檜岳-鍋割山 丹沢山地のマイナーエリア檜岳山稜を巡る

伊勢沢ノ頭付近から見た檜岳
神奈川県松田市と山北町にまたがる檜岳(ひのきだっか)に登りました。
鍋割山稜から雨山峠を挟んで南西方向に向かって伸びる、檜岳山稜に属している山です。丹沢山地の中にあっては人気・知名度共に低く、歩く人の姿は疎らな静かな山域です。山頂には展望が一切ありませんが、稜線上には開けた場所があり全般的には眺めの良い尾根道となっています。
寄から鍋割山まで、丹沢南部のマイナーエリアを横断してきました。

2022年12月4日に旅す。

今回は久しぶりとなる丹沢への訪問記です。丹沢のマイナーエリアである檜岳山稜を歩きて来ました。

檜岳山稜は、鍋割山稜から南西方向に向かって続いている尾根です。特にこれと言った目立つ顕著なピークがあるわけでもなく、それゆえに歩く人の姿が疎らな山域です。
鍋割山から見た檜岳山稜

そんな地味でマイナーな山であると見なされがちな檜岳山稜ですが、歩いてみるといかにも丹沢らしい頭上の開けた明るく気持ちの良い尾根道が続いていました。
檜岳山稜の尾根道
なお現在、檜岳山稜に至るルートの大半が豪雨災害による崩落で通行止めの状態となっています。途中でエスケープ不能であるため、端から端まで歩き通すしか選択肢がありません。

そんな訳で好む好まざる如何に関わりなく、寄から鍋割山まで檜岳山稜の全域を横断してきました。丸一日かけて丹沢のマーナエリアをほっつき歩いて来た一日の記録です。
鍋割山荘

コース
檜岳山稜のコースマップ
寄(やどりき)バス停よりスタートし、シダンゴ山を越えて秦野峠へ。秦野峠から檜岳山稜を縦走します。雨山峠から寄へ下る道は現在通行止め状態であるため、下山は鍋割山を越えて大倉まで歩きます。

標準コースタイムで9時間40分程になる、骨太な行程です。

1.檜岳山稜登山 アプローチ編 西丹沢なのか東丹沢なのかよくわからない、寄への旅路

世田谷区最弱の町、喜多見よりおはようございます。(※)個人の意見です。
早朝の喜多見駅
私は京王線沿線の民なのですが、自宅から最も近い距離にある小田急線の駅がどこなのか調べてみたところ、どうやら喜多見らしいことが判明しました。試しに自転車で来てみたところ、30分未満で辿り着きました。

喜多見駅は鈍行しか止まらないので、どのみち登戸か新百合ヶ丘で急行に乗り換える必要があります。それでも永山経由よりは全然早い事がわかったので、今後小田急線を利用する時はここから乗ることにしましょう。
喜多見駅のホーム

7時41分 新松田駅に到着しました。西丹沢の玄関口としてお馴染みの駅です。今ふと思ったのですが、檜岳山稜は西丹沢なのか東丹沢なのか、どちらなのだろうか。
新松田駅のホーム
「丹沢は我がホームグランド」と称していた割には、だいぶ久方ぶりとなる丹沢訪問です。ここ最近の私は、山梨県のマイナーな山にばかり入り浸っていたものですから。

しかし、その久しぶりとなる訪問先が檜岳山稜だと言うのが何とも。ですがこれで良いのです。ここはもともと、そういうブログなのですから。

新松田駅訪問の際のお約束である、天気が良いと富士山が良く見える窓からの、本日のお天気占いを実施します。
新松田駅の富士山が見える窓

結果はこの通り大吉です。ナイスだぜジーフー。
新松田駅から見た富士山

7時55分発の寄行きのバスに乗車します。そんなに人気の高いエリアであるとは思えないのですが、座席が全て埋まるくらいの乗車率です。他の乗客たちは、一体どこを目指しているのだろうか。
新松田駅のバスターミナル
この路線、以前はもっと運行本数が多かったように記憶していますが、今ではガッツリと減便されてしまっています。発車時間には十分ご注意ください。

