神奈川県相模原市にある焼山(やけやま)から姫次(ひめつぎ)までを歩いてきました。
丹沢山塊北側の、山梨県道志村との境界付近に位置する山です。丹沢の裏口とでも言うべき場所であり、東海自然歩道のルートにも組み込まれています。
当初は蛭ヶ岳への日帰り登山を目指していたのですが・・・諸々あっての不完全燃焼登山となりました。
2019年1月20日に旅す。
新型コロナウィルスの流行による非常事態宣言が発令されていることに伴い、本当は人の少なそうなマイナーな山にこっそりと登っていたりするのだけれど、それを公にすると自粛警察に袋叩きにされそうな雰囲気なので、建前上は現在登山を自粛中の身であるため、記事を書くネタがもうありません。
そんな訳で今回は、ボツにしてお蔵入りさせていた過去の山行きの記録を引っ張り出して、読者の皆様のご機嫌を伺います。
なにせボツにしていたくらいですから、当の私自身が「これは記事にしてもつまらないよね」と思っていたものです。そんな訳でありますので、あまり期待はせずに軽く読み流してくださいませ。
道志村の焼山登山口よりスタートし、姫次までを歩いてきた際の記録です。このコースは丹沢主脈の北の端部分にあたる尾根道であり、東海自然歩道として整備されています。
もっとも、始めから姫次が目標であった訳ではありません。焼山登山口からスタートして東野へと下る周回ルートでもって、丹沢最高峰の蛭ヶ岳を日帰りで仕留めてやろうと言うのが、当初の計画の骨子でありました。
「丹沢最高峰は日帰り登山の夢を見るか」とか言う記事のタイトルまで既に考えており、やる気満々で意気揚々と出向いたわけですが、しかし思った通りには事が運びませんでした。
まず想定外だったのが、昨年猛威を振るった台風19号の影響により、国道413号(道志みち)が通行止めとなっていた事です。
この影響により、当初の下山予定地点であった東野へはバスが乗り入れておらず、その手前にある平丸バス停まで下らなくてはならい状態でした。
もともとこの山行き計画は極めてタイトなスケジュールであったため、計画変更を受け入れることの出来るだけのバッファはほとんどありません。
そして第二の問題は、肝心の蛭ヶ岳が登頂前にすっぽりと厚ぼったい雲に覆われてしまったことです。
周囲の風景が茶色一色に染まる冬枯れのこの季節。楽しみと言えるのは、冬の澄んだ空気によってもたらされる素晴らしき眺望くらいなものです。それが無くなってしまったとなると・・・・
途中リタイアを決心する理由としては十分すぎました。そんな訳でこれは、蛭ヶ岳を目指したけれど姫次までで引き返した山行きの記録です。
コース
焼山登山口よりスタートし、焼山を経て姫次へ。その後は東野へ下山後、いやしの湯に立ち寄りました。
強いて言うなら、東海自然歩道を散歩してきましたとでも言うべき行程です。
1.焼山登山 アプローチ編 三ヶ木を経由して丹沢山地の裏口道志村へ
夜明け前の橋本よりおはようございます。これから向かう焼山登山口は、公共交通の不毛地帯である道志村にあります。鉄道駅からの直通便は存在せず、路線バスを乗り継いで行く必要があります。
まずは6時20分発の三ヶ木(みかげ)行きのバスに乗車します。
三ヶ木バス停で今度は月夜野行きのバスに乗り換えます。行き先表示板には月夜野行きと表示されていますが、前述の通りこの時は平丸バス停どまりの折り返し運転を実施中でした。
7時15分 焼山登山口バス停に到着しました。バスを降りたのは私一人です。この裏丹沢エリアのマイナーさ加減が伺えます。
最初の目的地である焼山は、バス停付近から既に見えています。麓からの標高差は700メートルほどあり、決してお手軽な里山と言う訳ではありません。
2.東海自然歩道を辿り、最初のピーク焼山へ
身支度を整えて7時20分に登山を開始します。バス停の目の前に道標があるので、その導きに従って歩けば迷う事はありません。
今朝は恐ろしいまでの冷え込みようで、あまりの寒さに道端の花がドライフラワー状態になっていました。
