長野県伊那市と富士見町にまたがる入笠山(にゅうかさやま)に登りました。
八ヶ岳と向かい合うようにして立つ、赤石山脈(南アルプス)北端の山です。山腹に富士見パノラマスキー場があり、スキー場のゴンドラリフトを利用することで容易に山頂に立つことが出来ます。手軽に登れてかつ展望もよいことから、雪山初心者向けの入門の山として絶大な人気があります。
そんな手軽さが最大の特長である山に、あえて駅から直接歩いて登って来ました。
2024年1月14日に旅す。
入笠山は北八ヶ岳の北横岳や群馬県の赤城山などと並んで、雪山初心者向けの山として定番中の定番と言える存在です。富士見パノラマスキー場のゴンドラを使用すると、だいたい1時間もあれば山頂に立つことが出来ます。
道中には特にこれと言った難所もなく、内陸性の気候であるため冬でも晴天率が高いのも大きな特色です。初めての雪山に、この山を選ぶ人も多いのではないでしょうか。
そんな大定番と言える入笠山ですが、私自身は長らく未踏のままでした。いくらなんでも手軽過ぎるかなと言うのと、あとはこの山独特のキラキラした雰囲気に気圧されていたからと言うのもあります。
入笠山と聞くとこう、新品ピカピカの雪山装備に身を包んだシャレオツな紳士淑女達が、ビーフシチューの写真をSNSに投稿するためにこぞって訪れる場所である。
と、そんな偏見にまみれたイメージが自分の内部に強くあって、なんとなしに敬遠していました。そんな中に無精髭面したおっさんが一人で紛れ込むのは、ある種の放送事故みたいなものだろうと。
そこで今回はロープウェイを使わずに、あえてすずらんの里駅から歩いて登って来ました。そうすればカジュアルな山のイメージから一転して、何となく硬派な雪山登山である感じになりませんか。え?ならない?そうですか・・・
手軽さが一番の売りであるはずの山に、あえて自ら長所を潰しに行って一体どうするんだと言う気がしなくもありませんが、恐らくは誰の何の役にも立たないであろう、駅から直接歩いて行く冬の入笠山訪問記です。
コース
すずらんの里駅から長々と林道を歩いてアプローチし、入笠山に登頂します。下山はロープウェイを使ってラクラク下山して、富士見駅まで歩いて戻ります。
おそらく大多数の人が、何故こうなったのかと首をかしげるであろう、変則的な行程です。
1.入笠山登山 アプローチ編 鈍行列車で行く富士見町への旅路
4時30分 JR三鷹駅
前回に引き続き、2週連続で我が第2の最寄り駅こと三鷹駅へとやって来ました。今の季節に朝っぱらから自転車をこぐのは、寒さが身に染みて結構辛いものがあります。
4時40分発の高尾行きの始発電車に乗車します。流石にこの時間から行動開始する人は圧倒的に少数派と見えて、車内は何時もガラガラです。
高尾、大月、甲府と始発電車をリレーして行きます。大月駅から乗車したこちらの車両は、まだ車庫から出て来たばかりなのか車内が十分に温まっておらず、電車の中で遭難するかと思うくらい寒かったです。
この211系電車の暖房は構造が古いからなのか効き方がイマイチよろしくなく、尻の下だけが火傷するかと思う位に熱くなるのに、室内全体はなかなか暖かくなりません。暖房ユニットだけでも最新型と交換してくれないかな。
7時40分 すずらんの里駅に到着しました。ホームに降り立つなり、電車の中とは比較ににならないような冷たい空気が出迎えてくれました。寒ッ!
