大城山-鶴ヶ峰-諏訪高尾山 日本の中心を縦断する塩嶺ロングトレイルを巡る

辰野の跨線橋上から見た大城山
長野県辰野町にある大城山(おおじょうやま)、鶴ヶ峰(つるがみね)および岡谷市にある諏訪高尾山(すわたかおさん)に登りました。
日本列島のほぼ真ん中に位置している一帯を縦断している、塩嶺(えんれい)と呼ばれる尾根上に立ち並んでいる山々です。道中には日本中心のゼロポイントや日本中心の展望台等の、日本の地理的中心であることを主張するスポットが点在しています。
辰野駅から岡谷駅まで、日本の中心を縦断してきました。

2024年1月5日に旅す。

時は2024年の初頭のこと。本年は辰年なので、初登山は名前に辰と付く山にでも登ってひとつゲン担ぎでもしてやろうかと企画しました。

ところがいざ調べてみると、意外にも名前に辰が付く山は殆ど存在しません。辛うじて徳島県に辰ヶ山と言う低山があるくらいです。ゲン担ぎのためだけに徳島まで出向くのは、さすがにちょっと躊躇してしまいます。

辰とは竜の事なので、名前に竜と付く山ならばいくつかの候補があります。首都圏近郊からアクセスがしやすそうなところで言うと、山梨県の竜ヶ岳や飛竜山、あるいは静岡県の竜爪山など。
竜ヶ岳の山頂

山の名前だけに拘らずに、辰と付く地名を探してみたらどうなるだろう。ふとそう思いついて調べると、長野県にある辰野町が目に止まりました。
辰野駅のホーム
辰野駅の裏手にある大城山は簡単に登れて眺めがよく、さらにその先には日本中心のゼロポイントなるスポットがあるのだとか。

辰年の初登山で辰野町にある日本の中心をめざす。テーマとしては申し分ありません。と言う事で行き先は決まりました。

さて、そもそも日本中心のゼロポイントとは一体何ぞやと言う話になりますが、まず前提として日本の中心であることを標榜している場所は辰野町以外にも全国に複数個所存在します。
日本中心のゼロポイントの解説
海岸線からの一番遠い地点であるとか、あるいは人口分布の重心あるなどなど、まず何をもって日本の中心であるとするのか、定義によって違ってくるためです。

辰野町にあるのは、日本全国に40ヵ所存在するゼロポイント(緯度と経度が00分00秒で交差する地点)の中でも、一番真ん中らへんにあるとされてる地点です。

・・・なにやらふわっとした根拠ですが、日本列島の地図を広げてみると、まあ確かにだいたい真ん中ら辺にあるようには見えます。言ったもの勝ち感はありますが、野暮なツッコミはこれくらいにしておきましょう。

日本の中心を踏破つつ、辰野駅から岡谷駅まで塩嶺ロングトレイルを延々と歩いて来ました。辰年の初登山で行く、辰野訪問記をお送りします。
諏訪高尾山の山頂

コース
大城山から諏訪高尾山までの縦走マップ
辰野駅からスタートして、駅の裏手にある大城山へ。大城山から日本中心のゼロポイントに立ち寄りつつ、鶴ヶ峰にある日本中心の展望台を目指します。

その先ば塩嶺ロングトレイルのルートを辿り、小野峠を経て諏訪高尾山へ。そこから岡谷駅まで歩いて下ります。

行程の大部分が林道歩きとなり、アップダウンこそあまり大きくはありませんが、総歩行距離は20km以上におよぶロングコースです。

1.大城山登山 アプローチ編 鈍行列車で行く、辰野町への遠き道程

4時36分 JR三鷹駅
なにしろ辰野町は遠い場所です。中央線の始発電車で行動を開始すべく、朝っぱらから自転車をこいで第2の最寄り駅(言うほど近くは無い)へとやって来ました。
三鷹駅のホーム
え?特急あずさ?あんな自由席すらないようなブルジョワな乗り物は、始めからお呼びではありません。

