磐梯山 猪苗代湖畔に屹立する会津のシンボル

磐梯山の全景
福島県の猪苗代町、磐梯町、北塩原村にまたがる磐梯山(ばんだいさん)に登りました。
その均整のとれた美しいシルエットから、会津富士の別名を持つ福島県のシンボルです。北側の裏磐梯には明治21年におきた大規模な水蒸気爆発の生々しい痕跡が残り、表から見たときとは全く異なる印象を見せてくれる山でもあります。
裏磐梯よりスタートし猪苗代湖側に下山する、裏表の縦断コースを歩いて来ました。

2016年8月11日に旅す。

山の日
それは2016年の8月に、突如彗星のごとく現れた新たな祝日です。

何処にでもいるちょっと疲れたサラリーマンを生業としているオオツキにとって、祝日が増えると言うのは単純に嬉しい出来事であります。

祝日法によると、山の日とは「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」ことを趣旨としています。そういう事であれば、ありがたく山に親しませて頂こうではありませんか。

今回の行き先は会津の名峰、磐梯山です。福島県有数の観光地である五色沼を擁し、日本百名山のブランドにも輝く、非常に人気の高い山です。
磐梯山 赤沼記念すべき山の日の施行日に選んだ行き先ですが、この山に対して、何か特別な思い入れがあるとか言うことではありません。「まだ行ったことのない山リスト」と天気予報とを見比べて、適当に決めた結果であります。

コース
磐梯山縦断ルートの地図
裏磐梯登山口から赤沼を経由して磐梯山に登頂。下山は猪苗代湖方面に向かって下る。磐梯山を縦断するルートです。

1.磐梯山登山 アプローチ編 公共交通機関で行く裏磐梯への道のり

7時10分 JR大宮駅
私の東北への旅は、大抵はここ大宮から始まります。
大宮駅 新幹線ホーム
東京-大宮間の新幹線代をケチッているわけではありません。新宿駅より西に住んでいる都民にとって、東京駅は遠すぎるのです。いや本当に。

Yahoo路線検索等で調べてみれば一目瞭然ですが、実は東京駅へ出るより、新宿から埼京線快速(時間帯によっては湘南新宿ライン)で大宮へ出る方が、料金だけでなく所要時間的に見ても有利なのです。

つばさ号というあまり見慣れぬオレンジ色の新幹線に乗りました。今回の目的地である郡山(こおりやま)までノンストップで行くというので選んだのですが、これは失敗でした。ご覧の通り超満員です。山形新幹線 車内の様子
山形新幹線へ直通するというこのつばさ号は、指定席の券がなかなか取れないほど盛況な列車だということを後から知りました。

ミニ新幹線規格なので座席数自体も少ないようです。山形まで行く用事が無い人は、素直にやまびこ号に乗るのが一番良いでしょう。

8時3分 郡山駅に到着しました。当然ながら、ここまでずっと立ちっぱなしです。
郡山駅 新幹線ホーム
新幹線の旅が快適なのは、座席に座っている場合に限るのだということが、大変良くわかりました。

赤べこラッピングの磐越西線に乗り換えて猪苗代駅に向かいます。バリアフリー化時代に真っ向から歯向かのようなステップ付の車両でした。ホーム自体が低いんですかね。
赤べこラッピングの磐越西線

郡山駅から40分ほどで猪苗代駅に到着です。
JR猪苗代駅
磐越西線をド田舎のローカル線だと思い込んでいた私は、スイカ・パスモが使えたことに少々驚きました。なんとも失礼極まりない思い込みでしたね。

駅前からは、目指す磐梯山の姿が一望出来るはずなのですが・・・、雲を被っておりますな。晴れるという天気予報を信じて、今は前に進むしかありません。
猪苗代駅の駅前風景

9時15分発の裏磐梯高原行きのバスに乗り込みます。こちらはスイカ・パスモが使えません。裏磐梯高原までの運賃は900円です。
裏磐梯高原行きのバス

10時に裏磐梯高原に到着しました。裏磐梯地方は福島県内でも有数の観光地です。バスは終点まで満員でした。8割は観光客で、ハイカー風スタイルの人は小数派でした。
裏磐梯高原バス停

