南アルプスの北岳(きただけ)に登りました。
その地味過ぎる名前が災いしてか、普段山登りなどしない人には知名度がほぼ皆無な山ですが、実は日本で2番目に高い山だったりします。(標高3,192メートル)
標高1,520メートル地点の広河原まで路線バスが乗り入れているため、南アルプスの中では比較的アクセスがし易く、人気の高い山です。
7月の3連休に満を持して向かった山でしたが、山頂では悪天候に泣かされました。
2015年7月19に旅す。
今回の行き先は、南アルプス北部にそびえる日本第二位の高峰、北岳です。日本百名山の作者深田久弥は、この山のことを「謙虚な山」だと書き残しています。
文筆を生業とする人だけに、実に巧妙な言い回しをしておられますが、要するにこの山は地味だと言うことです。
まず名前からして地味きわまりません。北岳ですよ。北岳。
南アルプスの北よりにあるから北岳なんて、日本第2位の高峰にそんな安直な名前をつけてよいものなんでしょうかね。
かつては秘境ともいえる山奥にあった北岳ですが、南アルプス林道が広河原まで通じた今日においては、比較的簡単にアプローチすることが可能な山となりました。
それでは地味謙虚さが売りの、日本第2位の高峰へと繰り出してみましょう。
コース
広河原より白根御池を経由して山頂を目指します。その後は北岳山荘に向かい山小屋で一泊し、翌日広河原へ下山します。
なお、最初からネタバレしてしまっていますが、冒頭に乗っけた写真からして既に山頂部が雲に覆われている時点でお察しの通り、残念ながら日本第二位の展望台からの眺望は一切得られませんでした。
途中までは晴天だったんですけどねえ。
朝4時20分 甲府駅
南アルプス北部の登山基地である広河原へは、甲府駅からバスでおよそ2時間半ほど掛かります。
4時35分発の第一便のバスに乗るためには前日に甲府に乗り入れている必要があります。
甲府駅界隈には漫喫やカプセルホテルなどの安宿は存在しません。ビジホに泊るなり野宿するなりして翌朝まで待機しましょう。
とは言っても、いい年した大人が野宿なんて、普通に考えたらありえないですよね。
バスは甲府市内を抜け南アルプス林道へと進みます。
野呂川が刻んだ急峻なる南アルプスの大峡谷に、近代土木建築技術が真っ向から戦いを挑んだこの林道は、見所満載な一大スペクタクルです。
本来であれば、私も窓ガラスに被り付いて、この絶壁の上を走る林道のドライブを堪能したかったのですがZzzz
駅前の硬いベンチの上で一夜を明かしたせいでしょうか。昨夜はどうも睡眠不足気味で、冷房の効いた快適なバスの中で即効寝てしまいました。
広い河原だから広河原。そのまんまの地名です。
行きのバスではずっと寝こけていたため、この時点ではあまり良くわかっていませんでしたが、ここは物凄い山の中です。
晴れていればこの先に北岳が見えるらしいのですが、残念ながら雲の中です。
吊橋を渡って登山開始です。
なおこの吊橋、結構揺れます。高所恐怖症の人は覚悟の上で突入してください。
上り始めてしばらくすると、大樺沢ルートと白根尾御池経由ルートの分岐地点に到着します。
大樺沢ルートのほうが若干距離が短いですが、私は白根御池小屋名物のソフトクリームが食べたかったので、ここは右へ。
樹林帯の急登が続きます。
早くも大量の汗が噴出してきました。
沢を渡ったところで、ディーゼル発電機の音が聞こえてきました。白根御池小屋まではもう一息です。
9時 白根御池小屋に到着
ここでお目当てのソフトクリームを食す。
水場もあります。南アルプスの天然水が汲み放題です。
方角によってはすっきりと快晴です。正面に見えているのはボーコン沢ノ頭(2,803m)です。
南アルプス林道が広河原まで開通する以前は、この尾根沿いに登るのが北岳のスタンダードルートだったとのこと。
ここからは、通称草スベリと呼ばれる急登が始まります。700メートルの標高差を一気に登り上げる、最大の難所です。
全行程の中でも、この登りが一番キツかったかもしれません。大粒の汗が止め処も無く噴出します。
急斜面には、タカネグンナイフウロが沢山咲いていました。
ハクサンフウロに比べて青みが強いのが特徴です。
撮影を口実にしばしの小休止です。
背後の視界が開けてきました。正面に見えているのは鳳凰三山の一座、薬師岳(2,841m)です。
急登と格闘している間に、山頂部はすっかりガスに覆われてしまいました。
どんどん雲行きが妖しくなってきました。一雨来そうな雰囲気です。
稜線への最後の登り。
天候悪化で若干あせりつつも、ここまでの疲労でペースが上がりません。
10時45分 稜線に出ました。
既に視界はゼロ。そして霧雨が降ってきました。
肩の小屋に向かって稜線を登っていきます。
この岩場は、北岳で唯一の危険箇所と言えなくも無い場所です。
つきましょう
なんだかよくわかりませんが、とりあえず「はい」。
11時15分 北岳肩の小屋に到着
霧雨はいつしか本降りの雨へと変わっていました。
手作り感満載の標識。
この時点で既に標高は3,000メートルを越えました。
ここから山頂までは、標準コースタイムで50分ほど。もう一分張りです。
天空の稜線歩きと言いたいところですが、ガス&雨で先が全く見えません。
ゴロ石に埋め尽くされていて、非常に歩き難かったと記憶しています。
12時 北岳登頂
標高日本第2位を制覇です。
視界ゼロ、展望一切なし。
なんてこったい。これでは北岳に来ただけじゃないか!