辰野駅は交通ICカードに対応していないエリアにあるため、あらかじめ目的地までの切符を購入してから乗車します。ICカードでタッチして乗車してしまうと、後々清算が面倒なことになるので要注意です。
三鷹駅から辰野駅までの切符

高尾駅、大月駅、甲府駅へと始発電車リレーを継投して行きます。もう過去に何度も辿っている行程なので、すっかり慣れっこです。
早朝の甲府駅

出発時点ではまだ真っ暗闇だった周囲に、ようやく眩い朝日が差し込んできました。甲斐駒ヶ岳さんはいつ見てもイケメンっすな。
中央本線の車窓から見た甲斐駒ヶ岳

8時5分 三鷹駅からはるばる3時間以上かけて、岡谷駅に到着しました。これだけ長時間ずっと座っていると、流石にケツが痛くなってきます。
岡谷駅のホーム

1番ホームの先端に後から付け足したかのような0番線のホームから、8時11分発の松本行きの電車に乗り換えます。みどり湖短絡線ではなく辰野支線を経由する、短い2両編成の車両です。
240105大城山-010

以前にも一度解説したような気もしますが、ここでもう一度さっくりと辰野支線の位置関係についておさらいをしておきましょう。下図で赤線で示したのが辰野支線です。
辰野支線のマップ
塩嶺トンネルを経由する現在の中央本線のルートは、みどり湖短絡線と呼ばれています。塩嶺トンネルが使用開始されたのは昭和58年のことで、それ以前は辰野を経由するルートが正規ルートでした。

現在は支線の扱いとなっており、支線経由の電車も運行していますが本数は少なめです。

車窓からずっと、塩嶺の山並みが見えています。この尾根の上を歩いて岡谷駅まで戻るのが、本日歩こうとしている行程です。
辰野支線の車窓から見た塩嶺の山並み

8時21分 辰野駅に到着しました。これが最速でこの駅に降り立つことのできる工程です。
辰野駅のホーム
これだけ長々とアプローチの解説しておいてから言うのもなんですが、東京から辰野まで鈍行列車で行こうと言うもの好きな人間が、果してどれくらい存在するのだろうか。

最初の目的地である大城山は、この通り駅のホームからすでに見えています。名前の通りかつては城が建っていた城址で、伊那平を一望する好展望地であるのだとか。
辰野駅のホームから見た大城山
山の上に薄く雲がかかっているようですが、登頂までに晴れてくれることに期待しておきましょう。

2.手軽に登れて大展望が広がる大城山

辰野駅はJR東海の飯田線と共用されていますが、駅自体はJR東日本管内となっています。立派な駅ビルが建っていますが、テナントは1つも入っておらず、2階部分はすべて閉鎖されていました。
辰野駅の駅ビル
この建物はかつてみどり湖短絡線が完成した際に、辰野駅が中央本線のメインルートから外されてしまう事に対する補償の一環として建てられたものです。

しかし箱だけあっても利用者がいなければ施設の維持はできないと言う、残酷な現実が突き付けられてしまった格好です。

8時25分 身支度を整えて行動を開始します。駅前の通りを右へ進み、最初の交差点が現れたら右折します。
辰野駅の駅前通り

跨線橋で中央本線の線路の上を渡ります。
240105大城山-016

この橋の上は目指す大城山の全容が良く見えそうなスポットなのですが、相変わらず山頂付近はガスに包まれたままでした。
辰野の跨線橋から見た大城山

反対側には中央アルプスの山並みが見えます。右の方に頭だけが見えている真っ白な山がたぶん木曽駒ケ岳なんだと思いますが、いかんせんよくわかりません。
辰野の跨線橋から見た中央アルプス

橋を渡ったら、道路標識の導きに従って右の脇道へ入って行きます。標識に書かれている大城山まで4.2kmと言う数字は、玉城枝垂栗林道を経由した場合のもので、登山道経由ならもっと短いです。
大城山の入口
それはつまるところ、大城山は山頂まで車で登れてしまう山であると言う事です。

