早池峰山 高山植物が咲き乱れる北上山地の主峰

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岩手県の宮古市、遠野市、花巻市にまたがる早池峰山(はやちねさん)に登りました。
標高1,917メートルの北上山地最高峰です。谷川岳や至仏山などと同様の蛇紋岩からなる山で、数多くの固有主をもつ高山植物の宝庫として知られています。また、その岩々しい山容ゆえか、古くからの修験の山でもあります。
暴風が吹き荒ぶ稜線で、満開を迎えた花々を愛でる山旅をして来ました。

2017年7月2日に旅す。

 


今回は岩手県中部にある花の名峰、早池峰山へと遠征してきました。東北地方屈指の大河、北上川の傍らに連なる、北上山地の最高峰です。
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東北地方の山々が遅い雪解けを迎える初夏の季節は、高山植物が一斉に花を咲かせる花のシーズンであります。蛇紋岩の山である早池峰山には、多くの固有種含む多様な花々が咲き誇ります。
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ハヤチネサンという、なんとも不思議な響きの名前を持つこの山には前々から興味津々でしたが、何せ遠いところにあるので中々訪問することが適わずにおりました。今回ようやく、早池峰山が一年で最も美しく輝く瞬間を見に行く機会が訪れました。

遠路はるばる東北へと繰り出した私を待ち受けていたのは、前評判通りの素晴らしき花々に彩どられたガスと暴風の稜線でした。
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コース
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季節限定で盛岡駅から小田越までの直通バスが出ているので、それを利用して小田越から山頂を往復します。早池峰山への登路としては、最も簡単かつ最も一般的なルートです。

 

1.早池峰山登山 アプローチ編 夜行バスで行くみちのくへの旅路

7月1日 22時 JR東京駅八重洲口
早池峰山への直行バスに乗るには盛岡駅に朝7時10分にいる必要があります。朝出発では新幹線であっても間に合わないため、今回は夜行バスで現地へ向かいます。
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八重洲口にはJR高速バスの発着場がありますが、今回乗るバスの発着場はここではありません。もう少し南に進んだところにある鍛冶橋駐車場にあります。
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駅から10分ほど歩いたところで目的地に到着しました。ここは所謂格安ツアーバスの発着場です。
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盛岡駅まで料金は4,800円也。3列シートなのに破格の値段です。

・・・安すぎて怖いんですけれど、これしか席が取れなかったのです。早池峰に行こうと思い立ったのがこの日の昼だったのでね。

乗車したのは東京デズニーランド発の盛岡行きという便です。TDLで一日中遊びまわって疲れ果てた人々を乗せて盛岡へ帰るための便という訳ですな。

そのためか、発車して早々から車内には寝息のほかは何も聞こえず、静かなものでした。

明けて7月2日の5時50分 盛岡駅に到着しました。
3列シートのおかげか実に快適に眠れました。何時もより長く寝て体調は万全です。
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空模様がどんよりと曇っているのが非常に気になる所です。せっかく遠路はるばる4700円もの大金を払ってやってきているのだから、ここは晴れてほしいところ。

バスは西口に到着するので反対側の東口へ移動します。24時間営業のコンビニやファーストフード店が揃っているので、ここで準備を整えられます。
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早池峰山への直行便は7時10分に発車します。一日に1往復のみです。乗り逃すと次はありませんので要注意です。発車時刻の一時間以上前と言うことで、まだ並んでいる人間は一人もいません。
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発車時刻が近づくにつれて人が集まって来ました。1台には乗り切れず、臨時便が出て2台になりました。流石は人気の百名山です。
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登山口の小田越まではおよそ2時間の行程です。途中の大迫バスターミナルで1回トイレ休憩があります。料金は片道1,700円。当然ながらスカイ・パスモには対応しておりません。

9時 小田越に到着しました。
ご覧の通り、登る前からガスっております。そして停車しているバスが揺すぶられるほどの強風が吹いています。
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別に良いんですよ。早池峰は花の名山ですから。花を愛でるにはガスっていたって良いんです。・・・泣いてなんかいませんよ?

