二十六夜山 芭蕉が月を詠んだと言う隠れた名山

二十六夜山の山頂
山梨県都留市にある二十六夜山(にじゅうろくやさん)に登りました。
道志山塊という非常にマイナーなエリアにある山です。このとても印象的な名称は、かつてこの山で二十六夜待ちと呼ばれる月見の催し行われていたことに由来しています。決してアクセス良好とはいい難い場所に存在しますが、大変良好な富士展望を得られる隠れた名山です。
マイナーエリアゆえの、ほとんど人と出会わない静かな山行きを満喫して来ました。

2016年11月27日に旅す。

唐突ですが、道志山塊(どうしさんかい)をご存知でしょうか?
181216高川山_039道志山塊は丹沢山塊の北に位置する標高1,000メートル級の山群です。奥まった場所にある立地上、公共交通機関によるアクセスがあまり良くなく、登山の対象としてはマイナーなエリアに属します。

マイナーエリア故に歩く人の姿は極めて疎らで、どこまでも静寂な山域が広がっています。一人静かな休日を送りたいと思っている人にうってつけの場所と言えます。

本日はそんな道志山塊の中でもまだ比較的アクセスしやすい今倉山から、二十六夜山に至る尾根道を歩きます。
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季節外れの大雪が降った翌日の道志の山々は、白銀世界と化していました。思いがけず雪山登山となった一日の記録です。

コース
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道坂隋道バス停より今倉山、赤岩をへて二十六夜山に登頂。下山は北側へ下り芭蕉月待ちの湯を目指します。コースタイム4時間半ほどのお手軽なコースです。

1.二十六夜山 アプローチ編 道坂隧道バス停より道志山塊へと足を踏み入れる

8時6分 富士急線 都留市駅
中央本線、富士急線を乗り継いで都留市(つるし)駅へとやって来ました。この後に乗るバスの発車までは4分しかありません。トイレは事前に済ませておきましょう。
都留市駅

8時10分発の道坂隋道(どうざかずいどう)行きのバスに乗ります。この時間帯のバスは土日限定の観光路線で、12月~3月の期間は運休になります。この日は今シーズン最後の週末とあって車内は結構混んでいました。
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8時40分 終点の道坂隧道バス停に到着しました。東京では54年ぶりとなる11月の積雪をもたらした寒波は、ここ都留市においても猛威を振るったようです。あたりは一面雪景色でした。
道坂隧道バス停

手早く身支度を整えて、登山を開始します。登山道の取り付きはトンネルの脇にあります。
道坂隋道

本日は、人の少ないマイナーな山に行くと言うことで、腰に物騒なものをブラさげてきました。
UDAP 熊撃退スプレー
UDAP 熊撃退スプレー アメリカ森林警備隊採用品 幸いなことに、使用した事はありません。

登り始めて程なく、今倉山と御正体山の分岐地点である道坂峠に到着しました。これで道志山塊の主脈に乗ったことになります。この峠の下を先ほどの道坂トンネルが貫いており、トンネルを抜けた先は道志村です。
道坂峠

2.展望皆無の今倉山と、好展望地の赤岩

尾根の上は完全に雪山と化していました。まだ降りたての新雪で凍結はしていなかったので、アイゼンは不要でした。
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今倉山の山頂が見えて来ました。登山口からは最初から最後まで急勾配の登りが続きます。
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振り返ると、木の隙間から富士山が見えました。この先の赤岩まで進めば、もっと良く見えます。
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9時50分 今倉山に登頂しました。標高は1,470メートルあり、今日歩くコースの中ではここが最高地点となります。
今倉山の山頂