10時5分 ようやく登山口に到着です。自宅を発進してから既に4時間以上が経過しています。公共交通機関頼みの身としては致し方ないところです。
裏磐梯高原の登山口

2.裏磐梯の荒々しき火口壁と神秘の赤沼

歩き始めて早速に、噴火跡の荒々しい山肌がお目見えです。
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表から見た場合とは大分雰囲気が異なりますね。もっとも、この時点ではまだ表からは見たことがありませんでしたけれど。

裏磐梯スキー場に向かって舗装道路を歩いていきます。太陽が照り付けて暑くなってきました。予報の通り、天気は上り調子であるようです。
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スキー場の入り口に到着しました。登山届けの投入ポストと携帯トイレの回収ボックスがあります。
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裏磐梯スキー場のゲレンデを登っていきます。人気の百名山だと言うのに、人の姿が全く見当たりません。
夏の裏磐梯スキー場

マイカーのある人たちは、標高およそ1,200メートル地点の八方台登山口からスタートするのが一般的です。スキー場方面から、しかもこんな遅い時間に登っているのは、ごく少数の物好きだけです。
夏の裏磐梯スキー場

背後に見えているのは吾妻連峰(あづまれんぽう)です。何処がピークなのかわからない、なだらかな山容しています。あちらも日本百名山ですな。
裏磐梯スキー場から見た吾妻連峰

ゲレンデを登りきったところで、ルートの分岐があります。ここは銅沼方向へ。
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登山道は良く整備されています。駆り払われていなければ、瞬く間に藪に覆われてしまうのでしょう。
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噴火壁とな。先ほど見えていたのは、斜面ではなく壁であると。
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磐梯山ジオパークの案内板がありました。裏磐梯に数多く存在する湖は、すべて磐梯山の噴火によって作られたものです。
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その堰止湖の中でも最大のものが、この桧原湖(ひばらこ)です。火山性の堰止湖としては日本最大の面積を誇ります。
裏磐梯スキー場から見た桧原湖

樹林帯に入りました。ジメジメしていて、まるで熱帯雨林のような雰囲気です。
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またもやジオパークの案内板がありました。観光客が紛れ混むような場所ではありませんけれど、これはハイカー向けの案内なんでしょうか。
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11時5分 赤沼に到着しました。風も無く、見事な逆さ磐梯を見せてくれました。
磐梯山 赤沼

火山性噴気の影響により、この沼の水は強酸性で、魚などの生き物は一切生存できません。赤茶けて見えるのは、酸性の水に金属が溶け込んでいるからです。
磐梯山 赤沼

良く見ると、周囲には噴煙が上がっている場所が何箇所かあります。この山が、現役の活火山であることが大変良くわかります。
磐梯山 赤沼

赤沼より見上げる噴火壁。こうして見ると、断崖絶壁ですね。当然ながら直接は登れないので、登山道は右側から迂回して登る形についています。
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3.磐梯山登山 登頂編 弘法清水を経て会津富士の頂きを目指す

山頂を目指して前進を再開します。樹林から出ると、直射日光が非常に厳しいです。
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八方台登山口からのルートと合流しました。ここまでの、登山道ほぼ貸しきり状態から打って変わって、一気に人が道に溢れました。
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かつてこの辺りには中の湯という温泉宿が存在していました。今はもう宿は廃業していますが、源泉そのものは健在で、周囲に強烈な硫黄臭を漂わせています。

蒸し暑さに汗だくになりながら、樹林帯の急登を登ります。
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いかに東北の山といえど、真夏の盛りに2,000メートル未満の山と言うのは、暑くてやってられませんねえ。

