埼玉県横瀬町にある丸山(まるやま)と日向山(ひなたやま)に登りました。
展望が無い杉の植林帯の山が多いが奥武蔵にあっては珍しい、展望が良いことで知られた山です。もっとも、今回これらの山に登ったのはオマケのようなもので、真の目当てはあしがくぼの氷柱を見物することです。
暖冬の影響により凍結具合はだいぶイマイチでしたが、里山歩きと合わせて巡って来ました。
2024年1月27日に旅す。
毎年1月上旬から2月の下旬頃にかけて公開されている、あしがくぼの氷柱を見物してきました。天然の氷柱ではなく沢水を散水して人工的に造らているもので、秩父三大氷柱なるものの一つに数えられています。
2024年は記録的な暖冬であることもあって公開が遅れていましたが、1月も下旬になってようやく見頃になったとの報を目にして、今回訪問してきました。
やはり暖冬の影響は大きく、例年に比べると氷の出来の方はイマイチな状態でした。
氷柱見物を終えた後は、すぐ近くにある丸山と日向山の2座を巡ります。どちらもコースタイムが短めで手軽に登れる山ですが、山頂に展望台を備えており、眺めが良いことで知られている山です。
氷柱の方は少々残念な出来栄えではありましたが、天気は上々で絶好の登山日和の一日でした。奥武蔵の里山をゆるりと歩いて来た一日の記録です。どうぞ肩の力を抜いてご覧ください。
コース
あしがくぼの氷柱を見物した後、駅から直接歩いて丸山に登頂します。丸山からは途中で日向山に立ち寄りつつ、武甲温泉を目指して下山します。
芦ヶ久保駅から隣の横瀬駅まで歩きつつ、しっかりと温泉にも浸かれる理想的な行程です。
1.丸山登山 アプローチ編 鈍行列車でゆく奥武蔵への旅路
7時23分 西武線 池袋駅
京王線沿線の民である私にとって、奥武蔵は近いようでいて意外にアクセスが面倒な山域です。距離的に遠回りにはなりますが、結局は池袋を経由するのが一番楽です。
途中の飯能駅で西武秩父行きの電車に乗り換えます。この先は4両編成となるため、毎回のように椅子取りゲームが発生します。悠長に写真を撮っていた私は、当然ながら出遅れました。
9時4分 芦ヶ久保駅に到着しました。氷柱効果なのか、けっこうな数の乗客が一斉に下車しました。山登りの格好をしている人の姿も多く、おそらくは私と同じような行程を計画しているのでしょう。
先に山に登ってから下山後に氷柱を見物するでもよいのですが、今回私は隣の横瀬駅まで繋げて歩くつもりでいるため、もうここへは戻って来ません。と言う事で、山登りよりも先に氷柱を見物をしていきます。
駅のすぐ隣に道の駅あしがくぼがあり、車でお越しの人はここに駐車するのが一般的です。朝の9時の時点で、既にもう満車に近い状態でした。
2.あしがくぼの氷柱を見物する
あしがくぼ氷柱の会場は、駅から見て秩父方向に少し進んだ場所にあります。これでもかと言わんばかりにノボリがはためいていました。横瀬町はあしがくぼの氷柱の売り出しに、かなり真剣に取り組んでいるようです。
坂を下ったら、橋の手前で左に入ります。過剰なくらいに案内が出ているいので、特に迷う要素はありません。
仮設の入場券売り場が設置してありました。入場の受付時刻は午前9時からで、料金は大人500円子ども300円です。
この入場券を見せると、下山後に立ち寄る予定の武甲温泉で割引を受けられます。無くさないように取っておきましょう。
駅から会場までは微妙に距離が離れており、入場券売り場からは結構歩かされます。
前方に道が見えて来ました。ここは普段キャンプ場になっているいるようですが、あしがくぼの氷柱開催期間中は閉鎖されています。
入口に簡易的な会場内のマップが置かれていました。一方通行でグルっと一周してここへ戻ってくる配置になっています。
やたら天井の低い西武線のガードの下を潜ります。この道は横瀬二子山の登山口に至る道なのですが、あしがくぼの氷柱の開催期間中はここらは登れないし下山も出来ませんので要注意です。
ガードをくぐると、唐突に氷の世界が視界に飛び込んできました。
会場の中心に小さな沢が流れており、その沢水を夜間にスプリンクラーで散水することにより氷柱を作り出しています。もともと日影で氷が溶けにくい環境であることを最大限に活用しています。
茶色い地面が露出してしまっている部分もあり、写真で見たことがある過去の様子と比べると、今年の氷の出来栄えはイマイチです。やはり暖冬であることが影響してしまっているのか。
それでも場所によっては見事な氷の芸術が作り出されていました。
web上で目にした昨年の写真ではもっとモコモコしていたような気もしますが、氷のモンスターも沢山います。
おそらくこの砂防堰堤の手前が最も壮観な光景を見られるはずの場所ですが、ここでもやはり氷の出来栄えはイマイチです。