山頂の様子
今倉山山頂は樹林帯に囲まれており、展望はまったくありません。
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山梨百名山であることを主張する標識が立っていました。
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立ち止まっていると寒いので次へ向かいます。まずは一旦大きく下ります。
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日陰側の斜面は積雪が30センチくらいはありそうな感じです。ゲイターを履き忘れてきたこと後悔しました。雪が靴の中に進入してきてちべたい。
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もっふもふの新雪状態です。すでに、先行者のトレースが2名分ほどついていました。
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ここで前方に絶景の予感がする岩がありました。早速見てみましょう。
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でっかく富士山が出現しました。手前の山は左が御正体山(1,682m)右が杓子山(1,598m)です。
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富士山の山腹には、吉田ルートの九十九折れの登山道がクッキリと見えました。
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本日の目的地である二十六夜山も見えました。割と登ったり下りたりを繰り返しておりますね。
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絶景スポットの直下はこのコースで唯一の危険箇所といえないこともない岩場です。ドライな状態ならなんてことはないんでしょうけれど、雪で滑りやすくなっているため慎重に下ります。
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今倉山と次なるピーク赤岩との間にある鞍部へやってきました。道坂隧道バス停からここへ直接登って来れる、沢コースなるものもあるらしい。
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赤岩を目指して登り返します。山と高原地図には「展望良い」との記述があり期待が膨らみます。
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頭上が開けて陽当たりが良い場所は、雪解けが進んで地面が露出しつつありました。赤岩の山頂付近は、両側が切れ落ちている場所もあるので慎重に。
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確かにいかにも展望がよさそうな頂上が見えてきました。
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10時30分 赤岩山頂に到着しました。この赤岩からは、掛け値なしの360度のパノラマが広がります。
赤岩山頂

富士山再び。でっかい図体をした御正体山が少々邪魔ではあるものの、特筆すべき富士展望と言えるのではないでしょうか。
赤岩からみた富士山

西に目を向けると、御坂山地とその背後に南アルプスの山々が綺麗に並んで見えました。
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正面に見えるのが三ツ峠山(1,785m)。三ツ峠山とその上に沸いた雲のスキマにちょこっと見えているのは南アルプスの主峰北岳(3,192m)です。
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南アルプス南部の山々。左にあるのが赤石岳(3,120m)。中央の山は悪沢岳(3,141m)です。
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奥秩父の山の先には、八ヶ岳の姿も見えます。
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こちらはつい先ほど先ほ通って来た今倉山です。まあ、これと言った特徴は感じられない地味山ですかね。
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足元の下界は、低く垂れこめたガスに覆われていました。谷を挟んだ向かいに見えているのは位置的に、秀麗富嶽十二景の九鬼山(970m)でしょうか。
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そして眼下には、これから向かう二十六夜山の姿がありました。
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鉄板の構図、松と富士。ほぼ無名な存在のマイナーピークとは思えないような、素晴らしい眺望でありました。赤岩の実力はなかなか侮れませんぞ。
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3.二十六夜山 登頂編 幾多のアップダウンと林道を越えて尾根の先を目指す

今倉山から二十六夜山に至る縦走路上には、巻き道などと言う親切なものは一切ありません。途中にあるいくつもの小ピーク達はすべて正面突破です。というわけで、この後も登ったり降りたりを繰り返します。
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眺望皆無の尾根道が続きます。雪に完全に埋もれていて道が全く見えませんが、先行者のトレースは尾根を忠実に辿る様に真っすぐ続いていました。
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なにやら物騒な看板が出現しました。安全な場所って何処よ?
発破注意の看板

やがて正面に、大きく盛り上がったピークがあるのが見えて来ました。あれが二十六夜山の山頂のようです。
二十六夜山

ずっと尾根沿いに続いていた登山道が一旦途切れ、大きく回りこんで林道に出ます。
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どうやら、この林道の切通しを掘削するために発破をかけていた模様です。尾根沿いだった登山道がここで完全に寸断されています。
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ここまで来れば、二十六夜山はもう目の前です。
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林道から再び登山道に入ります。だいたい15分ほど登ればもう山頂です。
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11時45分 二十六夜山に登頂しました。ここからも真正面に富士山がドーンと見えるはずなのですが、残念ながら雲の中に隠れてしまいました。
二十六夜山の山頂
読み方はそのまんま「にじゅうろくやさん」です。二十六日目の月は、十六夜(いざよい)みたいなカッコイイ呼び名は与えてもらえなかったんですね。

