新潟県南魚沼市と群馬県みなかみ町にまたがる巻機山(まきはたやま)に登りました。
魚沼市を見下ろす位置にある、長大でなだらかな稜線を引く山です。巻機と言うこの不思議な名前は、かつてこの山が魚沼で盛んだった機織りの守護神として崇められていたことに由来しています。
紅葉にもえる上越国境の山へと、遠路はるばる忙しない日帰り登山をしてきました。
2018年10月28日に旅す。
今回は新潟県は魚沼にある名峰、巻機山へと登って来ました。
巻機山は、作家深田久弥が選んだ日本百名山の一座ではありますが、その中にあってはどちらかと言うとマイナーな方に属しているかと思います。
割と近くに谷川岳と言う登山界における大スタアが居るため、この山が地味な存在と見なされがちなのもまあ致し方がないところではあります。名前が難読だと言うのもまた、この山の知名度を下げることに一役買っている感があります。
そんなあまり名の知れていない巻機山ですが、この山の特徴はなんと言っても、豪雪地帯ゆえの豊富な雪解け水が生み出す幾重もの美しい沢です。9月中旬まで雪渓が残ることもあると言う巻機山の沢は、沢登り愛好家たちの間では非常に人気があります。
草原状の山頂部には、小規模ながら池塘が点在しています。沢に池塘と、無雪期の巻機山はまさに水の山であると言えます。初夏には多くの高山植物が花を咲かせ、秋になれば見事な草紅葉の平原が出現します。
そのなだらかな山容とは裏腹に、巻機山は決して易しい山ではありません。この山はとにかく遠い。登山口へ行くまでも遠いですが、さらには登山口からも遠い場所にあります。
今回はそんな遠すぎた山に、忙しない日帰り弾丸登山を敢行します。
コース
巻機山の登山道の中ではもっとも安心安全な、尾根筋の井戸尾根コースを往復します。標準コースタイム8時間55分の行程となります。
1.巻機山登山 アプローチ編 南魚沼市最奥の集落、清水を目指す
巻機山は上越国境地帯に位置する山ではありますが、アプローチできるのは新潟県側からのみとなります。非常に遠いものの、首都圏発でも公共交通機関を利用した日帰り登山がギリギリ可能です。という事で、具体的にその方法を見ていきます。
その後ダイヤ改正により、東京始発の新幹線とは繋がらなくなってしまいました。残念!
5時55分 JR東京駅
まずは上越新幹線の始発電車に乗り込み、越後湯沢駅へと向かいます。始発に乗らないと、その後の乗り継ぎがつながりません。
7時25分 越後湯沢に到着しました。
これほどの短時間で新潟県へ行くことが出来るのも、すべては田中角栄先生の地元への露骨な利益誘導尽力と人柄による賜物です。
お次は在来線の上越線に乗り換えですが、少し間が開きます。8時2分発の長岡行きに乗車します。この先の乗り継ぎは慌ただしいので、トイレや朝食などはここで済ませておくと良いでしょう。
長閑な田園地帯を20分ほど走り、8時23分に六日町駅に到着しました。
この次に乗車する清水行きのバスは、8時25分の発車です。乗り換え時間は2分しかありません。悠長にホームの写真など撮っている暇はありません。素早く移動してください。
バスターミナルがあるのは東口です。階段を降りた正面にあります。
始めて行く人にとって、バス乗り場がどこにあるのか言うのは結構重要な情報だと思うのですが、運行会社の公式サイトを見ても載っていないことが多いんですよね。
今回は予めストリートビューで駅周辺の様子を下見しておいたので、スムーズに乗り場にたどり着くことができました。まさにグーグル様様。便利な世の中になったものです。
インターネットがなかった時代の登山者というのは、登山口までのアプローチをどうやって下調べしていたのでしょうか。
バスは安定の貸し切り運行です。電車とバスで巻機山に登ろうという人間は、圧倒的なマイノリティであることが窺えます。
恐らく平日であれば、通勤通学の利用者がいるのでしょう。それにしても、他人事ながら南越後観光バスの経営状態を心配してしまいます。
このまま休日の利用者が全くいない状態が続けば、この路線が平日のみの運行となってしまう可能性は十分に考えられます。公共交通機関頼みのハイカーにとって、それは由々しき事態です。
乗って残そう公共交通!