目指す入笠山はこの通り、駅のホームから良く見えます。現在地からの標高差はおおよそ1,000メートル程あります。それだけあるならもう、手軽過ぎるなんて誹りを受けることはきっと無いでしょう。
2.何気にわかりづらい登山口への道程
じっとしていると寒さで凍えてしまいそうです。歩き始めれば温まるだろうと言う事で、身支度もそこそこに7時45分に行動を開始します。
目的地は最初から見えているのだから、道に迷うことなどは無いだろう。そう思いロクに地図を確かめもせずに歩き始めてしまった訳なのですが、途中に道標などは一切なく意外と道順はわかりづらいです。
すずらんの里と名乗っているだけあり、街灯のデザインもすずらん型になっていました。なかなか芸が細かいですね。
マンホールのデザインもすずらんです。駅名の由来にもなっているすずらんの自生地は、入笠山の山頂近くにあります。当然ながら、今の季節はシーズンオフで咲いてはいませんが。
道中にある八幡神社の大ケヤキなどを見物しつつ、道なりに進みます。途中までは基本的に駅からは真っすぐ直進すれば問題ありません。
どうやら前日の夜に降ったらしい新雪を踏みしめながら進みます。太陽にあたれば多少は暖かくなるのではないかと期待ていましたが、相変わらず身が縮むような寒さです。
普段は歩き始めてある程度体が温まって来たらネックウォーマーを外すのですが、外し時を見いだせないまま進みます。
ここは道なりに右へ進むのが正解だったのですが、左上の方に富士見パノラマスキー場のゲレンデが一部見えているのに引きずられて、左折してしまいました。もっと真面目に地図を見てから歩くべきでしたな。
もっとも間違えても少し遠回りになるだけで、この先でリカバリーは可能です。
背後を振り返ると、白く染まった八ヶ岳連峰の山並みが壁のように並び立っていました。この時点でもう既に絶景ですが、山頂まで行けばもっと良く見えます。
八ヶ岳連峰の一番端にある蓼科山(2,531m)までしっかりと見えています。諏訪富士の異名を持つ山ですが、富士山型に見えるのは角度限定で、横から見ると背後に背ビレのような尾根があるのが見えます。
横道にぶつかりましたが、先ほど道を間違えてしまっているのでここは右へ曲がります。何事もなく復帰したかのように書いていますが、実際には若干混乱しました。
左側に山中へ入って行ける林道の入り口があるはずなので、注視しながら進みます。林道とは別の小さな作業道の入口が無数にあって、何度か騙されそうになりました。
かなりわかりづらいので、GPSアプリなどを使用した方が確実だと思います。かく言う私自身はGPSレシーバーを忘れて来てしまったので、5万部の1スケールの山と高原地図だけを頼り先ほどから悪戦苦闘しております。
8時20分 入笠山の登山口に到着しました。まったくメジャーではないルートなので、駅からここまで道標などの案内は一切ありませんでした。
ここまで歩いてきて、ようやく入笠山の名前が書かれた道標がありました。山頂までは8kmと結構な距離があります。
3.ルートがわかりづらい林道を延々と登る
始めに断っておきますと、この先は富士見パノラマリゾートのロープウェイから登るルートと合流する地点まで、ずっと林道歩きが続きます。特にこれと言った面白味は無い道です。
それならば、私は一体何ためにわざわざロープウェイを使わずに下から歩いて登っているのだろうか。その答えは、きっと登頂するまでには明らかになってくれることでしょう。最初から意味なんて何もないよ。
歩き始めて早々に分岐が現れました。ここは直進します。道標は無いので事前に地形図をよく確認しておきましょう。というか、繰り返しになりますがGPSアプリの使用を推奨します。
再び分岐です。ここは直進ではなく左へグルと回り込みます。ここでもやはり道標はありません。
間違った方へ直進してから振り返って見たところです。左側が元来た道で、右へ進路を反転するように折り返すのが正解です。
薄暗かった林道に、ようやく陽の光が差し込んできました。時間的にそろそろ富士見パノラマリゾートのゴンドラリフトが、営業を開始する頃合いでしょうか。
楽に登れる手段が存在すると言うのに、迷いそうになりながらわざわざ林道を歩いて登っている私は一体何をしているのか。繰り返しになるけど、最初から意味なんて何もないよ。
正しい道に進むと、ほどなく大澤山造林記念碑と書かれた石碑が現れます。この石碑を見かけたら、正しいルートを進んでいます。
地形図には描かれていませんが、小さな沢沿いの谷筋に沿って道が続いています。真冬でも僅かながらしっかりと水流がありました。
沢沿いにピンクテープとペンキの矢印が描かれています。もしかしたら沢沿いに林道とは別の登山道があるのかもしれませんが、雪に埋もれていて全くわからないので、冒険はせずにこのまま林道を進みます。
これは水場なのだろうか。見たところ沢水そのものを引いているだけのように見えますが、気にせず一口頂きました。うん、凄く冷たい。
途中から寒々しい沢沿いを外れて、尾根に向かって標高を上げ始めました。ようやく体が温まって来たのでネックウォーマは外します。身に付けたままだと、汗をかいた時に後から冷えてしまうのでね。
