平ヶ岳 秘境、奥只見に静かに佇む日帰り最難関の山

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新潟県魚沼市と群馬県みなかみ町にまたがる平ヶ岳(ひらがたけ)に登りました。
群馬県、新潟県および福島県の三県境界付近に広がる山岳地帯である、奥只見(おくただみ)にある深山です。その名が示す通りの平坦な山頂部を持ち、その広大な山頂部には豪雪の雪解け水が生み出す高層湿原帯が広がります。
登山口から遠く離れた位置にある山ながらも、山中には山小屋もキャンプ指定地も存在せず、日帰りするしか選択肢の無い難関の山として知られています。
満を持して挑んだ最難関の山で待ち受けていたのは、前評判に違わぬ遠く険しい道程でした。

2020年9月22日に旅す。

平ヶ岳は、関東地方の果てにある尾瀬よりさらに奥地へ分け入った、奥只見と呼ばれる一帯にある山です。名前通りの平たい山容を持つ山で、遠目には放牧的で気持ちよく歩けそうな山に見えます。
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しかし実際にこの山を歩くとなると、気楽さなど欠片もない長く困難な道程を行くことになります。その困難さは一にも二にも、この山がある立地に起因しています。

秘境、奥只見。秘境と称される山地はそれこそ日本各地に存在しますが、奥只見の秘境さ加減はその中でも特に際立っています。
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ダム工事のために作られた工事用道路を前身とする、奥只見シルバーラインと言う道だけが、この山域へと分け入る唯一の道です。

平ヶ岳はとにかく遠い。登山口へ辿り着くまでがすでに一つの核心部であり、そして登山口から山頂までの道程もまた非常に遠いのです。

平ヶ岳はよく「日本百名山日帰り最難関の山」などと評されますが、この表現は若干言葉足らずというか、厳密には正しくありません。日帰りすることがもっと困難(というかほぼ不可能)な百名山は他にも存在します。

正確には「日帰りしか選択肢の無い最難関の百名山」です。平ヶ岳の山中には山小屋もキャンプ指定地も存在せず、往復22kmを日帰りで歩き切るしか選択肢はありません。え?プリンスルート?あんなものは外法です。

かくして日帰りで挑んだ平ヶ岳。前評判通りの長い道のりでヘトヘトになりましたが、山頂に広がる高層湿原帯は圧巻の光景でした。日帰り最難関との呼び声高き山の訪問記をお届けします。
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コース
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平ヶ岳登山口から平ヶ岳へ登頂します。その後、平ヶ岳の象徴的な存在である玉子石に立ち寄り、元来た道を登山口へと戻ります。鷹ノ巣山コースと呼ばれる、標準コースタイム12時間の行程です。

1.平ヶ岳登山 アプローチ編 シルバーラインを走り秘境奥只見を目指す

9月21日 関越自動車道大泉インター付近
さて時は秋の4連休3日目。まず東京から脱出するのが最初の難関でありました。出だしからいきなりの大渋滞です。
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平ヶ岳登山における最初の核心部と言えるのは、登山口までのアプローチです。当初は奥只見湖の観光汽船を利用したアプローチなどを検討していましたが、幸いにも友人が車を出してくれました。

寄居インターを過ぎた辺りで、ようやく順調に流れ始めました。あの渋滞していた車はみんな、秩父へ行きたかったのでしょうか。
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新潟県の小出インターで高速を下りて、奥只見シルバーラインに向かいます。奥只見ダム建設のために作られた工事用道路を前身とする道です。開通当初は有料道路でしたが、現在は無料化され県道に編入されてています。
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この道がまたなかなか凄い。全長の大半をトンネルが占めており、常に地下水が染み出して路面は水浸しです。この水が凍結してしまうため、冬期は全面通行止めとなります。また、二輪車の通行禁止と言う珍しいルールが適用されています。
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平ヶ岳登山口へ行くには、このシルバーラインを途中で抜けて銀山平方面へと進むのですが、その前に奥只見ダムを観光して行きます。
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駐車場からダムの上まで、100円で乗車できるインクラインで結ばれています。しかし、到着時間が遅かったため既に営業していませんでした。まあ、歩いて登っても大した高さではありません。
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奥只見ダムは発電用のダムで、堤体は157メートルあります。重力コンクリートダムとしては日本一の高さです。
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明日登る平ヶ岳がちょうど奥只見湖の先に見えるはずなのですが、どよーんと曇っていて残念ながらその姿は見えませんでした。
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ダムの下から始まる只見川。この川は福島県内で阿賀野川に合流し、その後再び新潟県内に入り日本海へと下ります。
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阿賀野川は全長こそさほど長くはない河川ですが、日本有数の豪雪地帯を源流域としているため、川を流れる流水量は日本一です。

