毛無山 霊峰富士の向かいに屹立する天子山塊の最高峰

ふもとっぱらから見た毛無山とタカデッキ
山梨県身延町と静岡県富士宮市の境に跨る毛無山(けなしやま)に登りました。
富士山裾野の西側に南北に連なる天使山地に属している山です。朝霧高原を挟んで富士山と向かい合う位置に存在することから、視界を遮るもが何も無い富士の絶景が期待できる一座です。
今回は公共交通機関を利用した日帰り登山を計画しましたが、しかしこの毛無山、なかなか容易には登らせてくれない手ごわい山でした。

2016年11月12日に旅す。

今回の行き先は、霊峰富士山の西に連なる天子山地の最高峰、毛無山です。
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個人的に、非常に親近感を感じる名前の山です。

天子山地と言われても、地元の人でも無い限りは、イマイチピンと来ないでしょうか。地図で示すとここです。ちょうど山梨県と静岡県の県境に位置しています。
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富士裾野の朝霧高原の脇に連なっている山系です。鉄道の駅からは遠く離れた場所に位置し、公共交通機関によるアクセスは良好とは言えない一帯です。

その立地上、この山は最高の富士山の展望台として知られています。晴れていれば、富士山の巨大な姿を目の前に望むことが出来るでしょう。そう、晴れていればね!
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本日の計画
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朝霧グリーンパーク入口BSより毛無山に登頂。その後、尾根沿いに北に向けて縦走し本栖湖へと下山すると言う、大変欲深い縦走計画を立てました。コースタイムはおよそ10時間です。

公共交通機関を利用すると、始発で自宅を出発しても朝霧グリーンパーク入口BSに到着するのは10時過ぎになります。

本栖湖から出発する山梨方面のバスは17時25分がラストとなるため、それに乗るためにはコースタイムを2時間以上巻く必要があります。

かなり無謀な計画と言えますが、とにかくやれるだけやってみようと言うことで決行しました。

1.毛無山登山 アプローチ編 電車とバスを乗り継ぎ、遠路遥々ふもとっぱらへ

8時40分 富士急線の富士山駅へとやってまいりました。
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駅のホームからはすっかり冠雪した富士山が良く見えまました。なお、毛無山があるのはここから富士山を挟んだほぼ反対側となります。つまり、ここからまだまだ遠いという事です。
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4番バス乗り場で9時発の新富士駅行きのバスに乗ります。この路線は反時計回りに富士山の周囲をぐるっと回り込む路線です。
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車窓から精進湖と富士山の姿が良く見えました。観光地として開発し尽くされている河口湖や山中湖の周辺と違って、精進湖のある界隈は秘境感がバツグンです。
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10時15分 朝霧グリーンパーク入口に到着しました。登山開始時刻としては遅すぎる時間ですが、公共交通機関のみで移動するとなると、こればかりはいたしかたありません。
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バスの時刻表をチェックします。1日に5本しかバスはありません。
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帰りに使えそうなのは15時7分と19時7分の2本です。とは言っても、計画通り事が進めば、ここへ戻ってくることは無いはずです。

毛無山の登山口に向かいます。この通り、目的地が真正面に見えているので、道に迷うことはありません。
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バス停の名称となっている朝霧グリーンパークと言う施設がありました。営業はしていない模様。
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麓には巨大なオートキャンプ場がありました。車の無い私には縁の無い場所です。この界隈はふもとぱらと呼ばれています。富士山麓の原っぱという事ですね。直球のネーミングです。
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振り返るとそこには超巨大な富士山がそびええ立っています。この圧倒的な巨大さは、写真ではなかなか伝ることができません。視界からハミ出るくらい巨大です。
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身も蓋もないことを言ってしまうと、富士山を眺めたいだけならば別に、毛無山に登る必要は全くありません。

毛無山のすぐ下までやってきました。標高は1,964メートルあります。現在地の標高がおよそ900メートルなので頂上までの高度差はおよそ1,000メートルほど。地図の等高線を見る限りではかなりエグイ登りが想像されます。
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毛無山の属するこの山脈は天子山塊というのだそうです。由来は良く分かりませんが、またずいぶんと神々しいお名前をつけたものです。せなかーにぴったりラランラン♪
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案内図に聞き捨てならない重要な情報が記載されていました。曰く「雨ヶ岳、長者ヶ岳への縦走はコースに詳しい人を同行してください(熊笹が深い)」とのこと。
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雨ヶ岳、長者ヶ岳への縦走コースとは、まさに私が今日歩こうとしているルートです。・・・・まあいいっか。とりあえず現地を見てから考えよう。

登山口の周辺には見事な紅葉の光景が広がっていました。紅葉にはさほど期待していなかっただけに、見られたのはうれしい誤算です。
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見方をかえると、山の上のほうの紅葉はもう終わっているということでもありますがね。
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2.毛無山登山 登頂編 容赦のない急登一辺倒を乗り越え禿げ頭の頂へ