大城山はすぐ目の前にありますが、直登はせずに一度右側にグルっと大きく回り込みます。山頂を覆っていたガスが晴れ始めており、本日はなにもかもがうまくいってしまいそうな予感がします。
240105大城山-019

墓地が立ち並ぶ中をゆるゆると登ります。登山口までは基本的には道なりに歩けば問題ありません。
240105大城山-020

9時10分 大城山登山口まで登って来ました。ここから林道とは別れて山中へと分け入って行きます。
大城山登山口

登山道の前に駐車スペースがあり、車でお越しの人はここに停められます。しかし前述の通り山頂の直下まで車で入れてしまう山なので、あえてここに駐車する意味はないかもしれない。
大城山登山口の駐車スペース

間が悪いことにちょうど逆光が登山道に差し込むタイミングで、いきなり目くらましをされながらスタートします。
大城山の登山道

大城山は茸山であるらしく、登山道以外の場所への無断進入を禁止する警告が掲げられていました。
無断進入禁止の警告

確かに如何にも松茸が取れそうな、見事なアカマツ林が広がっていました。
大城山のアカマツ林
意外と知られていませんが、実は松茸には少量の毒が含まれています。大量に摂取しなければ影響がないため特に問題視されてはいませんが、一応は毒キノコだと言う事になります

足元には松の枯れ葉と松ぼっくりが散乱していました。どちらも焚き付けによく使われるくらい燃えすいものですから、山火事にでもなろうものなら大変なことになりそうです。
240105大城山-026

茸泥棒が後を絶たないのか、過剰とも思えるくらいにビニールロープでがんじがらめに、登山道外へ出れないように塞がれていました。まあおかげで道筋はたいへんわかりやすく、道に迷う心配はなさそうです。
ビニールロープが張り巡らされた大城山の登山道

電話会社のアンテナが立っていました。大城山は伊那谷を見下ろす立地にあるため、電波を飛ばすには格好のロケーションであると言えそうです。
大城山のアンテナ

アンテナのすぐ裏手にまで車道が伸びています。先ほど登山口で一度袂を分かった玉城枝垂栗林道です。
240105大城山-029

山頂が見えました。いかにも眺めが良さそうで、期待が高まります。
240105大城山-030

山頂部は広々と開けた芝生上の広場になっていました。ここに城が建っていたのかな。
大城山の山頂

9時40分 大城山に登頂しました。登山口からちょうど30分のお手軽なハイキングでした。
大城山の山頂標識

山頂からは伊那谷を広く一望することが出来ます。別名で伊那平(いなだいら)とも呼ばれ、長野県の県歌に登場する信濃の国の四つの平のひとつに数えられています。
大城山山頂から見た伊那谷

麓からも良く見えていた中央アルプスです。標高の高い一帯は見事に真っ白ですが、実は伊那地方自体は冬でもあまり積雪はしません。
大城山から見た中央アルプス

反対側には南アルプスの山並み。普段見慣れている山梨県側から見た時とは反対側からの姿です
大城山から見た南アルプス

わざわざカメラスタンドまで用意されていて、映えを追求する観光地の装いです。
大城山のカメラスタンド

サイクルラックまでもが用意されている辺りが、いかにも車で登ってこれる山ならではの光景です。林道はこの先までずっと塩嶺の尾根上に続いています。
大城山の自転車ラック

3.日本中心のゼロポイントを目指す

先へ進みましょう。辰野町が一押しの観光スポット落として絶賛売り出し中の、日本中心のゼロポイントを目指します。
240105大城山-038

林道とは別れて、再び登山道へと入って行きます。一応は駐車スペースと呼べるものもあるので、車でお越しの人もここまでは入れます。
日本中心のゼロポイント入口

登山道ではなく遊歩道と言う扱いであるらしい。登山者ではない観光客も紛れ込んでくる可能性があるため、念入りに注意喚起が成されていました。
240105大城山-040

ほぼ水平移動で特にこれと言った危険要素も無い道ですが、割としっかり山道です。最低でもスニーカーは履いて来るべきで、くれぐれもサンダルやハイヒールなどで歩こうとはしないでください。
240105大城山-041

