西丹沢の主峰、檜洞丸(ひのきぼらまる)に登りました。
西丹沢エリアは大山や塔ノ岳を擁する東丹沢に比べ、訪れる人も疎らなマイナーな山域と見られがちです。
その西丹沢の盟主とも言うべき檜洞丸は、展望あり稜線あり(ついでに鎖場あり)のダイナミックな山行きを体験できる隠れた名峰です。
かつて秘境と呼ばれた深山を巡る、小さな冒険を楽しんで来ました。
2015年5月24日に旅す。
ここはかつて秘境と呼ばれた山。
これはなにも檜洞丸に限った話ではなく、西丹沢と呼ばれる一帯全域は、かつては立ち入ることそのものが困難な山深い場所でした。
袂にまで路線バスが乗り入れ、四方からの登山道が山頂へと通じている今日の檜洞丸に、もはや秘境感などはかけらほどもありません。
それでも、一年を通じて数多くの登山者で賑わう東丹沢に比べれば、西丹沢にはまだ「深山の赴き」とでも言うべきものが僅かに残されてます。
西丹沢エリアを今なお人の疎らな深山たらしめている理由のひとつが、このエリアのアクセスの悪さです。小田急線の新松田駅から、西丹沢の表玄関とでも言うべき西丹沢自然教室まで、バスで1時間以上かかります。
路線バスはバイパス道路を出たり入ったりしたり、丹沢湖畔を行ったり来たりしたりと、いろいろ遠回りします。3人以上のパーティーであれば、タクシーを呼んだほうが良いかもしれません。
そんな理由から、この山は基本的に人影疎らな静かな場所です。ルート上には、渡渉箇所や鎖場などがあり、人の少なさとも相成って、ちょっとした冒険心をくすぐるコースとなっています。
それでは、静かなる秘峰を巡る小冒険へと繰り出してみましょう。
コース
西丹沢自然教室よりツツジ新道を通って檜洞丸に登頂。下山は犬越路(いぬこえじ)を経由して西丹沢自然教室に戻る周回ルートです。
9時30分 西丹沢自然教室
長くてヤだなと思っていたバスでの移動ですが、新松田駅を出た直後から記憶が寸断し、気付くと緑の屋根が見えていました。私のいつでもどこでも眠れると言う特技は、この日も健在でした。
しばらく舗装道路いに進みます。沿道にはキャンプ場が沢山ありました。
西丹沢の特徴のひとつとして、とにかく水か綺麗です。夏に訪れればきっと水遊びが捗る事でしょう。
ここが入り口です。道ではなくただの沢の様にも見えますが、奥へ進むとちゃんと道があります。
しばらくすると大きな川原に出ました。ゴーラ沢出合いと呼ばれる場所です。
その名の通り複数の沢の出合い(合流地点)になっている場所です。橋は架かっていないので、適当に浅い場所を見繕って渡りましょう。
ツツジ新道を登ります。初っ端から容赦の無い急登が始まります。
ブナ林の中を進みます。眺望こそありませんが、気持ちの良い道です。
こんな鉄製の梯子があったり、意外と険しい道です。稜線に出るまでは緩むことのない急登が続きます。
ツツジ新道の名の通り、道の脇にはツツジが沢山生えています。しかしシーズン的に少し遅かったらしく、みな一様に萎れていました。
新緑の緑と萎れたツツジ。この山のベストなシーズンはゴールデンウィークを少し過ぎたくらいの頃でしょうかね。まあ、少しシーズンから外れたおかげで空いている訳ではありますが。
ある程度登ってくると徐々に展望が開けてきます。振り返るとこんな絶景が広がっていました。
稜線まで登ってきたたところで、同角山稜方面からの道と合流します。ここまで来れば、急登はいったん終了です。
稜線に出たところで、木道が出現しました。実に丹沢らしい風景と言えるでしょう。
丹沢名物の木道地獄は、既にこの山部深き西丹沢エリアにまで及んでいたのか。
12時10分 檜洞丸に登頂しました。ゴーラ沢出合を出てからは、基本的にずっと登りっぱなした。ツツジ新道はなかなか侮れない防御力でした。
山頂の様子。
広々としていますが、樹木に遮られ眺望はイマイチです。犬超路方面に少し進むと展望があります。