私は日本バス協会の回し者ではありません。
8時55分 清水バス停に到着しました。
ここまでの運賃は470円でした。スイカ・パスモには対応していません。小銭を用意しましょう。
バスから降りるなり、目指すマッキーが目の間にドンと立ちはだかります。マッキーと言うアダ名は今付けました。
清水からの標高差はおよそ1,400メートルほどあります。なかなか厳しい登山になりそうです。
2.紅葉に染まる林道を登り、登山口の桜坂駐車場へ
手早く身支度を整えて、9時ちょうどに登山を開始します。まずは舗装道路を道なりにそって進みます。
清水集落は、今まさに紅葉最盛期と言ったところです。集落を囲む山の斜面が、美しいき錦模様に覆われていました。
麓がこれだけ紅葉しているという事は、山の上の方ではもう紅葉は終わってしまっていそうですね。
緩い傾斜の道が続きます。車でお越しの人は、清水より標高が130メートルほど高い場所にある桜坂駐車場まで入れます。
朝日を浴びた紅葉が美しい。紅葉と言うのは青空に映えてこそナンボだとあらためて思わされる光景です。
赤いものより黄色の葉が多く目につきます。これはこれで綺麗ではありますが、やはり紅葉の王道は赤い葉です。
ちなみに、今見えてるこの頂上は実は巻機山本体ではなく、その名もニセ巻機山と言う前衛峰です。本物のマッキーは、ニセマッキーの裏に隠れていて、ここからでは見えません。
このまるで稲村岩のような見た目をしたこの岩は、天狗岩と言います。右後方の尖ったピークは割引山(われめきやま)(1,930m)です。
9時30分 桜坂駐車場まで登ってきました。
満車とまではいかないものの、結構な数の車が駐まっていました。やはり巻機山登山は、車でのアプローチが一般的なのか。
ちなみにこの駐車場は有料です。料金は500円とのこと。
駐車場の料金所で巻機山の山バッジが買えます。ここでしか手に入らないレアものです。バッジコレクターの方は忘れずに立ち寄りましょう。お値段は400円です。
山腹の紅葉が良い感じです。まさに燃えるような鮮やかなオレンジをしています。最高じゃないか。
駐車場に登山届の投函ポストあり。用紙と筆記用具も備え付けられています。
沢沿いコースはやめておけと言わんばかりに、警告の看板が多数掲げられていました。
巻機山と言えば有名なのは沢登りコースですが、当然ながら沢沿いコースには様々なリスクが存在します。防災に責任をもつ行政の人間からすれば、なるべく歩いては欲しくないのでしょうな。
この手の熊への注意喚起を目的とした看板は、設置した自治体によって意匠が異なり、見ていて飽きません。南魚沼市のものはリアル路線ですね。
ヌクビ沢コースには大変興味のある所ですが、なにせ私は巻機山初心者なので、初心者らしく安心安全な井戸尾根コースへと向かいます。
3.遠い遠いニセ巻機山までの道のり
豪雪地帯の山にありがちな、河原のような丸い石が散乱した道です。雪解けの季節には、実際に水の通り道になって水浸しになるのでしょう。
頭上を覆う木々の黄葉がすばらしい。まさに金色に染まる登山道です。
黄葉の美しさは、陽の光に照らされてこそものですね。薄暗い曇り空の下では、ただの枯れかけた葉と化してしまう事でしょう。
赤いものもあるにはありますが、黄色のものが圧倒的に多いです。
恐らくは雪の重みに屈したのであろう4合目の標識が、無残な姿を晒していました。
この雪の重み負けて横向きに伸びている木もまた、豪雪地帯の山ならではの光景です。この辺りはを歩くときは頭上注意です。
徐々に傾斜がきつくなってきました。ジグザグと大きくつづら折りの付いた道を黙々と登ります。
ほどなく頭上に空が見えて来ました。絶景の予感に期待が膨らみます。
10時30分 五合目に到着しました。
どこを1合目としたうえでの五合かは知りませんが、登山開始から1時間30分での到着です。
「もう半分か、楽勝じゃん」と思ってしまうかもしれませんが、それは罠です。ここで油断してしまった登山者は、この後に続く長ーい道のりで、心を根元からボッキリとへし折られてしまうことになるでしょう。
この時点ではまだ、全行程の3分1にも達していません。
目の前に米子沢の刻んだ大きな谷が広がります。なお米子沢沿いには登山道は存在せず、沢屋さんにしか立ち入ることの出来ない一帯です。
背後に、上越のマッターホルンの異名を持つ大源太山(1,598m)の姿が見えました。遠目からでもひと際目立つシルエットをしておりますね。