8時20分 終点の寄バス停に到着しました。寄と書いて「やどりき」と読みます。振り仮名なしでは絶対に読めない地名ですよね。
寄バス停

2.檜岳山稜の前衛、シダンゴ山を越える

中津川に架かる橋を渡って行動開始です。まずは手始めに、檜岳山稜の手前に立っているシダンゴ山を攻略します。
寄の大寺橋

川縁の木が紅葉していますが、もうほぼ終わりかけです。登山口の時点で既にこの状態だと言う事は、山の上の方ではもうとっくに散ってしまていそうですね。
寄を流れる中津川
上流方向の中央左に見えているのが、位置的におそらく檜岳山稜の雨山であると思われます。今からあの高さまで登って行こうと言うわけです。

道標の案内に従ってシダンゴ山を目指します。
シダンゴ山と書かれた道標

茶畑やミカン畑が点在する、長閑な山村の光景が広がります。寄の集落は、里山の光景が好きな人には確実に刺さる場所だと思います。
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集落の外れから、農道だと思われる道に入ります。最初からなかなかの急勾配で、早くも体が温まって来ました。
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バス停から20分ほど歩いたところで、登山口に辿り着きました。動物除けのゲートを開けて、山中へと足を踏み入れます。
シダンゴ山の登山口

シダンゴ山の登山道は、最初から最後までまるで奥多摩のような圧倒的杉林が続きます。あまり面白味はないし、過去に一度詳細にレポートしたとこのある道なので、今回はサクッと割愛します。
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山頂に近づくと、辺りにはけたたましいチェーンソーの音が鳴り響いていました。地元の方々が、山頂周辺の手入れを行っている最中であったようです。
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9時35分 シダンゴ山に登頂しました。頭上が開けていて、周囲を馬酔木(アセビ)に覆われた広々とした山頂です。
シダンゴ山の山頂
比較的手軽に登れるので、登山者にそこそこの人気がある一座です。しかし本日の計画においては、主目標である檜岳山稜の前座でしかありません。

道中の光景こそ単調でしたが、山頂からは相模湾方面の展望が開けています。良いお天気ではありますが、何となくモヤーと霞んでいますね。
シダンゴ山からの眺望

反対側には、この後に歩く予定の檜岳山稜の尾根が連なっているのが見えます。取り立てて顕著なピークが無い、平坦な尾根であるのが良くわかります。
シダンゴ山から見た檜岳山稜2

ちなみに半分以上隠れてしまっていますが、シダンゴ山の山頂から一応は富士山も見えます。
シダンゴ山から見た富士山

檜岳山稜を越えた先にある雨山峠まで、あと7.7kmほどあります。まだまだ先は長いので、次へ参りましょう
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3.檜岳山稜の入口、秦野峠を目指す

僅かな山頂滞在時間で、足早にシダンゴ山を下ります。
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サクサクと林道まで下って来ました。正面に見えている鉄の階段を登ると、ダルマ沢ノ頭というマイナ―ピークを越えて秦野峠に至ります。林道沿いに右へ進めばダルマ沢ノ頭を巻けるので、今回はスルーします。
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林道から、中津川を挟んだ向かいの鍋割山(1,272m)が見えました。中津川を囲むように、左側からグルっと馬蹄形に尾根が連なっています。
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林道秦野峠まで、しばしの舗装された林道歩きです。もっとあっさり着いたような記憶があるのですが、意外と距離がありました。
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目的地の檜岳山稜に徐々に近づいて来ました。こうして近くから見ると、まだ結構な標高差が残っています。
林道秦野峠付近から見た檜岳山稜

10時20分 林道秦野峠に到着しました。「林道」とことさら強調しているのは、林道秦野峠線が開通する以前の秦野峠がこことはまた別に存在するからです。
林道秦野峠

端の方だけですが、峠から富士山が見えることには見えます。先ほどのシダンゴ山といい「貴様に見せる富士山は無い」とでも言わんばかりのこの仕打ちは、いったい何なのだろうか。
林道秦野峠から見た富士山