9時35分 山と高原地図には展望台と書かれている場所まで登って来ました。名前とは裏腹に展望は一切なく、かわりに一軒の建物が建っていました。
使用されている様子は一切なく、既に廃屋化が進行していました。以前は茶屋か何かだったのかな。
ここから先は基本的に尾根筋です。急坂は無く歩きやすい道ですが、徐々に雪が深くなって来ました。凍結はしていないので、チェーンスパイクは履かずに進みます。
木の向こうに八ヶ岳があるのが何となく見えていますが、今のところ展望は一切ありません。山頂まで行けばちゃんとご褒美はあるので、今は気にせずひたすら登りましょう。
10時25 お花茶屋まで登って来ました。流石に今の季節には営業していませんが、こちらは廃屋ではなく現役の施設であるようです。
すくなくともすずらんシーズ中には、茶屋の営業が成り立つくらいにはこの道の利用者が存在すると言う事ですね。
4.雪山を始める人が最初に買いそろえるべき装備品とは
入笠山は雪山初心者向け入門用の山としては定番と言える存在です。ロープウェイで登れて行動時間が短めであると言うのも理由の一つですが、下から歩いて登ったところで難易度に関して言えばほとんど変わりはしません。
冬の入笠山に登るに高価な雪山装備は一切必要なく、チェーンスパイクか軽アイゼンが一つあれば十分事足ります。冬靴、12本爪アイゼン、ピッケルおよびスノーシューなどは一切必要ありません。
何故唐突にこんな話をするのかと言うと、冬シーズンになるとSNS上で「雪山を始めたいけれど雪山装備を買いそろえる予算が無いので始められない」と言った嘆きをよく目にするからです。
少なくとも北横岳とか入笠山レベルの雪山に登るだけなら、チェーンスパイクがあれば十分です。一応は念のため、ワカンくらいは持っていた方が良いとは思いますが。
過去にそのような趣旨の発言をしたところ、プチ地炎しかけた経験があります。
SNSには文脈が全く読めないかわりに、ありもしない行間だけを読み取ることができる異能力者が数多く生息していることは認識していましたが、あらためてその恐ろしさの片理を垣間見ました。
日本人は割と生真面目と言うか、何事も形から入る人が多い印象です。雪山を始めるからには雪山装備フルセット一式を買いそろえねばならず、それを持たない人間は初級の山へすらもエントリーしてはならないのだと。
最初から雪山装備一式を全部買いそろえようとすると、それはもう高くつきます。円安の影響もあって冬靴は安くても5万からだし、12本爪アイゼンも大体2万円前後はします。
そこへピッケルにスノシューにハードシェルジャケットと買い揃えようもなら、軽く20万円くらいは吹き飛びます。そりゃあ、始めたくても始められないと、嘆きたくもなることでしょう。
ひとこと雪山と言っても当然ながら場所によって難易度は大きく異なり、必要な装備も違ってきます。もしあなたが赤岳とか西穂高岳くらいまで行きたいと思っているのであれば、20万円を払いフル装備を買いそろえてください。
そこまで行く気はなく、初心者向きと言われている雪山で少し遊んでみたいと思っているだけなら、そのような高額な投資は必要ありません。
これから雪山を始めようとしている人が最初に買うべき雪山スターターキットとしては、軽アイゼンかチェーンスパイクにスノーバスケットが装着可能なストック。あとはワカンがあれば充分かな。
ハードシェルジャケットについては、普段から山登りする人ならゴアテックスの雨具を持っているでしょうから、それで代用可能です。持っていない人は雪山装備よりも先にそちらを買うべきです。
冬靴と12本爪アイゼンは、それを必要とするレベルの山へ挑戦する気になった時点で追加購入すればよく、スターターキットに含まれている必要はないと思います。
雪山ではいつ状況が一変するか分からないのだから、お金で安全マージンを買えるのであればそれをケチるべきではない。という意見もよく目にします。
この意見についてはもっともだと思うし、否定するつもりはありません。ただ一つだけ言わせてもらうと、北横岳や入笠山にピッケルを持ち込んだところで、安全マージンの拡大には何一つ寄与しないと思います。
新しく買った道具を試したいからとか、あるいは使い道は無いけどピッケルを持っているだけで何となく気分がアガるから、という理由で持って歩いている人も中にはいるのでしょうけれど・・・
5.入笠山登山 登頂編 多くの登山者で賑わう好展望に頂へ
貼られた写真とは一切無関係なことをつらつらと書いている間に、ロープウェイから登ってくるルートとの合流地点まで登って来ました。
人工的に造成されたかのような平坦地が広がっていました。鐘打平と呼ばれている場所です。
この地名のいわれについて書かれた案内板が立っていますが、ちょっと読む気が失せる情報量です。
さっくりと要約すると、甲斐の国に攻め込んだ織田勢が、当時は武田の勢力下にあった諏訪地方を威圧するために、この場所で鐘や太鼓やらを激しく打ち鳴らしならしたことに由来しています。
道なりに進んで行くと、ようやくこの日初めてとなる他の登山者の姿を目にしました。メジャールートと合流する時がやって来たようです。
ここからはTPO(?)をわきまえ、あたかもキラキラしている登山者であるかのように擬態して行きますぞ。さあ、キラキラする準備は良いか?
