平標山-仙ノ倉山 冬期限定のヤカイ沢ルートから登る谷川連峰最高峰

冬の平標山から見た仙ノ倉山
群馬県みなかみ町と新潟県湯沢町にまたがる平標山(たいらっぴょうやま)と仙ノ倉山(せんのくらやま)に登りました。
世界でも指折りの豪雪地帯として名高い上越国境地帯に立つ、谷川連峰最高峰です。夏には楽園のような一面のお花畑に覆われる県境の稜線上は、冬の間は大荒れの天気と深い雪に閉ざされた極めて過酷な環境となります。
冬の上越国境では珍しい晴天の日を間を突いて、白一色の稜線を歩いて来ました。

2021年3月7日に旅す。

上越国境

それは登山を趣味として嗜む者を引き付けてやまない、甘美なる魅惑に満ちた山域です。

上越国境とは、群馬県と新潟県との境界を形成している山岳地帯の事を指す言葉です。旧国名で上野国(こうずけのくに)(現群馬県)と越後国(えちごのくに)(現新潟県)の国境であったことから付いた名称です。
上越国境地帯の地図
この山脈は、太平洋側と日本海側とを分かつ日本の中央分水嶺を形成しています。

冬期の上越国境地帯は、世界的にも類を見ない豪雪地帯として知られています。

夏の間は日本列島の上空にまで大きく張り出してた太平洋高気圧の活動が後退することにより、冬の日本列島上空は、いわいゆる西高東低と呼ばれる気圧配置に覆われます。

水が高きから低きへ流れるように、大気は気圧の高い場所から低い場所へ向かって流れます。

そのため、西高東低の冬の気圧配置化においては、大陸のシベリア上空にある冷たい空気が、西から東に向かって日本列島へと吹き付けて来ることになります。

この西から吹く冷たい風は、日本海の海上で発生した水蒸気を多量に含んだ空気を運びつつ、日本列島上空に到達します。そして列島の中央部に連なる上越国境地帯の山にぶつかり、この地に大量の雪を降らせます
冬の仙ノ倉山から見た谷川連峰
日本海上空の湿った空気と、日本列島の中央に連なる脊梁山脈。そして西から吹き付ける冷たい風というこの三者の組み合わせは、言うなれば天然の真水生成装置のような働きをしています。

今回はこの上越国境を形成している谷川連峰に属する、平標山と仙ノ倉山の2座へと登って来ました。苗場スキー場行きのバスでアクセスが可能であるため、冬期であっても公共交通機関を利用したアプローチがしやすい山です。

荒天時には人を寄せ付けない過酷な環境となる山ですが、晴天時であれば登るのはさほど難しくありません。

コースは冬季限定のヤカイ沢ルートを選択しました。無雪期には笹薮に覆われてしまうため、雪のある時にしか歩くことの出来ないルートです。
冬のヤカイ沢

稜線まで登ると、そこには眩暈をおこしそうになるほどの白一色の世界が広がっていました。冬の上越国境地帯では珍しい完璧なる晴天に恵まれた、会心の山行きでありました。
冬の平標山から見た仙ノ倉山

コース
210307仙ノ倉山-map
平標登山口より、ヤカイ沢ルートを登り平標山へ。そこから谷川連峰主脈の稜線沿いに仙ノ倉山を往復します。冬の平標山と仙ノ倉山を巡るルートとしては、最も一般的なコースです。

1.平標山&仙ノ倉山登山 アプローチ編 トンネルを抜けるとそこは雪国だった

6時 JR東京駅
夜明け前の東京駅よりおはようございます。上越新幹線に乗り込み、新潟県の越後湯沢へと向かいます。
東京駅の新幹線ホーム
普段は比較的空いている印象の強い上越新幹線ですが、冬の間はスキー客が詰めかけるためそこそこ混雑します。

7時24分 越後湯沢駅に到着しました。スキー・スノーボードを抱えた人々が大挙して下車する姿は、見ていてなかなか壮観です。
越後湯沢駅の新幹線ホーム

バス停に出来上がっていた大行列を前にして狼狽するも、この行列はスキー場直行の急行便を待っている人達のものでした。これから乗車する予定の通常の路線バスの方は、至って空いておりました。
越後湯沢駅のバス乗り場

