埼玉県長瀞町にある宝登山(ほどさん)に登りました。
秩父地方にある標高500メートルにも満たない里山です。麓から山頂直下まで行くことの出来るロープウェイが運行されており、観光地としての色合いの強い山です。山頂にあるロウバイ園では、毎年1月中旬から2月中旬にかけて長瀞ロウバイ祭りが開催され、数多くの訪問者で賑わいます。
また、通称長瀞アルプスと称する縦走コースも整備されており、登山の対象としても人気のある山であります。
一足速くに、春の気配を感じる山歩きをして来ました。
2018年2月10日に旅す。
今回は石畳とライン下りで名高い秩父地方の長瀞(ながとろ)にある里山、宝登山に登って来ました。
宝登山は早春に咲く花ロウバイの名所として有名な山です。山頂にはロウバイ園の他に梅園なども存在し、比較的長期間にわたって春の花を楽しむ事が出来ます。
ロウバイは漢字では蝋梅と書きます。名前に梅の文字が入っていますが、ウメ科ではなくバラ科に属しています。
黄色く透き通った花弁が、まるで蝋細工のように見えることが名前の由来といわれています。ほんのりと甘い香りのする花ですが、種子は有毒です。決して食べてはいけません。
花やつぼみから抽出した蝋梅油(ろうばいゆ)が漢方薬として使用されれることもありますが、鑑賞用途が主たる目的で栽培されることが多い花です。
宝登山は麓から小一時間もあれば登れてしまう山ですが、さらにはロープウェイまであります。ロウバイ鑑賞だけが目当てであれば、全く山登りをする必要はありません。
宝登山単体では少々物足りない感じがしたので、最寄駅から一つ隣の野上(のがみ)駅から歩く、通称長瀞アルプスと呼ばれているハイキングコースを歩いて来ました。
最近日本全国に増殖中の、いわゆるご当地アルプスの一つです。あまりアルペン的な要素は感じられないコースですが、ロウバイ見物と合わせて軽めのハイキングを楽しんで来ました。
コース
野上駅より長瀞アルプスを歩いて宝登山に登頂します。山頂のロウバイ園を散策ののち、長瀞駅へと下山します。標準コースタイム3時間30分程のお手軽な行程です。
1.山登山 出発編 秩父への遠き道のり
野上駅へ行くのは自身初めてのことです。まずは手始めに、ヤフー路線検索で経路をチェックします。
ふむふむ。東武東上線を使うのが一番安くて早いようですな。それにしても6回も乗り換えろとは、なんとも面倒な。。
しかしながら、公共交通機関の利用が前提となる車も買えない貧乏人環境意識高い系ハイカーである私は、例えそれがどんなに面倒な経路であろうとも、ヤフーが示した通りの道を辿る以外に選択の余地など無いのです。
6時25分 東武東上線 池袋駅
かくしてヤフー様が仰られたとおりの道を歩むべく、池袋駅へとやって来ました。
ガラガラの車両で悠々と座席を確保し、出発を待っていたところで駅構内のアナウンスが聞こえてきました。
「東武東上線は6時15分に発生した人身事故の影響により、現在運転を見合わせております」
ふーん、こんな朝っぱらから事故とは大変だね。
・・・
・・・・・・・
うん?東上線?
ええい!東武が駄目なら西武だ。と言うことで、急遽その場で経路変更です。
なおヤフー路線検索の野郎は、高崎まで新幹線で出ろとかい言う意味のわからない経路を案内してきたので、もう頼るのはやめにしました。ヤフーはJR東日本からお金でも貰っているのでしょうか。
700円ほど予定外の出費が発生しましたが致し方ありません。と言うか、途中で6回も乗り換える手間を考えれば、始めからこっちにすべきだった気がします。
快適な特急列車のシートでウトウトしているうちに、いつの間にか終点の西武秩父駅に到着していました。
圧倒的な存在感でもって秩父の市街地を見下ろす武甲山。まさに秩父のシンボルと呼ぶにふさわしい貫禄です。雪で白く染まった姿もまた実に格好良い。
ここから秩父鉄道に乗り換えです。西武秩父駅とは直接連絡していないので、最寄駅まで少々歩く必要があります。
なお、秩父鉄道には秩父駅と言う駅がありますが、西武線と接続しているのはそこではありません。乗換駅はお花畑駅という名前なのでお間違いなく。
秩父鉄道は埼玉県内の私鉄事業者の中では唯一、パスモに加盟していません。よって切符を購入する必要があります。野上までの運賃は500円です。
9時10分 野上駅に到着しました。自宅を出発してから、実に3時間以上が経過しております。いやはや秩父は遠いですな。
駅前で「ツアーの参加者の方ですか?」と話しかけられる。これから歩こうとしているルートは、ツアー登山が行われるくらいには盛況なコースのようですね。
2.宝登山登山 登頂編 長瀞のご当地アルプスを歩く
軽く腹ごしらえしつつ身支度を整え、9時25分に行動開始です。駅から真っ直ぐ道なりに進みます。
これから歩くコースは、なんでも長瀞アルプスなる愛称で呼ばれているのだとか。最近、日本全国にやたらと増殖しているご当地アルプスのひとつです。