10時50分 登山口に到着しました。遅すぎる登山開始です。
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つり橋のように見えますが水道橋です。登山者は下の涸れ沢を直接渡ります。
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上り始めてすぐに地蔵峠との分岐点に到着します。今日は時間が無いので正面の直登ルートへ進みます。
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上り始めは、まるで奥多摩のような杉林です。
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一合目に到達しました。登山口からおよそ15分かかりました。果たしてこれは、良いペースだと言えるのか否か。
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一合目から少し先に進んだ所で、はさみ石なるものが出現しました。
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これのことでしょうか。幸い、挟まるほどには狭くはありません。
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続いて二合目に到着です。一合目から15分かかりました。この間隔がずっと続くのだとしたら、山頂までは2時間半ほど要することになります。
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お次のチェックポイントは不動の滝です。谷向を挟んだ向かいにあり、結構離れています。3段に分かれたなかなか立派な滝でした。落差は50メートルほどとのこと。
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地図で見たときから覚悟はしていましたが、登山道は登り一辺倒の真っ向勝負です。山頂まで緩むことのない急坂が続きます。
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三合目に到着しました。急登が一切緩むことなく続いています。もしかしなくても、最後までずっとこの調子なのでしょうか。結構キツイですよこれは。
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標高が上がってきたことにより、周囲の紅葉は終わり落葉が始まりつつありました。
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四合目に到達。ここまで一合登るのにぴったり15分ずつ掛かっています。
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ここで不意に周囲が開けた広場に出ました。おや?もう五合目でしょうか。
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残念ながらここは五合目ではなく、救助ヘリが遭難者を収容するためのスポットのようです。
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11時55分 五合目に到着しました。正午を目前に控えて、ようやく半分です。すでに急登に食傷気味です。
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黙々と登り続けます。六合目に到着しました。毛無山には「気付いたら1号すっ飛ばしてた」みたいな嬉しいサプライズは一切ありません。
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木の隙間から見える富士山に段々と雲が掛かってきました。この辺から少し焦り始める。
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七合目です。先の見えない急坂が尽きることなく続いています。なんと言うストイックな山なのでしょう。
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七合目まで来て、ようやく山頂が視界に入ってきました。
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八合目です。淡々と登っているように見えるかもしれませんが、すでに息絶え絶えであることを告白しておきます。。
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八合目から少し登ったところに、富士山展望台がありました。
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さあ気この先には遮るものひとつ無い富士の大絶景が・・・見えません。
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・・・・いやまあ、雲が登ってきているのは知っていたんですけどね・・・

九合目です。大展望の望みが断たれ、テンション駄々下がりのまま惰性で登ります。
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稜線にたどり着きました。ここまでくればあとはほぼ水平移動みたいなものです。
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北アルプス展望台を名乗る岩がありました。 とりあえずよじ登ってみます。
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南アルプス南部の山が見えます。展望台を名乗るにはちょっと力不足が否めません。あれ?ところでここは北アルプス展望台だったのでは?
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ちなみにこの岩、スペース的に定員は1名までです。先客が居たら下で待ちましょう。

山頂に向かって稜線上を移動します。言うほど禿げてはおらず、びっちりと樹木に覆われていて展望はありません。
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頂上が見えてきました。おや、結構な数の人が居ますね。実は意外と人気の山だったのでしょうか。
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13時 毛無山に登頂しました。いやはや、前評判通りのなかなかのキツさでしたよ。
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ここで颯爽と、毛無山山頂に立つ毛無し男、いざ推参。
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以降、ハゲという単語の使用は禁止します。

山梨百名山であることを主張する標識が立っていました。この場所は山梨県と静岡県の境界でもあります。
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さて、まあ無駄だとは思うけれど一応、富士山のビューポイントを確認しましょうかね。
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デスヨネー
まったく!富士山の展望が売りの毛無山から展望を取り上げたら、後に残るのはただのハゲだけじゃないか!

稜線まで雲が登って来ました。
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ガスと深い熊笹・・・・コースタイムを2時間以上巻こうとしている者からすれば最悪のコンデションと言えるでしょう。

すでにただのハゲと化し、すっかりやる気の無くなっていた私からすれば、撤退を決める口実としては十分すぎました。

計画変更です。来た道を引き返し、道の駅朝霧高原へ下山します。
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3.毛無山登山 下山編 縦走を断念し、道の駅朝霧高原へ下る

急登のあとに待っているものは急な下りです。当たり前の理屈ですが、足に来て何気に登りよりもツライ。
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憎たらしいことに、高度を下げるにつれ展望が回復してきました。毛無山の山頂付近だけが雲の中に入ってしまっている模様。
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15時30分に下山完了です。下りは割とあっという間でした。
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帰りのバスは19時まで無いので、急ぐ理由はもうありません。富士山麓の高原をのんびり散策します。
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牧場でしょうか。広々とした草原がいたるところに見えます。
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16時40分 道の駅朝霧高原に到着しました。
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バスが来るまでここで油を売っていたかったのですが、18時20分くらいに営業時間終了で追い出されました。

寒風吹きさらす真っ暗なバス停に40分も佇むことに。

真っ暗な富士山麓を延々とバスに運ばれ、20時10分に新富士駅に到着しました。
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この駅は、新幹線界の各駅停車である「こだま」しか停車しない駅のようです。

5分おき位のペースで「のぞみ」が轟音と共に通り過ぎていきます。
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物凄い運行本数です。リニアなどという得体の知れないものを作る気になるくらいに、JR東海が儲かって儲かって仕方ないことが大変よく分かる光景です。

それに比べて、我等がこだま号は30分に1本しか走ってはいない模様。

のぞみを何本も見送った後に、ようやくやってきたこだまに乗って帰宅です。
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毛無山は急登一辺倒のなかなかストイックな山でした。
公共交通機関を利用した場合の都内からアクセスは良好とは言いがたく、富士展望という餌が無ければ、おそらく訪れることはなかったろうと思います。
野心的な縦走計画から一転して撤退となりましたが、やはり大展望を堪能したければ雲が沸いてくる前の午前中のうちに山頂に到達することが望ましいかと思います。
公共交通機関だけで登ろうとするのであれば、前日に現地入りし、本栖湖界隈の宿に1泊する計画を立てると良いかもしれません。

<コースタイム>

朝霧グリーンパーク入口(10:30)-毛無山入口(10:50)-五合目(11:55)-毛無山(13:00~13:45)-五合目(14:30)-毛無山入口(15:30)-道の駅朝霧高原(16:40)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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