出しです。
中央アルプスと言うのは、木曽川の侵食によって出来た木曽谷と、中央構造線に沿った巨大な地溝帯である伊那谷とに挟まれた縦に細長い山脈です。北アルプスや南アルプスに比べるとかなり小ぶりな山塊です。
この付近一帯は降水量が多いことで知られます。その豊富な水により中央アルプスは非常に深い針葉樹林に覆われており、木曽五木と呼ばれ古くから木材の産地として有名です。
そんな深い森に覆われた木曽駒ケ岳も、今では伊那市側から駒ケ岳ロープウェイにより労せず簡単に頂上の立つ事のできる手軽な山となりました。
木曽路側から往年の苦労を偲ぶ険しい道を行くのも大変魅力的なプランではありますが、今回は素直にロープウェイと言う文明の恩恵に浴そうかと思います。
ロープウィで簡単に登れて、氷河が生みだした巨大カールの大絶景を目前にすることが出来る。木曽駒ケ岳は登山初心者にも勧めの、行けば絶対に良い思いが出来る山と言えるでしょう。
晴れていればね!
コース
駒ケ岳ロープウェイを使用して千畳敷カールより登山開始。初日は中岳を経由して木曽駒ケ岳頂上山荘のテント場で一泊。
翌日は木曽駒ケ岳に登頂後、帰りに宝剣岳に寄り道して千畳敷に下山。時間的に余裕たっぷりのお気楽登山です。
1.駒ケ岳ロープウェイで楽々に高山帯の世界へ
6時10分 バスタ新宿
6時45分発の駒ヶ根車庫行きバスに乗ります。
中央アルプスの玄関口である伊那市は、鉄道でのアクセスが良好とはいい難い場所にあります。時間的にも金額的にもバスで行くのが一番良い選択です。
11時25分
高速バスに揺られること4時間40分で駒ヶ根バスターミナルに到着しました。
高速が渋滞気味であったため、予定より1時間以上遅れての到着です。
駒ケ岳ロープウェイ行きの路線バスは駒ヶ根駅前から発車します。駒ヶ根バスターミナルからは徒歩でおよそ五分ほどの距離です。
さて、冒頭でもチラッと触れましたが、中央アルプスと言うのは年間降水量が3,000ミリを超えるような、非常に雨の多い場所です。
何が言いたいのかと言うと・・・
見事にやられたと言うことです。晴天の天気予報はハズレました。木曽駒ケ岳は鬱蒼とした雨雲の中です。
この日は結局、終日シトシトと雨の降りしきる真っ白なガスの中を登りました。
そんな光景をお見せしてもつまらないので、二日目の下山時に撮影した写真を逆再生して、あたかも登っているかのように見せかける暴挙に及んでみようかと思います。
ああ、ちなみに二日目は見事なまでの快晴でした。
というわけで、ロープウェイはいくつもの滝を見下ろしながら登って行きます。
真っ白で何も見えなかったけれど。
僅か7分30秒でおよそ1,000メートルの標高差を駆け上ります。当然ながら耳がキーンとなります。
標高2,612メートル地点の千畳敷カールに到着です。ここから山頂までの標高差は400メートルもありません。高尾山並みです。
2.一面ガスで真っ白の千畳敷カール
ロープウェイから降り立つと、目の前に千畳敷カールの絶景が広がります。真っ白で何も見えなかったけど。
タタミ千畳に匹敵する広さがあると言う意味で名づけられたそうです。
雨具を着込んで真っ白な中を出発です。
広い空間を歩いているのはなんとなく分りますが、5メートル先も見えないような濃いガスに覆われて何も見えません。足元の道だけを見ながらトボトボと歩きます。
簡単に登って来れる場所とは言え、ここは標高およそ2,600メートルの高山帯です。ひとたび天候が急変すれば、容赦ない大自然の猛威に晒されると言うことです。
カールの斜面を直登する急坂が始まります。上は全く見えませんが、かなりの傾斜であることが感じ取れます。
前後に全く人の居ない真っ白な斜面を息を切らせながら黙々と登ります。重たいテント泊装備を背負っているので非常ににゆったりとしたペースです。
登山道の脇には宝剣岳の迫力ある大岩壁が見えるはずなのですが、真っ白で何も見えません。
ガスの中から薄っすらと青い屋根が視界内に現れました。宝剣山荘に到着したようです。特に用事はないので素通りします。
木曽駒ケ岳の手前にある中岳を目指して、真っ白な中を進みます。登山道脇にロープが張られていました。視界不良の状況下では非常に助かります。