遠くに北八ヶ岳の山が見えます。雲ひとつ無い快晴なので、きっと今ごろは多くの登山者で賑わっていることでしょう。
日本中心のゼロポイント登山道から見た北八ヶ岳

道中に一杯水と呼ばれている水場があります。チロチロとか細い水流はありますが、一応は水が出ていました。
一杯水

案内板の記述によると、この杉の巨木の根が吸い上げた水の一部が、根元から湧きだしているのだとか。そんなこともあるんですね。
240105大城山-044

10時25分 水晶岩交差路と呼ばれる地点まで歩いて来ました。尾根上の肩のような空間で、3方向に道が分かれています。
水晶岩交差路

日本中心のゼロポイントは、塩嶺の主稜線からは少し外れた支尾根上にあります。この分岐から主稜線を外れて、ゼロポイントを往復します。
水晶岩交差路の標識

尾根に沿って緩やかに下って行きます。最初にゼロポイントの標柱が立てられた当初は、踏み跡もほとんどないような本当の山中だったらしいのですが、今ではしっかりとした道があります。
240105大城山-047

途中から尾根を外れて、斜面をトラバースする道になりました。日本の中心はまたえらく辺鄙な場所にありますな。
240105大城山-048

やがて何でもない山の斜面上に唐突に整備された、ウッドデッキが現れました。あはははは、これはまたまた地味なスポットですね。
日本中心のゼロポイント

ということで、オオツキ辰年に辰野町の日本の中心に降り立つを無事に達成です。それがどうしたと言われてしまえばそれまでですが。
日本中心のゼロポイント

NHKで放送しているチコちゃん叱られると言う番組で、過去にこのゼロポイントが紹介されました。
チコちゃんポイント
その際に、我こそが日本の中心でると主張している全国28か所の自治体の緯度経度の平均を算出したら、ほぼこのゼロポイントと同じ位置になったのだとか。

番組内で日本の中心だと認定された地点に、チコちゃんポイントと銘打たれたもう一つの標柱が立っていました。
チコちゃんポイントの標柱

4.鶴ヶ峰に立つ日本中心の標と展望台

水晶岩交差路まで戻って来ました。続いてこの先の鶴ヶ峰にあると言う、日本中心の展望台を目指します。
水晶岩交差路

ですがその前に、日本中心のパワーストーンと称する水晶岩なるものがあると言う事なので、ちょっと寄り道していきましょう。どうせただの大きな岩があるだけなんだろうなあ
240105大城山-054

分岐から5分少々登ったところで、尾根を塞ぐようにして大きな岩が現れました。案内板も何もありませんが、どうやらこれが水晶岩であるようです。どうでしょう。パワーを感じますかね?
水晶岩
ここは基本スルーして問題ないかと思います。

気を取り直して先へ進みましょう。日影になる部分にはしっかりと雪が残っていました。凍結はしてないので、チェーンスパイクは履かずにベタ足のまま進みます。
240105大城山-056

再び玉城枝垂栗林道と合流しました。始めに断っておくと、この先の行程は大部分が登山道ではなく林道歩きとなります。かなりの長距離を歩くことになりますので、覚悟しておいてください。
240105大城山-057

日影は雪がつもり、日が当たる場所にはないと言うわかりやすい路面状況がずっと続いています。多少のアップダウンはありますが、急坂は無く至って歩きやすい道です。
240105大城山-058

陣馬ヶ原と銘打たれた平坦地がありました。名前からしてかつては馬場でもあったのでしょうか。
陣馬ヶ原

「古里のどの山からも雪がくる」と詩が刻まれた石碑がありました。なんと言うか、とてもシンプルな内容です。この句は地元辰野出身の歌人である、江ほむらと言う方が詠んだものとの事。
240105大城山-060