冬の越後湯沢は「トンネルをぬけたらそこは雪国だった」を地で行く街です。山へ向かう前の駅前の時点で、既に完全なる雪国の光景が広がっていました。
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7時55分発の西武クリスタル行きのバスに乗車します。ちなみに、先ほどのスキー場直行の急行バスに誤って乗ってしまうと、平標登山口バス停には停車しないので要注意です。
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8時31分 平標登山口に到着しました。下車したのは私を含めて3名のみでした。冬の平標山にバスで登りに来ると言うのは、どうやら少数派であるようですな
平標登山口バス停

バス停の目の前からは、無雪期における定番コースである松手山コースが通る送電鉄塔が良く見えました。このルートは冬でも歩けるのですかね?
松手山コースの送電鉄塔

2.沢沿いの緩やかな登りが続く、ヤカイ沢ルートの前半戦

手早く身支度を整えて、8時40分に行動を開始します。始めは別荘地の中を行く、除雪済みの舗装道路歩きです。どうやら昨夜に少しだけ降ったらしい新雪が、薄く路面上に積もっていました。
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左手に松手山コースの稜線が見えています。あちらは序盤で一気に標高を稼いで後半緩やかになるのに対して、ヤカイ沢ルートの方は終盤になってから核心部が現れます。
林道から見た松手山コース

除雪されている末端地点まで歩いて来ました。さて、本日の最適な装備品はアイゼンなのか、それともワカンなのか。雪の上に足を乗せて見ないことには判断できません。
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除雪されていない林道は、完全に雪に覆われて斜面と一体化していました。こうなると選択の余地はありません。アイゼンでないと歩けませんな。
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今のところは雪は堅く締まっており、踏み抜きは発生しません。この後、日中になって気温が上がってくると、どうなるかはわかりませんが。

9時20分 ゲートのある場所まで歩いて来ました。道標等の案内はありませんが、ここがヤカイ沢ルートの取り付きです。道から外れて左へ入って行きます。
ヤカイ沢ルートの取り付き地点

このヤカイ沢コースは完全なるバリエーション・ルートな訳ですが、意外とはっきりした道筋が存在していました。もっともこれは、始めの内だけでしたが。
ヤカイ沢ルート 道中の様子

杉林を抜けると、道と呼べるものは完全に無くなりました。先行者がつけてくれたトレースのおかげで難なく進めましたが、降雪直後に一番乗りしてトレースが無い状態だと、ルートファイティング能力が求められます。
ヤカイ沢ルート 道中の様子

中心付近に小さな沢が流れています。これがヤカイ沢なのかな。あまり近づくと踏み抜く可能性があるので注意を要します。
ヤカイ沢ルート 道中の様子

今のところは全般的に傾斜も緩く、とても歩きやす道です。危惧していた踏み抜きも全くなく、アイゼンで快適に歩けています。
冬のヤカイ沢

前方の稜線が次第に大きくなってきました。この上へと登って行かなければならない訳ですが、この後にかなりの急勾配が控えているであろう事が容易に想像できます。
ヤカイ沢ルート 道中の様子

いつの間にか背後の視界が開けていました。見えているのは方角的に、信越国境を形成している志賀高原の山々であるはずです。
ヤカイ沢ルートから見た志賀高原

ここまで沢沿いにほぼ一直線に登って来ましたが、稜線の手前で右に大きく進路を転じます。とりあえずこの場所を、ヤカイ沢大曲りと命名しておく。
ヤカイ沢ルート 道中の様子

3.平標山登山 登頂編 急登の続くヤカイ沢後半戦を乗り越えて、大絶景の広がる稜線へ

右回りに進路を転じて以降は、さらに勾配がきつくなってきます。付近にザックを落として休憩できそうな場所は一切ないので、ノンストップで登り続けます。
ヤカイ沢ルート 道中の様子

急坂ゆえに、稜線との標高差が短時間で見る見る縮んでゆきます。
ヤカイ沢ルート 道中の様子

背後に苗場山2,145m)がお目見えしました。山頂部が極めて特長的な形状をしているので、識別は容易です。
ヤカイ沢ルートから見た苗場山

バックカントリースキーヤーが、颯爽と斜面を下って行きます。気持ちよさそうですね。なんとも羨ましい。
ヤカイ沢ルートを下るスキーヤー

最後の尾根への取り付きは、絶壁かと思うような傾斜度でした。ここはアイゼンの前爪を蹴り込みながら登ります。
ヤカイ沢ルートの急登

急坂を登り切ったところで、これまた恐ろしく急勾配な尾根に乗りました。この尾根は、平標山から平標の家を経て三国山へと続いている稜線から派生した枝尾根です。
ヤカイ沢ルートの尾根道