中岳の山頂まではあっという間です。ここに来て雨に加えて風が出てきました。もはや暴風雨の様相を呈してきております。
中岳の山頂から先の全く見えない坂を下っていきます。下りきったところに本日の宿泊地があるはずです。
14時45分 駒ケ岳頂上山荘に到着しました。
ここでテント泊の受付をします。幕営料は1,000円です。水場とトイレの使用料を含みます。
という訳で、これが実際の当日の光景です。風雨に晒されて震えるほどの寒さでした。
あらかじめフライを被せた状態からテントポールを立ち上げると言う変則的設営方法をこの場で考案し、一定の成功を収めました。テント本体を濡らす事なく設営完了です。
テント設営後、空荷で山頂まで偵察に出掛けました。山頂までは15分くらいで着きます。当然ながら真っ白で何も見えず、翌日の天候回復を願いながらテントへと撤収しました。
さて、私は例えどんなに寒かろうと煮炊きは外でする派だったのですが、暴風雨ともなるとそうも言っていられません。テント内で食事の支度をしました。
おかげで、結露しまくりで不快極まりない状況で一晩を過ごしました。
3.絶景が広がる木曽駒ケ岳の山頂
翌朝
おはようございます。前日と打って変わって、今日は見事なまでの晴天です。
昨夜は寒くてあまりよく寝れませんでした。真夏用のペラッペラなシュラフ(モンベルのダウンハンガー#5)しか持ってこなかった私が悪いのですが。
震えながら待つこと数分、地平線から太陽が昇ってきました。ご来光です。
山頂に向かいます。一面ハイマツに覆われた、いかにも高山らしい光景が広がっていました。
こちらは頂上木曽小屋という名前の山小屋です。駒ケ岳頂上山荘に頂上木曽小屋ですか。素で間違えそうなネーミングですね。
そして、目の前に御嶽山(3,067m)が姿を現しました。突然の噴火のニュースが掛け巡ったのは記憶に新しい所です。
それにしても圧倒的なまでの存在感です。
富士山アップ
信州側から見ると、両端に突起があって角が生えているみたいに見えますね。
こちらは空木岳(うつぎだけ)(2,864m)へと続く中央アルプス主稜線です。
見ているともの凄く縦走したい気分になってきます。話に聞く限りでは、かなり厳しい道のようですが。
5時 山頂に到着しました。昨夜は小屋に泊まっていたのであろう人たちで賑わっていました。この被り物をしている人は一体何者なんだろう。。
山頂の様子
3,000メートル近い高峰の山頂としては珍しく、非常に広々としています。
とりあえず記念撮影
反対向きの山名が入っている側で撮影したかったのですが、逆光でうまく撮れませんでした。
山頂からは遮るものが何も無い360度のパノラマが広がります。
これは北側の展望。正面に見えている大きい裾野を引いている山は乗鞍岳(3,026m)です。
こちらは言わずと知れた北アルプスの名峰、槍ヶ岳(3,180m)。次はあそこしようかな。(独り言)
木曽駒ケ岳山頂からの展望の中では、御嶽山の存在感がやはり際立っています。
こちらは木曽方面
島崎藤村の言う通り、確かにすべて山の中です。
北東方向をズームで。右側の一際背の高い山は八ヶ岳連峰のはみ出し者こと蓼科山(2,530m)です。左の方には浅間山(2,568m)の姿も見えます。
南アルプスをアップ。左側にある尖った山は同じ駒ケ岳仲間(?)である甲斐駒ケ岳(2,967m)です。
昨夜泊まった宿営地を見下ろす。
昨夜はあんな暴風雨だったと言うのに、結構な数のテントが張られています。世の中、物好きな人は結構居るものです。まあ、私もなんですが。
岩の上に佇む見知らぬ二人連れがとても画になっていたので、思わず一枚撮ってしまいました。
中岳の日陰側斜面には、僅かながら雪渓が残っていました。道理で寒いわけだ。
テントを撤収して出発します。水気をたっぷり吸って色々湿っ気てしまったせいか、昨日よりも若干重くなっているような感覚に襲われます。
中岳山頂からは宝剣岳(2,931m)の超カッコいい雄姿が拝めます。
いい年したオッサンが思わず超とか言ってしまうくらいの格好良さです。
