両神山 秩父北部に屹立する古の信仰の山

長沢背稜から見た両神山
埼玉県秩父市と小鹿野町に跨る両神山(りょうかみさん)に登りました。
古くから山岳信仰の山として知られ、いかにも修験者が好みそうな岩々しい山容が特徴の山です。これぞ修験の山と言った鎖場てんこ盛りのアスレチックなルートも存在しますが、今回は両神山初心者らしく(?)最も一般的かつ危険も少ないとされる、日向大谷(ひなたおおや)ルートを歩いて来ました。

2015年5月4日に旅す。

その山は鉄道末端駅から遠く離れた地に存在する。

両神山は古くから修験の山として名高い存在です。そのゴジラの背ビレのような異様なシルエットは、秩父地方の山を歩ている際に非常に目を引く存在です。
武甲山から見た両神山

修験の山らしく、道中には岩場やクサリ場が多数存在します。ルートによっては非常に険しく危険な場所もありますが、両神神社の表参道にあたる日向大谷口からのルートを歩く分には、そこまで極端に難しい山ではありません。
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作家深田久弥が選んだ日本百名山にも選ばれている一座であることから、交通困難な僻地にあるにもかかわらず、登山者に人気の高い山です。

私のような、都内在住かつ公共交通機関のみを利用して登山をする者にとって、両神山は日帰り可能圏内ギリギリの場所にある山です。

最寄駅と言えるのは西武秩父駅かもしくは秩父鉄道の三峰口駅ですが、そこから日向大谷口までは小鹿野町営バスを乗り継き、おおよそ1時間半ほどを要します。
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京王線沿線在住の私の場合、現地までのアクセスルートはこんな感じです。

電車:
自宅最寄駅(京王線)-分倍河原(JR南武線)-立川(JR青梅線)-拝島(JR八高線)-東飯能(西武池袋線)-西武秩父

バス:
西武秩父から小鹿野町営バス薬師の湯行きに乗車し両神庁舎前で下車。両神庁舎前から小鹿野町営バス日向大谷行きに乗車し終点の日向大谷口で下車。

登山口に降り立つまでに、全行程で4時間15分ほど掛かります。うーん、遠いなぁ

コース
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日向大谷口から最高地点の剣ヶ峰を往復します。公共交通機関を利用した両神山登山としては、最も一般的な行程です。

1.秩父の山深くにある小鹿野の秘境、日向大谷

9時50分 日向大谷口(ひなたおおやぐち)
さて、場面はいきなり登山口へとワープします。それは単に、ここまでずとカメラがザックの雨蓋内に収まっていたからです。よって今回は、3分クッキング方式でお送りいたします。
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自宅を出発してからここまで来るのに、既に4時間半以上が経過しています。バスが通っているだけでもありがたいような、山奥の谷を上り詰めた場所です。

なにはともあれ、まずは帰りのバス時刻をチェックします。最終バスの18時37分の便では、今日中に自宅までたどり着くことができません。よって、リミットは17時20分のバスになります。
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登山口より日向大谷を見下ろしたところです。こんなところまでよくもまあ道を通したと、感心したくなる場所です。
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眼下に見ている建物は、登山口に立つ両神山荘です。行動時間的に日帰り登山に不安がある人は、ここに前泊するのが良いと思います。

簡単に身支度を整えて、10時ちょうどに登山開始を開始します。登山開始としてはいささか遅い時間ですが、公共交通機関頼みの身としては致し方ありません。
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2.涼し気な沢沿いを行く、大滝小屋までの道程

信仰の山らしく、登山道に入ってすぐに鳥居が出現しました。一礼して進みます。
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お地蔵様・・・ではなくて観音様かな。なにぶん宗教には疎くて、違いが良くわかりませぬ。
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早速岩場が登場しましたが、この程度ならまだまだ楽勝です。
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沢沿いの道がしばらく続きます。水辺はひんやりと涼しく、歩いていて気持ちがいい道です。
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この付近の道にはまだ険しさはなく、緩やかに高度を上げて行きます。修験の山が牙をむくのはまだ先のことです。
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新緑の森が綺麗です。紅葉シーズンも悪くはないだろうと思いますが、両神山のベストシーズンと言えるのは、ちょうど今くらいの新緑の頃なのではないでしょうか。
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道端に咲く可憐な花。これはミヤマハコベかな。
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これはたぶんタカネビランジ。お高くとまったいけ好かない花なのでしょうか。
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これは何でしょう。特長がなさすぎて良くわかりません。
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これはヤマエンゴサクかな。
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これはおそらくヒイラギソウです。野生のものは極めて珍しい、絶滅危惧種の花です。
両神山のヒイラギソウ
ちなみに、私に花の知識は全くと言ってよいほどありません。ここに記した名前はすべて、帰宅後にネットで調べたものです。

11時25分 弘法の井戸と呼ばれる水場まで登ってきました。
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なんでも、弘法大師こと空海さんがが休憩中に杖で地面を突いたらあら不思議、水が湧き出てきたんだそうです。福島の磐梯山でも同じような謂れの水場を見たような?