富士山も見えますが、樹木に邪魔されるので山頂よりも途中の稜線からのほうが良く見えます。
山頂から少し下ったところに山小屋がります。青ヶ岳山荘です。
青ヶ岳といのは檜洞丸の別名です。個人的にはヒノキボラマルというなんとも不思議な響きの名前のほうが好きですが。
檜洞丸の山バッジが欲しかったのですが、ここで売られていたのは缶バッジでした。ガッカリ。
向かいには丹沢山塊の最高峰、蛭ヶ岳(1,673メートル)の雄姿が見えます。
直ぐそこのように見えているのは単にズームで撮影したからです。
こちらは塔ノ岳。同じくズームで撮影しました。山頂に見えている四角いものは尊仏山荘です。
下山は犬越路を経由します。なにやら脅し文句が書いてありますが、別に破線ルートなわけでもないから気にせず突入です。
ここからは展望の良い稜線歩きです。檜洞丸の真骨頂は、この犬超路ルートの尾根歩きにあると言えます。
ツツジ新道を往復してしまうのはあまりにも勿体ないので、是非ともこちらから下山することを強く推奨します。
なにやら乱雑な感じの道です。侵食が進んでいるのか、なりふり構わない土留めが施されています。
左手には富士山が一望できます。富士山はこの先稜線を歩いている間、ずっと傍らにあり続けます。
眼下には、行きに通ってきたゴーラ沢出合いの河原が見えました。眩暈を起こしすになるこの高度感。
振り返って見る、山頂直下の崩落地です。かなりザレておりますな。
実に気持ちの良い笹の稜線歩きです。西丹沢では現在、ブナの立ち枯れが減少が深刻な問題となっています。しかしそれにより眺めが良いと言う、何とも皮肉なことになっています。
入り口の脅迫めいた警告の割りには、穏やかで歩きやすい道が続きます。
ずっと左手に富士山が見えています。とはいってもこのころになるともう食傷気味になっています。
犬越路に近づいてきたところで道の雰囲気が一変しました。痩せ尾根の急勾配を一気に下ります。
クサリ場が現れました。大した高さではありませんが、それでも上から見下ろすと結構な高度感があります。
下りきってから振り返って見たところです。足場となる段差の幅が大き過ぎて、腕力に頼らざる負えない箇所が一部ありました。
続いてクサリ場その2です。こちらは足を乗せられるステップがしっかりとしており、簡単でした。
崩落地の脇を通過します。丹沢山地のと言うのは、地質的に見て非常に古い山なのだそうです。長年の侵食により、こうして至るところで崩落が進んでいます。
14時20分 犬越路に到着です。最高の眺望と程よい緊張感のある、とても楽しい稜線歩きでした。
地名の由来を説明する看板が設置されていました。犬を先頭に越えたから犬越路。そのまんまですね。
避難小屋の中を覗いて見ました。とても綺麗です。収容人数は5、6人と言ったところでしょうか。
今回の山行きでは檜洞丸を巡りぐるっと周回しましたが、途中ですれ違った人の数は10数人程度だったと記憶しています。
秘境とまでは行かなくとも、人影疎らな深山であることは間違えありません。避衆登山を洒落込みたい人にはオススメの山域と言えるでしょう。ただし、ツツジシーズンの最盛期になると、それなりに混みあいます。
本日歩いたルートのハイライトはなんとっても檜洞丸から犬越路にかけた稜線歩きです。
抜群の展望に加えちょっとしたスリルも味わえ、登山の魅力と言うものを凝縮したような良ルートでした。再び訪れる機会があれば今度は逆向きに辿ってみたいと思います。
<コースタイム>
西丹沢自然教室(9:30)-ゴーラ沢出会(10:15)-檜洞丸(12:10~12:40)-犬越路(14:20)-西丹沢自然教室(15:30)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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