帰りのバスは15時12分の発車です。行動時間は6時間ほどあります。標準コースタイムは往復で4時間ちょっとなので、時間には十分すぎるほどの余裕があります。

身支度を済ませて9時10分に登山を開始を開始します。「忌々しいクッソガスめ」と一人罵りながらの幸先悪いスタートです。
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2.ガスと暴風に覆われた岩の道

登り始めから木道が整備されています。早池峰は非常に人気の高い山なので、オーバーユース気味に踏みしだかれて、地面がえぐれてしまうのを防ぐための処置でしょう。
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熊除け用に打ち鳴らすための一斗缶がコース上に多数吊るされていました。殴打されすぎて既にベッコベコです。
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スリット付きの木道で、濡れていても滑りにくい。尾瀬の一面フラットなスリップ木道も、早池峰山を見習ってほしいです。
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今まさに胞子を飛ばさんとしているコケ。何故か見ているだけで癒される、この不思議な魅力よ。
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そしてカニコウモリ。湿気を好む植物が繁茂しており、水が豊富な場所であることが窺えます。
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携帯トイレ用の簡易テントが張ってありました。
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数多くの固有種を含む貴重な高山植物の宝庫である早池峰山は、全域が自然環境保全地域に指定されています。立小便などもってのほかだと言う事です。

登り始めて30分としない内に背の高い木が無くなってきました。まもなく森林限界を超えるようです。
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標高で言うとまだ1,400メートルほどです。東北の山というのはそれだけ冬の気象が厳しいのでしょう。

蛇紋岩特有の紋様を撮ったつもりが、謎の56の看板の方が目立ってしまった一枚。何が56なのか知りませんが、ともかく56です。
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9時40分 一合目に到着しました。
樹林帯を抜けたところが一合目と言うことらしい。ここからは山頂までずっと岩の道が続きます。

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170702早池峰山_022木の防壁が無くなったことにより、風が強くなってまいりました。

ハイマツの中の道を登って行きます。この森林限界の低さは東北の山の大きな魅力の一つだと思います。苦行のような樹林帯歩きが殆ど無く、早々と展望が開けるわけですから。
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まあ、今日は展望なんて全く無いのだけどね!

ハイマツの新芽。プリプリしていて美味しそうに見えるのは私だけでしょうか。
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沿道に早速花が迎えてくれます。こちらはミヤマオダマキ。まだ咲きたてらしく、花びらが透けています。
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これはミヤマシオガマ。白いものもあるらしいのですが、この日見かけたのはすべて紫のものだけでした。
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こちらは早池峰固有種のナンブトラノオ。環境省の絶滅危惧種レッドリストに登録されている大変貴重な花です。
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今にも土足で踏まれそうな場所に生えていまいした。これから早池峰を歩こうと思われている方は、レッドリストの花を踏んづけないように、くれぐれも足元にはお気を付けください。

コース上の至る所にあった、登山道であることを示していると思われる標識。
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道がどんどんと険しくなってきました。
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花の名峰などと言われると、なんとなく放牧的で緩やかな山容を想像してしまいますが、早池峰山はそのイメージとはかけ離れた山です。

かつては修験の山であったという事実が示すとおり、険しい岩が連なる山であります。

稜線に出たところで、これまでとは桁違いの風に晒されます。強風と言う域を出て、暴風と形容した方がシックリ来るような風です。
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ガスが晴れて一瞬だけ山頂が見えた・・・訳ではなく、これは下山時に同じ場所で振り返って撮った一枚です。ガスっていなければこの通り絶景が広がる場所です。
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3.早池峰山登山 登頂編 花咲く稜線を越え北上山地の頂へ

この辺りまで来ると、下のほうとは植生の異なる花がチラホラとお目見えします。
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こちらはミヤマアズマギク。その名の通りキク科の花です。
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一見エーデルワイスのように見えるこちらの花は、ハヤチネウスユキソウと言う名の早池峰山固有種です。
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この黄色い花は高山植物の定番であるミヤマキンバイ。割と各地の山で良く見かける花なので、早池峰山においてはあまり有り難味がありません。
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こちらはナンブイヌナズナ。北海道から東北地方にかけての山に咲く花です。
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割と有名なハシゴの下までやって来ました。早池峰山におけるランドマーク的なスポットですな。
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山と高原地図には「強風時注意」と書かれています。今まさに強風時ですね。

大分ひしゃげてるけれど大丈夫なのかなコレ・・・
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傾斜はさほどきつくはありませんが、落ちたら間違いなく大怪我ないしいはあの世行きなので、ここは慎重に登りましょう。
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登り切った後も、油断ならない岩々しい場所がしばし続きます。
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まるで北アルプスの3,000メートル峰のような景色が広がります。関東地方の山に慣れている者の感覚では、これが2,000メートルにも満たない山の光景だといわれても、俄かには信じがたい話です。
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見当す限り一面のハイマツです。ハイマツ畑状態です。
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11時10分 剣ヶ峰分岐真で登ってきました。ここまで来れば、山頂まではもうまもなくです。
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早池峰山は遠くから見ると台形状の山容をしており、山頂部には平坦な大地が広がっています。

