山梨県の富士吉田市、都留市、忍野村の境界にある杓子山(しゃくしやま)に登りました。
山中湖の真北にあり、道志山塊が富士山の裾野へと沈んでいく西の端に位置する山です。その立地上、視界を遮るものの何も無い富士展望を得ることが出来ます。
天候は生憎の曇り空。それでも山頂からは素晴らしい大絶景が待っていました。
2017年6月18日に旅す。
今回はマイナーエリア道志山塊に属する、杓子山へと登って来ました。
道志山塊は丹沢山塊の北に位置する、おおむね1,500メートル前後の山が連なる山塊です。杓子山は、その道志山塊の中でも最も富士山に近い場所に位置しています。
道志山塊の界隈は公共交通の不毛地帯であり、アクセスはあまり良好とは言えません。それゆえに、登山の対象としてはイナーな存在であり、あまり訪れる人のいない静かな山域となっています。
・・・なんか、以前にも全く同じ様なことを書いた気がしますが、マイナーな山が大好物の天邪鬼系ハイカーである私にとって、道志山塊というのは非常に熱いエリアなのです
杓子山は道志山塊の中ではまだ比較的、アクセスはしやすい山です。登山口のある鳥居地峠(とりいちとうげ)まで直接乗り入れている路線バスなどは存在しませんが、入り口の近くまでは公共交通機関で行くことが出来ます。
今回は珍しく公共交通機関車利用ではなく、車でアプローチして登って来ました。
コース
鳥居地峠(とりいちとうげ)の先にある駐車スペースよりスタートし、高座山(たかざすやま)を越えて杓子山まで往復します。往復のコースタイムが5時間未満のお手軽登山です。
1.杓子山登山 アプローチ編 車で登山口の鳥居地峠へ
さて、そもそも車も買えない貧乏人環境意識高い系ハイカーである私が、なぜマイカー利用前提の山行き計画を立てられるのかと言うと
それは、車を出してくれる友人を登山趣味に引きずり込むことに成功したからです。と言うことで、本日は自宅の玄関から出発し玄関に戻ると言うお大名登山が成立しました。下にい、下にい。
中年二人を乗せた車は、中央自動車道を快適に飛ばし、一路山中湖インターチェンジを目指して進みます。
ちなみに本日の天気は終日曇り予報です。まあ、杓子山は富士山の目と鼻の先にある山なので、富士山自信がガスを纏いでもしない限りは問題なく見えるでしょう。
下道に下りたところで、正面に目指す杓子山の姿が視認できました。とりあえずガスってはいないようです。
忍野中学校の脇から林道に突入して、まもなく鳥居地峠(とりいちとうげ)に到着です。およそ5台分の駐車スペースがあります。ここから登り始めるのが一般的のようです。
現地の案内板を確認したところ、この先には未舗装の道がもう少し上まで伸びており、その先にも駐車スペースが存在します。
と言うことでダートに突入します。思った以上にダートでした。最低地上高が高めな車意外での進入はオススメ出来ません。
6時30分 駐車スペースまで登ってきました。先客はゼロです。5台分しか駐車場のキャパがないと言う事前情報だったので、満車になることを心配して早い時間に出発しましたが、結果としては杞憂でした。
道志山塊なんてマイナーなエリアに、曇りの予報が出ている中ノコノコとやって来るような物好きはあまり居ないということですね。
2.容赦のない急登の高座山
身支度を済ませて、6時50分に登山を開始します。なお、登山口にトイレは無いので事前にコンビニなどで済ませておきましょう。
始めは展望の無い樹林帯を登っていきます。どこにでもありそうな地味山の光景です。
樹林帯がずっと続くのかと思いきや、意外なことに直ぐに視界が開けました。そして、周囲はガスにまかれています。これは駄目なパターンなのか?
振り向くと薄っすらと辛うじて富士山の姿が視認できます。この時点では、今回の山行きはボツ(記事にはしない)かなあ、などとぼんやり考えておりました。しかし、この後に大逆転が待っていました。
斜面の草が「中」と言う文字に刈り込まれていました。大文字焼きならぬ中文字焼きか。
この場所は忍野村の茅場です。茅場というのは読んで字のごとく、茅葺屋根の原材料である茅(かや)を育てて刈るために切り払われた場所の事です。
茅場町(東京都中央区)や茅野市(長野県)などと言った地名は、かつてそこが茅場であったことを示しています。
何気に凄い急傾斜です。普通だったら九十九折れするであろう斜面ですが、直登するように刈り払われています。
いつの間にかガスが晴れて、背後に絶景が広がっていました。もう今日はここまでで良いのではないか。などと言う気分にさえなってくるような、素晴らしいクォリティの光景です。
見ている眼の前で、ガスが次々と生まれ、斜面を登っては消えていきます。
麓の忍野村も深い霧に覆われています。湿度が相当高いようですな。
先ほどの「中」に続いて今度は「上」の文字がありました。気がつかなかっただけで「下」もあったのかもしれません。
これは「大下」ですかね。下山時に地元の人に聞いた話では、この文字は茅場の所有者を示すためのマーキングなのだそうです。
道の脇にはアヤメが満開を迎えていました。アップで見ると少し毒々しいですね、この花。すこし引いて眺めた方が可憐な感じがするのではないでしょうか。
アヤメの新芽は鹿の好物で、鹿の食害が進んでいる山ではほとんどアヤメの姿を見られなくなっています。里に近く人の出入りの多いこの高座山には、まだ比較的鹿の数が少ないのでしょう。
上の方に行くに従って、傾斜がどんどん厳しくなってきました。登りはまだいいとして、下山時は怖そうです。
滑りやすい土むき出しの急斜面が高座山の山頂までずっと続きます。砂埃が凄い。
7時20分 高座山(たかざすやま)に登頂しました。急登続きで、ふくらはぎから乳酸があふれ出そうになったところで到着です。