峠から山道へと分け入ります。ここまでの道程は檜岳へのアプローチでしかなかった訳で、言ってみればここからが本番です。やけに長いアプローチでしたな。
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両側を有刺鉄線に囲まれた、金網デスマッチ状態の登山道です。ここで躓いて横方向へ転倒でもしたら、最悪血まみれになるので足元には十分ご注意ください。
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金網地帯を抜けると、今度は痩せた尾根になりました。ここで転倒すると有刺鉄線には刺さりませんが、崖から転落してどのみち血まみれにはなるので、引き続き注意を要します。
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分岐地点が現れました。檜岳山稜に入るには、ここを右折します。なお道標には案内がありませんが、直進するとブッツェ平を経て大野山へと続くマイナールートに入ります。
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ここから先は自身にとって未踏の領域となります。分岐からは一度鞍部に向かって下ります。マイナールートと言えどそこは丹沢で、しっかりと階段が整備されていました。
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よく整備されていると言った矢先ですが、前言撤回です。道の整備状態はあまり良くありません。木橋が崩落に呑み込まれたまま放置されていました。
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鞍部を流れる涸れ沢を渡り、対岸の尾根に取り付きます。渡渉地点にはしっかりと道標もあるので、見落とさないように良く周囲を観察してください。
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道標の示す先に薄っすらとした踏み跡はあるものの、この辺りの道はかなり不明瞭です。先ほどの分岐地点から、いきなり難易度のステージが変わった感があります。
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11時 涸れ沢から登り返したところで、秦野峠に到着しました。現在の林道秦野峠線が開通する以前の道は、この地点を越えていたのでしょう。
秦野峠

かつての峠道と思われる踏み跡が残っていますが、ロープで封鎖されていました。今でも辿れるのかどうか興味はありますが、それはもはや登山と言うよりは廃道探検の範疇ですよね。
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4.檜岳山稜最初のピーク、伊勢沢ノ頭へ

秦野峠を過ぎると、明瞭に尾根筋の道になりました。相変わらず踏み跡は心許ないですが、尾根を辿ればよいので特に迷う要素はありません。
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急登でグイグイと標高を上げていきます。ザレている場所には、しっかりとお助けロープが垂らされていました。
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これまた丹沢らしい階段地獄が始まりました。でも、階段がなかったら登るのはもっと大変だってことなんですよね。地獄とか言っていないで、整備してくれた方々に感謝しましょう。
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背後の展望が開けて、ようやく一部が隠れていない完全な富士山の姿を拝むことが出来ました。
221204檜岳-045

眼下には足柄平野の先に相模湾が広がります。
檜岳山稜から見た足柄平野

左手には秦野盆地と相模平野を一望できます。やはり丹沢からの眺望は、こうでなくてはいけません。
檜岳山稜から見た相模平野

急登を登りきると、幅広でアップダウンの少ない平坦な尾根道になりました。無事に檜岳山稜の上に乗ったようです。
檜岳山稜の尾根道

尾根上に設置された鹿よけの柵に沿って進みます。こんな山深い場所にまでしっかりと人の手が入っているのもまた、丹沢らしいと言えばらしい光景です。
221204檜岳-049

前方にモリモリと大きく盛り上がったピークが見えてきました。檜岳山稜上に連なる最初のピークである、伊勢沢ノ頭です。
221204檜岳-050

再び丹沢名物の階段地獄が始まりました。こんなところまで律義に、丹沢らしさを発揮しなくても良いのに。
221204檜岳-051

息絶え絶えになりつつ階段を登りきると、今度こそ山頂らしき場所に出ました。
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12時 伊勢沢ノ頭に登頂しました。檜岳山稜上に並ぶ3座のピークのまずは一つ目です。ここまで登ってくればもうあまり大きな標高差は無く、この先は平坦な尾根歩きとなります。
221204檜岳-053

標柱が立っている地点から少し進むと、一応は僅かに展望があります。山頂より道中の眺めの方が全然良いです。
伊勢沢ノ頭からの展望

ここからユーシン渓谷をへて玄倉に下る登山道が存在するのですが、現在は通行止めであるとの案内が出ていました。例え通行止め状態でなくても、もともと荒れ気味であまり良い道ではないようですが。
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5.人影疎らな、静かなる檜岳山稜を横断する

先へ進みましょう。尾根上には、見事なブナ林が広がっていました。今では完全に冬枯れの殺風景ですが、もう少し早い時期に来ていればブナの紅葉を楽しめたのかもしれません。
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いかも丹沢らしい、頭上が開けた明るい尾根道です。なにぶん感覚的なものなので言語化するのが難しいのですが、実に丹沢みがあふれる道ではありませんか。
檜岳山稜の登山道

眼下に、先ほど通って来たシダンゴ山が良く見えました。こうして上から見ると、山全体がびっちりと杉林に覆われてしまっているのが良くわかります。
檜岳山稜から見たシダンゴ山