登山口まではしばしの林道歩き。この焼山は丹沢主脈の北端に位置するピークであり、表丹沢の塔ノ岳からここまで、延々と尾根がつながっています。
この日はゲートがフルオープン状態でしたが、この先に進んでも駐車スペースは存在しません。ご注意ください。
ちなみにこの焼山の一帯は、奴らの巣窟でもあります。ゴールデンウィーク頃から秋口にかけて出没します。安心安全に歩くこと出来るのは冬から春の間にかけてのみです。
焼山山頂までの3.4km。標準コースタイムで2時間の行程となります。意外と遠いいですな。先は長いので、気合を入れてまいりましょう。
出だし早々からなかなかの急坂です。まずは稜線の上に向かって一気に登ります。
程なく丹沢主脈の尾根に乗りました。もうここから先は、最後までずっと尾根の上を歩くことになります。
足元にはまさかの石畳が整備されていました。流石は東海自然歩道です。お金をかけておりますな。
このままずっと舗装されたままなのかと思ったら、さすがにそんなことはありませんでした。やがて石畳は無くなり、ごく普通の登山道となりました。
丹沢名物のテーブルのようなベンチがありました。これは休憩中にヒルの襲撃を避けるためのもので、上に乗って休むのが正しい使い方です。
このベンチがあると言う事は、ここにも奴らが出没するという事です。
基本的には安心安全な尾根道なのですが、一部に崩落気味の場所もあります。
靴一足分ギリギリの幅しかありません。特にロープなども張られていないので、ここは慎重に行きましょう。
時刻が8時半を回ったあたりで、薄暗かった登山道にようやく朝日が差し込んできました。
歩く人の数が多く、それ故によく整備されている表丹沢とは異なり、この裏丹沢方面の登山道は全般的に荒れ気味です。
焼山の山頂直下まで登って来ました。山頂を迂回する巻き道も存在しますが、ここまで来ておいて、ピークを踏んで行かない理由もありません。山頂方面へと向かいます。
分岐からほどなく、金属製の展望台を備えた山頂が見えて来ました。
9時10分 焼山に登頂しました。もう少しコースタイムを巻けると思っていたのですが、意外と時間を要しました。
一見すると火山なのかと思うような名称の焼山ですが、そうではなく大昔に野焼きが行われていたことに由来しています。
周囲は完全に樹林に囲われていますが、この展望台があるおかげで、ある程度の眺望が得られます。早速登ってみましょう。
都心方向の眺望が開けました。しかし晴れてはいるものの、何となく霞んだ空で遠くはありよく見えませんでした。
眼下には宮ヶ瀬湖が見えます。こんなところに水を貯めようだなんて、良く思いつきますよね。
反対側は、樹木が大きく育ち過ぎているためか、あまり眺めが良くありません。奥に見えている横に長い稜線は笹尾根です。
最後に、これから向かう予定の蛭ヶ岳です。ふむ、今にも雲に没しそうになっている上に、薄っすらと白いように見えます。どうやら僅かながら降雪があるようです。
ちなみにこの展望台。割と年季が入っていると言うか、老朽化が著しく、歩くとギシギシ鳴ります。ちょっと怖いかもしれません。
3.東海自然歩道の最高地点を越えて、好展望地の姫次へ
9時25分 前途に文字通り暗雲が垂れ込め始めた中、行動を再開します。
振り返って見た焼山は、どこにでもある地味山そのものの姿をしていました。展望台が無かったら、誰からも見向きもされなさそうなピークです。
日陰の場所に、チラホラと雪を見かけるようになりました。凍結はしていないので、今のところアイゼンの出番はなさそうです。
あまり傾斜のない、水平移動に近い道がしばしの間続きます。歩道を名乗っているだけの事あってか、実に歩きやすい。
9時45分 平丸分岐まで歩いて来ました。最短距離で蛭ヶ岳山頂のみを目指す場合は、ここから往復するのが最も早いです。
速いと言っても、平丸から蛭ヶ岳山頂までの標準コースタイムは実に5時間にも及びます。なかなか容易には登らせてくれない山です。
続いて黍殻山への分岐が現れますが、この山は登っても特に良いことのない山なので、今回はパスして巻き道を進みます。