この辺りは、銅沼から見えていた噴火壁上部の稜線にあたります。裏磐梯の数多の堰止湖や、吾妻連峰が一望できます。
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ようやく頂上部が見えてきました。ここまでの急登で、まるで銅沼で溺れてきたかのように、汗で全身がずぶ濡れです。
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12時35分 弘法清水小屋に到着しました。大勢の人でごった返していました。裏磐梯スキー場での静けさが嘘のようです。
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山小屋ではなく茶屋です。宿泊は出来ません。トイレも存在せず、携帯トイレ用のブースがあるだけです。
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ここで磐梯山の山バッジと、オリジナル手拭を購入しました。

こちらは櫛ヶ岳。かつての大噴火で吹き飛んだ、噴火口壁の一部です。
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地図に道が書かれていないので、てっきりこの山には登れないのものだと思っていました。後から確認したところ、しっかりと登山道が存在するようですね。

事前に知っていれば、こっちから登りたかったのですけれど、惜しいことをしました。

小屋からは山頂までは500メートルほどです。あっという間かと思いきや、登山道が大渋滞を起こしてて、結構な時間を要しました。
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振り返って望む桧原湖。
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桧原湖をズーム。沿岸のリゾートホテルと思しき建物の姿が複数確認できます。
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そして櫛ヶ岳。すれ違い待ちがしばし発生するので、時間つぶしで写真撮影が捗ります。
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反対側の猪苗代湖方面から、山頂に向かってガスが湧き立っています。表側の展望は期待薄かな。
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ガレ場の脇を登っていきます。高所恐怖症の人がシビレてしまいそうな光景が眼下に広がります。
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山頂が見えました。山頂に居る黄色いユニフォームの集団は地元のサッカーチームで、白虎隊と言うチーム名なんだとか。
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・・・そんな名前をつけてしまったら、試合に負けた時に、燃える鶴ヶ城をバックに切腹しなければならなくなるんじゃなかい?

13時15分 磐梯山登頂しました。小さなお社を埋めるように、ケルンが出来上がっていまいした。正面に猪苗代湖があるはずなのですが、やはりこちら側はガスってしまっていますね。
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山頂標識は、最高地点より少し下がった場所にあります。
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裏側はこの通り快晴です。山頂を境に天候が変わってしまっている状態ですな。
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4.磐梯山登山 下山編 猪苗代湖を眼下に望みつつ、ロープウェイでラクラク下山

ガスが取れるまで粘りたいところではありますが、帰りのことを考えると余り時間がありません。山頂で軽く食事を済ませて下山を開始します。

下山は元来た道には引き返さずに、猪苗代方面へ下ります。
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このような縦断登山を計画することが出来るのは、公共交通機関を駆使する車も買えない貧乏人環境意識高い系ハイカーの特権です。

振り返ってみる山頂部。結構な急登です。こちらから登るのは割りとキツそうです。
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下の方はガスが晴れていて良く見えました。山頂付近だけがガスに覆われてる状態だったようです。
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駆り払われているのはスキー場のゲレンデです。こうして見ると、この周囲はスキー場だらけです。
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ハイマツがありました。関東甲信越地方の山では、高山帯にしか存在しない植物です。東北地方では、2,000メートル未満の山でも普通に生えているのですね。
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こちらは日本のエーデルワイスことウスユキソウ。主に東北地方の山に咲きます。
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そうこうしている内に、徐々にガスが晴れてきました。
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もしかしたら猪苗代湖が見えるのではないかと思い、少し待機します。
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見えました。Lake Inawasiro!。日本で4番目に大きいと言うこの湖は、確かに視界からハミでんばかりに広大です。
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会津若松の市街地も一望できます。
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下山に使う予定のロープウェイも見えました。
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見るもの見て満足したところで、下山を再開します。
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下山途中に、1箇所だけやや危険な場所がありました。アングル的にちょっとわかり難いですが、この岩をトラバースしながら下へ降ります。
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危険箇所を越えると、ロープウェイ乗り場はすぐそこです。
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このロープウェイ山頂駅は、登山者だけではなく、普段着の観光客も訪れる場所です。
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この通り、猪苗代湖を一望することが出来ます。
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ゴンドラに乗ってショートカットします。料金は往復1,500円で、片道だと1,100円です。
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下りの片道だけ乗る人間は余り居ないと見えて、山頂側では集金を行っていませんでした。下へ降りてから料金を支払うように言われてゴンドラに乗り込みます。