五合目を超えたところで紅葉の季節は終わり、枯れ葉が目立つ殺風景に変わりました。紅葉が見ごろを迎えている標高の厚みと言うのは、意外と小さいものです。
6合目までしばしの間、傾斜が緩めの道となります。地味に距離があるので、足早に登って行きます。
11時5分 6合目に到着しました。
体感的には、ここまで来てようやく半分くらいと言った所でしょうか。とにかく登っても登っても、なかなか山頂が近づいてこない印象がする山です。
頭上に立ちはだかるニセ巻機山。一見なだらかで気持ちよさそうな姿をしておりますが、辿り着くまでが大変です。
いつの間にか目線と同じくらいの高さになっていた天狗岩。南向きの一枚岩は、ロッククライミングの登攀の対象となっています。
眼下にはヌクビ沢が見えます。この沢沿いには、破線扱いではあるものの一般登山道が存在し、沢登りの装備がなくとも登ることが出来ます。遭難多発地帯であるようですが。。
こちらは黒岩峰と呼ばれる、割引山から続く尾根上にあるピークです。かつては登山道が存在しましたが、現在は廃道となっており藪漕ぎ必須です。
軽く腹ごしらえして、後半戦をスタートします。そう、まだまだ先は長いのです。
周囲に背の高い木がなくなって来ました。いよいよ森林限界が近い。
一気に視界が晴れました。歩いていて最高に気持ちのよさそうな稜線ですが、実はもうすでに結構バテバテです。
ニセ巻機山が相変わらずの存在感で佇んでいます。これだけ立派な見た目をしているんだから、もうこれが本当の巻機山だという事にしても良いのではないでしょうか。
ここで7合目です。5合目を過ぎて以降は、1号進むのにだいたい35~40分ほどかかっております。やはりあの5合目の位置はおかしい。
森林限界を超えた事により、背後の視界が開けます。こちらは谷川連峰へと続く上越国境地帯の山々。
右へ少し視線をずらすと、信越国境の山並みも見えます。苗場山などがあるはずですが、雲が出て来ていて良くわかりません。
7合目を超えると、再び傾斜が増してきて急登が始まります。井戸尾根コースの中で一番きついのは、この辺りだと思います。
振り帰ると、谷底にあるスタート地点の清水集落が見えました。登り一辺倒であったことが良くわかるかと思います。それにしても、中腹付近が良い色に紅葉していますねえ。
登山者の土足によって道が抉られてしまった結果、地層の構造が剥き出しの状態になっていました。
本来の土壌の上に、分厚い泥炭(でいたん)層があるのが良くわかります。泥炭層は、土中の微生物が生存できないような寒冷な場所に、枯草が堆積することによって出来ます。
保水性が高いのが特徴で、池塘の点在する高層湿原帯がある山には、必ずこの泥炭層が存在します。
突如として出現する階段地獄。泥炭層の土壌を保護するために整備されているのでしょう。
12時15分に八合目を通過します。
何故かここだけやたら立派な標識が立っていました。階段を整備するついでに建てときました感がしますな。
浸食を防ぐための土留め施された急斜面を登って行きます。ここだけを見ると、なんだかとても丹沢っぽい雰囲気を醸し出しております。。
上越国境の稜線の高さを越えたことにより、関東地方の山々が視界に入ります。
この大きなすそ野を引く立派な山は、難読な山名であること知られる上州の名峰、武尊山(ほたかやま)(2,158m)です。左奥には、同じく難読な皇海山(すかいさん)(2,144m)の姿も見えます。
ついに偽物の裏に隠れていたマッキー本体が姿を現しました。どこが頂上なのかわからないような、のっぺりとしたシルエットをしています。
12時30分 9合目ニセ巻機山に到着です。
ニセ巻機と言う名前は、通称ではなくオフィシャルな名前だったんですね。。たまたま目の前にあるだけで偽物呼ばわりされるとは、不遇すぎますな。
私は事前に偽物があると言うことを知っていたため特に何とも思いませんでしたが、ここが山頂だと思い込んで登っていた人にとっては、心をへし折られる場所であるようですね。
全然半分ではない場所にある5号目と言い、巻機山には登る者の心をへし折る罠が満載です。
偽物扱いに甘んじているとは言えど、ニセ巻機山からの眺望は極めて良好です。こちらは尾瀬の名峰、至仏山(2,228m)。新潟側から見たのは初めてなので、何だかとても新鮮です。
右奥に頭一つ飛び出しているのは、関東地方最高峰の肩書を持つ日光白根山(2,578m)です。
こちらは同じく尾瀬の名峰、燧ヶ岳(2,356m)です。特徴的なシルエットなので山座同定は容易です。