黍殻山から下ったところに避難小屋があります。この付近一帯では唯一となる避難場所ではありますすが、麓からそこまで離れてもおらず、個人的にはあまり使い道が思い浮かばない立地の小屋です。
焼山から見た時には、まだ辛うじて持ちこたえていた蛭ヶ岳が、無残にも雲にまかれてしまっていました。なんてこったい。
丹沢三峰はギリギリ見えています。主脈縦走路の真上にだけ、ちょうど雲がかかってしまっている状態です。
麓の方は晴れ渡っており、先ほど見た時よりもだいぶ遠くなった宮ヶ瀬湖が良く見えました。
マイナーエリアとは言っても、やはりここは丹沢です。丹沢名物木道地獄が姿を現しました。
テーブルみたいなベンチが一つだけポツンと置かれた場所に出ました。
この場所が東海自然歩道の最高地点となります。歩道と称している割には、焼山登山口から標高差は何気に1,200メートル以上あります。
最高地点から少し進むと、姫次に到着です。本来であらば、ここで真正面に富士山がドーンと現れる場所なのですが、今日は全くダメダメです。
10時45分 姫次に到着しました。10時30分までにはたどり着きたいと思っていたので、すでに計画よりも少し遅延をきたしております。
登山道が交わる交差点でもある姫次は、広々とした空間となっており休憩向きな場所です。ここで蛭ヶ岳へのアタックに備えのがと良いでしょう。
ちなみに姫次の最高地点はここではありません。最高地点は袖平山方面に少し進んだ場所にあります。
道標の案内は一切ありませんが、この薄い踏み跡を進んだ先が山頂です。
山頂であることを示す標識などもなく、境界標だけがポツンとありました。
蛭ヶ岳は相変わらず雲隠れを決め込んだままです。そして樹林帯から出たことにより、強風が吹き始めました。
檜洞丸も雲隠れ中で、犬越路だけが雲の下に出ている状態です。大体1,500メートル付近から上が、すべて雲に覆われていました。
登山を続行する意欲が、自分の中でみるみる萎んで行くのが感じられます。思ったほどコースタイムを巻けてもいないし、これは退却かな。
これではあんまりなので、晴れている時の参考画像を置いておきます。晴天時の姫次は、これだけ素晴らしい眺望に出会うことの出来る場所です。
反対側の奥多摩方面。こちらもやはり、麓は晴れていますが標高の高い山は雲を纏っていました。今日はそういう天気な日なのね。
4.姫次登山 下山編 蛭ヶ岳アタックを中止して、東野へ下る
11時15分 蛭ヶ岳登山は取りやめて、下山を開始します。せっかく機会なので、麓の青根にある天然温泉いやしの湯で、ひと風呂浴びて行こうと思い立ちました。
姫次の山頂付近には、見事なカラマツ林が広がっています。紅葉シーズンに訪れれば、金色に染まった森の光景を目にすることが出来るでしょう。
11時50分 八丁坂ノ頭分岐まで下って来ました。ここから主脈を外れて、東野方面へ下山します。
都心方面は相変わらずの雲一つない快晴です。その晴天ぶりをこちらにも分けてほしかったのですがねえ。
三峰だけがかろうじて見えている状況もまた、変わらないままでした。未練たらしく眺めていても始まりません。下山します。
東野への下山ルートは、しばしの間このモノレールと共に歩みます。もともと林業用の道だったでしょうかね。
1,000メートル以上あるの標高差を一気に下るため、割と急峻な道です。すれ違う人の姿は全くなく、貸し切り状態でした。
珍しい、登山道とモノレールの立体交差がありました。割と本格的な作りです。
蛭ヶ岳は結構登るのが大変な山であることだし、モノレールに登山者を乗せてお金を取れば、良い小遣い稼ぎになるのではないでしょうか。
まあ実際に旅客を扱うとなると、安全基準やらなんやらで、いろいろと面倒なのでしょうけれど。
高尾陣馬方面は至ってよいお天気です。これは完全に、訪問先の選択に失敗してしまったやつですな。
釜立林道へと飛び出しました。ちなみにこの林道を真っすぐ登って行くと、黍殻山避難小屋の正面に辿り着きます