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岩陰に入った途端に嘘のように風がパタリと止みました。
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高山植物における大定番のチングルマ。固有種と言う大スタアが目白押しの早池峰においては、ミヤマキンバイと同様に余り有り難味を感じません。
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こちらはイワカガミ。これも定番ですね。
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山頂の避難小屋が見えてきました。ゴールは目前です。
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山頂直下にはほんの僅かですが雪が残っていました。
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山頂直下に立つ早池峰避難小屋。なかなか快適そうな作りをしておりますが、原則として緊急時以外の宿泊はNGとのこと。
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11時25分 早池峰山に登頂しました。
小田越から2時間15分で到着しました。ほぼ標準コースタイム通りです。
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コースタイムは割と甘めな感じがします。風が強くなければ2時間未満で登れるのでないかと。

山頂の様子
非常に広々とした広場になっています。休憩スペースには不自由しません。
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山頂に立つ早池峰神社。ここが信仰の山であることが窺えます。
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早池峰の剣
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そして仏像。修験の山っぽさを演出してくれる小道具が満載です。
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ほんの一時でしたが、ガスが晴れて青空が広がりました。ガスはちょうど早池峰山を包み込む様に発生しており、山頂部だけが頭を出した格好です。
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まあ、直後には再びガスに包まれてしまいましたがね。
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こちらは河原の坊コースへの入り口です。本来であればこちらから登る周回ルートを取りたかったのですが、残念なことに登山道の崩壊により昨年の5月から通行止めになったままです。復旧時期は未定とのこと。
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山頂にも花が咲き乱れていました。花の名峰にふさわしい山頂風景なのではないでしょうか。
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ガスが取れないかと1時近く山頂で粘りましたが、どうやら無駄なようです。諦めて下山を開始します。
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4.早池峰山登山 下山編 最後の最後に少しだけ姿を見せてくれた山

行きよりは大分ガスが薄くはなっているのですが、それでも完全には晴れてくれません。
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広々とした高原台地が広がります。もう少し早い時期であれば、湿原が出現するのでしょう。
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この手の込んでいそうなブロックパターンの木道は、滑りにくくて良い感じです。丹沢でも導入してくれませんかねえ。
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時より青空が広がりますが、長くは続きません。すぐに新手のガスが押し寄せて来ます。
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振り返って見ると、ハイマツの平原の先にある山頂部が、ほんの一瞬だけ姿を見せてくれました。
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再び暴風が吹き荒れる稜線に舞い戻ります。
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当然ながらハシゴは登りよりも下りの方が怖いです。こういう時だけは、視界が利かないほうがかえって良いかもしれません。高度感を大分和らげてくれます。
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正午になっても、風は弱まるどころか益々強さを増してきました。風で何度もよろけながら下っていきます。
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強風過ぎて、花がまるでダンスしているような状態です。
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ここで不意にガスが晴れました。余りの強風で綺麗に吹き飛ばされたのかもしれません。
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この通り、山頂部も見えました。
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まるでジェット機のエンジン近くの席に座ったときのようなすさまじい轟音です。帽子が吹き飛ばされそうになるのを抑えながら歩きました。
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行きには全く見えておりませんでしたが、結構急な斜面だったことがわかります。
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登山口の小田越が視界に入りました。
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そして再び樹林帯へ。
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風が止むなりどっと汗が噴出しました。気温自体は結構高かったようです。

ここからは消化試合のようなものなので、ちゃっちゃか下ります。
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14時10分 小田越に下山しました。既にバス待ちの行列が出来ていました。
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小田越から望む早池峰山。山頂部を覆っているガスは最後まで晴れずじまいでした。
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帰りも長々とバスに揺られて、盛岡駅へと戻って来ました。
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翌日は普通に朝から出勤せねばならないので、帰りは素直に新幹線を使いました。全席指定のはやぶさ号は満席だったので、各駅停車のやまびこ号でゆったりと帰還です。
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かくして、慌ただしきゼロ泊二日の東北への旅は終了です。早池峰山は、前評判の通りの高山植物満載の山でした。花の名峰と言う呼び名に一切の誇張はありません。
その密度もさることながら、これほど多種多少な花がかたまって咲いている山は、ほかに経験がありません。その色取り取りさ加減において突出した存在であると思います。
この後も、花の種類を変えつつ8月中旬頃までは満開の花を愛でることが可能です。図鑑片手に登ればきっと新しい発見があることでしょう。コースタイムも手ごろで、あらゆる人にオススメの山です。

<コースタイム>
小田越(9:10)-一合目(9:40)-五合目(10:35)-早池峰山(11:25~12:20)-五合目(13:10)-一合目(13:45)小田越(14:10)

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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