これが長瀞アルプスの稜線です。何処にもアルプス的要素が感じられませんが、それは・・・
※アルプスとはalp(岩山)の複数形です。
萬福寺の脇を左折します。ルート上には道標が整備されているで、迷うことは無いでしょう。
宝登山までは2時間ほどの、とっても手軽なハイキングコースです。それにしても、先ほどからアルプスアピールが凄いな。
スタート地点でいきなりアイスバーンの洗礼を受けました。登りはアイゼンなしでいけましたが、下りでは相当危険な状態です。
実は標高の低い山のほうが、こういう危険な状態になりやすかったりするのです。
昼間に融けた雪が夜になって再凍結を繰り返すことによって、このようなツルツルな氷の板状の地面が出来上がります。
登り始めから、遠目に見えていた通りの穏やかな傾斜の道です。案の定と言うか、このコース上に岩場やクサリ場などのアルペン的な要素は一つもありません。
日陰の場所は足元カチンコチンです。とりあえず登る分にはノーアイゼンで問題なし。
日の当たる場所には、雪は綺麗サッパリ無くなっています。この時間帯はまだ土が凍ったままですが、気温が上がれば緩んで泥濘になりそうな予感がします。
尾根に乗って以降も、ずっと緩やかな道が続きます。樹林に覆われているため、残念ながら展望は全くありません。
一部で日陰側の斜面をトラバースする場所があります。行き先が何処であれ、この季節は軽アイゼンを常にザックに忍ばせておいたほうが無難でしょう。
割と平坦だったので、私はノーアイゼンのまま歩き続けました。今のところベタ足歩きで問題無しです。アイゼンを持ってきてはいるんですけれど、頻繁に着脱するのが面倒なのでね。
ここで天狗山と言う小ピークを経由するルートと合流します。宝登山を目指すなら直進です。
正面に大柄な山が見えてきました。これが目指す宝登山のようです。均整の取れた、なかなか良いカタチをした山ですな。
道のほうは、相変わらず緩やかなアップダウンを繰り返しながら続いています。この長瀞アルプスコースは、前半はずっと楽で、最後になって一気に高度を上げに行きます。
ここで恐れていた事態が勃発です。気温の上昇と共に、足元が泥まみれになってきました。スパッツを持って来るべきだったか。
少しだけ展望が得られそうな場所があったので、背伸びして撮影してみました。なにぶん馴染みの無い山域なので、写っている山の名前は一切わかりませぬ。
10時30分 小鳥峠を通過を通過します。なにぶん真冬なので、小鳥さえずりなどは聞こえて来ません。ここからは登りに転じます。
相変わらずのアルペン的要素が皆無なゆるやかな山道を進みます。
ここで一旦林道に出ました。山頂直下までしばしの舗装道路歩きです。
この林道がまた、完全に凍結していて足元ツルツルです。周囲を見渡すと、小股でたどたどしく歩く人がの姿が多く見られました。
周囲の杉林は、今まさに花粉を放出せんとしてる状態でした。
2018年の花粉飛散量予測は、相当ヤヴァイ規模であるようですね。こんな物騒なものは、すべて伐採して爪楊枝にでもしてしまえば良いのですよ。
林道から再び登山道に復帰します。この傾斜と積雪量では流石にアイゼン無しは危険なので、ここで装着しました。
山でキノコ取りをした事はありません。この看板にある通り、極めてリスキーな行為だと思うんです。
なかなかの急坂です。ここまでが平坦だった分、山頂直下にきて一気に高度を稼ぎ始めます。
目が眩むような階段地獄です。とは言っても、標高500メートルにも満たない低山であるので、急登はそんなに長くは続きません。
そんな訳で、割とあっさり山頂が見えてきました。ロープウェイ組が合流するため、かなりの数の人の話し声が聞こえて来ます。
11時5分 宝登山に登頂しました。実にあっけなく山頂に到着です。山歩きしている時間よりも、電車に乗っていた時間のほうが遥かに長いという。
山頂の様子
多くの人で賑わっています。ロープウェイで上がってこれる場所であるが故に、登山の格好をしていない人の姿も多く見られました。
南側は展望が大きく開けています。秩父の市街地を挟んだ向かいには、武甲山(1,301m)の姿が大きく見えました。
空気が霞んでいて、遠望に関してははちょっと残念な感じです。
西に目を向けると、その岩々しい特徴的なシルエットにより一目でそれとでわかる、両神山(1,723m)の姿が見えました。
こうしてみると、両神山と言うのは実にアルプス的な見た目をした山ですね。ご当地アルプスブームに乗っかって、小鹿野アルプスとでも名乗ってみてはどうであろうか。
山頂直下には宝登山神社の本宮が立っています。防火守護という一風変わったご利益のある神社です。伝説によれば、宝登山はもともと火止山と呼ばれていたのだとか。
秩父地方の山では、割と良く見かける狼の狛犬が祭られています。
造詣がリアルで、恐ろしげな顔をしておりますな。子供が見たら泣き出すんじゃないだろうか。