左手には入笠湿原が広がっています。今は一面の雪原ですが、夏になると見事なお花畑になるのだとか。ちなみにすずらんの群生地もここにあります。
湿原の入口に山彦荘と言う宿泊施設兼お食事処がありますが、こちらはグリーンシーズン中のみの営業で冬期は休業しています。
メジャールートと合流した後も、相変わらず車でも通行可能な道が続いています。山道の区間に入るのは山頂直下のごく一部だけです。
ツアーか何かが組まれているのか、団体連れが多く目につきます。みなしっかりと雪山装備で身を固めており、3シーズン靴で軽アイゼンすらも履かずにツボ足で歩いているのは私くらいなものです。
開けた場所に出ました。左側の雪原は夏にはお花畑になる場所です。雪原の中を進んでも良いし、このまま道沿に登っても最終的には山頂に行き着きます。
こちらはヒュッテ入笠です。かつてはマナスル山荘と言う名称でしたが、その名前では入笠山にある山荘なのだとわからないと言う事で改名されました。
ランチのメニューが充実しており、特にビーフシチューが有名で絶大なる人気を誇っていました。しかしあまりにも人気になり過ぎて注文をさばききれなくなり、ついには提供が中止されるに至ります。
確かに傍から見ていても、マナスル山荘のビーフシチュー人気の過熱ぶりはちょっと異様なものでした。入笠山自体には一切目もくれず、ビーフシチューだけを目的とした人が大勢が押しかているような状況でしたから。
天体望遠鏡付きの天文館と言う別館の宿泊施設もあります。山奥にあり光害もほとんどないでしょうから、星を見るのには格好の場所でしょう。
ここまで登って来て、ようやく登山道が始まります。といってももう、山頂までは30分とかからない距離しか残ってはいませんが。
山道に入っても相変わらず凍結などは一切ないため、相変わらずアイゼンは履かないまま登ります。結論から言うと、登りでは最後までアイゼンは一切必要ありませんでした。
夏にはお花畑になると言う雪原の先には八ヶ岳。良いですね、これは花の季節にも一度は訪れる必要がありそうです。
岩場コースと迂回コースの分岐がありますが、どちらから登っても大差はありません。登りでは岩場コースをチョイスしました。
最後の最後にようやく山道らしい山道がありました。ここくらいはアイゼンを履いても良かったのかもしれませんが、結局はツボ足のまま登りました。
当然ながら雪のコンデションによって大きく変わって来る要素です。まかり間違っても、入笠山はアイゼンなしでも登れる山なんだとは解釈しないでください。
広々としたした山頂は、大勢の人で溢れかえっていました。流石は大人気の山です。天気も良いですからね。
11時50分 入笠山に登頂しました。すずらんの里駅を出発してから、実に4時間をかけての到着です。ロープウェイを使ってサクッと登ってきた人には、到底この達成感は味わえまい。・・・そのことに何か意味があるかどうかはさておき。
6.入笠山山頂からの展望
入笠山の山頂からは、ほぼ全方位に展望が開けています。中でも一番目を引いて圧巻なのが八ヶ岳連峰の眺めです。
南八ヶ岳の一帯です。この辺りの山々へ冬に登りたいのであれば、つべこべ言わずに20万円を出して雪山フル装備一式を買いそろえるべきです。
編笠山だけなら軽アイゼンでも行けないことは無いかな。というか、私は実際にチェーンスパイクで登ったことがあります。それが適切かつ妥当であったかどうかはさておき。
こちらは北八ヶ岳の蓼科山と北横岳です。北横岳は入笠山とほぼ同レベルの雪山初心者向け大定番の山です。ちょっとお試しで雪山に登ってみたいと言う人には良い選択肢だと思います。12本爪アイゼンやピッケルは必要ありません。
蓼科山のさらに奥に見えているのは、上信国境の四阿山(2,354m)と根子岳(2,207m)かな。浅間山は蓼科山の背後に隠れてしまうため、ここからでは見えません。