こういう巨大インフラの内部構造図は、見ているだけでワクワクします。
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一瞬エビスビールに見えましたがエチゴビールでした。興味が湧いたものの、既に土産物店も閉まっていたため手に入らずです。
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観光を切り上げ登山口へと向かいます。銀山平方面への分岐は、実におっかないトンネル内分岐の90度カーブです。
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この先は樹海ラインと呼ばれる、ダム湖にそってグネグネと続く道をひた走ります。思いのほか対向車が多く、すれ違いに神経を使います。とは言ってもまあ、私は助手席でふんぞり返っているだけですが。
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この時間に反対側からやってくる車と言うのは、十中八九は平ヶ岳から下山してきて、精魂尽き果てている人達でありましょう。

すっかりと陽が沈んでしまった時間になって、ようやく平ヶ岳登山口に辿り付きました。やはりこの山は遠い。
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登山口に20台分ほどの駐車スペースがあります。本日はここで車中泊します。バイオトイレがあるのでトイレの心配はありませんが、飲み水の調達はできません。あらかじめ用意して来ましょう。
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私は早々に眠りに落ちてしまいましたが、なかなか寝付けなかったと言う友人曰く、ヘッドランプを点灯した状態で20時過ぎに下りて来たグループがいたとかなんとか。

やはり平ヶ岳と言うのは、一筋縄ではいかない山であるようです。

2.下台倉山へと続くヤセ尾根の急登

明けて9月22日の4時45分。できれば明るくなってから行動開始したいところではありますが、コースタイムの長さを鑑みるに、暗いうちから出発します。
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登り始めは緩やかな林道のような道です。ヘッドライトでの歩行でも、特に危険を感じる要素はありません。
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小さな沢を横断します。山と高原地図に、登り始めてすぐの場所に水場のアイコンがありますが、この沢のことです。下山時に飲みましたが、その後特に腹が緩くなったりはしなかったので、飲んでも大丈夫なんだと思います。
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時刻が5時15分をまわったところで、ようやく周囲はヘッドライト無しでも歩ける明るさになりました。
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今の所、空模様は薄っすらと高曇りです。これならば森林限界を超えても直射日光に晒されずに済むので、好都合な天気と言えます。

途中にロープ場が何ヵ所かあります。正確に数えてはいませんが、4~5か所はあったように記憶しています。
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程なく森を抜けて、前方にこれから登って行く尾根の全容が見えました。結構な急勾配であることが遠目にもわかります。ここが最初の頑張りどころです。
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登る分はロープ無しでも行けないこともありません。どちらかと言うと、下山の時のためのものなのでしょう。
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地図上にヤセ尾根との記載がありますが、恐らくはここの事です。取り立てて危険と言うほどの事はありませんが、足を踏み外したら谷底へ真っ逆さまです。
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昨夜の20時に下山してきたと言うグループは、ヘッドランプの明かりを頼りにこの場所を通過したという事になりますが、さぞや心細かったことでしょうな。

頭に雲を被った燧ヶ岳(2,356m)の姿が見えました。東北地方最高峰の肩書を持つ山だけに、周囲の山よりも頭一つ飛び出しています。
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登り一辺倒ではなく、随所にアップダウンがあります。それはつまるところ、下山時に漏れなく登り返しがついて来ると言う事です。きっとその頃には、疲れ果てているんだろうな。
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遥か頭上高くに見えていた稜線が、かなり近くなってきました。
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最後の方はかなりの急勾配でした。手もフルに使って登って行きます。
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6時55分 下台倉山に到着しました。鷹ノ巣山コースの最初のチェックポイントと言った所です。胸を突くような急登はひとまずここまでです。
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3.池ノ岳直下までのしばしの安息