4.巻機山登山 登頂編 山頂部に広がる草原と池塘
鞍部に向けて一度下ります。何気にスタートして以来初めてとなる下り坂です。ニセ巻機山までは、ずっと登り一辺倒でしたからね。
地図を見ると、この鞍部に水場のアイコンがあります。この沢がどうやらその水場のようですね。泥炭層の保水力のおかげか、雪渓が無くなって久しい晩秋であっても、水は枯れていません。
巻機山に有人の営業小屋は存在しません。一泊するのであれば選択肢はここだけです。食事と寝具は自ら担ぎ上げる必要があります。
山頂に向かって最後の上りです。疲れた体に鞭打ってラストスパートをかけます。
付近には小規模ながら池塘が点在しています。初夏の花のシーズンに訪れれば、きっと素晴らしい光景に出会うことが出来ることでしょう。
池塘が増水したのか木道が陥没したのかどちらかは知りませんが、足元が水浸し状態でした。
最後の最後でこの急坂。まったく巻機山と言うやつは、その優美なる見た目とは裏腹に容易には登らせてくれませんな。
13時 巻機山に登頂しました。
スタートしてから4時間ちょうどでの到着です。登り一辺倒のなかなか厳しい道のりでありました。
山頂の様子
そこそこ広くベンチもあります。山頂標識が立っているものの、実はここ最高地点ではありません。左奥に見えているのが本当の頂上です。
ニセ巻機山に続いて、本物にまでニセの山頂標識が立っているとは、まったく油断も隙もありはしません。
北側には、越後三山の山並みが目の前に見えるはずなのですが、この通り雲が掛かっていて全然ダメでした。
お隣の牛ヶ岳まで、なだらかな稜線がずっと続いています。
実に良いですねぇ。個人的にはアルペン的な岩々しい稜線より、こういう何も考えずに歩けそうな放牧的な稜線の方がずっと好みです。
余裕があれば牛ヶ岳まで行こうかとも思っていましたが、登りで苦戦したこともあってちょっと時間が押してしまいました。牛ヶ岳までは行かず、その手前の最高地点だけを踏みに行きます。
巻機山本体から見たニセ巻機山です。視界を遮られて、山頂からは麓の清水集落が見えません。確かに邪魔な位置にありますな。
このケルンのある場所が本当のマッキー山頂です。山頂標識があった場所からは徒歩5~6分ほどの距離です。
山頂であることを示すものは何もなく、一面の草原だけが広がっていました。
すっかりガスが湧いてきてしまって、展望は今一つの状態です。視界を遮るものは何もないので、晴れていれば360度の眺望が得られます。
ガスの切れ目から奥利根湖の姿が見えました。首都圏上水道の水瓶となっている人工のダム湖です。渇水期になるとよくニュースで貯水率何%と表示されているヤツです。
山頂はいつの間にかすっかりガスに覆われてしまっていました。まるで私が登頂するまで待ってくれていたかのような、ギリギリのタイミングでした。
5.巻機山登山 下山編 日没の迫る下山路を足早に下る
帰りのバスは18時40分までないので、時間的にはまだまだ全然余裕があります。ですがそうは言っても、この季節には日没と言う有無を言わさぬ時間制限があるので、あまりのんびりとしているわけにもゆきません。
下ったあとは当然登り返しです。もう登りはお腹いっぱいなのですが。
関東の方が雲もすくなく良いお天気であるようです。太平洋側と日本海側との気候がせめぎ合うここ上越国境は、お天気の気難しい場所で、なかなかスカッと快晴にはなりません。
ニセ巻機山を超えると、後はもう登り返し一切なし無しの下り一辺倒です。気合を入れて一気に下ることにしましょう。
ゴール地点のバス停もこの通り、上から見えております。眩暈を起こしそうになるこの高度感。遠いなぁ。
清水峠へと続く上越国境の稜線。繋げて歩くこともできるようですが、途中に小屋が一切ない上に幕営禁止なので、事実上トレイルランナー以外はお断りなルートです。
傾いてきた西日に照らされて、黒岩峰の紅葉が真っ赤に輝いて見えました。
七合目を過ぎると好展望タイムは終了です。再び樹林帯の中へと戻って行きます。
やけにバタバタとうるさい音がすると思ったら、リコプターが谷の中へ侵入してきていました。誰かがヌクビ沢で遭難したのでしょうか。
これから救難活動が始まるのかと、野次馬根性全開で固唾をのんで見守っていたところ、特に何もせずにそのまま頭上を飛び超して行ってしまいました。
立ち往生している人の姿なども見当たりません。一体なんだったのでしょうか。訓練飛行??