反対側には不動ノ峰(1,614m)と蛭ヶ岳(1,673m)。丹沢主脈も久しぶりに歩きたいんだよな。日帰りするのはしんどいので、できれば蛭ヶ岳山荘に泊まって歩きたいです。
檜岳山稜から見た蛭ヶ岳

前方に檜岳の姿が見えて来ました。のっぺりしていて外観にこれと言った特長がないピークですね。この地味さ加減が、登山の対象としてあまり人気がない理由なのでしょうかね。
伊勢沢ノ頭付近から見た檜岳

鞍部から山頂に向かってゆるゆると登り返します。急坂はなく緩やかで歩きやすい道です。
221204檜岳-059

実にあっけなく、山頂らしき場所が見えて来ました。
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12時30分 檜岳に登頂しました。ここまでにすれ違った登山者の数は、僅かに2~3人だけでした。どこまでも静かな檜岳山稜です。
檜岳の山頂

山頂の様子
樹林に覆われていて、展望は全くありません。丹沢名物のテーブルみたいなベンチが一つだけポツンとある空間です。
檜岳山頂の様子
流石に少し疲労を憶えたので、ベンチに座ってここで一本立てました。

先へ進みましょう。檜岳から一度大きく標高を落とします。
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下りきった地点に、僅かながら富士山のビュースポットがありました。いつの間にすっかりと曇り空になってしまいましたね。陽が射さなくなるなり、急に寒くなって来ましたぞ。
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お次のピークである雨山に向かって登り返します。雨山は檜岳とほぼ同じ標高なので、一度下ってしまった分だけしっかりと登り返しさせられます。
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山頂の手前に崩落地があり、そこだけ大きく展望が開けていました。どんよりとした曇り空ですが、相模湾までよく見えます。
221204檜岳-066

背後には、先ほど越えて来た檜岳の姿がありました。反対側から見ても、やはりこれと言った特徴は感じられない姿をしています。つまり地味だってことです。
221204檜岳-067

低山歩きにおいてありがちな送電鉄塔と崩落地に好展望ありの法則は、丹沢においても健在です。なお結構大きく崩れているので、足元には要注意です。
雨山の崩落地

崩落地を過ぎると、あっさりと山頂が現れました。
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13時10分 雨山に登頂しました。これで檜岳山稜上にある主要な全てのピークを踏みました。
雨山の山頂

6.雨山峠ルートの通行止めにより、鍋割山越を余儀なくされる

雨山を過ぎると、尾根は雨山峠に向かって一気に標高を落としはじめました。かなり急な上に落ち葉が堆積して滑りやすい状態なので、なかなか肝を冷やす下りです。
221204檜岳-071

前方に鍋割山の姿が見えます。この時点ではあそこまで足を延ばす計画はなかったのですが、しかしこのあと事は思惑通りに運びませんでした。
221204檜岳-072

峠に近づくにつれて、尾根が痩せて両側が切れ落ちたナイフリッジ状の道になりました、人一人が通行できるだけの幅はしっかりとあるので、バランスを崩しでもしない限り特に危険な要素はありません。
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雨山からはかなり大き下って、ようやく峠が見えて来ました。
221204檜岳-074

13時35分 雨山峠に到着しました。ここが檜岳山稜と鍋割山稜の境界です。と言う事で、檜岳山稜を踏破すると言う、本日の目標は無事に達成されました。
雨山峠

ここからやどりき水源林に下山できればめでたしめでたしだった訳なのですが、しかし現在この雨山峠ルートは、夏の豪雨災害による影響で未だに通行止め状態のままでした。なんだと・・・
221204檜岳-076
この雨山峠コース、一部道が不明瞭でわかり難いところもありますが、純粋に歩いていて楽しい道です。どれくらい崩れてしまったのかは定かではありませんが、復旧してくれることを願ってやみません。

ここからは下山できないとあっては致し方ありません。気乗りはしませんが、これより鍋割山越えを敢行します。
221204檜岳-077

雨山峠から鍋割山に至る区間は、山と高原地図上で危険マークのアイコンが密集している一帯です。過去に一度詳細にレポートしているので今回は軽くサラっと流しますが、十分に注意して参りましょう。
221204檜岳-078