時間に余裕は全くないので、休憩は取らずに行動を続行します。ここから台倉山までは、あまり標高差の無い稜線歩きです。
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ずっと尾根上を行くのかと思いましたが、所々でこうして山腹の森の中を迂回します。足場が悪く、なかなか楽には歩けない道です。
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この緑の葉が全て紅葉する時期に訪れれば、さぞや素敵な光景が広がることでしょうね。その頃にはさらに日が短くなっているでしょうから、登頂の難易度はさらに増加するでしょうけれど。
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相変わらず高曇りの雲が、直射日光を良い感じに防いでくれています。燧ヶ岳の雲は、だいぶ取れて来ました。
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燧ヶ岳の奥にひょっこりと頭だけを見せているのは、日光白根山(2,578m)です。こちらは関東地方最高峰の肩書を持つ山です。
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ようやく前方に、お次のチェックポイントである台倉山が見えて来ました。とりあえずあそこで一本立てようという事で、もうひと頑張り歩き続けます。
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ここでようやく、目指す平ヶ岳の姿を視界に捉えました。多くの登山者が、ボッキリと心をへし折られる瞬間なのではないでしょうか。「えーッ、まだあんなに遠いいの?」と。
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平ヶ岳とはまことに良くつけた名前で、本当に平らな山容をしています。槍ヶ岳並みに、名が体を表している山だと思います。
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7時45分 台倉山に到着しました。三角点がある他には、山頂標識すらもない場所です。当然ながらベンチなどもないので、立ったまま短い休憩を取りました。
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気を取り直して行動を再開しましょう。台倉山からは一旦下りです。平ヶ岳はまだまだ遥か彼方にあります。遠いなあ。
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下りきった所が台倉清水です。水場という事になっていますが、この水場を当てにできるのは残雪期だけです。
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ここからしばしの間、恐怖のスリップ木道地帯が続きます。ほぼ水平移動なので楽に歩ける道ですが、それはあくまで木道の表面が乾ている時です。
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8時40分に、もう一つの当てにできない水場である白沢清水を通過します。案の定というかここも涸れていました。
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4.平ヶ岳登山 登頂編 最後の急登を乗り越えて、遠い山の頂へ

あてにはならない水場を越えたところで、いよいよこのルート2度目の急登が始まります。
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前方に見えているこのピークは、平ヶ岳では無くお隣の池ノ岳です。登山道はこの池ノ岳を越えて行きます。
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間の悪いことに、ここで頭上に青空が広がり始めました。それはすなわち、ここからは容赦のない直射日光に晒されることを意味しています。
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ここまでの疲労で、流石に足が前に出なくなってきました。しばし背後を振り返っては現実逃避です。燧ヶ岳を覆っていた雲は、いつの今にか完全に取れていました。今日燧ヶ岳に登った人は、大逆転勝利であったことでしょう。
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平ヶ岳の山頂部が見える場所まで登って来ました。山頂部の外見だけなら、たおやかで登りやすそうな山に見えるんですけれどね。
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まずはその前に、この池ノ岳を攻略しなければなりません。山頂直下は風化した花崗岩が露出した、少々神経を使う道です。
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眼下に、昨日観光した奥只見湖の姿が見えました。こんな山奥に、あれほど巨大な人工物をよく作りましたねえ。
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9時55分 池ノ岳に到着しました。平ヶ岳の隣にあるピークですが、広義にはこの山も平ヶ岳の一部と言えます。
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ウッドデッキがあり、スペース的にはここにテントを張ることが可能です。可能と言うか、明らかにテントのロープを張るのに使ったとしか思えない大きめな石が残っていました。