背後に連なるのは志賀高原の山並み。白砂山や佐武流山と言った2,000メートル越えの山が連なっているはずですが、なじみの薄い山域なので山座同定が難しい。
ヤカイ沢ルートから見た志賀高原
この新潟県と長野県の境界である信越国境地帯もまた、上越国境ほどではないものの豪雪地帯となっています。

雲をまとった浅間山(2,568m)が、ひょこりと頭だけを覗かせていました。この山があるのは上信国境上で、新潟県にはかかっていません。
ヤカイ沢ルートから見た浅間山

ちょっと嫌な感じのするトラバースがありました。雪が堅く締まっている分にはなにも問題ありませんが、緩んでくると神経を使いそうです。
ヤカイ沢ルートの尾根道

枝尾根の尾根沿いに登り上げます。右側は雪庇なっているので、なるべく中心付近を歩きましょう。
ヤカイ沢ルートの尾根道

雪庇の付け根にはクラックが出来つつありました。うかつに踏み抜こうものなら、大規模な雪崩を誘発する危険があります。
ヤカイ沢ルートに発生したクラック

眼下に平標の家があるのが見えて来ました。ここまで登ってくれば、もう間もなく主稜線と合流します。
ヤカイ沢ルートから見た平標の家

左奥に平標山の山頂が見えて来ました。もうあと一息です。ラストスパートをかけて行きましょう
ヤカイ沢ルートの尾根道

ようやく主稜線に乗りました。ヤカイ沢大曲(仮称)を過ぎてからは、休める場所もないなかなか険しい登りでありました。
ヤカイ沢ルートの合流地点
なお、この合流地点には目印となるようなものが何もありません。帰る際に降下地点分からなくなってしまわないように、景色をよく覚えておいてください。

右手に、この後に歩く予定の仙ノ倉山へと続く稜線が見えました。その姿は、混じりけなしにただひたすら白い。スプーン一杯で驚きの白さな谷川連峰です。
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山頂直下最後の乗りです。ここまでノンストップで歩き続けてきた疲労もあってか、もうあと一息なのになかなか足が前に出ません
平標山の山頂直下

山頂には意外と多くの人の姿がありました。多いとは言っても、登山道が渋滞してしまうほどに大勢が詰めかける谷川岳と比べれば、全然少ない数ではありますが。
平標山の山頂

11時55分 平標山に登頂しました。道標を兼ねた山頂標識しかないような、通り道扱いの頂です。こんなに素晴らしい展望の山なのにね。
平標山の山頂

山頂の様子
名前の通りの平坦で広々とした山頂部です。風を遮るものが何もない吹きっ晒しの場所なので、強風時にはあまりゆっくりと寛ぐのには適していません
平標山 山頂の様子

山頂に着くなりまず目に飛び込んできたのが、この雲海です。新潟県側の下界は、完全に頭上を雲に覆われていました。
冬の平標山から見た雲海

雲間から頭を覗かせた山並みが幻想的です。越後湯沢駅がある辺りも完全に雲に覆われています。そいえば確かに、朝バスを待っていた時も、頭上は曇りでしたっけか。
冬の平標山から見た雲海

松手山コース方面を歩く登山者の姿が見えます。どうやらこちらルートも、冬にも歩けはするようです。ヤカイ沢ルートと比べて、どちらがより安全であるのかは良くわかりませんが。
平標山から見た松手山方面の稜線

そしてこれから向かう仙ノ倉山です。なだらかで気持ちの良さそうな稜線が続いています。
冬の平標山から見た仙ノ倉山
平標山への登頂時刻が12時30分を過ぎるようであらば、本日はこの先へは進まずにここまでとするつもりでした。しかし、思いのほか早くに登ってこれたので、このまま仙ノ倉山まで行きます。

無雪期に平標山を訪れると、こんな光景が広がります。この平標山から仙ノ倉山へと続く稜線は、いつ訪れても大変に素晴らしい思いが出来る場所なので、たいへんオススメです。
平標山から見た仙ノ倉山

4.仙ノ倉山登山 登頂編 白一色に染まった稜線を歩き、谷川連峰最高峰の頂へ

12時15分 前進を再開します。平標山の山頂直下は木階段となっていますが、半分雪に埋もれて僅かに露出している状態でした。階段の近くを歩くと踏み抜きしやすいので、少し離れた場所を歩いた方が良いです。
平標山の木階段