山頂の様子。
ごつごつした岩場です。あまり広くはありません。
毎度お馴染みの、山梨百名山であることを主張する標識。
普通に考えれば、ここが山梨県の最高峰ですね。(※)
※山梨県は、山梨最高峰は富士山であると主張しています。
富士山最高地点の剣ヶ峰は静岡県の富士宮市にあるのですが、それは。。。
雨に加え風まで出てきました。そして残念ながら私の愛用のカメラは防水ではないのです。
山頂で記念撮影を断念して、先へ進みます。
と言うわけで、これは翌日に撮影した写真です。
山頂から本日の宿泊先である北岳山荘に向かって下ります。
13時10分 北岳山荘に到着
これも翌日に撮影しました。絶好のロケーションにある小屋です。
3連休の中日とあって、このような悪天候にも関わらず山荘は人で溢れかえっていました。
受付で最初に言われたことは「本日は布団一枚に3人です」でした。
これは廊下を写した一枚です。荷物のごった返し具合が良くわかるかと思います。
乾燥室は水浸しで、この後もずっと生乾きの服を着たまま過ごすことになりました。
私の特技である「何時でも何処でも寝れる」は標高3,000メートルの環境下においても健在でした。
イビキの音がこだまする、すし詰めの部屋で、何事も無く爆睡して気持ちよく目覚めました。
山小屋泊をする際には、耳栓は必需品です。必ず持ち物に加えましょう。
テント場の様子。
物凄い暴風です。フライが吹き飛ばされそうになり撤収に苦戦している人が沢山居ました。
こちらは間ノ岳方向です。
当初の予定では、今日は間ノ岳まで往復してから下山するつもりでしたが、山荘で「間ノ岳の山頂は
風速40メートル
」という予報を聞いて取りやめました。
小屋の前から稜線に登ったところで、かつて経験したことが無いほどの強風に見舞われました。
身動きが取れず、しばらく立ち往生しました。
風の切れ目を待とうにも、一向に途切れる気配が無いので観念して前進を開始します。
中央アルプス方向を望む。
山座同定したかったのですが、風が強すぎて地図を広げらません。
カメラを構えるのにも難儀する。
標高3,000メートルの稜線ハイクですが、楽しむ余裕が全くありません。
景色はこの通り最高なんですけれど。
このような厳しい環境下にも拘らず、岩場には高山植物が花を咲かせていました。
白い花がでシロバナタカネビランジで、紫の花がチシマギキョウかな。
これはタカネシオガマ。強風に揺さぶられて、残像つき写真になってしまっています。
逆風の中を必死に登っていきます。
あるとき不意に風が止んで、前方につんのめりそうになりました。
山頂には記念撮影待ち行列が発生していました。
何処にでも行列を作る日本人の習性は、強風の吹き荒れる3,000メート峰においても健在でした。
雲が徐々に晴れてきました。
正面に見えているのは甲斐駒ケ岳(2,967m)。
こちらは南アルプスの女王こと仙丈ケ岳(3,033m)。
鳳凰山のオベリスクも見えました。
仙丈ケ岳と甲斐駒ケ岳のツーショット。どっちもカッコよすぎて甲乙が付けがたい。
昨日は真っ白で何も見えていなかったハイマツの稜線が眼下に広がります。
広河原に向かって下山開始です。稜線から外れると、嘘のようにぱったりと風がやみました。
振り返ってみる北岳。あれ?なんかガスが晴れてませんか。もう少し粘ればよかったのかもしれません。残念!
急坂だけに下山はあっという間です。白根御池まで戻ってきました。
北岳には技術的に難しい箇所は特に存在せず、体力さえあれば誰にでも登れる山です。都内からのアクセスも良く3,000メートル峰の入門に最適な山といえます。
日本第2位の高峰である北岳は、言うまでもなく日本第2位の展望台でもあります。その展望に大きな期待を抱いて訪れた山行きでしたが、残念ながら山頂は雲の中でした。
次回訪れる機会があれば、北岳から農鳥岳までを歩く白根三山縦走にチャレンジしてみたいと思います。
<コースタイム>
1日目
広河原(7:00)-白根御池(9:00)-肩の小屋(11:15)-北岳(12:00)-北岳山荘(13:10)
2日目
北岳山荘(5:40)-北岳(6:50)-肩の小屋(7:25)-白根御池(9:20~9:40)-広河原(11:20)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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