15時20分 五合目まで下って来ました。
このペースであれば、日没ゲームセットとなる前に清水までたどり着けそうです。初めて歩く山でヘッドランプ下山と言うのは、なんとしても避けたいですからね。
五合目まで下ってきたことにより、再び周囲の光景が紅葉に包まれます。陽の光が失われてしまったことにより、ビジュアル的にはイマイチです。
その後も快調に下り、割とあっけなく登山口まで戻って来ました。
行きにほぼ満車だった駐車場も、この時間になるとすっかり閑散としていました。
舗装道路をノタノタと下って清水バス停まで戻ります。今にして思うと、紅葉がピークだったのは駐車場付近だったかもしれません。
16時30分 清水バス停まで戻って来ました。無事に下山完了です。
振り返ると、マッキーはすっかりガスに覆われていました。朝は雲一つない快晴であったのに、山の天気と言うのは崩れるときはあっという間です。
さて、今日はここまで予定していた行程を極めて順調に消化することが出来ました。しかしながら、実は公共交通機関を利用して巻機山に日帰り登山する場合における最大の問題点は、下山後にあります。
先ほども一度触れましたが、清水発のバスは18時40分までありません。ちなみに、その一つ前の便は13時45分発であり、選択肢はもともと一つしか用意されていません。
事前のオオツキ調べによれば、清水集落に日帰り入浴可能な施設やお食事処などの時間をつぶせる商業施設は一つも存在しません。最終バスが発車するまでの2時間10分を、ただ待つしかない訳です。でも一体どこで?
ここで待ちます。と言うか、ここしかありません。
「ハハハハハ、冗談でしょう?」と思われるかもしれませんが、冗談ではありません。大マジです。
17時を過ぎると、もう辺りは真っ暗です。雲が出てきているためか、空には星一つ見えません。なぜが人の膝の上に必死に登ろうとするゴマダラカミキリと戯れつつ、ベンチに座ってただ時間がたつのを持ちます。
秋も深まった10月下旬ともなれば、陽が沈むと一挙に気温が下がります。シンシンと深まる寒さに、思わずツェルトを引っ張り出して包まりました。その姿は傍から見れば、完全に遭難者そのものであったことでしょう。
特に何かトラブルがあったわけでもないのに、なぜかトイレの前のベンチでビバークを余儀なくされている。今回の登山計画には、なにか根本的な間違いがあったように思えてなりません。やはり巻機山は日帰りで登るべき山ではなかったのか。
18時30分 ようやくバスが現れました。
バス待ちしているのは当然私一人でだけで、帰りも安定の貸し切り運行です。行きも帰りも私一人のためにすまんのう。
ちなみにこの時間帯の上越線は1時間に一本しか走っておらず、バスとの接続などは一切考えられておりません。六日町駅でまた40分近く待ちぼうけを食らいつつ、帰宅の途につきました。
忙しなき上越国境地帯への日帰り登山はこれにて終了です。同じく上越国境地帯にある谷川岳があれほど人気なのは、景観の素晴らしさからだけではなく、交通アクセスが良いからと言う理由もあるのだろうなあと思わされた山行きでありました。
地味かつ遠い巻機山でありますが、山そのものは大変素晴らしいものでした。一面が真っ赤に染まる紅葉は圧巻で、この山のベストシーズンは間違いなく秋であると思います。
そうそう容易に行ける場所ではありませんが、苦労に見合うだけの魅力があります。公共交通機関で行ってみようと思うもの好きな方は、バス待ちビバークに耐えるだけの防寒と時間つぶし手段の用意をお忘れなく。。
<コースタイム>
清水BS(9:00)-桜坂駐車場(9:30)-五合目(10:30)-六合目(11:05)-七合目(11:45)-八合目(12:15)-ニセ巻機山(12:30)-巻機山(13:00~13:30)-ニセ巻機山(13:55)-五合目(15:20)-桜坂駐車場(16:00)-清水BS(16:30)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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