ちょうど良いタイミングで、西武線のソーセージみたいな外観の特急列車がやって来たので、とっさに撮り鉄しました。
どうでも良いことですが、この眩暈を起こしそうなレベルに格好悪い外観はもう少し何とかならなかったんですかね。俺たちのレッドアロー号を返してほしい。
上から見下ろすとこんな状態です。疎らにしか氷が出来ていません。
会場を一周するには、少しだけ坂を登る必要があります。登山者的にはなんてことはありませんが、年配の方が一緒だったりすると意外と苦労するかもしれません。
坂を登りきると、紅茶か甘酒のどちらかを無料でもらえるコーナーがありました。無料と言っても、500円の入場料に含まれていると言うだけの事だとは思いますが。
取りあえず甘酒で一服します。暖かい飲み物が五臓六府にしみわたる。
坂の上から見下ろした、あしがくぼの氷柱会場の全容です。これはもっと寒い冬の年に再訪しないと駄目なやつですね。
10時 道の駅あしがくぼまで戻って来ました。それはこれより、最初からオマケ扱いの登山の部へと移ります。登山ブログなのに。
3.奥武蔵随一の展望との呼び声が高い丸山
目指す丸山は芦ヶ久保駅のすぐ裏手にある山で、駅を起点にした周回ルートを取ることが出来ます。今回は右回り行くので、まずは国道299号沿いに飯能方向へ進みます。
昔からの疑問なんですが、なぜマス釣り場の名前には必ずに頭に国際と付くのでしょうか。日本全国のマス釣り場業界を牛耳っている国際という名のグループ企業かなにかなのか。
マス釣り場の名前に国際と付く理由については諸説がありますが、マス釣りの対象であるニジマスはもともとは外来魚であることから国際と呼ぶようなったと言う説が有力です。
道なりに進むとやがて左側に脇道が現れるので、ここから山中へと入っていきます。
山の斜面上に段々畑がひろがる、長閑な里山の光景が広がります。ああ、とても良いですね。いかにも奥武蔵いらしい光景です。
登山口の脇に、真新しい木製のベンチが今まさに設置されようとしていました。それだけ地元の人々に愛されている山なのでしょう。
標識には大野峠とだけ書かれていますが、丸山への入り口もここであっています。熊にマムシといろいろ出る山のようですが、ともかく登山開始です。
登り始めて早々から、まるで奥多摩のような圧倒的杉林が出迎えてくれました。ここは奥多摩ではなく奥武蔵ですが、まあ似たようなものです。
登山道の途中にもベンチが設置されていました。道も明瞭明快で、たいへん良く整備されている登山道です。
見上げるサイズの大岩が登山道のすぐ脇をかすめています。丸山なんて言ういかにもなだらかそうな名前をしていますが、実は岩の山なのだろうか。
石造りの橋が架かっていたりして、ただの登山道にしては高規格すぎる道です。恐らくもともとは林業用の作業道かなにかなのでしょう。
このまま道なり登って行くと大野峠に至りますが、途中で直接丸山方面にショートカットできるルートの分岐があります。
山と高原地図では破線扱いされているルートですが、せっかっくなのでこちらから登ってみましょう。
破線エリアに入るなり、地面に散乱する杉の枝や葉が目に見えて増えて足元の感触が柔らかくなりました。あまり歩かれてはいないようです。
とは言いつつも踏み跡は明瞭明快であるし、特にこれといった難所もありません。これが何故破線ルート扱いをされているのか、少々腑に落ちません。
石垣なども残っていて、古くから使われているルートであることは明白です。単にあまり一般的ではないルートだからという理由だけで破線にしたのか。
ようやく杉の植林帯を抜けて、広葉樹林から成る一帯に入りました。当然ながら今の季節は既に落葉しており、風枯れの殺風景が広がっていました。
舗装された林道にぶつかりました。ここまで登ってくれば、山頂まではもうあと一息です。
尾根上は完全に落葉状態で、路上に大量の落ち葉が堆積していました。と言う事は、紅葉の時期に歩くと見ごたえがあるのかもしれません。
大野峠方面からの尾根道と合流しました。この道は以前にもに一度歩いたことがあります。確か大野峠方面に少し進んだ場所に、パラグライダーの発着場があったはずです。
巨大なアンテナ塔が見えて来ました。恐らくあの場所が山頂だ折ると言う事で、ラストスパートをかけて行きます。
陽当たりの良い尾根上では、夜の間に凍結していた地面がとけ出していて、なにやら大変なことになっていました。転んだら悲惨なやつだ。
分岐からさらに進むと、山頂にある特徴的な展望台の建物が見えて来ました。
12時 丸山に登頂しました。芦ヶ久保駅を出発してからピッタリ2時間の、お手軽なハイキングコースでした。特に危険な場所も無いので、登山初心者向きの山だと思います。