分岐が現れました。この場所は厳密にはまだ鶴ヶ峰の山頂ではないのですが、分岐から左へ少し進んだ場所に日本中心の展望台があります。
240105大城山-061

今度は日本中心の標と書き込まれた石碑が建っていました。先ほどのゼロポイントは余りにも辺鄙過ぎて展望もない場所あったため、林道からほど近くて眺めもよいこの場所に中心の石碑を設置したのだとか。
日本中心の標

12時5分 日本中心の展望台まで歩いて来ました。なかなかお金がかかっていそうな、金属製の大掛かりな展望台が立っていました。これは眺めにも大いに期待が出来そうです。
日本中心の展望台

ここでも日本の中心であることがことさらに強調されています。辰野町は日本の中心であることアピールに、かなり全力で取り組んでいる感があります
日本中心の展望台の柱

バリアフリー化時代に真っ向から刃向かうかのような、かなり急ピッチな螺旋階段です。上に積もっていた雪がとけたのか、激しく水滴がしたたり落ちていました。

5.日本中心の展望台から望む大絶景

展望台に上ると、いきなりの絶景が飛び込んできました。さあ、日本の中心の光景をとくと見せてもらいましょう。
日本中心の展望台からの眺め

南側には伊那平が広がりますが、こちらの眺めに関しては大城山からの方がよりよく見えます。
日本中心の展望台から見た伊那谷方面の展望 width=

東側の眺めです。南アルプスと八ヶ岳の間に見えているのは入笠山(1,955m)か。横から見ると結構大きい山です。
日本中心の展望台からみた南アルプスと八ヶ岳

さらに左へ視線を移すと。ほぼの真横から見た八ヶ岳連峰の姿が見えます。手前にある木が大きく成長してきており、もう何年かするとこちら側の景色は見えなくなりそうです。
日本中心の展望台から見た八ヶ岳

続いて北側の松本方面の眺めです。右の方に見えているのは高ボッチ高原(1,665m)と鉢伏山(1,928m)辺りかな。みたところ全く積雪していないようです。今年の冬は本当に雪が少ないですね。
日本中心の展望台から見た松本方面の展望

続いて西側の展望です。真っ白に雪を頂いた北アルプスの山並みが見えます。
日本中心の展望台からみた北アルプス方面の眺め

小野地区を挟んだ向かいに見えているこちらの山は霧訪山(1,305m)です。全国区の知名度こそありませんが、手軽に登れて絶景が広がる人気の里山です。
日本中心の展望台からみた霧訪山

後立山連邦の山並みがすべて見えています。厳冬期の北アルプスがこれだけ綺麗に晴れるのは、結構珍しいのではなかろうか。今日登っている人たちは大勝利だったことでしょう。
日本中心の展望台からみた後立山連峰

最後に南西方向の中央アルプスの山々です。中央アルプス北部にある山はどこも馴染みが浅く、見えている山がどこなのかイマイチよくわかりません。
日本中心の展望台からみた中央アルプス

6.地味な鶴ヶ峰山頂と、塩嶺のもう一つの好展望地しだれ栗展望台

日本の真ん中からの眺めを満喫しました。何しろまだまだ先は長いので、名残惜しくはありますがそろそろ先へと進みましょう。
240105大城山-075

再び林道歩きを再開するのですが、その前に一応は鶴ヶ峰の山頂を踏んでおきましょう。特に標識などの案内はありませんが、道の途中から適当に右側の尾根へ取り付きます。
240105大城山-076

正規な登山道なのかは不明ですが、一応は山頂へ至る薄っすらとした踏み跡が存在しました。
240105大城山-077

12時30分 鶴ヶ峰に登頂しました。手製の山頂標識すらも存在せず、境界標らしき杭が突き刺さっているだけの空間でした。
鶴ヶ峰の山頂

林道へ引き返して先へ進みます。標高が上がって来たこともあってか、日影の場所には結構な量の積雪があり、しっかりと雪山の相を呈してきました。
240105大城山-079

ここでも茸山であるから登山道以外は立ち入り禁止であることを強調する看板立っていました。お願いと言う書き出しになっていますが、その後に書かれている内容はもはや脅迫まがいであるような気がします。
240105大城山-080