ロープウェイを使わずに下山できる道も当然ありますが、展望の無い樹林帯の中を延々と下ることになります。ここはケチケチせずに、素直に1,100円を払った方が吉でしょう。

ゴンドラより望む磐梯山。山頂のガスが、取れそうで取れない中途半端な状態でした。
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こちらは安達太良山方向の展望です。吾妻連峰と同様に、のっぺりとした平坦な山容をしています。
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15時30分 スカイシャトル山麓駅に下山しました。ロープウェイという文明の恩恵に浴して、楽に下山できました。
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5.タクシーで15分とは、徒歩で言うと何分?

さて、実はここからが面倒です。

このゴンドラ乗り場から駅猪苗代駅まで、バスなどの公共交通機関は存在しません。地図にはタクシーで15分とだけ書かれています。

タクシーで15分と言うことは、徒歩だと1時間ちょっとくらいかなー(根拠はない)という実に大雑把な見込みでルート計画を立てました。

そんな訳で、駅に向かって歩き始めます。
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目標は、猪苗代駅16時51分発の電車に乗ることです。まあ、1時間で着く(根拠はない)のだから、十分に余裕はあるでしょう。

電話でタクシーを呼べば、すべての問題は一瞬で解決します。

しかしながら、車も買えない貧乏人環境意識高い系ハイカーである私としては、より金のかからない方法低炭素排出社会を目指す崇高な取り組みを、常に模索しなければならないのです。

進行方向左手には磐梯山。
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そして右手には猪苗代湖。
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会津地方のシンボルを眺めながら、鼻歌混じりに気持ちよく舗装道路を歩いていきます。

ガスが完全に取れて、ようやく磐梯山がその完全な姿を見せてくれました。裏から見た時とでは、まるで印象の異なる山です。
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30分ほど歩いたとろで、地図で現在地を確認します。
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・・・・
おかしいな。時間的には大体半分くらい進んでいるハズ(根拠はない)なのに、まだ4分の1くらいしか進んでいません。

どうやら、タクシー15分=徒歩1時間と言う計算式は、万年渋滞している都内においてしか成立しないようです。

と言う訳で、また何時ものオチがここでも繰り広げらます。のどかな田園風景の中を、けたたましい足音を轟かせながら走り抜ける、一人のおっさんの姿がそこにはありました。
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同じ経験がある方はご存知かと思いますが、ハイカットの登山靴を履いたまま舗装道路の上を走ると、周囲の人間が驚いて振り返るくらい大きな音が出ます。

16時48分に猪苗代駅に到着。息き絶え絶えになりつつも、何とか間に合いました。普通に歩いたら、2時間以上は優にかかるでしょう。
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最後に、駅前から望む磐梯山の勇士を写真に収めて、足早にホームへと向かいました。
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磐梯山は、表と裏で全く違う表情を見せる、一粒で二度美味しい山でした。
裏磐梯方面の荒々しい噴火の跡も、表から見た均整の取れた美しいシルエットも、どちらも甲乙付けがたい魅力を持っています。
ここはやはり、裏表両方の魅力を同時に味わいつくすことの出来る縦断ルートが断然オススメです。
最後の最後に炎天下のマラソンを強いられると言うオチがつきましたが、始めから素直にタクシーを利用すれば、無理のない行動計画にまとめる事が可能でしょう。

あと、これは当たり前のことなのですが、ルートの所要時間は事前に十分確認したうえで計画を立てましょう。
以上、当たり前のことが出来ていなかった男からのアドバイスでした。

<コースタイム>
磐梯山登山口(10:05)-裏磐梯スキー場(10:30)-赤沼(11:05~11:15)-弘法清水小屋(12:35~12:50)-磐梯山(13:15~13:30)-スカイシャトル山頂駅(15:10)

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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