平標山までで引き返す人の方が圧倒的に多数派らしく、仙ノ倉山方面の稜線を歩く人の姿は疎らでした。この絶景をほぼ独り占めに出来るこの贅沢さよ。
平標山から仙ノ倉山へ向かう稜線

鞍部まで下って来ました。ここから緩やかに登り返します。稜線上はそれなりに風が強い状態でしたが、冬の上越国境としては、この程度であらば比較的穏やかな方だと言えるでしょう。
平標山から仙ノ倉山へ向かう稜線

急坂はなく、どこまでも緩やかな道です。稜線上の雪は強風でみな飛ばされてしまうらしく、薄い氷の板のような状態です。
標山から仙ノ倉山へ向かう稜線

振り返って見た平標山。もうあと3カ月もすれば、この稜線上には楽園の如きお花畑が出現します。
標山から仙ノ倉山へ向かう稜線1

仙ノ倉山の山頂部がお目見えしました。のっぺりとしていて、どこが最高地点なのか分かりにくいですが、左から2番目のピークが山頂です。
標山から仙ノ倉山へ向かう稜線

目印の東芝ランプが、エビのしっぽに覆われていました。この赤く目立つ標識は、晴れている時には不要ですが、悪天候時には非常に重要な目印です。
エビのしっぽに覆われた東芝ランプ

雪面に小さなエビのしっぽが無数に付着し、エビフライ定食状態の景観を作り出していました。そんなことを言っていたら、無性に天丼が食べたくなってきましたぞ。
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左手には相変わらずの雲海が広がっています。今頃下界の人々は、飴色のどんより空にため息をついていることでしょう。
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右手に上州武尊山(2,158m)の姿が見えて来ました。川場スキー場のリフトを使用できるため、冬期であっても比較的登りやすい山です。
仙ノ倉山から見た武尊山
しかし、その登り易さが広く喧伝されすぎてしまった結果、最近では不十分な準備で安易に入山してしまう人が増えて問題になっています。

この山が登り易いと言うのは、あくまでも「比較的」にです。雪山へ登ると言う行為には、相応の準備と覚悟を要するのだと言う事をゆめゆめ忘れてはなりません。

まだ山登り趣味に目覚めたばかりの駆け出しハイカーだった頃の私は、雪山登山にだけは絶対手を出すまいと思っていました。あまりもリスクが大きすぎて、とても割に合わない行為であると。
仙ノ倉山の山頂
しかし、一度この白と青だけの世界を体験してしまうと、考えは完全に改まってしまいました。冬の山には、たとえ命を懸けてでも、直に自分の目で見てみたい光景があるのだと。

とは言ってもまあ、初心者向けと言われている以上のレベルの雪山に登ろうと言う気は、今現在もサラサラありはしません。私は安全第一をモットーとするセーフ登山家ですから。

山頂手前で一度大きく下ります。この下りは夏道だと岩場になってい場所で、結構急です。
仙ノ倉山の山頂直下

下った後は当然登り返しです。この鞍部一帯は初夏になると、周囲一面がハクサンイチゲの群生に覆われます
仙ノ倉山の山頂直下

最後登りは、エビのしっぽでやたらとモコモコしていました。
仙ノ倉山の山頂直下 width=

ここでも、夏道の木階段が半分露出していました。踏み抜かないように、階段の周囲を避けて登ります。
仙ノ倉山 山頂直下の木階段

山頂が見えました。人影はなく貸し切り状態です。やったね!
仙ノ倉山の山頂

13時 仙ノ倉山に登頂しました。雪がある状態の方が歩きやすいのか、夏道の標準コースタイムよりも速いペースでの到着となりました。
仙ノ倉山の山頂標識

山頂の様子
平標山と同様に、平坦で広々している空間です。吹きっ晒しであると言う点においてもまた同様です。
仙ノ倉山 山頂の様子

方位盤に、なかなかお目にかかれないサイズの、巨大なエビのしっぽが付着していました。この場所が普段は、どれほどの過酷な環境下にあるのかが、何となくうかがえる光景です。
仙ノ倉山山頂のエビのしっぽ