道中に丹沢で最も長いと言う触れ込みのクサリ場もあります。もっとも、そもそも丹沢にはクサリ場自体がそれほど多くはありませんがね。
雨山峠ルートのクサリ場

全長は50メートル少々あります。単に長いと言うだけで、特段難しいわけではありません。しっかりと三点支持を守っていれば難なく登れます。
雨山峠ルートのクサリ場

クサリ場を越えた地点が鍋割峠です。峠を名乗っている以上、ここにもかつては道があったのでしょうけれど、一体どこに通じていたのでしょうか。
221204檜岳-081

この鍋割峠からも、寄へ下れるコシバ沢と言うバリエーションルートが存在します。特に通行止めの案内は出ていないから、ここからなら下れるのかな。
221204檜岳-082
コシバ沢はもともと道迷いが非常に多いと言われているルートなので、初見の下山で利用するつもりはありません。計画通り、このまま鍋割山を越えます。

と言う事で、鍋割山に向かって本日最後の登りです。もう下山したいだけなのに何故かもう一座登らされると言う理不尽極まりない展開ですが、道がそうなっている以上は致し方ありません。オラ泣き言を言うな。気合を入れろ気合。
221204檜岳-083

左手に檜洞丸から蛭ヶ岳に至る、丹沢主稜の山並みが見えます。以前にあのルートを日帰りで歩いて、リアルに血反吐を吐きそうになったけか。久しぶりに歩きたい気もしますが、日帰りではなく絶対に山小屋で一泊します。
221204檜岳-084

丹沢名物の階段地獄が始まったら、山頂まではもうあと一息です。ラストスパートをかけて行きましょう。
221204檜岳-085

振り返ると、今日歩いて来た檜岳山稜の全容が一望できました。地味だけれど、しっかりと丹沢らしさが溢れる良き尾根道でありました。
221204檜岳-002

良い感じに息絶え絶えになりつつも、ようやく鍋割山に到着しました。檜岳山稜とは違ってこちらは大人気の山なのですが、流石に時間が時間だけに貸し切り状態でした。
鍋割山荘

15時 鍋割山に登頂しました。今回は下山するためだけの通り道だったのですが、最後の登りですっかりと打ちのめされました。いやはや意外に遠かった。
鍋割山の山頂
時間的にはもう、日没前に下山する事は出来そうにありません。ヘッドライト下山が確定です。

どよーんとした曇り空にはなってしまいましたが、これまで何度かチラ見えしていた富士山も、こうして最後まで隠れることもなく見え続けてくれました。
鍋割山からの展望

ここで身も蓋もないことを言ってしまいますと、鍋割山山頂からの展望は、檜岳山稜のどの地点からの眺めよりも遥かに秀逸です。
鍋割山からの眺望
そりゃあ、人気に圧倒的な差もつくことでしょうね。おまけに、鍋割山には鍋焼うどんまでありますからね。

7.檜岳山稜登山 下山編 暗闇の西山林道を歩き大倉バス停へ

さあ、今度こそ帰りましょう。ヘッドライト下山になることが既に確定しているとはいえ、出来る事なら林道に出るまではまだ明るいうちに下ってしまいたいところです。と言う事で、足早に下って行きます。
221204檜岳-089

西日が射しこみ始めた登山道を、ハイピッチ気味にサクサクと下ります。かなり急坂が続きますが、その分だけ短時間で標高差を稼ぐことが出来るとも言えます。
221204檜岳-090

16時 後沢乗越まで下って来ました。直進するとスタート地点の寄に戻れますが、もう時間も遅いのでバスの本数が多い大倉に下ります。
後沢乗越

後沢乗越から左に進路を転じて、谷底に向かって降下を開始します。山の東側になるため、まだ日没前の時点からすでに薄暗くなっていました。
221204檜岳-092

樹林帯に入ると傾斜が緩んでくるので、この先はさらにペースを上げて半分駆け足のように下りました。
221204檜岳-093

後沢乗越から30分とかからずに、西山林道の終点まで下って来ました。急いだ甲斐あって、何とか真っ暗になる前に安全地帯まで下ってくることが出来ました。
221204檜岳-094

ここから大倉バス停までは、さらにあと1時間少々の林道歩きが残っています。と言ってもこの先は車も通れる道なので、ライト片手の状態であっても、もう特に危険はありません。
221204檜岳-095