この先は長々と林道歩きが続くのですが、特にこれと言った見所も無く単調なので、道中の模様はスパッと省略いたします。
240105大城山-081

場面は飛んで、しだれ栗森林公園方面への分岐地点まで歩いて来ました。ここまでずっと歩いて来た林道の本線からは外れて、右側の支線らしき道へと進みます。
240105大城山-082

やがて開けた広場があらわれ、またもや金属製の展望台が設置されていました。
しだれ栗森林公園の展望台

14時10分 しだれ栗展望台に到着しました。しだれ栗森林公園は塩嶺の西側斜面上に作られた広大な敷地をもつ公園で、この展望台も公園の一部です。
しだれ栗展望台

この展望台の階段はもともと背の低い子供用に作られたのか、はたまた単純に設計がよろしくなかったのか、屈みながらでないと頭を打ってしまう欠陥構造をしています。
240105大城山-085

背中のザックが引っかかりそうになったりして悪戦苦闘しつつ、上まで登って来ました。
しだれ栗展望台からの眺め

ここまで歩いてきて、ようやく諏訪湖が視界内に入りました。ひたすら長かった塩嶺トレイルも、ようやく終わりが見えてきました。
しだれ栗展望台から見た諏訪湖

高ボッチ高原が先ほど日本中心の展望台から眺めた時よりもずっと大きく見えます。この高ボッチ高原と塩嶺との間の鞍部が塩尻峠です。
しだれ栗展望台から見た高ボッチ高原
塩尻峠は諏訪盆地と松本盆地の境界であり、日本の中央分水嶺でもあります。峠の右側は天竜川水系となり、左側は犀川(信濃川)水系です。

松本盆地も先ほどよりすぐ近くに見えます。いつの間にか結構な距離を歩きました。
240105大城山-089
なお、塩嶺ロングトレイルコースのゴール地点は塩尻峠です。本日はそこまでは歩かずに、途中で離脱するつもりでいますが。

7.小野峠を越えて岡谷展望広場へ

14時25分 先へ進みましょう。展望台の脇から、道標に三郡の辻と書かれている方へ向かいます。
240105大城山-090

階段を下って行くと、すぐに峠らしき鞍部が見えて来ました。
240105大城山-091

小野峠に到着しました。諏訪地方と小野地方を結んでいる峠で、かつての中山道は塩尻峠ではなく小野峠で塩嶺を越えていました。
小野峠
かつては多くの旅人が行き交ってだろう峠も、今ではごく少数の物好きな登山者が訪れるだけの静かな場所です。

一度下ってしまった後は当然登り返しです。この小野峠の切通しは天然の地形ではなく、どうやら人工的に掘り下げたものであるようです。
240105大城山-093

登り返した地点が三郡の辻と呼ばれている地点です。その名の通り筑摩群、諏訪郡および伊那群の境界となっていた場所で、現在でも塩尻市、岡谷市および辰野町の境界となっています。
三郡の辻

それぞれの群が立てたという、三つのお社が並んでいます。これは小野のお社だから、塩尻市のものですね。
240105大城山-095

すぐ隣を塩嶺王城パークラインと言う車道が通っていますが、尾根上にもしっかりと登山道があります。行き先は同じなので、どちらでも好きな方を歩けば問題ありません。
240105大城山-096

途中で道の反対側に、北アルプス展望台と書かれた道標が立っていました。僅か100メートル程度の寄り道らしいので、ちょっと行ってみましょう。
北アルプス展望台の入口

脇道を進んで行くと、森の中にポツンと表札らしきものが立っています。全然展望などはなさそうなのですが、まさかここなのか。
北アルプス展望台

半信半疑でしたが、僅かに視界が開けており確かに北アルプスが見えました。しかしこれは、展望台と名乗るにはいささか実力不足なのではなかろうか。
北アルプス展望台からの眺め