山アジサイが、散りもせずに乾燥してドライフラワー状態になっていました。変わった枯れ方をする花ですね。
このゲートの脇に、僅か数台分の駐車スペースが存在します。マイカー登山をする人の場合、蛭ヶ岳への最寄りとなるのはおそらくここです。塩水橋から登るよりは、いくらか近いと思われます。
東野バス停まではあと2kmです。バス停が文字ではなくアイコンで示されているのはユニークですね。
沢沿いに林道を黙々と下って行きます。もうすでに頭の中は、温泉事でいっぱいになっていました。
振り返って見た丹沢主脈です。中央の山は恐らく黍殻山だと思いますが、特長の無い見た目なので断定はできません。
そろそろゴールな予感。バス停がありそうな場所と言うのは、遠くからでも何となく雰囲気でわかるのが不思議です
14時 東野バス停に到着しました。本来であらばここがゴールだったわけですが、前述の通り現在ここまでバスはやって来ません。
ヤマレコなどで何度も目にしていたためか、自身初めて来た場所なのに、どこか既視感のある光景でした。
5.青根休暇村のいやしの湯へ
バス停のすぐ近くで、道志みちが通行止めとなっていました。徒歩であっても通り抜けは不可です。
背後には大室山(1,587m)。相変わらず山の上は雲が垂れ込めたままです。
さあ、癒しの湯へと向かいましょう。徒歩であっても大した距離ではありません。
普通に道なりに歩いても辿り着けますが、途中にショートカットできる山道があります。
ちょい山道なのかと思ったら、割とガチな山道です。これはスニーカー履きだと辛いのではないだろうか。
無事に目的地のいやしの湯へやって来ました。入浴料は750円です。
泉質はアルカリ性の、いわいる美肌の湯です。湯温はやや温めで、長湯するのには良いですが、冷え切った体を温めるのには少々不適格かもしれせん。
帰りのバス時間までまだ若干の時間的猶予があったので、近くにある道志ダムを見物してゆきます。
ダムによって作られた人工湖は、奥相模湖と言う名称です。今は渇水期なのか、湖底が大きく露出していました。
左に見えている小さな建物が発電小屋です。かなり小ぶりな発電所ですね。
ダムの正面に焼山の姿が良く見えました。裏側から見ると、あまり特長の感じられない姿です。
さあ、平丸バス停へ向かいましょう。いやしの湯の裏手に近道があるらしいのですが、見つけられなかったので、道なりに向かいます。
道志みちの通行止めに伴い、今歩いているこの道が迂回路となっています。この迂回路の方も山崩れの影響を受けており、片側通行になっていました。
さも当然のごとく、歩行者の事など何も考えられていない状態です。割と通行量が多めで、通り抜けるのに肝を冷やしました。
通行止め区間の反対側までやって来ました。既に帰路のバスが待機中でした。
思い描いていたのとは全く異なる一日でしたが、無事に帰着の途に付きました。
そんな訳でこの日の山行きは、私の中ではずっと「なかったこと」扱いされていました。思わぬきっかけでそれが今回、日の目を見ましたとさ。
丹沢最高峰の蛭ヶ岳は、どこから登ろうとも基本的には遠い山です。故に、山中で1泊する行程で歩かれることが多いのではなかろうか思います。それが正解なのですが、日程の都合等でどうしても日帰りの計画にせざる負えない場合は、こちらの裏丹沢からのアプローチがオススメです。バスの本数は極端に少なくアクセスが少々面倒ではありますが、そこまで非常識では無いコースタイムに収めることが可能です。
なお冬以外の季節にご訪問の際は、ヒル対策をお忘れなく。
<コースタイム>
焼山登山口BS(7:20)-焼山(9:10~9:25)-平丸分岐(9:45)-姫次(10:45~11:15)-八丁坂ノ頭分岐(11:50)-東野BS(14:00)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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