道標を兼任している山頂標識がポツンとあるだけの、地味な山頂です。
樹林の中にあり、展望はありません。富士山の頭だけが樹間から見えているくらいです。
3.杓子山登山 登頂編 峠を越えて大展望の広がる頂へ
杓子山にむかって尾根沿いに歩いてきます。細かいアップダウンの続く中々の険路です。
ロープが張ってある場所もありますが、まあ使わなくても登れそうなレベルです。
送電鉄塔が現れて視界が開けました。鉄塔のあるところ好展望ありの法則は杓子山でも健在です。
送電線の先に見えているのは御坂山地の三ツ峠山(1,785m)です。この付近にある山の中では最も標高が高く、最も多く登られている山でもあります。
こちらは反対側、南方向の展望。正面に見えているのは石割山(1,404 m)ですかね。
すこし上に登ったところでもう一枚。右が三ツ峠山で中央左奥にあるこんもりとした山は御坂黒岳(1,793m)です。
鉄塔を越えてからも、登って降りてを断続的に繰り返す道がしばしの間続きます。
8時 大権首峠(おおざすとうげ)に到着しました。ここまで林道が通じていますが、途中にゲートがあって一般車はここまでは入れないようです。
大権首と書いておおざすとは、何気に難読な地名ですね。しかし「たかざす」だの「おおざす」だのと、杓子山はざすのが好きなんですかね。
地名にあるよくある「指=さす」とは、かつてそこに焼畑があったことを示しています。
杓子山の頭頂部が視界に入りました。まだ結構な標高差が残っています。
峠から山頂まではおよそ40分とのこと。もう一分張りと言ったところです。
パラグライダーの発着場です。眼下には富士裾野の広々とした平地が広がっています。
YES I CAN FLY!
と言うことで、とりあえず飛んでいる気分だけでも感じてみようとした図。
それはグライダーと言うよりはバンジージャンプのポーズなのでは。。
山頂直下はこれまた結構な急登りです。高座山ほどきつくはありませんが、足元はドロドロで歩きにくい斜面です。
4.杓子山山頂からの大展望 どんより曇り空風味
8時30分 杓子山に登頂しました。公共交通機関で来ていたら、おそらくまだ登山口に立ててすら居ないであろう時間に山頂に着いてしまいました。張り切って早起きしすぎたか。
山頂の様子
椅子つきのテーブルが3っつほど。そして、周囲に視界を遮るものがなにも無い360度の大展望が広がっています。
曇り空なのが画的に少々残念な感じではありますが、それでも富士山はほぼ完全な姿を見せてくれました。何気に凄い好展望ですねこの山。
こちらは麓の忍野村の全景。尾根を一つ隔てて見えている湖は、富士五湖の一つである山中湖です。
こちらは麓の富士河口湖町方向の光景です。背後にはまだ雪が残る南アルプスの稜線も見えています。
御坂山地とその背後に広がる南アルプスの眺望も素晴らしい。晴れてればもっと良かったのですが。
南アルプスの白根三山のアップ。右から北岳(3,192m)間ノ岳(3,189m)、農鳥岳(3,026m)。
こちらは北側の展望。晴れていれば奥秩父の山が見渡せるはずですが、流石に曇っていて遠望はあまりききません。
息を呑むような絶景をシブく見つめる山中年。いやはや、思っていた以上に素晴らしい眺望の山でありました。
5.杓子山登山 下山編 茅場の急坂を転げるように下り、スタート地点へ
山頂の絶景を十分すぎるほど堪能したところで下山を開始します。日帰り登山なのに朝の9時に下山開始とか、自己最速記録です。
高指山からの下りは、上から見ると思わず尻込みしそうになるような急坂です。
地元の方たちが大挙して、草刈機を担いで茅場の手入れをしている最中でした。
下山は富士山に向かって歩くことになります。杓子山は最後まで好展望の山でありました。
10時30分 駐車スペースに下山しました。往復3時間40分の、なんともあっけない山行きでありました。
麓から戻ってから、コンビニの駐車場から見上げる茅場の様子です。草刈り機の轟音が、忍野村全体に響き渡っていました。地元の人々からしたら、見慣れた年中行事なのでしょうか。
帰りは高速を使わずに道志道を通って帰ろうということで、途中で山中湖に寄り道しました。お目当ては湖畔より望む逆さ富士です。
結果はご覧通り全然駄目です。晴天&無風状態でないと逆さ富士は見えないようです。
道志道の途中にある道志の湯に立ち寄り汗を洗い落としました。ここは事実上、車が無いと来ることができない場所です。前々から気になっていたのですが、ようやく訪れることが適いました。
その後東京へ戻り、自宅の前で解散。至れり尽くせりの大名登山が無事に終了です。
車が使えないとアクセスが少々面倒な場所にあるものの、杓子山は変化に富んだ尾根道と360度のパノラマを同時に味わいつくすことの出来る大変良い山でした。今回は曇り空で少々残念な感じでしたが、この山が最高の富士展望台の一つであることは間違いありません。
4時間足らずでは満足できないという人は、石割山まで繋げるルートを歩けばそれなりにガッツリと歩くことも可能です。マイナーな山域ゆえにあまり訪れる人が居ないようですが、非常に満足度の高い山行きでした。杓子山オススメです。
<コースタイム>
鳥居地峠(6:50)-高座山(7:25)-大権首峠(8:00)-杓子山(8:30~9:10)-大権首峠(9:35)-高座山(10:00)-鳥居地峠(10:30)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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