こちらは遠目にも一目でそれとわかる霧ヶ峰(1,925m)です。冬に登った経験はありませんが、この山もやはりワカンやスノーシューの方が良さそうです。
続いて北西方向です。諏訪盆地の先に北アルプスの山々が居並びます。
諏訪湖の背後には高ボッチ高原。そのさらに背後には後立山連峰の山々です。厳冬期の北アルプスがこれだけ綺麗に晴れているのはなかなか珍しい。天気が良いとは言っても、風は強いし寒いんだけれどね。
みんな大好き穂高連峰(3,190m)から槍ヶ岳(3,180m)をへて常念岳(2,857m)に至る山並みです。この辺りはもう完全にエキスパートの世界と言うか、私自身が冬に登ろうと言う気はサラサラありません。
さらに西へと視線を移すと、乗鞍岳(3,026m)や木曽御嶽山(3,067m)の姿が目につきます。
恐らく冬期3,000メート峰のなかでは最も簡単に登れるであろう乗鞍岳です。これはあくまでも、冬期3,000メート峰のなかではの話です。
木曽山脈越しに頭だけ見えている御嶽山。右手前に見えている山は経ヶ岳(2,296m)なのかな。登りたい山リストに入っているのだけれど、交通アクセスが絶望的に悪くて途方に暮れている山の一つです。
南西には伊那谷を挟んで中央アルプスの山並みが連なります。木曽駒ヶ岳(2,956m)はロープウェイのおかげで冬でも登りやすい山だろうとは思いますが、個人的には雪崩が怖すぎて冬に登ろうと言う気にはなれません。
反対側には南アルプスがありますが、こちらは見え方が若干残念と言うか、頭付近しか見えなくてどれがどの山なのかイマイチよくわかりません。
富士見パノラマリゾートと名乗っているだけのことはあって、富士山もしっかりと見えます。位置的には南アルプスの背後に隠れてしまいそうなものですが、これは何気にポイントが高いですね。
最後に東側です。甲府盆地は角度的に見えず、八ヶ岳の裾尾の背後に奥秩父の山並みが見えます。
金峰山(2,599m)や瑞牆山(2,230m)のある一帯です。この辺りは冬でも積雪量はそれほど多くなく、大部分は黒々としています。
7.入笠山登山 下山編 帰りはロープウェイでラクラク下山する
十分に満足しました。ボチボチ引き上げましょう。下りでは流石にチェーンスパイクを使用します。
眼下に富士見パノラマリゾートスキー場のゴンドラ山頂駅が見えています。下山はあそこからロープウェイでラクラク下山しようかと思います。
当初は下山もすずらんの里駅まで歩いて戻る気満々だったのですが、往路での林道歩きのあまりの単調さに、すっかりその気力がなくなってしまいました。
ピストンなので脇目も触れずにサクサクと下り、入笠湿原の入り口まで戻って来ました。
湿原の中を横断します。無雪期には木道になっているようですが、今の季節は雪に埋もれています。
完全に埋もれているわかではなく、僅かに水が流れている部分もありました。踏み抜くと嫌なので、木道が埋まっているらしいラインに沿って移動します。
ゴンドラ山頂駅へ行くに、湿原からの登り返しがあります。この木階段の周囲がスズランの群生地になっています。
鹿よけの柵とゲートがありますが、冬の間はフルオープン状態です。湿原に花が咲く季節になったらしっかりと閉鎖するのでしょう。
ちなみにスズランは毒草で、鹿もそれを知っているので食べないのだそうです。放っておいたら最終的にはスズランだけになってしまうのだろうか。
このゴンドラ山頂駅があるピークは、アカノラ山と言う名前があるようです。巨大な電波塔が建っているため、山頂に立つことは出来ません。
13時10分 ゴンドラ山頂駅に到着しました。山頂からは1時間とかからない下山でした。確かにこれは圧倒的なお手軽さと言えます。