4.丸山展望台から望む、奥武蔵随一の展望
丸山の山頂部一帯は県民の森として整備されており、その中でも最高地点の周辺は展望広場と呼ばれています。奥武蔵随一とまで称されるその展望を、早速眺めてみましょう。
南側の展望です。武甲山の背後に、東京都との境界線を軽視している長沢背稜の山並みが連なっています。あの稜線の向こう側は奥多摩です。
秩父の誇り武甲山(1,304m)がちょうど正面に見えます。採掘面が剥き出しの異様な姿は、何度見てもインパクトがあります。
西には武甲山と同じくらい良く目立つ、両神山(1,723m)の姿がありました。古くから修験の山として知ら得る岩峰で、まるで恐竜の背びれのような姿をしています。
遠くには、雪を頂いて真っ白な浅間山(2,568m)の姿がありました。この山は遠目からも富士山並みに良く目立ちます。
北側の群馬県方面です。こちらには赤城山(1,828m)や日光連山などが見えますが、本日は生憎と雲が多めです。
隣接している比企三山の堂平山(876 m)の姿が良く見えます。山頂にある天文台のドームが目を引きます。堂平山とは大野峠を挟んで尾根がつながっており、縦走することも出来ます。
最後に東側の筑波山(877m)です。展望台の周囲にある木々が大きく育ってきており、見える範囲は徐々に狭まりつつあります。そう遠くない将来、奥武蔵随一の展望とは名乗れなくなる日がやってくるかもしれません。
5.下山がてらに日向山へ足を伸ばす
12時30分 じっとしているとだいぶ体が冷えて来ました。ボチボチ下山を開始しましょう。下山は登って来たのとは反対側の、県民の森方面へと下ります。
山頂のすぐ近くまで丸山林道線が通っています。県民の森の駐車場からスタートした場合、だいたい20分もあれば山頂に立ててしまう山です。
尾根上を忠実に辿る登山道もしっかりと存在しますが、県民の森の散策路が整備されているのでそちらを辿ります。
遊歩道を10分ほど歩いたところで、再び登山道へと入って行きます。
丸山登山としては、往路に歩いた大野峠側よりはこちらの方がずっと歩く人の多いメインルートです。あしがくぼの氷柱との相互効果もあってか、ひっきりなしに他の登山者が行き交っていました。
またもや林道にぶつかりましたが、ここは横断するだけです。道を渡りそのまま直進します。
山と高原地図には防火帯で気持ちの良い尾根との記載がありますが、道幅が多少広いくらいで至って普通の尾根道だと思います。
分岐地点まで下って来ました。左へ進むと芦ヶ久保駅へ戻れます。今回私は途中にある日向山を経由しつつ武甲温泉まで歩くつもりでいるため、ここを右に入って行きます。
周囲は相変わらずの圧倒的な杉林・・・かと思いきや、よく見るとこれは杉ではなく檜です。まあ、どちらも似たようなものですけれど。
檜はあまり直射日光を必要としないいわゆる陰樹であるため、日当たりが良い南側には杉を植えて、北側に檜を植えることが多いのだとか。
道中に山の神様がいらっしゃいました。ということはつまり、この道もまた古くから存在していると言う事です。檜の植林にされてしまう以前には、どんな景色だったのだろうか。
車道に合流しました。道は三方向へと別れていますが、日向山へ向かうにはここを左折します。
道の脇に住宅地があり、何やらもう下山したかのような錯覚を覚えますが、現在地はまだまだ山の中腹です。
道標も何も立っていませんが、ここが日向山の登山口です。大した標高差があるわけでの無い山なので、サクッと登って行きましょう。
日向山の周辺は、山の花道と言う名称で公園として整備されています。流石に今の季節に花は咲いていませんが、見事な桜並木があったので、春になればさぞや華やかな光景になるのでしょう。
最後の方は急な階段となっており、意外としっかりと登らされました。鼻歌混じりに登れるお散歩道のようなものだろうと予想していたので、これは少し意外でした。
ヒイヒイ言いながら登りきると、木製の展望台が整備された広々とした山頂が現れました。
14時 日向山に登頂しました。芦ヶ久保駅を起点とした丸山周回コースからは少し外れた位置にあるため、訪れる人はあまりいない静かな山頂です。
早速展望台に登ってみましょう。正面には、丸山の山頂から見た時よりもさらに大きくなった武甲山の姿がありました。採掘面が真正面に来るアングルで、日向山が武甲山を眺めるに最高の展望台の一つであることは間違いありません。
芦ヶ久保駅がちょうど真下に目ます。丸山へグルっと大回りしてここまで戻って来た状態です。このまま日向山から芦ヶ久保駅へ下ることのできるルートもしっかりと存在します。
山頂に小さな恵比寿様がいらっしゃいました。確か漁業関連の守り神だったように記憶していますが、それが何故海無し県埼玉の山中に??