分岐へ戻って道なりに進むと、道が大きく二手に分かれたY字路にぶつかりました。このまま塩尻峠まで歩くのであれば左へ進むのが本線ですが、私は諏訪高尾山方面に離脱するつもりなので右へ進みます。
240105大城山-100

ですがその前に、すぐ目の前にある岡谷展望広場へ寄り道して行きます。Y字路の真ん中にある山道を登った場所にあります。
240105大城山-101

15時 岡谷展望広場に到着しました。名前からして岡谷方面の展望が開けている広場なのかと思っていましたが、頭上が開けているだけで眺めはあまり良くありません。
岡谷展望広場

一応は北アルプス方面が見えていますが、葉が生い茂るグリーンシーズン中には展望がほとんど無くなりそうです。
岡谷展望広場から見た北アルプス

背後を振りかえると、ここまで歩いて来た塩嶺の尾根を一望できました。あまり大きな標高はなく、のっぺりとした尾根が連なっているのが良くわかります。
岡谷展望広場から見た塩嶺

ここで身も蓋も無いことをバラしてしまうと、実は岡谷展望広場の上からよりも、道路上からの方が北アルプスが良く見えます。
塩嶺王城パークラインからの展望

展望広場の存在意義とは一体・・・。まあ広場には東屋があるので、座って休憩を取るのにはあちらの方が適しています。
塩嶺王城パークラインから見た北アルプス

8.諏訪湖を一望する隠れた好展望地、諏訪高尾山

先ほどのY字路へ引き合えし、右側に進みます。地図によれば、この道の途中から右側へ入って行く山道があるはずです。
240105大城山-107

入口が現れました。特に道標などの案内はありませんが、ここから諏訪高尾山方面へ下って行きます。
240105大城山-108

道なりに下って行くと、前方に諏訪高尾山の姿が見えて来ました。独立したピークであると言うよりは、塩嶺の主稜線から派生した小さな瘤のような山です。
240105大城山-109

鞍部まで下って来ました。時刻はすでに15時を回り、日影となる谷底はすでに薄暗くなりつつありました。少しペースを上げた方が良さそうです。
240105大城山-110

直登はせずに、左側からぐるりと回り込むようにして登って行きます。ちなみに、国土地理院の地図に描かれている諏訪高尾山の登山道の線は、全くのデタラメなのでご注意ください。
240105大城山-111

登り返しを始めてから10分とかからずに、あっさりと山頂らしき空間に飛び出しました。犬を連れた先客がおり、地元の人にとっては犬の散歩コースになっているくらい手軽な存在であるらしい。

15時35分 諏訪高尾山委登頂しました。高尾山と言えば東京の八王子にあるのと甲州高尾山は割と有名だと思いますが、じつは諏訪にも高尾山があることはあまり知られていないのではないでしょうか。
諏訪高尾山の山頂標識

山頂の北側が刈り払われており、諏訪盆地を南側からを広く見渡すことが出来ます。ここもかつては山城が建っていた城址であるとのことです。
諏訪高尾山山頂の東屋

諏訪湖の背後には八ヶ岳連峰の山並み。何気に大絶景の山です。コースタイムは短めなので、夜景を眺めに来るのも良さそうです。
諏訪高尾山からの展望

足元に諏訪湖から流れ出る天竜川と中央本線の線路が見えています。ちょうど中央本線が塩嶺トンネルへ入って行く辺りの光景です。
240105大城山-115

9.塩嶺トレイル 下山編 岡谷駅まで歩いて戻る

もうだいぶ日も傾いて来たので、ボチボチ引き上げましょう。16時になった時点で、市内放送のスピーカーから遠き山に陽が落ちてが鳴り始めました。普通は17時の時点だと思うのですが、冬は前倒しとかあるのかな。
240105大城山-116

諏訪高尾山は登山口からそれこそ30分とかからずに登れてしまう山ですが、細かく律義に1号目から10号までの標識が立っていました。
240105大城山-117
この山もまた見事なアカマツ林に覆われていましたが、特にキノコ採り禁止の警告などはされていませんでした。