林道歩きの途中で日没ゲームセットと相成り、ヘッドライトを点灯します。この先は写真も撮らずに、黙々と暗闇の中を歩き続けました。
221204檜岳-096

17時50分 大倉バス停に到着しました。寄を出発してから9時間30分程の山行きでありました。たくさん歩いて疲れたあ。
夜の大倉バス停

大倉バス停はバスの運行本数が多く、この時間であってもそんなに待たされることはありません。到着後5分とたたずにやってきたバスに乗り込み、帰宅の途につきました。
夜の大倉バス停

丹沢と言われると、多くの人は大山や塔ノ岳と言った人気の山を真っ先に思い浮かべることでしょう。
しかし、そんな人気で煌びやかな場所からさらに少し足を延ばしただけで、一日をかけて歩いても数人としかすれ違う事がない、静かなる山域が広がっています。このような山が、そこまでアクセスが悪いわけでもない場所にさり気なく隠れている辺りに、丹沢山地の懐の深さを感じた一日でした。
檜岳山稜にはこれと言った顕著なピークがあるわけでもなく、特別に眺めが良いわけでもありません。ですが、尾根上の道には確かに丹沢らしさがちりばめられていました。丹沢らしさを満喫しつつも、人の少ない静かな山を求めている人には、うってつけの場所であると言えます。
雨山峠ルートの通行止めにより、現状は訪問のハードルが上がってしまっている状態ではありますが、丸一日をかけてガッツリ歩きたい気分になった時にでも、檜岳山稜を訪れてみては如何でしょうか。

<コースタイム>
寄バス停(8:20)-シダンゴ山(9:35~9:45)-林道秦野峠(10:20)-秦野峠(11:00)-伊勢沢ノ頭(12:00)-檜岳(12:30~12:45)-雨山(13:10)-雨山峠(13:35)-鍋割山(15:00~15:15)-後沢乗越(16:00)-二股(16:35)-大倉バス停(17:50)

檜岳山頂での記念撮影

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント

  1. AK より:

    檜岳、初めて知りました。
    関連のシダンゴ山、丹沢主稜、蛭ヶ岳、鍋割山等の記事も全部面白かったです!リンパ節を直撃するおひるねみかんジュースとか、もうだめびゅーとか、健脚者なんてやめてやる!とか。電車内でしたがマスクをいいことに、ニヤニヤしながら読みました笑
    丹沢はメジャールートしか行ったことがないのですが、そんな主脈から危険アイコン多数の半崩壊ルートまで、力量に合わせて楽しめる本当に懐深いエリアなんだな〜ということがすっごくよくわかりました。
    リンク貼ってあると、まとめて楽しめるのでありがたいです。まだ他にも丹沢記事あるようなのでおいおい読ませていただきますね。
    いつもありがとうございます!

    • オオツキ オオツキ より:

      AKさま
      コメントをありがとうございます。

      はて?「健脚者なんてやめてやる!」なんてセリフを書いたことがありましたっけか。いつも思い付きで適当に書き散らしているので、意外と自分の書いたことを覚えていません。

      過去に一部を歩いたことがあるルートを繋げるようなコース取りだったため、今回はやけにリンクの多い記事構成でした。

      檜岳山稜は丹沢南部の中心付近を占めている尾根でありながら、不可解なほどに歩く人の少ないルートです。流石に表尾根や主脈を差し置いてまで訪問を推奨できるほどの魅力は無いと思いますが、メジャーどころを一通り歩きつくした頃にでも、足を延ばしてみては如何でしょうか。

  2. たむ より:

    長時間お疲れ様でした
    凄くいいコースですね
    富士山は少し見えるだけで圧巻ですね
    私は西の方なので富士山を見ながら登山できることは少ないので
    そのコースを先入観なしで歩くととてもとても感動すると思います。

    • オオツキ オオツキ より:

      たむさま
      コメントをありがとございます。

      檜岳山稜が抱える最も重大かつ根本的な問題点は、すぐ近くに丹沢主脈が存在し、明らかにあちらの方が眺めが良いと言う点にあるのですよね。

      良いコースであることは間違いないのですが、いかんせんライバルが強力すぎて、あえてこちらに訪れようという訴求力を見出しにくい場所です。

      人の少ない静かな山行きがしたいと言う人には、うってつけのコースであると思います。