5.冬の谷川連峰最高峰から望む、上越国境地帯の大絶景

それでは早速、谷川連峰最高地点からの眺望を存分に満喫したやりましょう。何しろ貸し切り状態ですからね。

正面には、谷川岳へと続く谷川連峰主脈の稜線が連なります。この稜線が緩やかのは平票山から仙ノ倉山までの区間だけであり、この先は大きくアップダウンを繰り返すかなりの険路となっています。
冬の仙ノ倉山から見た谷川連峰
谷川連峰縦走は、以前よりずっと行きたいと言い続けていながら、未だに訪問が叶っておりません。

日帰りでは厳しいコースであるので、できれば谷川岳肩の小屋に一泊して歩きたいと思っているのですが、人気の山小屋なためいつも予約争奪戦に敗れてしまいます。

天気の気難しい山域なので、自分の休日と晴天と小屋の予約の三つをそろえるのは、もはや不可能なのではないかと思い始めている今日この後です。

かくなる上は、稜線上にいくつかある見るからに居住性が劣悪そうな、かまぼこ型の避難小屋に泊まるしかないのか。

これは谷川連峰主脈の最低鞍部である、毛渡乗越付近のアップです。仙ノ倉山の山頂からは400メートル以上も標高を落としています。ここを冬に歩く人は、果たしてどのくらい居るのだろうか。
仙ノ倉山から見た毛渡乗越

万太郎山と、その背後の谷川岳1,977m)です。なにしろこの晴天ですから、今頃あちらには大勢の登山者が詰めかけて、押すな押すなの大渋滞が発生していることでしょう。
仙ノ倉山から見た谷川岳
谷川岳に登っている皆さーん。こっちの方が標高も高いし、何よりも空いていますよー。仙ノ倉山は良いところ、一度はおいでー。

谷川岳の左奥に見えているのは、尾瀬の至仏山(2,228m)と燧ヶ岳(2,356m)です。上越国境地帯の山々と比べると、やはり少し雪の量が少なめなのが何となくわかります。
仙ノ倉山から見た至仏山と燧ヶ岳

こちらは先ほども見えていた上州武尊山です。その背後には、関東地方最高峰の肩書を持つ日光白根山(2,578m)の姿も見えます。
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ちなみに、上信国境(群馬県と長野県の境界)上にある浅間山は、関東地方の山を名乗る資格を有しています。

活発な火山活動が続いている浅間山は、今なお標高が少しづつ高くなり続けており、そう遠くない将来に日光白根山を抜いて、関東地方最高峰になるものと予想されています。

さらに視線を右に転じると、平野の只中に大きなすそ野を広げる大柄な山の姿が目にとまります。上州きっての名峰、赤城山(1,828 m)です。
仙ノ倉山から見た赤城山

さらに右には、信越国境の志賀高原の山並み。スキーリゾート地として名高い場所だけに、どの山も雪がたっぷりです。
仙ノ倉山から見た志賀高原

そしてお隣の平標山です。仙ノ倉山側から見ると、本当に名前通りに平らな姿をした山ですね。
仙ノ倉山から見た平標山

西側は、朝からずっと変わらずな一面の雲海です。西高東低冬型の気圧配置らしく、常にこちら側から冷たい風が吹いて来ます。
仙ノ倉山から見た雲海

素晴らしい眺めです。割と本気で、この場所から帰りたくないと言う感情が心の内から沸き起こって来てしまったほどに。
仙ノ倉山から見た雲海

6.仙ノ倉山登山 下山編 名残惜しみつつ元来た道を引き返す

さて、帰りたくないとは言っても、いつまでもここでじっと動かずにいたら。いつかは凍えてしまいます。名残しくはありますが、13時25分に下山を開始します。
仙ノ倉山から平標山へと続く稜線

この時間になっても快晴状態が続いており、雪面は凄まじい照り返しです。サングラスをせずにいたら、あっという間に目をやられてしまう事でしょう。
仙ノ倉山から平標山へと続く稜線
度入りのサングラスを持っていない私は、稜線へ出て以降はずっとスキー用のゴーグルを装着したままです。

眼下には、かつて氷河によって生み出されたのであろう、険しい断崖が連なっています。とても標高2,000メートル少々の山の光景とはおえないようなスケール感です。
仙ノ倉山から平標山へと続く稜線