弘法大師さんは、日本の津々浦々で地面を突いて歩いたのでしょうか。

水場を過ぎてからほどなく、清滝小屋が見えてきました。
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11時35分 清滝小屋に到着しました。ここは以前は営業小屋だったそうですが、現在は廃業し避難小屋として開放されています。
両神山の清滝小屋
どうやら学生の団体が泊っているらしく、非常に賑やかでした。

小屋の裏には名前の由来にもなった滝があります。ルートから少し外れますが、せっかくなので見に行きます。
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これが清滝です。・・・って水が流れてないじゃないか!季節によってはちゃんと水流があったりするのでしょうか。
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岩に囲まれているため音が大変よく反響するので、ヨーデルの練習でもしてみてはいかがでしょうか。焼肉バイキングで食べ放題ヨレイヒ~♪

3.修験の山の山中にひっそりと佇む、両神神社の奥宮

気を取り直して登山再開です。尾根筋に乗ってからは、ようやく修験の山らしい険しい道になってきました。
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ここまで登って来て、始めて山頂らしき場所が視界に入りました。遠目からも非常に目立つ、恐竜の背ビレのような岩の連なりです。
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痩せ尾根の道が続きます。そして先ほどより、遠くからなにやら鼓を打つような音が断続的に聞こえてきます。
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後で知ったのですが、この音はツツドリというカッコウの仲間の鳥の鳴き声らしい。「ポンポン、ポンポン、ポンポン」と言う音がずっと聞こえていました。

クサリ場が現れました。ちょうど下山して来る人が多い時間帯であったため、すれ違い渋滞が発生していました。
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クサリ場の様子です。根っこを手がかりに出来るので、別に鎖が無くても登れます。クサリ要らない場ですな。
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ここもかつてはクサリ場だったのかもしれませんが、今では手すり付きの階段が完備されていました。
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人気の百名山とあって、登山道は大変良く整備されています。むしろ整備され過ぎているというべきか。修験の山らしい険路を求めてやってきた人には、少々拍子抜けするかもしれません。

12時30分 両神神社の奥宮に到着しました。麓の里宮は日向大谷口にあったらしいのですが、そういえばお参りもせずに素通りしてきてしまいましたな。
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神社の中は荒れ気味です。おみくじと書かれた錆びた金属の容器が置いてあるあたり、過去には有人の神社だったことがあるのでしょうかね。
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これは狛犬ならぬ狛狼です。狼の狛犬は秩父地方では多く見られます。
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4.両神山登山 登頂編 鋭く屹立する信仰の山の頂へ

奥宮からしばらくは穏やかな道が続きます。これは来る嵐の前の静けさと言ったところです。
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山頂部が近づいて来ました。いよいよ、あのギザギザした一帯に足を踏み入れて行きます。
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この辺りにはアカヤシオツツジが沢山咲いていました。すでに見頃は過ぎており、散り始めていました。
両神山のアカヤシオ

両神山はチャートと呼ばれる堆積岩の一種でできた山です。チャートは非常に堅固な岩盤で風雨による浸食の影響を受けにくく、このように鋭く屹立した山容が形成されます。
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流石に先ほどの岸壁を直登は出来ないと見えて、登山道は岩壁をトラバースして迂回しつつ続いています。
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再びクサリ場です。足を乗せるステップがしっかりしているので、見た目ほど難しくはありません。
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山頂直下最後の登りです。木製の足場が組まれていましたが、逆にこれが無かったら、登るのは相当難しそうな岩場です。
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13時 両神山に登頂しました。クサリ場の渋滞に巻き込まれたこともあってか、思いのほか時間が掛かりました。
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山頂の様子
岩だらけの狭い空間です。人気の百名山らしく大勢の人が詰めかけてくるため、人で溢れそうになっていました。
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この岩の上が本当の最高地点のようですな。登ってはみませんでしたが。。
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残念ながら、山頂はガスとも雲と言えない靄のようなもに覆われていて、展望は全く望めません。周囲には視界を遮るものが何もないので、晴れていればさぞや絶景だろうと思われます。
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こちらは北西の八丁尾根方面の光景です。こちら側から登る八丁尾根コースは、修験の山にふさわしいエクストリームなルートであるそうですな。
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八丁尾根コースも是非とも歩いてみたいところなのですが、公共交通機関によるアクセスの手段がそもそも存在しないのが悩みどころです。

お金にものを言わせて、タクシーでアプローチするしか手段はありません。

狭い山頂に続々と人が上ってくるので、あんまりのんびりとはしていられません。早々と撤収を開始します。
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5.養老の滝でに寄り道しつつ、日向大谷へと舞い戻る

ほんの一瞬ガスが晴れて、両神山の岩々しい稜線が見えました。笑ってしまう位にギザギザしておりますな。
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クサリ場は下りのほうが難しいのは山の常識です。と言ってもまあ、全般的に難易度は低めです。
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流石に人の姿が少なくなって来た道を、足早に下ります。
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小雨がパラ付いてきました。クサリ場よりも、こういうなんでもない斜面の方がズルズルと滑っておっかない。
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15時10分のバスには間に合いそうに無い時間になってしまったので、帰りは少しだけ寄り道をして滝を見に行きました。
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養老の滝です。落差40メートルと言うことなので奥多摩の百尋の滝とほぼ同じくらいですね。水量があまり無いせいかイマイチ迫力がありませんでした。

特に急ぐ理由も無いので、チンタラと歩いて16時20分に日向大谷口に帰還しました。バス停で一時間近くぼんやりと過ごし、17時20分のバスで長い長い帰宅の途につきました。
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両神山は危険な山だと聞いていたのですが、歩いてみた感想としては、そんなに身構える必要はありませんでした。日向大谷からのルートで関して言えば、さほどの危険はありません。三点支持の基本を理解してさえいれば、誰でも登ることは可能でしょう。
日向大谷の反対側から登る八丁尾根のルートは、修験の山にふさわしい大変スリリングなルートらしいのですが、残念ながらバスは通っておらず、私のような車も買えない貧乏人環境意識高い系ハイカーにはアクセス困難な場所です。まあ、タクシーを呼べばいいのでしょうけれど・・・
という事で、次回訪問は是非とも八丁尾根に挑戦してみたいところです。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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