富士見パノラマリゾートのゲレンデからは、真正面に八ヶ岳を望む大絶景が広がります。これは実に気落ちが良さそうなコースですね。
アイスクライミング用の、人工の氷の壁が作られていました。赤岳鉱泉にある有名なアイスキャンディと同様のものです。
山頂側では料金の徴収業務は行っていないらしく、下で清算するように言われてゴンドラへと乗り込みます。帰りの片道だけゴンドラを使う人なんて、圧倒的に少数派でしょうからね。
サービスの一環なのか、アツアツのお絞りを貰いました。これで冷え切った顔面を拭いた日には、それこそ気絶そうなくらいの気落ちよさでした。
ロープウェイ下山最高ぅー。厳密に言うとこれはロープウェイではなくゴンドラリフトと呼ばれている乗り物ですが、まあ似たようなものです。
最後までしっかりと富士山が見える点がまた素晴らしい。だてに富士見パノラマリゾートを名乗ってはいません。
こうして偉大なる文明のに力によって、あっさりと山麓駅まで下って来ました。だから登りでも使えばよかったのに、なにを変な意地を張っているんだか。
チケット売り場で料金を精算します。まだ滑り終るには早い時間であるためか、入り口はあまり人影もなく静かなものでした。
片道料金は1,300円なり。なお往復チケットは2,000円で買えるので、3時間近く延々と単調な林道を歩き続けて、僅か700円が浮いただけとなります。
と言う事なので、入笠山に登りだけ歩いて登ることに、経済的な合理性はまったくありません。登山に経済的な合理性を求める方は、帰りも歩いて下るか、もしくは最初から往復チケットを買いましょう。
8.入笠山登山 帰還編 富士見駅まで歩て戻る
スキー場から富士見駅までは、無料のシャトルバスが運行されています。帰路の便は15時と17時の2便しかなく、まだ1時間以上は待ち時間があるので、駅まで歩いて戻ろうかと思います。
駐車場に見覚えのある送迎バスが停まっていました。まさにあれがシャトルバスなのですが、まあ大した距離ではないので歩きましょう。
大した距離ではないといいつつ、なんだかんだで駅まで歩くと1時間近くはかかります。どうも登山をやっていると徒歩の移動距離に関する感覚がバグってきて、徒歩1時間なら大した距離ではないと認識するようになってしまいました。
振り返って見た入笠山です。簡単に登れる割には、素晴らしい展望のお山でした。
駅までの道中には特にこれと言った見所もなので、この先はスパッと省略します。
14時40分 と言う事で場面は一気に飛んで、富士見駅まで歩いて来ました。これでもまだすずらんの里駅を出発してからは7時間程しか経過はしていません。圧倒的にお手軽な山でした。
何とも間が悪いことに、14時台には電車一本も走っていません。なんだ、そういう事なら15時の送迎バスを待つべきだったか。
しかしこの日はちょうど良いタイミングで14時50分発の臨時便の特急あずさがあると言う事だったので、帰りは奮発して特急を使う事にしました。
臨時便と言うことともあってか、比較的空いているあずさへと乗り込み帰宅の途に着きました。
キラキラした山であると言う曖昧な偏見により長らく敬遠してきた入笠山への訪問は、こうして満足の内に終わりました。
結論から言ってしまうと、この山へ駅から直接歩いて登ることに、何らかのか意味や合理性などはまったくもって存在しません。行きも帰りもゴンドラに乗ったのでは、いくら何でもぬるすぎると思う物好きな方だけどうぞと言ったところです。
安全かつ手軽に登れる山ながら、山頂からの展望は圧巻です。人気の山には、人気たる所以があるのだと言うことが大変よく理解できました。
雪山装備がないから雪山には登れないと嘆いている方は、20万円も出さずとも2万円あれば揃う雪山スターターキットを携えて、入笠山へ登ってみては如何でしょうか。楽しいよ!