見渡す限りの白一色の光景です。一たび天候が荒れたら、それこそ一瞬で現在地を見失うでしょうね。
仙ノ倉山から平標山へと続く稜線

どこまでも平坦な平標山。良いですね、こういう放牧的な山は実に好みです。
仙ノ倉山から平標山へと続く稜線

鞍部まで下って来ました。本日最後の登り返しです。
鞍部から見た平標山

一見すると、とてもなだらかに見える斜面ですが、目の前から見上げると実は結構な登りです。気合を入れて登り返しましょう。
平標山への登り返し

14時15分 平標山へ戻って来ました。この時間ともなると、流石にもう登って来る人もおらず無人状態でした。
平標山の山頂

仙ノ倉山の姿はこれで見納めです。さらば仙ノ倉山。素晴らしき景色をありがとう!
平標山から見た仙ノ倉山

元来た道を引き返します。日当たりの良い南側の斜面は、登った時よりもかなり雪が緩んでいました。
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眼下に苗場スキー場が見えます。それは詰まるところ、今からあの高さまで下って行かねばならないという事です。心のが折れそうになる高度感です。
平標山から見た苗場スキー場

ヤカイ沢ルートへ分岐地点を右折します。前述の通り、目印となるものは何もないので、分岐を見落として進み過ぎないように注意してください。
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私はGPSを携行していたので、往路のルートを忠実になぞれば何も問題はありませんでした。仮にGPS無しで、この降下点を迷わずに見つけることが出来たかどうかは、正直あまり自信がありません。

上だけを見て登っていた時には気が付きませんでしたが、この枝尾根の下りは結構な高度感があります。一歩一歩を踏みしめながら、慎重に下りましょう。
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往路で少し嫌に感じたトラバースを通過します。雪は多少緩んではいましたが、幸いにも踏み抜いて滑落するほどではありませんでした。ここだけは、ストックではなくピッケルが欲しくなる場面です。
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続いて樹林帯の急坂を下ります。枝尾根からこの急坂を下りきるまでの区間が、ヤカイ沢ルートにおける核心部であると思います。
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ヤカイ沢大曲(仮称)まで戻って来ました。ここまで下って来れば、もうあと警戒すべきは踏み抜きくらいなものです。
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陽がだいぶ傾いて来ました。今のペースで下り続ければ、ヘッドライトの出番もなくバス停まで帰り着けそうです。
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樹林帯に入ったら、もう後は消化試合です。雪はかなり緩んでおり、ワカンに履き替えるべきか逡巡するも、結局は面倒でアイゼンのまま強行突破しました。
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16時20分 林道まで戻って来ました。何故か朝に取り付いたゲートのある場所とは微妙に違う場所に下りて来ました。はて、どこでルートを取り違えたのでしょう。まあ、戻ってこれたのだから別に良いと言えば良いのですが。
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あとはバス停まで戻るだけです。実はこの林道歩きが地味に長かったりすのですけれどね。
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除雪されている場所まで戻って来ました。ここでようやくアイゼンと言う足かせを外すことが出来ます。
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もともと重くて、決して歩き心地が良好とは言えない冬靴を履いているのに、アイゼンを外しただけで軽やかに歩けるようになった感覚になるのだから不思議なものです。
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バス通りまで戻ってきたところで、ちょうど目の前をバスが反対方向に向かって通り抜けて行きました。あのバス終点で折り返して、帰路の私を運んでくれる便になるはずです。
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16時45分 平標登山口バス停に到着しました。歩道が完全に埋まってしまっておりますな。ここで次の17時15分のバスを待ちます。
平標登山口バス停
ちなみにこの17時15分の便は冬季限定です。この路線は冬の方が便数が多いと言う、スキーリゾート地ならではの時刻表となっています。

時刻表より少し遅れてやってきたバスは、苗場スキー場からのスキー客を乗せて最初から満席状態でした。満員状態のバスに揺られながら、帰宅の途に付きました。
平標登山口バス停

かくして晴天に恵まれた冬の上越国境への訪問は、大満足の内に幕を下ろしました。
この上越国境地帯の山々はとにかく天候が気難しい場所です。積雪期に訪問を考えているのであれば、天候を味方に付けることがないよりも重要となります。まかり間違っても、荒天の中へ突っ込もうなどとは考えないでください。
晴天時であらば、ルート上に特にこれと言った難所はありません。平標山だけで引き返してしまう人が多いようですが、それはあまりにも勿体ないことです。時間と体力が許すのであらば、是非とも線御蔵山まで足を上してみることをオススメします。

<コースタイム>
平標登山口(8:40)-ヤカイ沢入口のゲート(9:20)-平標山(11:50~12:15)-仙ノ倉山(13:00~13:25)-平標山(14:15)-ヤカイ沢入口(16:20)-平標登山口(16:45)

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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