ここは正式なキャンプ指定地ではないため、緊急時を除き幕営はルール違反行為です。

ようやく平ヶ岳の山頂部を目の前に捉えました。池ノ岳から山頂までのコースタイムは40分です。最後のもうひと踏ん張りです。
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池ノ岳と言う名前の通りに、山頂に大きな池塘がありました。とても標高2,000メートル超えの場所にあるとは思えないような光景です。
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疲れた体に鞭打って、休憩は取らずにこのまま山頂を目指します。まずは鞍部に向かって緩やかに下ります。
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そして登り返し。のっぺりとした外観通りに、この最後の登りは大した登りではありません。
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山頂付近にも高層湿原が広がっていました。色付き始めた草紅葉が良い感じです。
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振り返れば池ノ岳。実に私好みな光景の山です。ここまで来るだけでも大変だけれどね!
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山頂らしき場所まで登って来ました。いやはや遠かった。ここまで手こずらされた山はかつてあったでしょうか。
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最高地点は灌木帯の中にあります。途中までは絶景なのに、山頂部分だけがガッカリなのは、苗場山と同じパターンですかね。
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10時20分 平ヶ岳に登頂しました。登山口を発ってから実に5時間45分をかけての到着です。
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山頂標識のある場所よりも先まで木道が続いているので、とりあえずは終点まで行ってみましょう。
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平ヶ岳が何故こんなにも平らのかなのか、説明文が掲げられていました。かつて平地だった場所が隆起した結果なのだそうです。
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という事で、ここが木道の終点です。この先には立ち入ることが出来ませんが、とても山頂とは思えないような湿原がどこまでも続いていました。
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山頂標識のある場所まで引き返し、今度こそ大休止を取ります。
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山頂からの眺めは雲が多めでイマイチです。朝からずっと見えている、燧ヶ岳の姿だけが良く見えました。まあ、平ヶ岳は別に眺望が売りの山ではないので、いつものようにガスっていることに対して悪態をつくつもりもありません。
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・・・ところで、平ヶ岳の売りとは一体何でしょう?

燧ヶ岳の向かいには至仏山が見えるはずなのですが、こちらは完全に雲隠れ中でした。眼下にも湿原が広がっているのが見えますが、登山道のない場所なので、近づくことは出来ません。
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死んだように暫しグッタリ。なにせピストンである以上、現時点はまだ道半ばにすぎない訳ですからね。
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5.平ヶ岳のシンボル玉子石

10時55分 山頂を辞去して、下山を開始します。まっすぐは戻らず、平ヶ岳の象徴的な存在である玉子石に立ち寄って行きます。
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池ノ岳へは登り返さずに、途中の分岐を玉子石方面へと進みます。
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平ヶ岳と池ノ岳の間にある谷へ一旦下ります。道がそうなっている以上は仕方がありませんが、その後の登り返しが気乗りしませんな。
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この鞍部に水場があります。途中にあった2か所の水場とは違って、ここの水場は比較的アテにできます。
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か細い流れですが、冷たい水がしっかりと流れていました。ここで一口飲んだだけで済ませてしまったのですが、これには後で激しく後悔することになりました。
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下山の途中で飲み水が尽きてしまい、ここでしっかりと補充しておくのだったと後悔しても後の祭りでありました。という事なので、水の残量に少しでも不安がある人は、ここでしっかりと給水しておきましょう。

そして登り返し。大した登りではないのだけれど、これまでの疲労が積もりに積もって、だいぶ苦しい展開です。
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玉子石までもっとサクッと往復できるのかと思っていましたが、意外と距離がありました。
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右手に居並ぶのは越後三山の山並みです。越後駒ヶ岳は、今回の山行きの割と出発寸前まで、行き先の候補して平ヶ岳と天秤にかけ続けていた山でした。そのうち、あちらにも登ってみたいな。
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11時35分 玉子石までやって来ました。新円に近い丸形で、あまり玉子っぽくはありませんな。
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長年の風雨による浸食により、この様に特異な形状になったのだとか。いつ転がり落ちても不思議ではない危険な状態であるため、目の前まで接近することは禁じられています。間違っても、乗ってみようなどとは思わないように。
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平ヶ岳で見るべきものはすべて回収しました。これで心置きなく下山が出来ます。
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燧ヶ岳は本当に平ヶ岳のどこにいても良く見えて、この日は一日中傍らにあり続けました。平ヶ岳は、一度登ればそれでもうたくさんな感じがする山ですが、燧ヶ岳にはもう一度登りに行きたいですねえ。できれば初夏の花のシーズにでも。
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平ヶ岳の方も、眼前に広がる光景としてはとても素敵なんですけれどね。これからまたあの道程を歩いて戻るのかと思うと、いかんせんため息ばかりが出て来てしまいます。
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11時55分 池ノ岳まで戻って来ました。ちなみにここを直進すると、通称プリンスルートと呼ばれるコースへと続いています。
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プリンスルートの登山口がある中ノ岐林道は、一般車の通行が禁止されています。しかし、銀山平温泉にある宿に宿泊した客に限り、宿の車で送迎してもらうことが出来るのだそうです。