この山頂ではかつて旧暦の7月26日に、二十六夜待ちと呼ばれるお月見が行われていました。月の出が一年で最も遅くなる時期であり、夜な夜な月が登ってくるの待ちながら飲んで食っての宴を繰り広げていたのだとか。

今日の感覚で言うところの、地域の納涼会イベントのようなものだったのでしょうかね。

Q.人はなぜ雪を見ると雪だるまを作りたがるのでしょうか?
A.そこに雪があるから。
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4.知る人ぞ知る秘湯、芭蕉月待ちの湯へ

さて、後は温泉に浸かって帰るだけです。ところが下山を開始して早々にトレースが無くなりました。先行者達は温泉にも行かずに、一体何処へ向かって下山したのでしょうか??
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所々に道標があるため特段迷うこともありません。ただ、落ち葉と新雪のコンビは大変凶悪なスリップ効果を生み出すようで、途中で2度もすっ転びました。
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下山途中に仙人水なる水場がありました。冬であっても涸れてはおらず、水量は豊富です。
二十六夜山の水場(仙人水)

誰がいつ置いたとも知れないバッチいコップでおいしく頂きました。
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ちなみにこのコップ、比喩的表現ではなく本当に汚いです。気になる人はマグカップを持参しましょう。

道中にあったお社です。これも月待ち信仰に関係してるものなのでしょうか。
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道はいつしか沢沿いのルートに。木橋が壊れており、代わりのルートも示さずに封鎖されていました。
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石伝い簡単に渡れる程度の沢なので、橋がなくとも特に問題はありません。
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13時10分 文明社会へ帰還しました。ここから舗装道路を10分ほど歩いて温泉に向かいます。
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アスファルトの路面上は、結構つるつるしておっかない状態でした。山中にいる時よりも、よほど神経を使いますねこれは。
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芭蕉月待ちの湯へ到着しました。都留市の市営の温泉施設のです。市外客の入浴料は710円也。
芭蕉月待ちの湯
泉質はアルカリ性で、かなり温めのお湯でした。マッタリする分にはよいのでしょうけれど、冷え切った体を温めるのには不適格かな。

たとえどんなに寒かろうと、温泉後のソフトクリームは正義です。せっかくフルーツ王国山梨に来ているので、ブドウ味をチョイスしました。
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温泉からコミュニティバスに乗り都留市駅へ帰還します。料金は乗車距離に関係なく定額200円で、パスモ・スイカが使えました。
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ちょうどいいタイミングで大月行きの電車に乗れました。
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しかし、スムーズだったのはここまででした。大月駅で「特急に乗りなさい運動」の直撃を受けました。しょうがないのでホームからぼんやりと岩殿山を眺めて過ごします。
大月駅のホームから見た岩殿山

※「特急に乗りなさい」運動とは
富士急行線沿線の住民が東京方面に出かける場合、大月駅でJR中央本線に乗り換えることになる(早朝の直通東京行き・中央特快は除く)。しかしJR東日本の策略により、特急に乗らないで八王子に行こうとする富士急行沿線市民は大月駅で最長禁固30分の刑に処せられる。一方で、特急料金を支払う者に対しては禁固5分と大幅な減刑となる。このJR東日本の巧みな手法によって、多くの人々が特急料金と引き換えに減刑を勝ち取っている。

アンサイクロぺディアより引用

30分後にやってきた10両編成のオレンジに乗りこみ、帰宅の途に付きました。
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静かなる道志の山と秘湯を巡る休日は、こうして満足の内に終了しました。
二十六夜山は知名度がほとんど無い極めてマイナーな山ですが、大展望があり温泉ありで埋もれさせておくには惜しいポテンシャルを持っています。特に赤岩からの眺めは必見です。コースタイムも手ごろで自信もってオススメできます。
ひとつ問題があるとすれば、この記事が公開される頃には、来年の春までもうバスの運行が無いことですかね。公共交通機関による訪問は季節限定となってしまいますが、小粒なとても良い山だと思います。

<コースタイム>
道坂隋道(8:40)-今倉山(9:45)-赤岩(10:30)-二十六夜山(11:45~12:00)-芭蕉月待ちの湯(13:10)

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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