6.丸山登山 下山編 何気に遠かった武甲温泉への道程
この時点で早くも私の頭の中はもう、下山後の温泉モードへと切り替わりました。武甲温泉を目指して下って行きます。
既にもうやる気のない鹿よけネットの中に、小さなアンテナがポツポツと並んでいました。恐らくはテレビ地上波のものです。
背後を振り返ると、つい先ほど登って来た丸山の姿がありました。なるほど確かに、遠目からは見ると丸いシルエットしている山です。
登山道の入口はしっかりとした防護ネットに守られており、ロープが絡まってしまっていて開けるのに難儀しました。
登山口の脇に立つ琴平神社です。大物主神(おおものぬしのかみ)を祀っており、航海の安全や豊漁祈願のご利益があるとされています。先ほどの恵比寿様に続いて、ここでもやはり漁業関連の神様です。何か関連があるのでしょうか。
今度こそ下山完了です。この後は最後までひたすら舗装道路歩きとなります。
と言っても現在地はまだまだ山の上です。武甲温泉までは結構な距離が残っています。
カーブ地点から秩父方面の街並みが良く見えました。こうして上から見ると、盆地の中に荒川の段丘の切れ端が幾重に連なっている様子が良くわかります。
途中をショートカットできる山道もあったようですが、どうやら入り口を見落としてしまったらしく、舗装道路沿いに遠回りしつつ下って来ました。
下山後は街中を通り抜けて武甲温泉へ。途中に秩父札所巡りの寺がいくつかありますが、今回は全てスルーしました。今は早く温泉に浸かって暖まりたい。
15時35分 武甲温泉に到着しました。なんだかんだで、日向山からは結構な距離がありました。1駅分の区間を歩いたのだからまあ当然か。
土休日の入浴料は900円ですが、あしがくぼの氷柱のチケットを持っていると100円引きで800円です。源泉かけ流しではないらしく、塩素臭がやや強めのお湯でした。
武甲温泉は駅から少し離れた位置にありますが、横瀬駅との間で無料の送迎バスが運行されています。ちなみにこの写真は温泉に入る前に撮影したもので、風呂から出た時点ではちょうど直前に出発してしまった後でした。
次のバスを待っていても湯冷めしてしまいそうなので、駅まで歩いて戻ります。歩いてもせいぜい10分少々の距離です。
16時25分 横瀬駅に到着しました。お手軽ハイキングと言いつつ、なんだかんだで結構な距離を歩きました。
特急は見送って、往路と同様に鈍行列車に揺られて、帰宅の途に着きました。
前々から一度見てみたいと思いつつ訪問タイミングを逸していたあしがくぼの氷柱に、今回ようやく訪れることが出来ました。しかし過去の写真と見比べても今年の氷の出来栄えは本当にイマイチで、若干の不完全燃焼感が残る結果になりました。いつかもっと寒い冬になった年に再訪したいところです。
丸山と日向山はどちらも駅から直接手軽に登れる山で、冬に軽めのハイキングをしたい時にはうってつけの訪問先であると思います。ボリューム的に少し物足りないと思う人は、隣接する堂平山と一緒に歩いてみては如何でしょうか。
<コースタイム>
道の駅あしがくぼ(10:00)-大野峠登山口(10:40)-丸山(12:00~12:30)-日向山(14:00~14:20)-武甲温泉(15:35~16:10)-横瀬駅(16:25)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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