中ノ岐登山口からスタートした場合、平ヶ岳山頂までの標準コースタイムは3時間ほどとなります。日本百名山の完登を目指しているけれど、鷹ノ巣山コースを日帰りで歩き切れる自信がないと言う方は、プリンスルートの利用を検討してみては如何でしょうか。

6.平ヶ岳登山 下山編 途中で失速しつつも、なんとか日没前に下山

平ヶ岳の姿もこれで見納めです。そうそう気軽に来れる場所ではないので、しっかりと目に焼き付けました。
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後ろ髪をひかれつつも、12時10分に下山を開始します。
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この先の道程がどれだけ遠いのかを重々承知しているため、始めからイマイチ意気はあがりません。自分で登ってしまったのだから、自分で下りるしかないのだと、なんとか自らを奮い立たせます。
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尾根沿いにずっと行って、左端の方に見えているのが下台倉山です。心が折れそうになるこの距離感。
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さあここからは心を無にして、黙々と下山と言う作業に取り組みましょう。

最初の急坂を下りきったところで白沢清水です。ここは素通りして歩き続けます。
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13時30分 台倉清水までも戻って来ました。この先は台倉への登り返しがあるため、ここで一本立てました。
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さあ登り返しです。流石にもうサクサクと登れる力は残っていないので、喘ぎながらゆっくりと登り返します。
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13時50分 台倉山まで戻って来ました。コースタイムで言うと、ここがほぼ下山の中間地点です。・・・まだ中間地点ですか。
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さあ頑張って歩きましょう。この地味にアップダウンを繰り返す道がまた、ボディーブローのようにじわじわと効いています。
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眼下に、これから下るヤセ尾根が見えました。こんなに急だったけか。
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14時40分 下台倉山まで戻って来ました。さすがにもう失速して、標準コースタイム通りのペースを維持することも困難になってきました。
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泣き言を言っても始まりません。さあ、最後の下りです。気合を入れていきましょう。
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下山時には、このお助けロープの存在にかなり助けられました。やはり下山の為のものだったのですね。
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今朝真っ暗な中を通過した、最初の水場までで下ってきました。下山途中で飲み水が尽きてしまっていた私は、大急ぎで飛びつきました。
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ヒャッハー水だー。沢水ですが、少なくともトリハロメタンに汚染されている東京の水道水よりは、遥かに安全だと思います。
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16時50分 平ヶ岳登山口に戻って来ました。途中で失速しつつも、何とか日没前に戻って来ることが出来ました。たくさん歩いて疲れたー。
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写真は撮りませんでしたが、このあと道中にある清四郎小屋と言う山小屋に立ち寄り、平ヶ岳の山バッジを手に入れました。

再び長い長い道のりを経て帰宅の途に付きます。最後まで運転してくれた友人には、感謝の言葉もありません。
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だいぶヘトヘトにはなりましたが、個人的に長年の懸案であった平ヶ岳にようやく登ることが出来ました。一度登ればもう十分な山かなと言うのが、登ってみた上での率直な感想です。山頂に広がる高層湿原帯は素晴らしい光景でしたが、いかんせんそこへ辿り着くまでに求めらられる労力が大きすぎます。
かくも到達が困難な山であるにも関わらず、山頂付近では割と多くの登山者とすれ違いました。この山にこれだけの人気があるのは、やはり日本百名山に選ばれていることと無関係ではないでしょう。深田久弥も罪な山を選んでくれたものです。
平ヶ岳は「誰でも登れる山」では決してなく、登る者を選ぶ山です。要求される体力度は雲取山鴨沢ピストンよりもワンランク上です。登ってみようと思う方は、長距離を歩く訓練を十分に行い、気力体力を充実させたうえで臨んで下さい。

<コースタイム>
平ヶ岳登山口(4:45)-下台倉山(6:55)-台倉山(7:45~7:55)-白沢清水(8:40)-池ノ岳(9:55)-平ヶ岳(10:20~10:55)-玉子石(11:35)-池ノ岳(11:55~12:10)-台倉山(13:50)-下台倉山(14:40~15:55)-平ヶ岳登山口(16:50)

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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