3.宝登山山頂のロウバイ園を散策する
お目当てのロウバイ園は、山頂直下の南側斜面に広がっています。辺りには、ほんのりとした上品な甘い香りが立ち込めていました。
ロウバイ園内はいくつかの区画に区切られており、それぞれ開花時期の異なる品種が植えられています。見頃の時期を少しでも長く継続させるための工夫なのでしょう。
この日は、山頂直下にある西ロウバイ園がちょうど見頃を迎えるところでした。
まるで蝋細工といわれるように、薄っすらと透き通った花弁が特徴的です。また、とても良い香りがします。
梅や桜のような派手さこそありませんが、それでもこの一面の黄色は目を奪われるような光景です。
東ロウバイ園の方は、まだまだこれから咲くところらしく、冬枯れの殺風景のままでした。
こちらが宝登山ロープウェイの山頂駅です。山頂のすぐ下まで上がってこれるので、山登りは一切せずともロウバイ園を散策することは可能です。
山バッチがあったので購入。初めて登る山でバッジを見かけたときは、とりあえず購入することにしています。
山頂には、ロウバイ園のほかに梅園もあります。開花を迎えるのは、2月下旬から3月上旬頃のことです。
こちらは福寿草(ふくじゅそう)です。ロウバイと同様に、春の訪れを告げる花として知られています。ちなみにこれも毒草です。
こちらはマンサクです。早春に咲く花であることから、東北弁で「まんずさく(先ず咲く)」と呼ばれたことが名前の由来と言われています。
ちらし寿司にのってる錦糸卵みたいな見た目の花弁ですね。
ここが宝登山の正面玄関といった所でしょうか。今日歩いてきた野上駅からのコースは、どちらかと言うと裏口のような扱いです。
4.宝登山登山 下山編 山頂から長瀞駅へ
12時 下山を開始します。眼下には、ここまで歩いてきた長瀞アルプスの全貌が見渡せました。
何故か山の上に動物園があると言う。高尾山のサル園と言い、山の上に作るのに何か理由があるのでしょうか。
日陰側には雪がどっさり。ここだけ見ると完全に雪山の装いですな。
宝登山神社の本宮前に軽自動車が停まっていたのを見た時から、なんとなく察しはついていましたが、この道は車道です。歩いていても全く楽しくは無いので、下山は素直にロープウェイを使ったほうがよいでしょう。
日陰の場所は凍結していましたが、滑り止めにウッドチップがまかれており、アイゼン無しでも通行は可能でした。
登山口には桜の名所として名高い宝登山神社があります。当然ながら、今の季節はただの枯れ木ですが。
観光バスが何台も停まっていました。ここ宝登山神社は、ミシェランガイドで一つ星を獲得したという、全国的に名の知れた観光地でもあります。ロウバイまつりとセットのパッケージにでもなってるのでしょう。
参拝待ちの行列が出来ていました。どうも私はスピリチュアルな方面への感受性が鈍いらしく、正直なところ神社仏閣の類にはあまり興味がありません。
という事で、とりあえず来てみたと言うだけで、特に参りはしません。なにしろ、おみくじすら引いたことがないような人間なのでね。
ちょうど小腹が空いてきたので、宝登山神社の売店でおやつタイムにします。
秩父のご当地グルメだという味噌ポテトを頂きました。お値段は200円です。まるでジャガイモに味噌タレをかけた様な味がして、とても美味しかったです。
駅まで歩いて戻ります。なお、ロウバイ祭りの開催期間中は、無料の送迎バスも出ています。
まあ、わざわざバスが来るのを待つほどの距離ではありません。割とあっけなく駅が見えてきました。
長瀞は、宝登山の氷池で作られた天然氷を使用したカキ氷が有名です。沿道の至る所に氷屋が軒を連ねていました。残念ながら、この季節にカキ氷は食指が延びませんな。
長瀞駅まで戻って来ました。駅からスタートし駅へと戻ってくる、実にお手軽なハイキングでした。
石灰岩を満載した貨物列車が目の前を通過していきます。武甲山で採掘したものなのでしょう。
早春に咲く花が満載の宝登山登山は、こんな感じで終了です。
まだまだ寒い日が続いてはいますが、春が確実に近づきつつあることを感じさせてくれた山行きでした。
都内からだと少々遠い場所にある山ではありますが、誰でも気軽に登ることの出来る里山として、とてもオススメです。
ロウバイの次には梅の開花が控えており、さらにその先にはツツジの開花を控えています。宝登山の花の季節はまだまだこれからが本番です。
春の息吹を感じに、はるばる秩父まで繰り出してみては如何でしょうか。
<コースタイム>
野上駅(9:25)-萬福寺(9:35)-小鳥峠(10:30)-宝登山(11:05~12:00)-宝登山神社(12:45)-長瀞駅(13:10)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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