半分駆け足気味に下って、山頂からは10分少々で登山口まで下りて来ました。
240105大城山-118

登山口にある鳥居には、雷神社と書かれていました。なかなか変わった名前の神社ですね。雷神様を祀っているのでしょうか。
240105大城山-119

下山したとは言っても現在地はまだ小高い丘の上で、岡谷駅まではまだひと道あります。路線バスなどは無いので頑張って歩きましょう。
240105大城山-120

高尾山の上からも見えていた、中央本線の上を跨いで通ります。
240105大城山-121

塩嶺トンネルの入り口が目の前にありました。このみどり湖短絡線の完成により、特急あずさの新宿松本間の所要時間は以前より20分も短縮されました。辰野経由の塩嶺大迂回が、それだけ輸送上のネックになっていたということです。
塩嶺トンネルの岡谷側の入口

頭上高くを長野自動車道が横切っています。高速道路の方は、ここからではなく塩尻峠の辺りで塩嶺を超えています。
岡谷市内の長野自動車道の高架

16時55分 最後の方はだいぶ端折りましたが、暗くなる前に何とか岡谷駅に到着しました。今日もたくさん歩いて大満足です。
岡谷駅の駅前

帰りは流石に自由席の無いブルジョワな乗り物特急あずさに乗り込み、帰宅の途に着きました。
岡谷駅に入線する特急あずさ

辰年の初登山にという完全に思いつきのコンセプトでもって歩いた塩嶺ロングトレイルでしたが、日本の真ん中からの眺めは圧巻であり、非常に満足度の高い一日でした。

行程の半分以上が林道歩きであると言うこともあり、ハイキングと言うよりはどちらかと言うとウォーキングであると考えた方が良いかもしれません。通しであることするとかなり距離になるため、長すぎると思う場合は鶴ヶ峰の展望台までで打ち切って引き返すのが良いかと思います。

殆どその存在自体を知られていない諏訪高尾山からの眺めもなかなかのもので、この山だけを目当てに単体で登りに来るにはややボリューム不足な感じもありますが、是非とも塩嶺トレイルと組み合わせて登ってみてほしい一座です。

日本の真ん中に立つために、辰野町を訪れてみてはは如何でしょうか。

<コースタイム>
辰野駅(8:25)-大城山登山口(9:10)-大城山(9:40~10:10)-日本中心のゼロポイント(10:35~10:45)-日本中心の展望台(12:05~12:15)-鶴ヶ峰(12:30)-しだれ栗展望台(14:10~14:25)-小野峠(14:30)-岡谷展望広場(15:00)-諏訪高尾山(15:35~15:55)-岡谷駅(16:50)

大城山山頂から伊那谷を眺める登山者

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント

  1. ミントのしっぽ より:

    こんにちは!
    このたびは辰野町から岡谷市の尾根を歩かれた貴重な記事をありがとうございました。私は松本在住ですが、諏訪湖畔に出張することがあり、対岸から今回の尾根を眺めては、あそこを歩けるのかな…歩けるものなら歩いてみたい…と常々考えていました。こんど、オオツキさんの記録を参考にさせてもらいます!
    ちなみに岡谷駅〜塩尻峠〜高ボッチ〜鉢伏山〜宮入山〜高遠山〜松本駅の日帰り歩行記録は時々見かけます。(私も細切れですがトライ中で、途中の少し藪っぽいところが残っています…) 

    辰野町が「辰野町推し」をがんばっている背景はこちらの新聞記事にもありました。
    https://news.yahoo.co.jp/articles/4b7fb0abec42591ceb34d8d0c899f98522a41f34
    辰年の初登山に辰野町に来られるなんてさすがです!

    • オオツキ オオツキ より:

      ミントのしっぽさま
      コメントを頂きましてありがとうございます。

      塩嶺トレイルは、大部分が林道歩きになってしまうためか登山者にはあまり人気がないようで、確かに山行記録もあまり見かけません。日本中心の展望台や諏訪高尾山は何気に絶景スポットなので、もっと広く知られていても良い存在であると思います。