木曽駒山頂より僅かに標高が低いせいで、惜しくも中央アルプス最高峰のタイトルを取り損ねた山ですが、格好良さでは圧勝なのではないでしょうか。
伊那前岳と背後に立ち並ぶ南アルプスを望む。伊那前岳はご来光スポットとして人気の場所です。強風危険地帯でもあるようですが。
宝剣山荘に向かって下ります。見ての通り大した距離は無く、木曽駒ケ岳山頂の周辺はとてもコンパクトに纏まった山域です。
4.迫力満点の岩峰、宝剣山に挑む
7時20分 宝剣山荘前まで戻ってきました。
ここに荷物をデポして宝剣岳の山頂を往復します。
岩場と格闘中の人たちが小さく見えます。なんだか凄い所を登っていますな。
さあ、張り切って登りましょうかね。宝剣岳は毎年のように滑落死亡事故が発生している場所です。あせらず慎重に登りましょう。
場所によっては殆ど垂直です。かなりの高度感があるので、高いところが苦手な人は眺めるだけにしておいた方が無難でしょう。
8時5分 宝剣岳に登頂
ご覧のとおり、山頂は立錐の余地も無いくらい非常に狭いです。
とりあえず記念撮影
心なしか表情が強張っているのは、背後が落差300メートル近い断崖絶壁だからです。
反対側に抜ける道もありますが、この通り絶壁です。どっちから登っても難易度に大差はなさそうです。
そして空木岳へと続く中央アルプス主稜線。ふむ、これは良い稜線です。稜線フェチの縦走マニアには垂涎の光景でなことでしょう。
満足したところで宝剣山荘に戻ります。当然ながら、登りより下りの方が遥かに怖いです。この目も眩むような高度感よ。
下りきったところで振り返って撮影。登山道には渋滞が発生しつつありました。
5.木曽駒ケ岳 下山編 広大なカールの底を歩く
眼下には千畳敷カールが一望できます。こんなに広かったのですね。
下りきったところで振り返って撮影。右端に写っているのが先ほど登った宝剣岳です。
剣ヶ池
逆さ宝剣岳を狙うも、アングルの関係でうまく行きませんでした。
ロープウェイ発着場に着くと、ちょうど次の便が発車するところだったのでそのまま駆け込みました。
標高1,600メートル地点のしらび平まであっという間に到着です。
ここから駒ヶ根まではグネグネの山道を延々とバスで下る訳ですが、昨夜寒すぎてあまり眠れていなかった私は、バスに乗ると同時に深い眠りへと落ちていきました。
最後に駒ヶ根駅前から望む中央アルプスを写真に収めて、本日のミッションは完了です。
少しでも交通費を安く済ませたいのなら、帰りもバスを使うのが最も良い選択です。
しかし、いやしくも乗鉄を自認するオオツキにあっては、目の前にある乗ったことの無い路線(飯田線)を無視することなど到底出来ません。
そんな訳で、帰りは鈍行を乗り継いで帰りました。自宅まで6時間かかったという事実を報告しておきましょう。
電車で帰るなら、素直に岡谷からあずさに乗るべきですね。
初日に一面真っ白な光景を眼にした時には敗北を覚悟した今回の山行きでしたが、蓋を開けてみれば二日目は快晴の大逆転が待っていました。
ロープウェイで簡単に登れる山なので、テント泊初心者の練習にももってこいかもしれません。ただし、標高が高いだけあって、夜はそれなりに冷えます。防寒に十分な配慮が必要です。
ご覧頂いたとおり、山頂からの展望は圧巻の一言です。誰でも気軽に3,000メートル級の山からの絶景を楽しむことが出来きるとても良い山だと思います。あらゆる人にオススメいたします。
<コースタイム>
1日目
千畳敷(13:00)-宝剣山荘(14:10)-中岳(14:30)-駒ケ岳頂上山荘(14:45~15:15)-木曽駒ケ岳(15:35~15:40)-駒ケ岳頂上山荘(15:55)
2日目
駒ケ岳頂上山荘(4:45)-木曽駒ケ岳(5:00~5:30)-駒ケ岳頂上山荘(5:40~6:50)-中岳(7:00)-宝剣山荘(7:20)-宝剣岳(7:40)-宝剣山荘(8:05)-千畳敷(8:55)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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