<コースタイム>
すずらんの里駅(7:45)-入笠山登山口(8:20)-展望台(9:35)-お花見屋(10:25~10:35)-山彦荘(11:15)-入笠山(11:50~12:30)-ゴンドラ山頂駅(13:10)-ゴンドラ山麓駅(13:45)-富士見駅(14:40)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント
自分は6本爪しか持っていないんで、本格的な雪山は無理なんですが、スキーヤーの同僚の車に同乗して冬の北横岳には登ったことがあります。同僚も交通費割り勘というメリットから、意外にすんなり「じゃあそこのスキー場にしようか」となってくれて。ゴンドラを使わずに登下山したのですが、登りは積雪が氷結していて登りやすかったのに、下りでは気温の上昇により積雪が融解していて、1歩を出す度にズボズボと足が膝下までめり込んで、非常に難儀をした憶えがあります。「下手するとマジでこのまま遭難?」とビビり、ワカンの必要性を実感しました。
先月、同様にスキーヤーの同僚と冬の川場スキー場に行くことになり、自分は上州武尊山に登る気満々だったのですが、途中の岩場では12本爪が不可欠、ピッケルもあった方が良いという(こちら様のレポートも含めた)情報を得て、雪山登山は諦めて、素直に同僚と一緒に下手なスキーをしました。それでもスキー中、下山中の12本爪装備の雪山ハイカーに遭ったので「山頂までコースの状況はどうでした?」と聞くと「今年はまだ雪が少ない。6本爪も要らないくらいだった」と言われ、「失敗した。登れば良かった」と後悔…。まあ、そういうこともあるのが山なんですけどね。
入笠山は富士見パノラマリゾートにスキーで行ったのと、2020年の夏にゴンドラ使用で山頂まで登ったことがあります。マナスル山荘にマナスル定食というのがあって美味だったのと、黒い犬を飼っていた憶えがあるのですが、山荘の名称は変わったんですね。確かにあのビーフシチュー・フィーバーはちょっとおかしかった。マナスル定食にも少量ながら、ビーフシチューが付いて来たのを憶えてます。
Taka High Dohさま
コメントをありがとうございます。
上州武尊山は12本爪アイゼンが必須かと問われると微妙なところで、剣ヶ峰山周辺の雪の状態によって変わってくるかと思います。必ずしも前爪のあるアイゼンが必要ではない雪山は、探せばまだまだたくさんあると思うので、折を見て発掘していきたいと思います。
入笠山は10年以上前に数回登ったことがありますが(ゴンドラ&軽アイゼン)せっかくの絶景も雲に覆われ一度も山頂から景色を見れなかった残念な思い出です。そのときはマナスル山荘で、なんでマナスル?と思った記憶です。ビーフシチュー狂騒曲があったとは知りませんでした。鍋焼きけうどん1300円は鍋割山(1500円)より安い・・。
山頂からさらに奥の湿原まで足を延ばすと、歩く人もほとんどなく静かな雪道を楽しめたように思います。
mikiさま
コメントをありがとうございます。
ゴンドラリフトで登って来るとあまりにもボリューム不足であるため、周囲の湿原(と言っても冬だと雪原でしょうが)を周回するのが一つの定番のようですね。今回私は序盤の林道歩きでだけもう十分お腹がいっぱいだったので、ピークハントしただけでサクッと切り上げました。
湿原の散策は、すずらんが咲く季節にじっくりと時間をかけて回ってみたいと思います。
こんばんは
僕も入笠山にすずらんの里駅から歩いて登ったことがあります。5月の頭だったかな。単調ではあるけど難所もない,歩きやすい道だった記憶があります。
さらに物好きなことに,その時はテント泊をして,翌日は青柳駅まで歩いて下りました。
マナスル山荘が改名したことは知りませんでした。ビーフシチューがなくなったことも。天文館は「本館」とは経営が違うようですね。
さん太さま
コメントをありがとうございます。
もの好きといえば、入笠山のさらに先にある釜無山と白岩岳に登ってみたいので、私もいつか天文館でテント泊をすると思います。キラキラしているお手軽な山のイメージからからどんどんかけ離れて行く・・・